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DATE: 2009/03/31(火)   CATEGORY: 店主の宝物庫
エレベーターガール。
紙に書いたメモを見ながら歩いてデパートの内図を見ると、電化製品の階は階段で行くのは骨が折れそうだったので、運良く来たエレベーターに乗り込んだ。

そして階のボタンを押そうとすると、すっと横から伸びてきた手に止められてしまった。

「お客様、ボタン押しは私めにお任せくださいませ―」
そう云った主の姿はまるで昭和辺りに居たエレベーターガールそのものだった。

「・・お客様?」
「あっ、えと・・電化製品の階へお願いします」

「では、上へ参ります―」
透き通った声がエレベーターの中で反響した。

「あの、何時になったら着くんですか?」
「もうしばらくで御座います、」
そう彼女が言うと、階のボタンに明かりが点き到着した。

「6階悲しみ売り場で御座います―」
一瞬彼女が何を言ったのか分からず、振り返ったが其処にはエレベーターの姿が無かった。

「・・?何ここ・・・「悲しみ売り場は悲しみ売り場だよ、」」
声の下方向を見ると、にこりとわらう小さな女の子が居た。

「・・ここはデパートでしょ?」
「違うよ、ここは悲しみ売り場。エレベーターでそう云われたでしょう?」
「・・そうだとしても、私はこんな所に用事無いわ。さっさと戻して」
そう言うと女の子は首をかしげて言う。

「だってお姉ちゃん一昨日お父さん死んじゃったんだよね?」 私は唖然とした。

「お姉ちゃん勝手に外国に行くって決めちゃったからお父さんと喧嘩しちゃったけど出国前に謝って行こうと思った日にお父さん居なくなっちゃったから。ずっと後悔してたんだよね。何で素直に謝れなかったんだろうって。」

「・・・、何なのここ」 
「悲しみ売り場だよ。色んな人の悲しみが売られている売り場。」

「―ここの悲しみがどうして売られていると思う?」
分からなくて首をかしげると女の子はにこり、と微笑んだ。

「いつか悲しみを売った人が向き合う為にあるんだよ。それからどう進むかはその人次第だけどお姉ちゃんはどうしたい?」

チンッと、エレベーターの音がした。

「4階電化製品売り場で御座います、どうぞお下りの際はお気をつけて」

「・・・あの、すいません・・お花屋さんって何階ですか?」 そう聞くと、にこりと笑って

「1階で御座いますが・・下へ参りますか?」
「はい、お願いします」

悲しみをもって、謝りに行こうと私は思った。

Re:
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DATE: 2009/03/29(日)   CATEGORY: 店主の宝物庫
宿木の言ったこと。
―さようなら。それを言えたらもう悔いはきっと無いのです。

とて、と来た時とまるで反対の物静かな音に気付いてみると縁側に筑紫さんが座っていた。

その顔が余りにも真剣すぎるもので、私は声をかけていいものか悩んだ。

すると、視線に気付いてか筑紫さんが「ああ、光也じゃないか」といった。

おいでおいで、と手招きをされて私は猫じゃありませんというとそれもそうだ。と控えめにわらう。

「何だかいらっしゃった時よりも元気がなくなられているのでは・・?」
首を傾げながらもそう尋ねると、困ったように笑い

「まあ・・色々とな。・・ああ、今美里の所には行かないでやってくれないか?」

「・・・兄さんのところへ?どうして?」
「色々と」
「私は妹なのに、聞かせてもらえないんですか」
若干怒りながら言うと、筑紫さんはやや真剣みた顔をする。

「今は美里が美里の整理をつけている所なんだ。だから、誰かが美里の整理を手伝ってはいけない時なんだ」

「・・・・・私は何も兄さんにしてあげられないんですか」
そういうと、いつものように彼は笑いポンッと私の頭の上に手を置いた。

「誰かの為に何かしてやろうと思う事は、とても大切だ。その気持ちは忘れちゃいけない。けど、だ。誰かが一人でやらなければいけないような事。それが今の美里なんだ。だから、光也は・・・うーん」

「考えてから発言してみては如何です?」
「これでも一応考えては居るんだが」

「全く見えません」
「手痛いな・・、まあそのままの光也で居てやる事が美里にとっては一番の薬だ。」

「言っている事がま逆な気がするんですが・・」
「いいや違わないぞ?美里はな、多分私や夏雪には本音など言う事などこれから付き合っていっても無いだろう。」

「・・・どうしてそう言いきれるんですか?」
「あいつが、優しいからだ。優しいから人を傷つけないようにする。」

その言葉に少し驚いた。この人は、一体何処まで分かっているんだろうと。

「美里は美里であり続けるためには、光也やおじさんや叔母さんが居ていつものように過ごす事が大事なんだ。私は本当に家族というのは偉大だと常々思うんだ、光也」

「・・・それが私に出来る事なんですね」
「まあ、私が思う中でだが・・別のが浮かんだならやってみるといい」

「・・分かりました、ええと・・晩ご飯食べていかれますか?」
母がそう聞いていらっしゃいといったのを思い出して尋ねる。

「おお、ご相伴になって良いのか?なら、預かろう!!」

るんるんと言った感じで筑紫さんはいつものように豪快に笑った。

Re:his mind not read ((←彼の心は読めやしない。

今日のOPってあれ・・ケイミーを救え!じゃなかったの・・?東京マラソンで色々変わったのかな・・。

ていうか、来週の放送欄見たら、救えの続きで・・・あれ??なにこれ。

えっ、来週ガチで救え!・・なのか・・?救え!は何かキラーがかすかに喋りそうな気配が。

お粗末!!
DATE: 2009/03/28(土)   CATEGORY: 店主の宝物庫
モノトーン・ヴォイス
―何時からだったのでしょう。

その美しい世界が、白と黒のたったの二色でしか彩られなくなってしまったのは。

目の前に移る貴方の言葉さえもが、白と、黒にしか、ならないなんて。


「・・・で、筑紫先輩今日は何の用事だったんですか?」
美里は机を挟んで向かい側に座る自分の2つ上の先輩に尋ねる。

「おお、そうだったな。実はこの前お前何だったか・・事件に巻き込まれただろう?」
少し躊躇いがちという具合に先輩は言う。

「・・・まあ、色々ありまして」
先輩の顔から目をそむけるように言うと、うーんと頭の後ろを手で抑えながら先輩は続ける。

「その口ぶりからするに立ち直れて居ないんだろう?」
視線を泳がせながらも先輩を見れば、何時もの如く真っ直ぐな目をしていた。

「・・・お見通しですか」
「今のお前を見れば、誰だってそう云うさ。分からないのは、ハナからお前に興味が無いか、それともあえて気付かないようにしているかだ。」

その言葉で、彼女の言葉がふと思い出されまた自己嫌悪に駆られ俯く。

「俺は当事者じゃないからなあ、お前の気持ちは察する云々な事は言えやしないが。」

やっと頭を上げ先輩を見ると、何時もの明るそうな雰囲気は捨てられ哀しそうに言う。

「前を向け、美里。其処に居てばかりいてはお前が食われ損だ。」

「・・相手が大事だと分かっていてもですか」

「ああ、俺はさっき言ったように当事者じゃない。だから、お前の気持ちも察してやれないし何を考えているのかも、あいつをどう思っていたのかも分からない。だがなもう幕は閉じたんだよ、閉じたのに其処にお前一人きりがずっと立ちっぱなしになっていても、幕が又上がる事はない。」

「再演でも願わない限り、無いんだ。そんな事」

トスリッ、と俺の井戸に石が投げ落とされた。石ころだ。石ころという名の、言葉だと思った。

しくり、と涙が出ていた。

「お前は歩かなければいけないんだ、其処じゃない何処かに。其処とは違う幕が上がる場所へ」

静かに泣きながらも頷けば「すまんな」と先輩は言う。「何がですか」と尋ねれば

「本当は言おうかどうか迷っていたんだが・・・先ほどお前の部屋を通りかかった時になんだったかあの・・」
「橙色ですか」

「そうそう橙色の目が何か言いたそうだったんだ。お前に一声かけてやれれば良いのにとでも思っているのではないかと思って言う事にした。」

「・・そう、なんですか。」

彼の言葉が思い出される。
『旦那哀しい時は空を御覧になられて下さい。朝の時には青い空が夕刻に近づくにつれて日が沈む時には、手前の色が旦那には見られるはずで御座います。』

『手前は、色が違おうとも空に居ます。ですから、空を見上げてください―』

空を見上げれば、あれの色が空に広がっていた。

Re:the sky coverd with orange.
DATE: 2009/03/27(金)   CATEGORY: 店主の宝物庫
語り手の苦悩。
―何も言いません、私には多く語れる事などないのですから。

カウンター席から榎本は今度出る新刊の小説に思いを馳せていた。

悩んでいてもカウンターに人が来ないのはここの図書館の造りのせいで迷子になっているか、ただ訪れただけなのだろう。おそらく前者が大半だろうが。

長年働いている司書でさえたまに迷うほどだ。
そう思っていると、図書館の間取図を見て手元の紙を見て首を傾げている女性と子供が居た。

探し物が見つからないんだろうな、と思いかけて声をかける。
「あのお探しでしたらご案内いたしますよ?」

振り返った女性は、何処か―あの不思議な女性と似ていた。
「あら、助かります。間取図を見ているんだけれどサッパリ分からなくて・・困ったねえ?」
「困ったねえ」
子供が彼女の言葉を鸚鵡返しに言う。

そのやりとりが面白くて微笑すると「お願いします」と言われ紙を渡される。

紙に書いてあったタイトルを見て思わず彼は驚いた。あの女性の作品だったからだ。
いや、何も驚く事はないか。有名になったし。と、思う。

「これはこの前出たばかりですから、新刊のブースにあるんですよ」
「そうなの?でもそういえば売り出されたのは最近だったかしら」
「そうなんです、結構面白かったですよ」
そう言うと、女性はぱあっと顔を輝かせながら

「貴方この作家さんの作品好きなの?」 
「作品がとても面白いですし―、何より・・惹き付けられますし」
うんうん、と愉しそうに頷く女性はやはり何処かあの女性に似ている。

聞いてもいいが初対面でこれこれこういう人の家族ですか、というのはあまりにも不躾な気がする。
すると子供が愉しそうに女性に話し掛ける。

「おばちゃんのほんすき」
ぴたり、と新刊ブースの一歩手前でとまり燃料切れの機械のようにギギッと動いた。

「あの・・今何と?」
「ん?ああ、これを書いたの私の姉さんなの。ね?」 「うん!」

「・・・やっぱりご家族の方でしたか」

「ふふ分かちゃった?・・・あれていうか会った事在るの?」
「欲を言うなら会社の方にもお会いしたことがあります」

「そうなの?あ新刊。本当は買いたかったんだけど、本屋さんに行ったら売り切れだって言われちゃって、図書館なら何冊か確保してそうだから来て見たの」

「そうですか・・よかったです」
「・・うーん?」

「どうかしたましたか?」
「何だか姉さんが、読めないって言うのも少し分かる気がするわ」
にこり、と女性は微笑んで次は絵本ね、と子供に言う。

「それじゃあ、さようなら」 

女性は手を振りながら別れを告げた。呆気に取られた僕を残して。

Re:the woman remind me of that shock
DATE: 2009/03/26(木)   CATEGORY: 店主の宝物庫
Monochrome voice
―誰かが言いました。ほら、あそこに竜が居る。

―誰かが言いました。ほら、あそこに虎が居る。

―誰かが言いました。なら、両方喰ろうてやろうと。

旦那のご友人の中に大学の先輩で、筑紫という先輩がいらっしゃいます。

出会いは、旦那が大学ご入学当時にご助言を頂いた事からだそうで。

そんな出会いから早一年が過ぎましたが仲良くやらせて頂いてもらっていることを見るに、どうやら旦那と筑紫様は気が合ったようで御座います。

時々こちらにお伺いになられることもあり、手前も拝見する事が出来ました。

初めて筑紫様を見た時、彼には不思議と夏雪様のようにばれるのではないかという危機感よりも、既にバレているという諦めの色のほうが強かったのを覚えています。

ですが筑紫様は「綺麗な金魚だな!」といい手前を褒めて下さり一切何も触れなかったので、もしかすると手前の勘違いなのかもしれません。

そんな事を澄んだ水の中から思っていると、どたどたという音が聞こえました。

「居間で待っていてくださいと言ったじゃないですか筑紫さん!」
光也お嬢様の必死な声が続いて聞こえ。

「お・・、そうだったな!すまんすまん、ところで何処が居間だったけか?」
そこで、筑紫様が来ていると言う事が手前はわかったので御座いますが。

「だからあれほど、言いましたのに・・・・・」
「ごめんなさい?」

「悪いと思っているなら、疑問符をつけないで下さい!!」
「すみません」

「もう良いです!居間はこちらですから、さっきみたいに勝手に動かれないで下さい!」
引率の先生か何かを思わせるお嬢様の口ぶりに思わず笑ってしまった。

「・・まるで小学校か何処かの先生のようだなあ」

「何か仰いましたか?!」
「ごめんなさい」

それっきり声は聞こえなかったので御座いますが、旦那が帰ってくると又お嬢様と筑紫様の会話がここにまで聞こえて参りました。

Re:rain world
DATE: 2009/03/24(火)   CATEGORY: 店主の宝物庫
彼の悪夢が終わった日。
―終わらせた事、終わらせてしまった事、貴方はまだ後悔していますか?

屋敷には様々な種類の花々の庭園もある。

そしてそこに居たのはメルカトルと、元盗賊の貴族人ロゼリアだった。

「で、ロゼリア赴きは一体何だい?」
羽飾りをつけた髪に、綺麗な花々と魚の骨の刺さったブーケを持ったメルカトルは言う。

「ちょっとした興味本位でな。フィアグレンデの一件はお前が原因だろう?爺どもには上手くいってたが、完璧お前が何か引き金をおろしたんだろ」
乱暴に椅子に座ってロゼリアはメルカトルに言う。

「情報が速いのは貴族人のさがかな?」
「はっ!かなり今さらの話だな。そこら辺適当に歩いてりゃそういう話は小耳に挟むんだよ。」

「ふふっ、じゃあいいや。答えてあげよう、半分正解で半分はずれ」
「・・曖昧な答えだな、どの部分が正解かも言えよ」

「僕が、原因って辺りがはずれだね。正しくは、貴族人、がだ」
そう聞くや否やロゼリアは渋い顔をして、半ばメルカトルをにらみつけた。

「本当なのか、その話?」
「驚く事はないよ。けど・・やっぱりギルディズは連れて行かなかった方が良かったかもしれない」

「珍しい、後悔か。つららでも降るんじゃないか?」
「後悔か、確かに市長とギルディズはほぼ似た存在だった。似ていない所といえば、復讐に身をささげきったか否かだし」

「・・ある意味あの処刑人や貴族人に恨みを持つものにとってお前は出会ったほうが良いのか、出会わなかったほうが良いのか分からない存在だな」

「褒め言葉として受け取っておくよ、ロゼリア。でもまあ、僕もギルディズとであった事は少し後悔しているけどね」

「どうしてだ?」 心底分からないという顔でロゼリアは尋ねた。

「同じだからさ、けれど僕らが違うのは彼らが1で僕が0だって事だよ。・・こんなに辛い事はないよ」

ざあと庭園に風が吹いた、するとコツコツと庭園の石畳を踏む音がしてその音の先を見ると処刑人が歩いていた。

そして、こちらを見るや否やありえないものを見たといわんばかしの表情をした。

「おい待て、処刑人。それは俺に対して失礼だ」
「あえて僕も入っていない理由を聞こうか、ロゼリア?」

「五月蝿い、貴族人ども。」
かの処刑人は、そう切り捨てた。誰も、彼の底にはまだ気付いては居ない。

Re:his nightmare end day
DATE: 2009/03/23(月)   CATEGORY: 店主の宝物庫
愛していた世界。
其処から見える景色は細長い塔に余す所無くベタベタと広告用紙が惨めに張られている姿だった。
そんな姿を飽きもせず毎日見ている彼は余程の暇人かあるいは―

コンッと短いノック音がして入れ、というとなじみの顔が入ってきた。

「どうした、サオイ。実務担当のお前が居るだなんて珍しい」

「茶化さないで下さい、社長。それよりも瑪瑙がフラフラとどこかを歩いているみたいで業務の方が荒れているんです。あれをどうにか連れ戻してください」
サオイと呼ばれた人は淡々とした調子で言ったが社長と言われた人は微笑んだ。

「瑪瑙か・・そういや一昨日から見ないなあ。業務担当だってのに行動力は実務よりもあるからな、方向音痴さえ抜ければ実務でもいいのに」

「・・・社長、瑪瑙を連れ戻してくれと言いに来たんですが?」
少し怒っているような調子でいうので、社長は笑いながら胸の前に両手を突き出し。

「まあ、待てよサオイ。瑪瑙のことだ・・どっかで独唱するみたいに、嵐を巻き起こしてるんだろう。1人くらい犠牲になったら帰ってくるさ。」
あっけらかんと言った、社長を尻目に瑪瑙の犠牲になっている人物に心の中で合掌した。

「犠牲が出るまで業務はどうなさるんですか?」

「あー・・そうだなあ、黒曜石は・・っと休暇出してるから無理だし・・実務班でやっとけ」

「何が、やっとけですか。実務班は実務のみですよ。わざわざ業務と実務が分かれてるのは、そういう為でしょう・・さっさと瑪瑙を、連れ戻してくださらないと職務放棄をします」
あくまで淡々と冷静にいうサオイに社長は、はあとため息をついた。

「サオイ、おまえのそういう冷静さは中々いいもんだ。だが、偶には慌てたりとか人間っぽい動きをしてみろって。何か飽きてくる」

「毎日あんなにベタベタと広告を張られて概観を無くした塔を見ている人に言われたくない言葉です」

「おーい、上司は敬えー」
「上司だと、思っていればの話ですよ。それは。」

「あー・・・上司になれる本とか誰か書けばいいのにな。売れそうだ」

「無いものねだりです。というか社長話をそらすのもいい加減「たっだいまー!!」に・・?」

「おう、お帰り瑪瑙」
「いやー、英雄さんに送ってもらっちゃいました。これお土産です。英雄饅頭。中々いけます。あれ、サオイ。久しぶりだねえ」
独唱をするように、割り込んできた女は喋った。

「瑪瑙、業務が荒れているからさっさと仕事に行ってくれ」

「えっ、そうなの?!じゃあ社長さよなら」 「おう、土産有難うな」 パタンッ。

「心配しなくても物事案外楽に進んでくれるもんだな、なサオイ」
そう言うと、英雄饅頭をサオイに投げ序でに資料を渡すと、サオイはそれで理解したらしく部屋を出て行った。

「お前のことも・・・楽に進めばいいのになあ、世の中何時からこんなに世知辛くなったもんだか」
少年と青年が写る写真を見て、饅頭をがぶりと頬ばった。

Re;hero's story changed smile boss's story
DATE: 2009/03/22(日)   CATEGORY: 店主の宝物庫
hero's story which talking by writer
『とある英雄の話。』

「英雄?ああ、アイツのことか?お嬢チャン、笑わせんなよアイツは英雄じゃない。臆病もんだ。」

「英雄?居ないわよ。祭り上げられているのは居るけど、彼はそんな人じゃないわ」

「英雄?それって何?」


「英雄はどうやら臆病者で、祭り上げられていて、英雄なのに英雄とも思われていない・・なんて悲しい英雄さんなんでしょう!」
彼女は一人独唱した。オペラでもするかのように手を高く太陽でも掴むかのように。

「ああ、でもそんなヘッピリ腰の英雄さんでもあってみたいです・・!」
何処に居るんでしょう・・!と高らかに言う彼女は、空を見上げる。

そして、また道に目を移すと人が居た。びくびくしている。

「・・・・はて、どこかでイメージどおりのようなお方ですね」
そう言うと、自分の事かも分からないのにその人はびくっ!として情けない表情をした。

「もしかしてのもしかして、でお尋ねしますが英雄さんだったりしますか?」
そういうと、目の前に居る人は申し訳なさそうに、はい、と答えた。

「おお・・冴えてます!私冴えています!見てますか社長私今日一番冴えてます!!」
元気すぎるほど彼女は言った。英雄は、そこから速く立ち去ろうとそろそろと迂回しようとした。

「ああ待って下さい、英雄さん!一寸お尋ねしたいこととかあるんです!」
「・・なんでしょうか・・」 
弱弱しく言う、英雄に彼女は独唱した。

「やめたいならやめればよろしいんじゃないでしょうか?」 

「えっ・・・」 度肝を抜かれたとも言っていい。

「だって、そうじゃないですか。村の方々も英雄を尋ねれば口をそろえて、あなたの事を馬鹿にされます。なら、その英雄という想像を捨ててしまえば、あなたがそんなにびくびく、ぶるぶるして過ごされる事もないと、私は思うんですよ」
そう言って、彼女は独唱を終え何処からか水筒を出して中の飲み物を飲んだ。

英雄はポカンとしていた。
「僕は・・・英雄です・・・「それは本当ですか?」・・・・・え」

「貴方は、英雄になりたい英雄さんなんです。英雄になりたいなら、世界を救うだとか、大きな敵を待ち構えるよりも、まず貴方ができることから始めるのが得策ではないかと。
時には、悪が善の場合もあるし善が悪の場合だってあるんです。なら、誓っちゃいなさい。

自分はどんな事があろうとも善悪関わらず英雄だと。それこそ、英雄です」
彼女は独唱し終えると、疲れましたね、お茶でも如何です?とお茶を勧めた。

「・・・・何者なんですか、貴方」 英雄はぽつりと聞いた。

「唯の通りすがりの、新聞社の業務担当です!」
そう答えた後、英雄は久しぶりに笑った。可笑しいな、と。

Re:hero of god
DATE: 2009/03/21(土)   CATEGORY: 店主の宝物庫
剛毅故に。
赤紫の長髪に、腰にはレイピアを吊り上げたギルディズは新聞を片手に椅子に座っていた。

大きな見出しとして書いてあるモノは、フィアグレンデが元の温暖な気候に戻ったという事だった。

そして、市長室でガス爆発が起こりヴァーミリオン・ビネガー市長とその秘書であるクォイドの亡骸が見つかったとの事。彼らが死んでいた理由は分からない、と書いてあった。

ギルディズは、そこまで読んで続きが読めなくなった。

同じ境遇の人間の末路。貴族人に大事な者を奪われ、復讐という名の怒りに身を捧げた人。

ギルディズは、自分もこうなるはずだったのだろうとぼんやりと思った。

あの時【黒の庭】から復讐に身を駆られ【白の庭】の貴族人たちの屋敷の一つに乗り込んで、

其処に居た、変わった貴族人に出会ったのがあのときの俺の末路だったのかと。

そこから、ずっとずっとギルディズは貴族人が憎いという気持ちは何処かにあると思っていた。

だがフィアグレンデの件ではっきりした。

あのとき身が焦がれるような復讐心が何処かに消えてしまった事を。
そして、消えた理由も。

「そんなの・・・・あってたまるかよ・・」

消えた理由は、あの時メルカトルの言った言葉に納得してしまったからだ。

ヴァーミリオンもあのメルカトルの言葉に納得してしまったから、『真冬世界』を終わらせた。

じゃあ、復讐者を其処まで宥めつかせるメルカトルは一体なんなんだ。

何年か住んで自分は色々変わったが、何一つメルカトルは変わらなかった。何も。

「なんなんだよ・・・・・あの大馬鹿貴族人は」

Re:arcanum  ((←アルカナ。ラテン語で、神秘と秘密。
DATE: 2009/03/20(金)   CATEGORY: 店主の宝物庫
節制された未来。
―誰かが誰かの幸せを奪った後、そこに残るのは果たして本当に不幸だろうか。

パタリッ、と崩れ落ちたヴァーミリオンは一言も喋らなくなった。

トンッ、と軽い音がした方向を見るとクォイドが壁にもたれかかっていた。悲壮そうな顔で。

「・・・どう、して、・・」 ポツリと呟いた先には彼の亡骸。

コツン、とメルカトルが小さく足音を残しながらクォイドのもとへと歩く。

「君は、この『世界』の住人になるかい?それとも―」
それは、フィアグレンデを永久に冬に閉ざされた物にするか、ということなのだろう。

クォイドは復讐の炎を目に灯しながらも、メルカトルを見た。

「―そんな事決まっています。けれど、貴方たちには関係の無いことです」
そう云ったクォイドに何を感じたのか、メルカトルはくるりと回転しギルディズの元へと歩んだ。

そして、ギルディズの腕を引っ張り肩を貸すような状態にして外へ出ようとする。

「おい、メルカトル何をしているんだあれを壊さなくていいのか!?」
「いいよ、もう。後は彼の問題のようだからね」
そうメルカトルが言ったのを最後にギルディズは口を閉じようとしたがコートの中からあの、水晶玉を取り出しクォイドに見向いた。

「市長から貰ったんだがお前のところにある方が、きっとこれを作った人は喜ぶ」
そう言って、水晶玉を投げるとクォイドは綺麗にキャッチした。

しばし水晶玉を見つめ、ありがとうございます。と言うのを聞いて二人は去った。

機械の騒音だけが五月蝿い部屋に、横たわって喋らない人と思いつめた表情の人だけが残った。

「・・・姉さん・・僕は間違えばかり・・してしまいました」
手の中の水晶玉を見ながらそう喋る。

「おまけに・・姉さんの大切な人まで・・・僕は奪ってしまった・・・、僕は・・」
水晶玉をヴァーミリオンのそばに置きクォイドは騒音を立てる機械に銃口を向け、発砲した。

特にどの部分と決めて狙った訳ではないのでいたるところに穴が開きすると、ドンッと爆発音がした。
燃料タンクにでも、あったのだろう。とクォイドは冷静に判断した。

真冬世界を終わらせようと、思った。もう、誰もこの哀しいまでに寒い世界には居たくないだろう。

例え、姉さんだって。

充分に続けれた、義兄さんも姉さんの為にこの世界を作った。それでもう、充分。

「ごめんなさい・・・姉さん・・・・義兄さん・・・」

それが、真冬世界を作った者の弟の最後の言葉だった。

Re:end of diwinter world ((←真冬世界の終わり。
DATE: 2009/03/19(木)   CATEGORY: 店主の宝物庫
荒れ狂った戦車。
―雪の上には何も残らない。かといって、私の手にも何か残った覚えはない。

ズボンには撃たれた所から赤い模様が出来始め、どんどん痛みが増していく感覚をギルディズは覚えた。そして撃った主を見れば市長に負けず劣らずの生気の無い表情をした秘書―クォイドが居た。

「クォイド・・・・逃げろといったのに」
と、市長が言うとクォイドは無感動な目をしギルディズを撃った銃を彼に向けた。

「そんな戯言誰が聞くと思っているんです?」
丁寧な口調でクォイドはヴァーミリオンに対する拒絶の意を告げた。

そんな会話の中メルカトルがギルディズの側へより「大丈夫かい?」と聞く。
「大丈夫なら、立っている」 「それも、そうだね」
そして目線を市長と、秘書に向けた。

「・・クォイド、」 何かを訴えかけるかのようにヴァーミリオンは彼の名を呼んだ。

「あなたに指図される謂れはありません。姉さんを守りきれなかった人の言葉など」
吐き捨てるかのように言った言葉に、ギルディズは破顔した。

「ね・・えさん?」 その言葉に答えるかのようにクォイドは言う。

「この『真冬』計画の発案者であるラズリは僕の姉です。そして、こちらの方は僕の義兄ということになりますが―あの時から僕はあなたを義兄だとは思っていません」
その言葉に、ヴァーミリオンはつらそうな表情をした。

「あなたは姉さんを守る事すら出来ず死なせてしまった・・だからこそ、僕は貴方を撃つ」

「だが、僕は貴族人はもっと許せない」 無防備なメルカトルへとその照準は向けられ

「―姉さんは、お前たちみたいなのが居なければ・・・生きていたのに!!」
ぱんっ、と呆気ない音がした。
何時も思っていた、この音は誰かの命を奪うには余りにも呆気ない音だ。

「―メルカトルっ!!」
玉を弾こうとして、起き上がろうとしたが足の怪我で立ち上がることさえ出来なかった。だが、いくら時間がたってもメルカトルは倒れもしなかった。

メルカトルの前を見るとヴァーミリオンがメルカトルを庇うかのように立っていた。

「・・・・どうして君が、僕を、助けるんだい?」 メルカトルが目の前の男に聞く。

「・・きま、っている・・ラズリの・・彼女の弟に、人殺しなんて・・させたい訳、無いだろう」
ずるり、とヴァーミリオン・ビネガーは落ちた。

「何で、助けるんだ!そいつは・・姉さんを殺したやつ等と同じやつらなんだ!」
「・・・彼がラズリを殺した、貴族人という者であるのは・・分かっているよ。」
「なら、なんで!」

「・・けれど、先ほど彼が言った言葉を私は少しだけ分かった気がするんだ・・。確かに彼は貴族人という枠組みの括りなのかも・・しれない、けれど・・ラズリを殺した者では・・無いんだ、クォイド」
その言葉に、クォイドは表情を無くした。

「そんなの傲慢だ・・・自分の身を守るためのエゴじゃないか!」
「それは、私たちも同じだよ・・クォイド。私たちは・・ラズリをあの冬の日死なせてしまったという罪から逃れたかったんだ・・だから復讐ということで・・あの冬を忘れたかった」

ごほっ、とせき込むと血が彼の手にはべっとりとついていた。それを見て彼は。

「最後・・のようだ・・クォイド、お前には・・すまない事をさせてしまった・・私が、ラズリをなくした悲しみが・・あまりにも捩れたせいで・・こんなことに巻き込んで、しまって・・もっと別な方法で彼女を・・弔える事も・・出来たかもしれないのに・・」

「死ぬんですか・・・、そんなの卑怯ですよ」
クォイドは目の前の今にも終わりそうな男に尋ねる。

「卑怯・・そうなのかもしれない、ならクォイドそんな卑怯な男の最後の戯言を聞いてくれないか」

「・・・お前は、幸せになりなさい。彼女の分も、幸せに、なりなさい」

今まで黙っていた、メルカトルがうっすらと口を開いた。
「君も、彼女の『世界』に囚われた人だったんだね」
そう言うと、ヴァーミリオンはうっすらと笑い。

「嗚呼―、終わってしまうのか『真冬世界』・・・・・・」
そう最後に呟いた。

Re:Certain man's lover.  ((←とある男の恋人。
DATE: 2009/03/18(水)   CATEGORY: 店主の宝物庫
世界と会った。
―世界は、大きくて、小さくて、広くて、狭くて―会ったんだ。

「さて、始めようか―『真冬』世界を終わらせる為に、」
何処か緊張感の無い声が機械の騒音にも負けず響き、彼の手に握られていた何種類の花と魚の骨の花束が、どろりと黒い塊として溶け、落とし穴のような物が出来た。

「―奇怪だな」と短く市長は答え、黒い落とし穴のような物を見た。

「ふふっ、僕は生憎力は無いからね、こういう方法で行かせて貰うよ。」
「そんな暇があるとでも?」
「やってみなくちゃ意外と世の中わからないこともあるものだよ、少なくとも今はね」

その会話が終わると同時にパンッと銃口から短い音が発せられメルカトルの下へと弾丸は吸い寄せられた。

が。どろっ、と落とし穴のような黒い塊がメルカトルの前に立ちふさがった。一見布のような薄さを思わせるが、どうも違ったらしい。

「ほう」 短く答えると、メルカトルはにこり、と笑う。
パンッパンッ―と弾丸が空になるまで打ち続けたが、メルカトルに当たる事は無かった。

「どうやら君にコレは無意味のようだね」
「そうでもないかもしれないよ?」
「・・・・・いいや、無意味だ」
「なんだ、バレちゃったのか。僕に大方の武器は意味をなさない。たとえ殴りに掛かっても僕は怪我一つ負わない。僕を怪我させる事は、不可能だよ」
自信を持って、メルカトルは答えるのに対しヴァーミリオンは持っている銃を下げた。

「・・・諦めちゃうのかい?まだ諦めるには早いと思うけどねえ」
「誰が、諦めると言ったかね。早とちりは危険だ」

そう言うと、パンッと天井を撃った。すると、バキッと音をたて天井の一部が崩れメルカトルに降りかかった。その瞬間黒い天蓋のようにメルカトルをそれから守った。

「ほう・・・それでも壊れないのか」
天蓋の外側が腕のように伸び、天井の一部を壊し瓦礫をどけた。

「でも、いきなりだったから驚いちゃったけどね。」
大して驚いていないという具合にメルカトルは言うと「で、こちらから来てもいいのかな?」という。

ずっ、と重く地面にのしかかった何かが高速で移動するような音がした。ずずずっ、と音を立ててそれが、ヴァーミリオンの足を、手を掴んだ。手から銃が落とされ銃を黒い影が掴みメルカトルの下へと持っていった。

「さて、こうして君の武器も奪われちゃった訳だけど・・・これでも続けるかい?君の世界を」
「・・・・。」
「―ギルディズ、」と処刑人の名前を呼びギルディズが機械を壊そうと踏み出した。

パンッ、 市長の奪われた銃とは別の銃の発砲音が響いた。

「痛っ!!」 ギルディズは転倒した。足に痛みを感じ見ると足から血が流れていた。

そして音の方向を見ると、其処には―無表情になった秘書、クォイドが銃を持ち立っていた。

Re:gun sound room
DATE: 2009/03/17(火)   CATEGORY: 店主の宝物庫
永劫の取り決め。
―それについては横暴だったとしか、言いようがない。

パンッ、と軽い音がし赤紫の長い髪が動きにあわせて揺れる。
パンッパンッ―軽い音は立て続けに鳴り休止をした。

「・・玉切れか、」
小さく呟く声は、先ほどあんなに声を張り上げて怒鳴っていた同じものだとは分かりにくい。ヴァーミリオン・ビネガーはその生気のない表情で自分の利き手に納まった黒い銃を見た。

「知っているかね、処刑人。どうしてこんな銃という野蛮な物が産まれたのか。」
その声の先には、頬に一筋の切り傷を作った処刑人―ギルディズが鋭い眼光をしていた。

「これは、人が人を恐れるが故に産まれた物だ。なら、私はこれで誰を狙うかも―」
分かるだろう?とその先の言葉は言わなかったが、瞬時に彼は動いた。優秀だ。

この状況のさなかでも、落ち着き払っている貴族人の前へ行き、キンッと剣で弾丸を払った。

「あんた・・ラズリさんが大切だったんなら、どうしてこの街を永久的な『真冬』に変えるんだ!そんな必要もうないんだろう!?なら―」
「言い訳がないだろう。」
「なっ―」 驚愕の表情だけがギルディズに浮かんだ。

「私はあの時確信したのだよ。彼女が愛した、あのときの街はもうここにはないのだと」
ギルディズのやりきれない表情を見て、市長は言葉を投掛ける。

「傲慢だ、と思うかい?では、君は君の大事な者を無くしたとき、こうは思わなかったか?」

「どんなに、自分の大切な物を奪ったやつ等に復讐できたら幸せかと。」
処刑人は哀しそうにうつむいた。そんな処刑人を見て取ってか、後ろに居たメルカトルがギルディズの前に立った。

「・・・なっ、メルカトル後ろに「いいよ、ギルディズ。君の方こそ下がっていなさい」」
メルカトルにいわれ俯き気味に下がるギルディズを見て市長は言う。

「君は彼のように戦えるのかね?」
「さあ、けれど・・・僕は少なくとも君の考えは傲慢だと思ったからね」
「・・変わっている、とは思ったがやはり貴族人は貴族人か」
そう吐き捨ててやると、メルカトルはくくくっと笑った。奇天烈なブーケを手に。

「ああ、昔のことを思い出すねえ―ギルディズ、君が突然僕の所にやって来たときも同じ事を僕は言った気がするよ。」
ギルディズはその言葉を聞いてメルカトルの笑い顔を見た。それを見て、メルカトルがヴァーミリオンに振り返る。

「僕が、ギルディズに教えたありがたい言葉を君にも教えてあげるよ。ヴァーミリオン・ビネガー。」

「僕は確かに貴族人だ。けれど、君が怨んでいいのは『貴族人』全体のくくりじゃない。【奪っていった奴】っていうくくりだ。」

「・・・・・・・君の考えの方が私には傲慢に見えるがね」

「なんとでも言うが良いよ、けれど僕はこんな世界に居るのは真っ平御免だね。何も変わっちゃくれない昔と同じままの景色を残しただけの、中身の無い虚像なんて。」

そう言うと、同時にメルカトルへと照準を合わせた市長はカチンッと勢いよく引き金を引いた。

Re:never changed view
DATE: 2009/03/14(土)   CATEGORY: 店主の宝物庫
正義に振り回された日。
―正義、正しい行いだとか、善行だとか、何か悪を戒める時に良く使われる言葉。

―けれど、誰かその言葉の真意を知っている人はどれくらい居るんだろう。

流行の音楽が小型のヘッドフォンから溢れる中、一人の青年は仕事場へと向かう。
右手首には黒の腕時計が、午前8時を告げていた。

「眠い・・ああ、無理して読みすぎた・・でも止められなかったしなあ」
ぼんやりとしながら呟く言葉の羅列はどうも寝ぼけている。

「なんでこんなに朝弱いんだろう・・・・」 泣き言と世の中の人は言うのかもしれない。

そんなことを言っていると誰かが背中を軽く殴った音がして振り返るといい笑顔した楠本が居た。

「おっはよう!榎本君今日も眠そうだね!」
榎本、と言われた青年は「元気そうですよね、毎日」と言った。

「あったりまえだよ、元気に生きないと産んでくれたお母さんお父さんに失礼だって!」
「わー・・標語とかそういうのに送ってみたら良いんじゃないですか」

「何かあしらい方すっごい適当だよね!もう、よく中学生高校生やっていけてたね!」
「人間根性とやる気が何かを生産するんですよ・・・・」

「へー!じゃあ、榎本君読書とかもそんな感じなの?」
「それは別問題ですよ、愉しいから読むんです。」

「私は朝起きるのはへっちゃらだけど、読書はやる気と根気で何か生産しないと無理だよ」
「それもある意味問題じゃないですか・・・あ」
榎本が短くそう云ったので、楠本がその先を見る。

真面目そうな顔立ちの男性が車から降りて茶色の小包をもち会社の中へと入っていった。

楠本は、知り合いなの?と聞く辺りどうも彼のことは覚えていなかったらしい。

あの、不思議な小説家の女性の担当にして、最初に彼女の予想を裏切らせた人物。

「正義って、不思議だ。」 ポツリ、と呟く言葉は自分にしか聞こえなかった。

『―他人の正義を己は認めたがらず、己の正義は他人には認められにくいものなのかもしれない。

―正義は自分に優しく他人に冷たい。正義とは具現化した、自分なのだろう』

Re:And, it was comforted by evil.
DATE: 2009/03/13(金)   CATEGORY: 店主の宝物庫
恋人たちの夢のこと。
―誰かが誰かへと呟く言葉ほど美しい物なんて、無いと私は思いました。

扉一枚を隔てているだけだった為、勢いよく蹴り上げると呆気なく扉は壊れた。

「・・・呆気ないな・・・早く出国したまえと忠告したはずだが?」
そこには、生気の表情をした男が居てぼんやりとした調子で呟いた。

「いくら忠告されたって、はい、そうですか。って引き下がれる状況じゃ無いだろう?」
メルカトルが持っていた小さなブーケをびしり、と市長―ヴァーミリオンへと向けた。

「そうか、では止めようとでも?」 
「勿論、この場合止めるだなんて生易しい言葉は使わないね。破壊だよ」
メルカトルが言い放ったと同時にギルディズがヴァーミリオンの後ろにある機械へとレイピアを持ち壊そうとかけ走った。だが、

パンッ―と軽い音がし、後ろへとステップを踏みギルディズは弾丸を避けた。
「随分と危ない物を持っていることだな・・・・」

「最近は物騒な事が多いからね。君はあやめてしまうには惜しい人間だ、がラズリの『夢』を邪魔するなら私の感慨は捨てるとしよう」

「ラズリの『夢』?彼女はこんな粗治療を望んでいたのかい?」

「・・・そう、彼女の『夢』だ。故郷を、同胞を救う為の。」
「分からないね、」短くメルカトルが呟くと、クククとヴァーミリオンは喉を鳴らして笑った。そして、

「そうだとも、分からないだろう!貴族人には、どんなに人の命が重く、呆気なく終わってしまうかなど!今日や明日を一生懸命生きる者の労苦など!」 生気の無い姿が嘘のように彼は生きていた。

「いい機会だ、覚えておくがいい。【白の庭】の貴族人メルカトル、そして処刑人ギルディズ。君たちがいるこのフィアグレンデは、何年も前に疫病が流行った。それによって多くのものは死に絶えた。残った者達も何時その命が消えてしまうか分からないほど、危険な状態だった、・・それなのに」

「フィアグレンデの貴族人たちは、彼らに手を貸そうとも、ラズリが・・・流行病を食い止めるために発案した『真冬』計画さえも頷こうとはしなかった」

「・・・・流行病?そんなのは聞いたことが「当たり前だろう!貴族人たちはこぞって自分の汚点をもみ消したんだから!」

聞いた事が無いと答えた人はその言葉に神妙な面持ちをし、もう一人は貴族人を見た。

「ラズリの『真冬』計画は、一時的に土地の気象を変え同時に流行病を雪の中に封印してしまう事だった。くさい物に蓋のような気もするが、少しはこの流行病の招待や抗生物質を作れる時間くらいは稼げる物だった!」
「必死にラズリは貴族人たちに説明しこの『真冬』計画の決行を求めた。なのに・・・貴族人たちはラズリもこの土地に住むものさえ見捨てた!」獣の咆哮に似ている、とギルディズは思った。そして、この姿はまるで―

「そして、最後の説得にとラズリは貴族人たちを説得しに行った。だが・・・ラズリは何時まで経っても帰ってこなかった・・心配した私は彼女を探しに行った。すると、彼女は・・ここの前で死んでいた。」

「っ!!」 「・・それが貴族人の仕業だと確証付けれたのは一体何だい?」
メルカトルだけが、ヴァーミリオンの話に投掛けた。

「彼らは、私が何かを知らなかった・・・だから口を滑らした。しつこい科学者をあやめた。と」

「・・・・君は、ラズリの―」 

「ラズリは、私の恋人であり、妻だ」
―君も大事な者を失ったのではないかと思ってね。

Re:convicted past thing
DATE: 2009/03/11(水)   CATEGORY: 店主の宝物庫
死神の息子。
「ふーん・・確かに似てるね、おそらくこれがモデルなんだろうけど」
肩位の髪に羽飾りをつけた品の良さそうな小柄な青年は、水晶玉を片手に持ち上げ言う。

「『真冬』計画のか・・?じゃあ、それを造ったラズリって人は」
赤紫の長髪に腰には細い剣をつけた青年は小柄な青年―メルカトルに聞く。

「早まっちゃいけないよ、ギルディズ。おそらくラズリ・・さんは『真冬』計画を考えた人なんだろうね」

「考えた人って・・立案者はあの市長じゃないのか?」

「確かに、この計画をここまで実現させて尚且つこうやって本として出させたのは彼かもしれないよ?けれど、根本的なモノを考えたのはやっぱりラズリさんなんだよ」
「そこまでいう根拠はなんだ」

「ラズリという科学者が居たからだよ」
「っ!!そんなの初めて聞いたぞ!!」

「当たり前だよ、言ったのも初めてなんだからねえ、かなり優秀な科学者だったんだけど。」
「科学者・・だと?!」

「そう、でも可笑しいなあ。彼女がここまで粗療治にでるなんて理由が無いしねえ・・」
「・・あったことがあるのか?」

「一度だけだけどね、一寸聞きたいことがあったんだよ。君と会う何年も前だったかな?優しく穏やかで知的、理想的な性格だったよ。」
「それじゃあ益々可笑しいだろうが、なんでそんな人がこんな計画を立案するんだ!」

「・・ギルディズ、市長はここから早く出ろって言ったんだよね?」

「・・ああ、そう言っていた。そういえば市長館に誰も居なかったな、秘書まで居なかった」
その言葉を聞いてメルカトルが拙いなあ、と言う。表情には少しあせりの色が見えた。

「何が拙いんだ?」
「『真冬』計画の最後は、本当にその土地を『真冬』にさせる事らしいんだよ」

「っ!可能なのか、そんなこと」

「科学の叡智も舐めたもんじゃないみたいだね、いや・・彼女と彼あってこそなのかな?可能か、どうかはやってみないと分からない位複雑な物だけど・・意外と出来てしまいそうな気がするからまずい。」

「・・とめてなくて良いのか?」

「ギルディズ。この場合は考える間も与えない位強制的に、やめさせるって言うのが正しいんだよ」
にやり、とメルカトルは獰猛な笑みを浮かべ宿の扉を思い切り足で蹴り開けた。

Re:to the midwinter world
DATE: 2009/03/10(火)   CATEGORY: 店主の宝物庫
満天星日記。
『出会いはね、簡単にして複雑なの』

映像の中の女性はそう言い、雨が降る中の町を一人駆け出した―・・・

『お父さんにも、お母さんにも、見捨てられちゃったけど私はまだ大丈夫なの!』
―辛い身の上を明るく話す女性。

『だって、ほら』
―指差す先には広い青空が、何時の間にか雨はやんだらしい。

『夜になったなら、月と星が。明るくなったなら、太陽が私を―見守ってくれているわ!』
―Finという白い文字が出て、はっと我に帰るとシクシクと横で誰かが泣いているのに気付いた。

見てみると、妹がファッション雑誌を片手に泣いているらしかった。

「なに、これ超いい話じゃん・・やばい、やばいって。こんなに泣いたのフランダースの犬以来だよ・・」
「お前、何時来たんだよ・・・・」

「ん?ああ、さっきね、友達に電話しようと思って降りてきたら何か映画見てるから便乗しちゃえと思ったら、予想外だよ、この感動。あー・・・・お腹減った」

妹は相変わらず自分の気持ちに素直に動いた。冷蔵庫へと向かいぺたぺたと歩く。

それにしても、こんなに感動できるのに監督はなぜ、駄作だといったんだろうか。ううん、と唸っているとほい、と妹が飲み物を持ってきた。

「おお、ありがとう。お前コレに感動した?」
「さっきから言ってんじゃん、めちゃくちゃヤバイって。アカデミー級だよ、アカデミー」
そう云いながら、片手におやつ片手に雑誌とめちゃくちゃなモノだったが。

「だよなぁ・・・・何処が駄作なんだろう」
「駄作なんだこれ、・・あー確かこの監督の人さ、アクション専門だよ今」

「はっ?」 初耳だ、そんなの。

「本当だよ、えと・・・ほらこの前さCMで結構宣伝してた奴もこの監督の人のだよ」
「うえ!?・・・マジかよ」

「だからさもしかしてこの人本当はコレアクションで行きたかったんじゃない?はらはらどきどきみたいなノリがちょっとあるし」
「・・・・・・・・理解した」

ミラクルでうまれたこの映画に盛大な拍手を妹と送った。

Re;miracl the move?
DATE: 2009/03/09(月)   CATEGORY: 店主の宝物庫
崩れゆく塔の中で。
―誰でもない貴方が、知らない事を、知りなさい。

雪に足を取られながらギルディズは市長館に向かっていた。あの市長室の廊下に並んだ一つが気になったからだ。

会う予定云々は前回の事から、メルカトルの横暴さを見習い強行突破で行こうと思っていた。というよりそれしか方法が無い。それに、自分の目的はあれを作った人の名前を見る事だった。

足音がこの無音な世界では良く響き『真冬』計画の意味とはなんだったんだろうと考えていた。

市長館に入ると人自体が居なかった為先に進んだ。早足で進めばあっと言う間に、目的の場所に到着した。

そして水晶玉のような透明の玉に小型の家や木、愉しげな子供たちの人形が入っておりその頭上から真っ白な粉雪が当ても無く降ってくる本当に種も仕掛けも無いといえそうなオモチャ。

それの前に陳列してあるプレートを見ると其処には・・・

「どうかしたのかね?」 「っ!!」 驚いて半回転すると、ヴァーミリオン・ビネガーが居た。

「・・すまないね驚かしてしまったようだ。何か契約書に不手際でも?」

「いや、これが珍しい物だったんで・・出国する前にもう一度見たかっただけだ」
そう言うと、彼はほとほと生気の無くなった顔に笑みを灯しそうか、と言った。

「一つ、こちらから質問しても言いかい?」

「君は、貴族人が好きかね?」 
生気の無い表情は言った。それとは逆にギルディズの顔には、驚愕が浮かんでいた。

突然その質問の答えは決まっているのにも関わらずギルディズは迷った。
どう、答えるかよりも、今の自分の気持ちがどうなのか、に。

「言わなくても構わない、少し君は私に似ているからそうなのかもしれないと思っただけだから」

「どういう意味だ」 詰問調に言うと、彼は変わらず生気の無い表情を向けこう言った。

「君も、貴族人に大事な何かを奪われたのではないかと思ったのだよ。」

「・・あんたは誰かを・・・無くしたのか、」 驚愕の中で、やっと出た言葉はそんな物だった。

「私はやはり無くした・・・のだろうか、ね。」
無くした、その時の喪失感は説明しようの無い、人を、何へも変える訳の分からない力。

「・・・ああ、長話につき合わせてしまわせて済まなかったね。」
そう言って、彼は水晶玉を掴みギルディズに手渡した。

「えっ・・・・?」
「持って行きなさい、分かる者の所にある方がそれを作った人は喜ぶだろうから」

「それから、ここから速く貴族人と出国する事をお勧めする。あの貴族人は私が出会ってきた中で、一番変わっている貴族人だ、そして誰かを変える素質を持っている」
目の前に居る生気の感じられない男はそう威厳を持って断言した。

「おそらく彼は君にとって必要だ。君が、もし私と同じ痛みを抱いているなら、なおさら。」
やけに、その言葉はすとん、と心に落ちた。

ネームプレートに刻まれた名前は―ラズリという女性の名前だった。

Re;It is your courage that broke.
DATE: 2009/03/08(日)   CATEGORY: 店主の宝物庫
太陽と、
―温かな日差しがくれたのは、何も優しさだけじゃない。

獣の唸り声のような音が、その一室には響き渡っていた。

そのことにも、慣れてしまっている人たちは、そのまま会話を続けていた。

「・・・この後は一体どうなさるんです?」
比較的に若い声がそう冷静に言った。感情を殺したような声だった。

「一体、というのはどういう意味かね?」
こちらも感情が抜けたような声がするが、どこか淡々としていた。

「彼らの処置です、彼等の・・貴族人のほうはまずいです。あれは狗です。・・この『計画』に支障をきたす人間ですよ、」

「支障・・か。それならもう随分ときたしている。それに、遅かれ早かれこうなる事は分かっていた。」

「無責任ですね、やめてしまうのですか。あなたの願いを、」
若い声は、問い詰めるかのように言った。

「やめはしない、終わるまで。だけど・・・・お前はやめておきなさい」

「・・どういう事です?」

「お前はこんな・・私のくだらない妄想に付き合わなくていいんだよ、終わりなら遠くからでも見ていられる。お前の言うようにあの貴族人、いや彼の連れていた青年は・・・私の喉笛に喰らいつく狗だ。」

「私には、貴族人のほうが危ないと思えますがね」

「本気を出せば貴族人の方がきっと恐ろしいだろう、けれどあの青年は・・きっと私だ」

「貴方?何を言っているんです、あなたとあの青年と一体何処「彼も、同じだ」・・・?」

「彼もきっと、私と同じなんだよ、クォイド」

「彼も―大事な者を失ったんだ。」
暗い夜に浮かんだ月の白い光が人影を照らし―ヴァーミリオン・ビネガーの無表情な顔が合った。

Re:The world deserted him.
DATE: 2009/03/07(土)   CATEGORY: 店主の宝物庫
月の妄想劇。
―自分を見失う事に慣れてしまえばそこにあるのは唯漫然と広がる空ろのみ。

「御伽噺・・・?『真冬』計画って言うのはそんなにも、御伽噺みたいに取り留めがないのか?」
ギルディズが、メルカトルに尋ねた。

「というより、その『真冬』計画自体が無理の産物なのさ。」
「余計分からなくなってきた・・・・」
そうもらすと、メルカトルが持っていた花束をギルディズの目の先何センチかに向けた。

「さっきも言ったけど、世界全体の根本をひっくり返すのは無理だけど部分的なら少し位は誤魔化しが効く。なら、これに名称を当てはめて御覧」

「名称って世界全体って言うのは、そのままで根本ってのは気象だろう?で、その部分的っていうのがこのフィアグレンデ・・・あれ、待て。さっき部分的な物は真っ先に否定される意見だって言わなかったか?」

「言ったねえ」 愉しげに言うメルカトルを目の端に入れながら言う。

「じゃあ可笑しいだろうが。何で部分的な、しかも真っ先に否定されるような事が起きてるんだ」

「大正解。そう可笑しいのさ。部分的とはいえ誤魔化しが効くけれど、研究者たちがこの計画に対して賛成する訳が無いんだよ。」
「・・もしかして、賛成しない理由ってのは影響が他に出るからか?単に良いことだけじゃなくて」

「当たり前だよ、世界のいくら末端とは言え『根本』を変えるんだ。そうすれば困る事は色々でてくるものだよ。そうだね、例をあげるなら、日常生活の変化や他の国々に対する影響だとか」

「・・・って完璧に今の状況じゃないか」
「そう、だからこそ研究者たちが否定するんだ。一歩間違えば危険な事なんだよ。」

「でも、待て。最初からこの計画が無理だったって言う理由はこれだけなのか?」
いいところに気付くねえ、とメルカトルは言い手袋をした掌をパッと開いた。

「一つ、この計画には優秀な科学者が必要。二つ、ソレに伴う研究費用は莫大な物だよ。三つ、当時の金持ち・・つまり貴族人って事になるんだけど仏頂面だって、ギルディズ。彼らに認めさせる事が出来るのか。四つ、地元住民にコレに納得させる事が出来るのか?」

「・・・それは・・なんか前途多難な感じの」
「かなりね、けどこの今の状況それを全部クリアしたって事になるんだろうね」

「でもそこまでして、ここを『真冬』にした理由はあるのか?」
「さあねそこはまだ分からないし。というかこれが『真冬』計画なら一体どう雪が降っているのか気になるんだけど」

その言葉に、一つだけ思い出したものがギルディズはあった。

―君はソレが気に入ったのかい?      
     水晶玉に何処にも仕掛けが見当たらない、雪を降らせる―

市長室に続く廊下にあった一番異色で惹かれる、水晶玉の世界がそっくりだった。

Re:mirror world
DATE: 2009/03/06(金)   CATEGORY: 店主の宝物庫
法王の理屈。
―誰も知らない話なんて、それこそ、御伽噺でしょう?

窓の外に写る景色は、やはり真っ白で細かな雪が飛び散っていた。

「それで、何で宿に帰るとか言っていたはずなのに図書館に来るんだ」
防寒用のコートを纏った赤紫の長髪をした青年が不満げに言った。

「市長の名前の検討がつかなくって気分が悪いんだ・・確か文献か話で彼の名前を聞いたと思うんだけど」何処と無く品のある雰囲気を持った赤紫の青年に比べれば小柄の青年がそう云う。髪の毛には、羽飾りがついており脇には何故か、花束を抱えていた。

「文献って・・ここの図書館の本全部を探すのか?!」
「いいや、さすがにそんな七面倒な事はしないで良いよ」

「じゃあどうやって?」
「まあ、見ていなさい―」
そう言うとどろり、とメルカトルの手元にあった花束が解け黒の渦へと変わり、傘に―

思わず目の前で起こっている光景にグラリ、と脳が揺らめいた気がして膝をついた。

「・・・っ!なんだ・・・・これ」
「ギルディズ、もう少し後ろに下がった方が良いよ」
忠告を受け入れ後ろに下がると、どろどろとした黒の塊が天蓋を作ろうと図書館を覆っていた。

「こっち、か・・・・」 そうメルカトルは呟くと、手すりにひょいっ、とブーツをかけ飛んだ。

凄まじいほどのスピードで降りた為、慌てて手すりの下を見ると別段影響は無いという風にメルカトルは下の書棚を見て、するりと一冊の本を取り出しこちらを見て「降りておいで」と言う。

螺旋階段を下りて、メルカトルの下に行くと既にあの傘も天蓋も消えていた。

「あったのか・・・・?」
にっこりと微笑んで、すっきりしたよ、とメルカトルが言う。

「おかげで、思い出したよ。どこで、この市長の名前を聞いたのかね」

「一体何処なんだ?」
それに答えるかのように、本を差し出す。開けて見ろ、と言う事だろうと思い表紙を開ける。
重々しいくらいの装丁に金色の文字で『真冬』と書かれてあった。

「真冬・・?小説か何かなのか?」
「いいや、違う。これは一種の計画だったんだよ」

「計画?・・・・一体何のための?」
「決まっているよ、ギルディズ。ある世界を真冬にする為のさ」

「真冬にする為って・・・さっきお前はそんな世界の理屈をひっくり返せないと言ってたじゃないか」

「うん、言っていたね。けれど、根本じゃなくて上辺だけなら少し位誤魔化しがきくんだよ。」

「根本じゃなくて上辺・・?・・・つまりで全部を変えるんじゃなくて少し・・部分的な物だけを変えるって言う事か?」

「そう云うこと。けれど、部分的にしても『根本』を変えるって事は一番難しい事だし何より真っ先に否定される意見だ。」

「・・・・・否定されるって、どういう?」

「いいかい、ギルディズ。この世の『根本』は、科学という名の学問が追求したがるものなんだ、それほどに魅力的といってもいい。解けないからこその、問題というのが正しくこれなのさ。けれど、彼らもちゃんと弁えているんだよ、それが御伽噺か、どうか位かはね。」
Re:somebody's message  ((←誰かの伝言。
DATE: 2009/03/04(水)   CATEGORY: 店主の宝物庫
女教皇の希望。
昔から周りの大人は口を開けば利口だ、神童だ、とそんな事ばかりを言っていた気がする。

そのためか、その類の言葉をいわれるのはどうにも慣れてしまった。反動というのか、それこそ可笑しい話だが、自分には解けない事、分からない事という類の話が好きになった。

気付けば夏雪という一人の人間は友さえ利用してしまうような外道になった。

昔ながらの友人に美里という奴がいる。この友人はそれこそ、幸運の女神なんて一度も微笑んだ事が無いような、不運っぷりだった。自他、おまけに家族まで認めるから、かなりのものだ。

だが先日不運という輪の中の不幸せでは到底言い表せない不幸が美里にはあった。
そうして、美里に不幸を運んだのは間違いなく自分だった。
それは今まで、散々美里を利用してきた俺に対する神仏からの罰であったのだろう。

更にその照準が俺に向けられたならまだ良かったがそれが向けられたのは美里だったのだ。

その時初めて自分が欠落していると分かった。

きっと自分は成り上がっていたのだ。何もかも。だから人の優しささえ忘れてしまうようになったのだと分かった。謝る事だけでは足りない、そんな物をどっしりと背負った。

美里に許して貰えるどころか、友として居る事さえ叶わないだろうと思った。
だが、美里の反応は違った。
『・・・俺はもう随分前に一生分の幸せを使いきってしまったんだ。それにお前は俺を助けてくれようとしたじゃないか。俺は大丈夫だ。』

ずっと、その言葉ばかりが罪の中でもがく俺を助けた。

「助けられてばかりだ・・・・俺は」
ポツリ、と光也に通された部屋で呟いた言葉は俺にしか届かない。聞いているとしたら、美里が大切にしている美しい橙色をした金魚くらい。

「お前も・・あいつに救われた事はあるんだろうか?」 我ながらに可笑しいと思った。

「俺は、美里を・・・助けれるだろうか?美里が一生不運ならそれを半分くらいに・・哀しむよりも笑って過ごせる日のほうが多い位にしてやれるだろうか?」
答えは返って来なかった、当たり前だ。金魚なのだろうから。意志があるにしても、喋れない。

頭を抱えながらそっと泣いて俺は意識を手放した。
やけに、意識だけがはっきりと浮かんでいた。人いや、何かの気配と言うのを感じた。

『―夏雪さん、あなたにできることがあるとしたらそれは。』
誰か分からない、やけに澄んだ声が一つ聞こえまた、意識を手放した。

ガクリッ、と揺さぶられた気がした。その方向を見れば、美里が呆れた顔をしていた。

「人の家に来て、寝るとは・・大物になったなあ、夏雪」
「・・・・・大物ではなく、小物の間違いだよ美里」
ははっ、と笑いながら持っていた盆から茶菓子などを置き、進めてくれる。

そうして、夢の一抹を語って見せると、何か拙い物でも食った顔をして
「一秒でも速く忘れる事を進める、もしくはもう一度寝ろ」
と言うのでそうまでも駄目か俺の夢は、と云うと駄目だ、駄目。と言われた。

そうか。といい、金魚蜂を見る。橙色の綺麗な尾が水を切っていた。

―手前ほどのお願いで御座います、どうぞ旦那と友人で居てあげてください。

Re:Saved wish.
DATE: 2009/03/02(月)   CATEGORY: 店主の宝物庫
愚者の骨。
「出会いは簡潔にして、複雑よ」 そんな台詞から始まるのだ、と彼女は言った。

「台詞だけで分かる人いたらどんだけすごいんだよっていう・・話だよなあ」
ふうとため息を一つ漏らしながらも、自分の馬鹿さ加減を怨んだ。

「ううっ・・一体なんて言うタイトルの映画なんだよぉ」
そんな事を言っていると恨めしい物体が見えた。デ・ジャブさえ現れていい頃だと思う。3番目の糸電話が道路に置いてあったが、この時迷わず取ったのは吹っ切れたからだ。

「―もしもし?」
『既存感。《デ・ジャヴ》として有名だがこれが存在するのか?それとも記憶の勘違いなのか』

―はっ?

『深い疑問だ!そこで皆来週までにこのテーマを纏めて、自分の感想もしっかり・・10行以上?短いのは駄目だよ。を目安に提出する事!一日くらいは待つけど、基本的に待つの嫌いだから早めに出さないと単位やらないから、よろしく』

【『うええええええ!!』】 おそらく生徒たちであろう抗議の声があがる。

『悔しかったら文献図書館で探して来い!偶には図書館行来なさい!寝るんじゃないぞ!』

『うわー・・お母さんだよ、お母さん。』【保父さんじゃね?】《えー・・じゃあ、両方?》

『5分経過ー』 ぎゃーと言いながら、生徒たちらしき声が遠ざかる。

糸電話から聞こえる会話に思わず、ぽかんとしていた俺はどうしようか迷った。

これは、もう放置でいいんじゃ・・いや、この人から悩みがあるとか言われて聞ける自信が全くというか皆無というか流石に聞き上手の域を越えそうな、哲学的な―

『―もしもし?あれ、さっき声聞こえた気がしたんだけど気のせいかな?んー?』
「あの、すいま、せん」
『あれ、やっぱ聞こえた。どっからどっから?』
「紙コップからです・・・・・」

『・・からかってる?』
「見ず知らずっていうか、会ったこと無い人からかう程俺人間終わってません・・・・」

『うっ冗談だから!ね!ああ、何か悩み事とかあるんだったら聞くよ?!』
「映画とか詳しいですか?」
『映画・・えと、どんな奴?』
「「出会いは簡潔にし、複雑」と言う台詞から始まるらしいんですが」

しばし間があいて、「ああっ、エコーかな?」と言う。

「エコー?」
『そう、エコー。何年か前の映画だけど、監督が出演者をカンカンに怒らせたって言うある意味有名な映画でね、DVDとか少ない枚数でしか売られなかったらしくて』

『探しているの?』
「探しています、凄く真剣に探しています。」

『じゃあ・・貸して上げようか?』
「・・・・・・もっていらっしゃるんですか」
『父が、これに出ている今かなり売れっ子の女優になったんだけど、彼女が好きで。当時買ったんだよ。少ない枚数って言っても予約すれば手に入った物だから。』

『さっきあんな具合だったからね、お詫びといっちゃなんだけど。』
「・・・・見ず知らずですよ?」
『でも、繋がっているよ』
「・・俺の上を良く聞き上手だったりしますか」

『あはは、類友なんだ!』
遠くの類友はそうやって糸電話の向こうで笑っていました。

Re:Symbol of temptation of person.
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