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DATE: 2012/09/01(土)   CATEGORY: 店主の宝物庫
くるくる回って
こんばんはヽ(*´∀`*)ノ.+  
久々にブログを更新しております。とくにめぼしい報告事項もありませんが、しいて言うなら合同誌に参加させてもらえるようになりました。今年の三月くらいからえんやこら、とお話を練って完成させ、添削をして貰っているところです。
無事、一個の形としてなるのが今から楽しみです(´ ∀`*)
一応、完成形まで持っていけるようになったらこちらに詳細なアドレスを張りたいと思います。
むちゃくちゃ、短文ですがブログの書き方をすっかり忘れてしまっているようなので、ここら辺でお暇致します。
ではでは。
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DATE: 2010/08/09(月)   CATEGORY: 店主の宝物庫
人見知りの旅。
―険しい山をえっちら、こっちら、ああ、まだたどり着かないのか。

”力の儀”を終えて、オツシロやカマカブトの手当てが終わると解散し各々が部屋へと戻った。そして、雀の鳴き声と朝の木漏れ日によってリガキは眼を覚ました。

「ふわああ、」
大きな欠伸を漏らしていると何処からか喧騒が聞こえてきた。身支度を整えて外に出るとどうやら玄関先で何かあっているようだった。

そこに居たのは年配と思われる髭の長いご老体と屈強そうな若者が二人ほど。ふむ、とリガキは思いながらおそらくミツヤの客の一人だろうと考えた。対応にあたっているのはウロコアンだった。

「どうしても御当主に会わせて頂けないと、言われますか。」
「会う、会わないの問題ではないのです。今はミツヤの長く続く儀の真っ最中。例え如何なる催事がありましょうとも、こればっかりは引き下がるわけには参りません。」
「・・頭の固い娘御じゃ。」
「これで無ければ、末後の娘は務まりません。」
にこりと微笑を髭の長いご老体にウロコアンはくれてやる。すると屈強な男の一人がご老体に耳打ちをする。

「娘さんや、儀と言ったかの。」
「はい、それが何か?」
「それなら、ワシが直々にミツヨシ老に耳打ちしてやろうて。どうじゃ?」
ウロコアンは微笑を貼り付けたまま、髭の長いご老体を見る。ご老体はそれに”手ごたえ”でも感じたのか髭を撫でながら笑んでいると、ウロコアンはくっ、と笑い言う。

「・・・・・・、飛んだ阿呆で御座いますこと。」
「なっ、なんじゃとっ!?」
「お父様も何故にこの様な阿呆に口を利くのか、あいにく私には分かりかねますわね。」
「娘、この方を誰だと思っている!?」
屈強な男の一人が叫びながらもウロコアンに突っかかろうとする。

「さあ?申し訳ないのですけど、存じ上げません。貴方方も大変ですこと。そのような阿呆の身を守らねばならぬとは、さぞ大変で御座いましょう。」
「・・、」
屈強な男たちは怯まないウロコアンを見て、唖然とする。

「っ~!!娘、このような口の利き方どうなるか分かっているだろうな!!」
髭の長い老人は顔を真っ赤にしながらウロコアンに言う。

「口の利き方、それを貴方に仰られる筋合いは御座いません。貴方は私の”息子”を馬鹿にしたのですから。私の”息子”は貴方のような阿呆に口を利いてお父様に胡麻を擂るような、そんな外道な真似せずとも儀を成し遂げれます。」

ウロコアンはきっぱりと言い、そしてすっと立ち上がって靴箱の上にあった盛り塩を取ってバサッと男たちに投げた。

「去ね!」
「っ!?覚えておれ!」
捨て台詞を髭の長い老人は言うと、ぴしゃんっと玄関の扉を閉めて出て行った。ウロコアンは困った人、というようにあごに手を置いてその光景を見た。

「あの、ウロコアンさん・・」
「あら、リガキ先生。起こしてしまいましたね。申し訳御座いません。」
「いえ。あの方たちは?」
「お父様のお客の一人でしょうが・・かまいませんわ。あんな阿呆共。」
「・・はあ。」
「ふふ、女の癖に豪気だとお思いでしょう?」
「・・いえ、頼りがいがあるとは思いますが。」
ウロコアンは苦笑しながら話す。

「私はどうも短気でなりませんわ。顔は笑ったままでもいけるのですけど、カマカマブト兄様の事をいえた義理じゃありません。あのように屈強な人たちでもすたこらと逃げさせますから、カズアツにも昔から怖い思いをさせております。」
「・・カズアツ君に、ですか?」
「はい。旅館というのは、お客様と宿の者しか居ませんから、こちらの不手際であれば納得できることも多いのですがあちらが勝手に言いがかりをつけられることも多いのです。」
「それは・・大変で」
「私も嫁いで実感しました。ですが、例え”お客様”と言えども許せる部分と許せない部分が御座いますし、私は短気ですから。」

おそらく何度かいさかいがあったのだろうとリガキは思う。

「カズアツもそんな私の後ろ背を見ていたものですから、どうにもあの子は”怒る”という事に対しては人一倍神経をすり減らしているのです。・・・かわいそうなことをしました。」
ポツリ、と漏らすウロコアンは本当に切ないという表情をしていた。

「・・つまらないお話しをしましたわ。急いで夕餉の仕度をさせますので、お顔でも洗ってきてくださいまし。」
「あ、はい。」

リガキは思う。

この兄妹たちは皆が皆自分の子供たちに対して”自分の性格”を引け目にしているのではないかと。

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DATE: 2010/07/31(土)   CATEGORY: 店主の宝物庫
心配しがりの言い訳。
―寂しがり、貴方を止めれることも何もしなかった私をどうか怨んでいて。

「オツシロっ―!?」
真っ先にカマカブトはへたりと座り込んだ娘の下へと駆け寄り怪我が無いかを調べる。

「お父様、オツシロは平気です。それよりもお父様や叔父様や叔母様たちにお怪我はありませんか?」
「俺は平気だ、トビシマ、ウロコアンそっちは怪我は?」
「息子共々無いみたいだ。」
「私やカズアツもありません。リガキ先生、イナバさん、ミネガマさん、お怪我は?」
「僕は大丈夫です。ミネガマは?」
「平気よ。」
そして、チラリとミネガマはリガキを見た為にリガキも頷いてオツシロの側へ行く。

「それにしても驚きました。オツシロさんは空手か何かを習っていたんですね。」
そうオツシロに声をかけると、彼女はぎくり、と体を強張らせた。それにリガキは小首をかしげてカマカブトを見遣るとじいっとカマカブトはオツシロを見た。

「その事だ、オツシロあんなの一体何処で覚えてきた。」
「あら、お兄様護身術で通わせていたのではないの?」
「通わせた覚えも教えた覚えもない!」
くわっとカマカブトはウロコアンに叫ぶと、ウロコアンはあらまあ、という顔をしてトビシマはやれやれと首をふってみせる。

「・・その、お父様、今まで黙っていた事はお詫び申しあげます・・けれど、私は」
オツシロは俯いたままたどたどしく言葉を紡ぐ。

「私は、何だ!!」
怒声のようなカマカブトの声にびくりとオツシロは体を縮こまらせる。カマカブト本人も気付いていないだろう。

「あの、カマカブトさん」
「何です、リガキ先生!」
「オツシロさんのお話しを聞いてあげてください。」
リガキの言葉にカマカブトは一瞬きょとんとして眼鏡の蔓を指で持ち上げて言う。

「俺は聞いています!」
「いいえ、聞いてはいらっしゃいますが、『心』を荒らさせて聞いてはオツシロさんの話はただの”言葉の羅列”に等しくなります。だから、心を落ち着かせて、聞いて差し上げてください。この通りです―、」
リガキはそう言って頭を下げた。それにオツシロは慌てて頭をお上げください、と言う。カマカブトもそれを見て唖然としていた。

重く瞼を閉じて、カマカブトは前を見た。

「・・・・、すみません。感情的になりすぎました。リガキ先生頭をあげて下さい。」
そう言われてリガキは頭を上げた。

「―オツシロ、」
「っ、はい―!?」
「話して御覧なさい。」
「・・・はい。」

「私は、長女として存外呑気に生きている、と随分前にお店に来られましたお客様が言っているのを聞いて、それで、私でも締めれる時は締めれる様になろうと、思いました。」
オツシロの告白にカマカブトはただ目を凝らして我が娘を見る。

「それをお母様にご相談しましたら、だったら格闘技か何かを学んで精神統一を図ってみては、どうかと言っていただけて、5年程前くらいから空手の、あの川の近いお家の先生にご指導して頂いてもらって、います。」
「五年前・・・・何故、そう言われた事を言わなかったんだ・・・」
カマカブトは肩から力が抜けたのかそう洩らす。

「お父様は―お父様は私にとって眩しいのです。」
「・・・・・まぶ、しい?」
「はい。私はお父様のように真っ直ぐに生きてみたいのです。何事にも正しく、真っ直ぐに、他の方から見れば多少のずれも笑いの種となりましょう、けれどもそうやって頑張って真っ直ぐにあろうとする気持ちが、私には眩しくて、同時にそうありたいと思えるのです。だから、お父様に褒めていただけるのは私にとって嬉しい事としてもお父様を悲しませるような事は―」

「・・・私の”願い”ではないのです。」
「オツシロ・・・・」
「私はわがままです。誰か知っている人は守りたいと思うくせに、その誰かとはまた違った知っている誰かがくれば速やかに中立に立つ。どちらも選べないで、ぐずぐずしていていつの間にか掌から大事なモノが無くなっていて、それを哀しいとも思わず、ただ仕方が無いで納めている、守りたがりなのです。」
オツシロはそう言うと、薙刀の主が割った電灯の破片が落ちる畳の上を気にせず、両手をぺたりと置き両手の上に頭を更に置いた。

鈴虫の音が小さくなっている。

「お父様にご心配やずっと隠していた事この場を借りてお詫び申しあげます。―至らない娘で申し訳御座いません、お父様。」
カマカブトはそれを暫らく見て、やがて破片散らばる中に手を置いていたオツシロの手をとった。

「顔をお上げ、オツシロ。」
カマカブトの言葉にオツシロは恐る恐る顔をあげた。オツシロは父の表情に驚きを隠せなかった。

「お前が至らない娘なら、俺は至らない父親だ。何時も何時も融通の聞かぬ事ばかりを言って・・お前やお前の母さんにも迷惑をかけている。格闘技を習っているのは・・・俺も驚いた。だが、今ではお前の利点となるならそれも良いのだろうな。・・・、さっきは話を聞く耳をもたずにすまない。」
そう言ってカマカブトは頭を下げた。オツシロはそれにまた驚いて顔をあげて下さい、という。

―ぶ、ぶぶん、と異様な音が鳴った。

それは割れた以外の電灯の明かりがついた音だった。

「明かりが、」
「失礼します、明かりは―」
現れたのはキミシカで部屋の惨状におろどいている。それにウロコアンが言う。

「キミシカ、私は箒とちりとりを持って来るから、オツシロとカマカブト兄様の手当てをお願い。」
「あ、はい。承知しました。」
キミシカは来たばかりの道を戻り、ウロコアンは破片を踏まないように廊下へと出て行った。

―”力の儀”成功致しまして御座います。

Re;
DATE: 2010/07/30(金)   CATEGORY: 店主の宝物庫
心配しがりの札。
―分かっているの、本当は。私がそんな心配を寂しがり貴方が出て行った後でやったってそれは何の意味ももたないんだって。

「停電?」
「配線持たなかったようですね・・。」
カマカブトが電灯を見てそう呟いた声にリガキは周囲を見ながらそう答える。

「こんな中で儀なんか出来るのか?」
トビシマの声があがり、すくっと誰かが立つ気配がした。

「女中に電灯と蝋燭を持ってくるよう言って来る。」
「大丈夫ですの、カマカブト兄様」
「平気だ。」
カマカブトはウロコアンの言葉をぴしゃりと跳ね除けると、障子に手をかけた。

その時だった、ゆらり、と月光に照らされて何かの影が商事の薄い紙の向こう側に浮かび上がる。それは―人影と先の尖った何か。

「危ないッ!!」
リガキが叫ぶとそれに反応してカマカブトは手をかけようとしていた障子から一歩引こうとする。

―ドンッ!!
障子があっさりと破られ現れたのは、黒い鎧と兜や具足、そして薙刀を持った”誰か”だった。

「なっ!?」
カマカブトはそれを視界に認めてそう短く叫んだ。すると、人はゆらり、と薙刀の持ち方を変えひゅんっ!とカマカブトの喉元に切っ先を当てた。

「お父様!!」
オツシロが哀しく叫ぶ中、じりじりとした雰囲気が空間を縛った。月光の明かりが部屋に漏れて、部屋に居たみんなの顔がやっと認識できた中カズアツがその光景を唖然と見ながらポツリ、と言う。

「・・・・まさか、これが”力の儀”?」
「カズアツの言うとおりなら冗談が過ぎるぞ、親爺殿・・・っ!!」
トビシマがカマカブトが今だ喉元に切っ先を当てられている中そう言った。しかしカマカブトの喉元に薙刀の切っ先を当てていた主は一歩引いてカマカブトから大人の一歩くらいの距離を取った。

それはまるで、

くるり、と薙刀が回りカマカブトは思わず目を瞑り周りの者がどうして良いか分からない中リガキを除いてもう一人の主が踊るように薙刀の主の懐に入り込んだ。

薙刀の主も懐に入り込んだのは予想外だったらしく僅かに躊躇した瞬間、その主は踊るように懐へ入った速度と体を捻じ曲げた際に生み出した速度を持って薙刀の主の鎧の薄そうな部分に遠慮の無い拳を叩き込んだ。

薙刀の主は薙刀の柄の部分を畳に当てて反動を抑えた。そして改めて、薙刀を構える。そんな主に遠慮の無い拳を叩き込んだ主―オツシロは静かに相手を見ていた。いや、睨んでいたのかもしれない。

リガキは”獣”が居ると思った。

張り詰めた空気を先に破ったのは薙刀の主だった。構えを解いて、オツシロから少し離れた距離から助走をつけて斜めに薙刀を振るう。オツシロはそれを目で追って、ぎりぎりまで自分にひきつけてしゃがみ込んだ。

薙刀の利点は広範囲に獲物が中る事だろうが、逆に言えば間合いがつめにくい。それを彼女は、オツシロは判っていたのだろうか。彼女はしゃがみ込むと同時に畳に両手をついて低い回し蹴りを相手の腿へと打った。薙刀の主はひっくり返りそうになるのをもう片方の足で後ろへと引きもった。

カマカブトを見ると、眼鏡の奥の目は目の前で行なわれている現状が信じきれないという表情を浮かべていた。

「一つ、一つ、尋ねさせてください。」
オツシロは構えを取ったままおっとりした声で言う。薙刀の主は切っ先をオツシロに向けたままの状態を取る。

「貴方にももし”札”の効能が使えるなら私は札を使います。」
「・・・」
「私の願いは”此処にいる誰にも危害を加えない事”です。御守り頂けるのでしたら頷いていただけませんか?」
オツシロの言葉に薙刀の主は僅かに頭を揺らし、頷いた。

「有難うございます―」
彼女は柔和な笑みを浮かべて礼を述べると、動いた。

薙刀の主はそれに反応してひゅんっ!と薙刀を振るう。彼女はそれを避けずにそのまま突き進んだ。

「オツシロッ!?」
カマカブトは娘の行動に叫んだ。無理も無かった。そのまま行けば彼女の首はちぎることになりそうだ。だがオツシロはただ迷わず薙刀の主の振るう薙刀追い、薙刀の柄を掴んだ。ぱしり、と。そしてお互いに力任せに薙刀を引っ張り合う。

「・・・っ!?」
薙刀の主はぐぐっと力を入れて引っ張るがオツシロも目を瞑りながらそれを引っ張った。

ずぼっと薙刀を引き抜けたのは―

「・・、これで、貴方は戦えません。私の勝ち、ということで宜しいでしょうか?」
オツシロは呼吸を整えながら薙刀の主を見てそう言った。

「・・・・・」
すっ、と薙刀の主は片手を出した。オツシロはそれに薙刀を渡す。

薙刀の主は己の獲物を受け取ると、ひゅんっとそれを振るった。

それは誰でもなく、空気でもなく、電灯に向かってだった。

「えっ?」

―パリン、と電灯が切っ先にあたり割れる音がして思わず部屋に居た皆が目を瞑った。

恐る恐る目をあけるとそこには破れた障子と割れた電灯、そして畳の上に座り込んできょとんと周りを見遣るオツシロと月光の光だけがあった。

―”誰か”を守る為にしか使えない。

Re;Love before being easy.
DATE: 2010/07/28(水)   CATEGORY: 店主の宝物庫
心配しがりの過保護。
―嗚呼、寂しがり貴方は今ちゃんと生きていますか?野犬に襲われていませんか?食べ物に困っていませんか?雨露に濡れて風邪を引いていませんか?

昨日の夜のように膳の上に料理が並んでいる。リガキはそれを見て、ふと飯をついでくれている女中に尋ねる。

「あのすみません。」
「え、あ、はいなんでしょうか。」
「キミシカさんが見えませんが、何か?」
女中は茶碗を此方に渡しながら「ああ、」と言って微笑む。

「キミシカ様でしたら、先ほど配線業者の所へ。」
「配線業者・・?休暇中ではないところが合ったんですか?」
「良くは判りませんが・・、私はそのように聞いております。」
「・・・・そうですか。すいません、突然。」
「いいえ。あ、カマカブト様―」
女中は出ようとして、ふと何かを思い出したのか、カマカブトの下へ行く。

「・・?どうした?」
「これを旦那様からお預かりしております。」
渡されたのは一枚の書道の時に使うような紙だ。

「・・親爺殿から?」
「はい。皆様で御覧になられるようにと。」
「分かった。下がって良いぞ。」
「はい。」
パタン、と小気味いい音がして閉じられた襖の音を聞いてカマカブトは預かったものを見て、ウロコアンの方を見た。

「ウロコアン、」
「何でしょう?」
「食べ終わったら来い。多分”三練”の次の儀の事だろう。」
「あらまあ。お父様も夕餉時がお好きだ事。」
「・・・・良いのか?」
「そんなに怖い顔なさらないで下さいな。畏まりまして。」
ウロコアンのそれを聞いて、カマカブトは食事を再開する。

―じじじっ、 やはり配線が不味いのか、明かりがそんな音を立てる。

「でもまあ弱ったな。」
隣りを見ればトビシマがちろり、と視線をくれる。
「弱った、とは?」
「そのままですよ、先生。次の儀を親爺殿は”力の儀”と言っていた。」
「ええ。」
「弱りました。」
「えぇ?」
リガキは自分でも情けない声を出していると思う。それを聞いたトビシマはくつくつと笑い説明し始める。

「”力”と露骨な言葉も入っていますし、これは”力”を要求されていると俺は見ているんですが。そんな”力勝負”をする猛者はここにはいませんよ。」
リガキはそう言われて、はたと止まった。そういえばそうだ。何しろ、オツシロは女性であるし、カズアツはお世辞にも力勝負が出来るようには見えない。

「父さん。」
ウタゲが話しを聞いていたのか、少し咎めるようにトビシマを見た。トビシマは息子の言葉に肩を大業に竦めて見せてリガキに尋ねる。

「先生腕っ節はどうです?」
「・・・はあ、あるとはいえないような、」
「ふむ。かくいう俺もありません。本気で危なくなったら助けに入る、という選択でも設けておこうかと思ったんですが・・。」
「ああ、なるほど。けれどそれは儀を邪魔したという事になりませんか?」
「なりますけども、命にはかえようがありません。」
「いざと、なったらですね。」
「はい。」

食事を終えてウロコアンがカマカブトの下に行くとカマカブトは紙を開いて読み出す。

―じじっ、 明かりが特有の電気音を奏でる。

「―本日午後二〇:○○丁度に”力の儀”を開始するものとす。儀に挑戦するものは、”一度でも攻撃を放ったもの”。ここでの札の上限は”逃げる”以外なら全て良し。以上、ミツヨシ―。・・・・八時?おい、今何時だ?」

―じじじじじ、白熱灯が連続的な音を立て始める。

ミネガマが長袖の腕時計を見て呟く。

「丁度八時になったところみたいです。」

―じ、 

光が消えた。

Re;Entirely in the case of a festival of the regret.
DATE: 2010/07/25(日)   CATEGORY: 店主の宝物庫
心配しがりの泣き言。
―あちらにもこちらにも不安が撒いてあって私は何処を歩めばよいのでしょう。

「”力の儀”って一体何をするのかしら?」
「さあね。分からないけど、オツシロ姉さんか俺のどっちかでやらなきゃ成らない、それは決まってる事だよ。」
「・・そうね。」
オツシロは眉間に皺を寄せながらお茶を啜って言うカズアツに頷いた。カズアツは話が終わったのを確認すると立ち上がってふらりと何処かへ行く。相変わらず人を寄せ付けたがらない子だとオツシロは思う。

”考の儀”をウタゲがやってくれた事でオツシロはカズアツへの負担の重さやらは軽くなった。人の気持ちを鋭く分かる彼だからこそ、真っ先に名乗り上げてくれたのだろうと思う。自分は真正面から考えすぎて余計物事をこんがらがらせてしまうし、カズアツは少し神経質だった。

「―”力の、儀”」
オツシロは呟いて障子向こうで落ちる楓の葉を侘しいと思い目を伏せた。


「どうですか?」
「・・、鼠に荒らされているようですが配線は生きているみたいなので大丈夫でしょう。」
梯子から降りながらリガキはキミシカに伝えると、キミシカはタオルを渡してきた。リガキはそれを受け取って顔を拭く。埃っぽかったのだ。

「道理で昨日ガタガタと五月蝿かったのか。」
ずり下がっていた眼鏡を押し上げて戻したカマカブトは電灯のスイッチを消しながら言う。
「そんな音してたか?」
寝癖のような頭に手をやり、不満げな兄を見遣るトビシマにカマカブトは呆れた表情をした。

「お前は下戸の癖に焼酎を飲んでぐうすか寝てたから気付かなかったんだ。」
「俺は水だと聞いて女中から貰ったんだ。というか、鼠が住み着くとはこの家も古くなった証と言う訳か。」
「馬鹿言え。猫でも飼えば鼠取にでも良いんだが・・、鯉を食っちまいそうだな。」
「親爺殿に大目玉を食らうぜ、兄貴。」
「はあ・・・・、配線の方は修理業者にでも頼んだ方が良いな。」
「直ぐに来られるでしょうか?」
キミシカは困った顔をしながら言う。

「世間じゃ祝日だし、修理業者も休みじゃないか?」
「多分そうだと思います。」
「直るのには結構日がまたぎそうだな・・・・。一応このままでも持つんですよね?」
「大元は未だやられてませんから、一時的な停電は起こるかもしれませんが。」
「鼠捕りでも仕掛けておくか・・。何処にあったっか・・」
「あ、トビシマ様ご案内します。」
パタパタ、と遠ざかっていくトビシマとキミシカを見送りながら居間へカマカブトと戻る。

「それにしても客人だというのに、あんな真似をさせてしまって申し訳ない。」
「いえ、構いませんよ。退屈していた所でしたし。」
屋敷の中を放浪していると、梯子に登って屋根裏を見るトビシマとそれを見守るカマカブトとキミシカにあったのだ。

「暇を潰せるような物が何もありませんからね、この家は。」
「そうなんですか?」
カマカブトは苦虫を食べたような表情をしながら続ける。

「ええ。昔から”家族と楽しめる”ような物は何もありませんでした。そこだけは変わっていない。ウタゲが暇を潰すのが得意ではない、と言っているのを聞いたことがありますがあれはウタゲが悪いんじゃない。ここには本当に”何も無い”だけです。」
「・・・皆さん小さい頃は一緒に遊ばれたりとかは?」
「無いですね。今思えば、昔から意見が被るなんて事がほとんど無い兄妹でしたし。」
居間の障子は僅かに開いていて、オツシロがこくりこくりと船をこいでいた。

そんな様子を見てカマカブトは少し溜息を吐いて言う。
「我が娘ながら羨ましい性格をしています。」
「?それはどういう?」
「・・、俺はミツヤの長男ですからね。トビシマやウロコアンに馬鹿な真似だけはさせないように自分が手本となって真っ直ぐ生きてやろうと思いました。」
「手本。」
「母がウロコアンが小さい時に亡くなってしまって、あいつらに色んな事を教える人間がいなかったんです。だから、何事にも正しい様に生きてきましたが。」
親の心子知らず、というように、兄の心を弟や妹は知らずといったところだろうか。

「トビシマが家出をした時にも大層肝を冷やしたものです。生きて帰ってきただけ未だ良いですが。」
そばにあった座布団を二つに折ってカマカブトはオツシロの頭をそこに寝せた。

「では、カマカブトさんはトビシマさんがお嫌いですか?」
リガキがそういうと、カマカブトはふっと苦笑した。

「それがままならないのが兄妹なのです、リガキ先生。嫌いになろうと思っても、あいつ等のいいところが分かっていて、嫌いに慣れないし、俺のように真っ直ぐがむしゃらに正しいように生きようとする奴からすればあいつらの生き方ほど羨む物もありません。」
「失礼な事を聞いてすみません。」
「いえ。お相子ですよ。」

―ああ、恐ろしい顔をした鬼婆が追っ掛けてくる。

Re;I fall into the dark of the monologue.
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