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DATE: 2009/08/30(日)   CATEGORY: 店主の宝物庫
魅。
―君の名を呼ぼう、楽しいとき、悲しいとき、怒る時、そして―何かが始まる時に。

『それにしても旦那―、その物盗りの事件は気になりますね』
涼やかな声が、美里の部屋に響いたが、その声の持ち主は、金魚鉢の中だった。

「”能面”の野郎と、その物取りの事件の子供達も”能面”なぁ・・」
『・・、旦那、誰かおいでになられますよ』
そう涼やかな声が言うと、同時に障子が開けられて現れた姿は母だった。

「美里、私はこれから夕飯の買い物に行ってきますね」
「あっはい、分かりました」
すると、母が新聞を持っており、それをまだ美里は読んでいないことに気付いた。

「あの、母上、その新聞読んでも良いですか?」
「どうぞ。さっき届いたばかりなのだけど、読んでみたら怖いことが書いてあったわ」
「怖いこと?」

「ええ、最近子供の誘拐事件が増えているらしいの。」
「ゆう、か、い?」
突拍子な言葉に、美里は目を点にした。

「怖いわ、それにその子供の中に・・おそらくらしいけど、金鈴さんと藤釣さんの子どもさんも誘拐されたらしいの」
「・・・金鈴と藤釣?!」
名家中の名家の名前があがり、美里は更に驚いた。

「光也が帰ってきたら気をつけるように言って置いてね」
「ああ、はい」
とんっ、と母は優しく障子を閉めた。

『旦那、金鈴と藤釣というのは?』 涼やかな声―橙色が尋ねてくる。

「両方とも名家中の名家だが、金鈴は銀行業、藤釣は確か華道の名門だったが、何で又そんな名家の子供を誘拐なんて」
新聞を見ると、既に誘拐された子どもはその二人を加えて10人になったらしいと書いてあった。

『旦那、一つお尋ねしても?』
「なんだ?」
新聞から目を離さず、聞く。すると、目の前にふわりと、美しい橙色をした金魚が金魚蜂から離れ現れた。

『旦那は、この事件に関わりになられるおつもりですか?』
「どういう、意味だ」
自分が素晴らしく苦い表情をしていると美里は思った。

『そのままと思って下さって構いません』

夏がもう終わりかけだというのに、まだ心の其処で躍らされている、あの言葉。

「・・・、関わる。誘拐された子どもたちも親元に早く帰りたいだろう」

『分かりました。ですが旦那、”能面”のこともお忘れなきよう、お願い申し上げます』
「相分かった」

ちりん、と、もう取り外されているはずの風鈴の音が、何処からか聞こえた。

Re;A sound of his determination.
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DATE: 2009/08/29(土)   CATEGORY: 店主の宝物庫
羊の夢選び。
―何時ものように、幸せが訪れる。何時ものように、悲しみが訪れる。たったそれだけで充分私は私になれるのです。

「はい、良いですよ」

そう言って、榎本は貸し出しの本を相手に渡す。夏休みの後半ともなると、宿題を終わらせる為の資料や暇つぶしの本を借りに来る人が多い。そのためにか、榎本は夏休みをまだ一回も休んでいなかった。

「・・・夏休み、終わっちゃうなあ」
映画も見たいし、友達とだって遊びたい、実家に帰省するのも手だ。問題は、どの時期に使うか、であっただけで。そんな風にグダグダと考え込んでいて今日になった。

どうしようと悩んでいると、榎本君と別の司書がおいでおいでをする。

「どうしたんです?」
「榎本君居ますか?ってお電話」
「・・僕に?楠本さんかな・・」
「楠本ちゃんだったら声で分かるよ?」
「じゃあ・・誰?」
まあ、まあと言って受話器を渡され、年配の女性の司書は自分の居た場所に代わりに入った。

「はい、榎本ですが」
「こんにちは」
この声は、と思い頭の中の記憶がぐるぐると回り、思い出した。

「今日和」
挨拶をすると同時に、声の主があのぼんやり眼の女性である事が分かった。

「お仕事中に御免なさい、伺いたい事があるのだけれど大丈夫?」
なんだろうと、思いつつも、平気ですよ、と言う。

「この前ミステリーを書くといったときに、見せたチラシの奴を覚えてる?」
「ミステリー館って奴ですよね」
「そう。それに行く事に決まったのだけれど」
「行くんですか・・担当さん許可出したんですね・・」
「なんとか、って所。それで、そのミステリー館に行こうと思っているんだけど良ければ、一緒に来てもらえないかしら?」

一瞬、フリーズした。

「は・・い?で、も僕部外者です、よ?思いっきり」

「?お仕事が大変なら無理にとは言わないけど・・」

「いえ、そうじゃなくて・・」
良いのだろうか、行っても。なけなしの夏休みが、まばゆく輝く夏休みに変わるなんて。

「・・・・本当に行かせて貰って良いんですか?」
「ええ、喜んで」
「行きます・・・日程とかは?」
「来週の、火曜から」

「分かりました、それじゃあ」

ブチッ、と電話の回線を切った音共に、彼の夏休みが始まる。

Re:happy ending
DATE: 2009/08/27(木)   CATEGORY: 店主の宝物庫
サヴァンズ。
―色んな言葉を口に出してみると、何だか自分が置いてけぼりになった。

Re:Dance, and finish dancing till is exhausted; a genius.

((↑踊れ、疲れ果てるまで踊りきれ、天才。

今晩和。今日も、今日とて体育会の準備してきましたが・・すごいきつかったです。

33度で、3時間とか、どんだけ過密スケジュール・・、ていうか33度なら最後のダンスの練習をしていたときの立ちくらみも頷けます^p^

もう夏の暑さって、これだから・・・orz 冬になっちまえよって気持ちです。

勉強のべの字を見たくないという拒否反応が出ているんですけど、これいかに・・。

あっ、ていうか何気に明日金曜日じゃないですか。明日頑張れば土日休みが、待ってますね!

よしっ!

またもや、短いですがお粗末です。
DATE: 2009/08/26(水)   CATEGORY: 店主の宝物庫
ユルメンタリー。
ジャッ、と小気味良い料理音が響いた。

「で、それは何なんだ?」
男性が、ゆるりとして尋ねる。

「野菜をたくさん入れた春雨のいためものと、おにぎりです」
少しずれ落ち気味になっていた眼鏡を指で押し上げて、流梨は料理を盛り付ける。

「楠本が適当に見繕った中でよくやれるな」
彼にしては、が付くが感嘆の声をまたしてもゆるりと言う。

「いや結構必要な物は見繕ってましたよ、楠本。まあ・・DVDは要るのか分かりませんけど」
苦笑して言うと、おにぎりの盛られた皿を教授は持ちながら、「面白い」と言い放った。



「楠本先輩」
「なあに?」
「これは一体?」
「パンダの親子の生態系だね、すっごいゆるいよ」

実験と言っても実際には出来ない実験などの手順などはビデオ等で確認してから実行する、というのもあるため、テレビはある。そして、楠本が買出しから帰ってきてつけたのはパンダの生活だった。

「ゆるすぎて、睡眠を誘いますね。」
梔の後ろでパタパタと団扇で自分を仰いでいた澪葉が言う。

「ですよねー、予想外の緩さです。ユルさとドキュメンタリー要素の合体。略して、ゆるメンタリー」

「おお、上手い上手い。座布団一枚あげます」

「やったー」

その、先輩と先輩のやり取りに、梔は現実のユルさを果てしなく感じた。
DATE: 2009/08/25(火)   CATEGORY: 店主の宝物庫
ナツケイホウ。
―優しさと、横暴は、多分同意義。

みいん、みいん、と夏という彼等の限られた時を命を燃やして生きる同じ生き物の、命の音が梔の耳朶を叩いた。

「・・う?」
「ああ、起きましたね。ラムネと水どちらが良いです?」

ぱちりと瞼を開けば、大学で二学年上の同じ学部内の先輩である澪葉がラムネの瓶と水の入ったペットボトルを差し出して尋ねてきた。

「・・・水をお願いします」
「はい」
単純に渡すと、澪葉先輩は片方のラムネを金たらいの中に突っ込んだ。

水を飲みながら、なんで金たらいが置いてあるのかも分からないで首をかしげた。すると、

「熱中症でやられたんですよ」
「・・・・誰がですか?」
「梔が」
「僕が?」
「そう、流梨と楠本はてんやわんやで氷を買って来て、石榴教授が飲み物とその頭に乗っけてるタオルを冷やそうって目的で金たらいを引っ張ってきてくれたんです」

「澪葉先輩は何をしていたんですか?」
「看護兼お留守番です」
「・・・・」
「この場合前者は成り行きですけどね。教授や流梨達は買出しに行ってます」
「・・何故?」
「楠本が、きっと梔が倒れたのは栄養不足だからと言って、それは大変だなと教授が抑揚なく仰って、じゃ流梨先輩頼みます!ザ・お母さんパワーで!と楠本が言って流梨は連衡されました」
「・・・楠本先輩、流梨先輩の料理食べたかっただけなんじゃ」
「あらゆる方程式使っても0%に近い数字は出ませんね」

ホシは黒と言う事か。

「それと梔これは先輩からの優しい忠告として受け取りなさい。」
「なんでしょう?」
「無理をしないようにしなさい」
体が壊れたら、嫌でしょう?とも彼は付け加えた。

「・・・楠本先輩や石榴教授は、どうしてあんなに真人間で居られるんでしょう」
天才で、居る事は、誰かと、違って、居る事は、とても、恐ろしい、のに。

「真人間?私には何処にも真人間の姿は見えません」
澪葉先輩の少し緩んだ、笑顔が見えた。

また、すくわれた。
Re:common genius's trouble
DATE: 2009/08/24(月)   CATEGORY: 店主の宝物庫
空殻。
―中身も何もあったもんじゃないって、それを見たとき、思う。

「夏休み、終わっちゃうよー、悲しいよー」
実に、悲しみも、ヘッタクレも無い声が実験室に響く。

「楠本、お前もうちょこい気持ち込めて言えよ」
次いでそれを叱咤する声も響いた。

「流梨、手止めると課題終わりませんよ?」
更にその声に慰めをかけるように落ち着いた声が聞こえた。

「・・」
そして、最後にぼーっとその光景を見ている視線だけが残った。

「だって、ですよ?十代の夏ってこう、もっと爽やかで青春!みたいなキャッチフレーズつきそうな感じの物じゃないですか?なのに、何故か実験室の実験机で実験してる十代って・・PTA泣きますよ!」
ぐわんばっ、と最後に力をこめて楠本は言う。本人は実験机に頭を置いて、実験を放棄している。

「尤もすぎて何もいえんわ!」
流梨もぐわんばっと返す。

「それを実感しているって言うのが尤も、泣きそうですけどね」
涼やかに団扇を仰いでいた澪葉が、けろっと言い放つ。

「・・」

「さっきから梔が一言も喋ってないですけど、生きてるんですかね?」
頭を少し移動させると、一学年したの後輩が見えた。魂が抜けていそうだ。

「そういや、喋ってないな・・おーい大丈夫か梔」
熱中症だったら拙いと、課題の手を止めて尋ねる。

澪葉がすっと立ち上がり、梔の頭をつんと突付くと―重力に従い彼は、倒れた。

「・・・・・・、動かない・・ただの屍「馬鹿澪葉!!」「梔いいいいいい!!」」

ガチャッと言う音が聞こえて、皆が振り返ると教授が立っていて、何をしてるんだ?と尋ねる。
「教授、梔が梔が!」
「・・・・・?実験で何か梔にトラブルでも?」
楠本が教授にガクガクというと、澪葉に向けて教授が尋ねる。
「睡眠不足か、熱中症ですけど・・後者ですかね?」
「・・・大変だな、楠本と流梨は氷を貰ってきてくれ。」
うわああああんと、声をあげながら二人は出て行った。

「澪葉、安静にしてやってくれ。飲み物を取ってくるから」
「分かりました」


『今日は、今年最高温度を記録しました―皆さん熱中症には気をつけましょう』

Re:ほら、やっぱり空っぽ。
DATE: 2009/08/23(日)   CATEGORY: 店主の宝物庫
代。
―かくいう、人の一生は面白い。故に、人は他人の一生に憧れる。

「ううっ、兄さんのこと笑えません、絶対笑えません」
「まあまあ、良かったじゃないか。すっこけるだけで」
制服の後ろをはたく光也を見ながら、経緯を聞いた筑紫はとりあえず彼女を宥めた。

「それにしても、光也も中々に運が強いなあ」
「どういう意味ですか、それ」
きっと光也がこちらを睨んだ。恐ろしい。

「いや、中々無いだろう?犯人を捕まえようと言っていたら、まさか現れるなんて」
「現れるのは当たり前じゃないですか。ここが集合場所みたいになってるんですから」
「そうだが、間というのもあるだろう?」
「その間に私はあたったんですね」

「すごい確率な気もするぞ?」
「要りません、そんな確率!そういえばやっぱり犯人供述どおりの格好でした」
「”能面”姿の、子供・・か」
「はい、私が見たときは3人居ましたけど」

「3人?」
筑紫が若干驚いたように言うので、光也は何か失敗したかと思った。そして、筑紫は周囲を見渡し息を潜めながら喋る。

「いいか光也。私がさっき盗まれた店の親爺から聞いた話じゃ犯人は2人だそうだ」
「え?でも、」
「そう、お前は3人と言っている。他に、何か盗まれた店があるんだろうな。それか数え間違いだろうが・・お前は正面から見たんだろう?」
「はい、真正面です。あの、ですね」
「どうした?」
「真正面から、見えたからなんですけど・・・彼等が盗った物覚えてます、よ?」
疑問形なのは自分に向かってくる犯人たちを前に、よくそんな悠長な事が出来たと今更ながらに思っているからだ。

「・・・・・本当か、光也」
半ば感心したように言う、筑紫を前に、はあ、と兄である美里の様に言う。

「えと、お爺さんのお面をした子とお婆さんのお面をした子が食べ物を持ってて、で・・狐面をした子だけが・・あの、茶器を持っていたような?」

そう言いあげると、筑紫が驚いた顔から凄い凄い!と言って光也の頭をなでまくる。

「え、え?いや、でも手がかりになりませんよ」
「いいや、なるんだな、これが。実は此処に遅れてきたのは講義もあったんだが、オークションの物品を観に行ったのもあったんだ」

「オーク、ション?なんでそんなところに?」
「金目の物をただ飾ってたって其処に自然と金が落ちてくる訳じゃないだろう?」

「・・・売却する為、ですか」
「ああ、それを愛好する奴さえ居れば自然と物は高くなる。で、出品リストの中に硝子細工の人形があった。盗まれた奴だな」
「でも何でお金は手に入って、食料も買えるじゃないですか。なんでわざわざリスクが高くなるようなこと・・」

「これはあくまで私の推定だが、違うんじゃないか」
「何がですか?」

「中身、タイプ、人、目的、かな?」

Re:It wants to be replaced if it can be replaced.
DATE: 2009/08/22(土)   CATEGORY: 店主の宝物庫
全力失踪。
―貴方が笑いや、泣きや、怒りを覚えて、何かなくしたならその反対を私はずっと覚えているから。

「先生、ミステリー館行きましょう。」
目の前に居座る男性、担当がそう云った。どこか、諦めた口調で。

「・・・・良いの?」
ぼんやり眼に髪の先だけがゆるく巻かれた女性はぼんやりとした眼で彼を見ながら尋ねる。

「もう良いです。負けました。降参です。それでミステリーを開拓できるならある意味一石二鳥ですし」

「わーい」

「感情こもってませんよ、あ、それとこのチラシよく見てたら3名で1組とかカウントされるみたいですけど知ってました?」
苦笑しながら言った後、彼は思い出したようにチラシを出しながらと問うた。

「・・・そうなの?」
それは予想外だった。どうしようかと悩んでいて、ぱっと思い浮かんだ人物が居た。

「榎本君、に頼んでは駄目かしら?」

「榎本・・って図書館の司書の方ですよね?」

「そう」

「仕事とか大丈夫でしょうか?」
確かにそういえばそうだ。

「あたって砕けろ、かしら?」

「砕けたら先生的には駄目なんじゃないんですか・・?」
女性の言葉を聞いて、彼は笑いに近い苦笑を浮かべた。

「とりあえず、尋ねてみましょう。それからでないと、何も始まりませんしね」

「・・・・楽しそうね」

「先生のミステリーが読める、からですよ」

Re:For the world, will silly talk be watches of the night now how?
DATE: 2009/08/20(木)   CATEGORY: 店主の宝物庫
誤。
―世界は貴方にとって何なのだろう。

光也は学校の帰っている途中に店の建ち並ぶ道によった。

其処が、筑紫が言った待ち合わせ場所だったのだ。周囲を見渡していると、未だ筑紫は来ていないらしかった。

「・・・・講義未だあってるのかな?」
自分に納得させるようにいうと、店ではお客さんと談笑する人や子供と手をつないで夕飯の食材を買っている人など様々だ。こんな所で物取りが会っているとはいまいち信用し難い。

「犯人の人は何を考えてるんだろ・・・」

光也が元々犯人探しを手伝おうと思ったのは、兄の美里の事からもあった。兄は昔からの不運質でいいことが少しおきたかと思えば、何十倍にも返される。兄にとって良い事は幾つあったのであろう。

もし、兄と筑紫の話から共通の言葉がでなければ光也はあまり興味をもてなかったかもしれない。

”能面”、と。

もしかしたら兄は又辛い事になるのかもしれない、それは絶対避けてあげたかった。

そして一刻も早く犯人を掴まえて、ここの通りの店の人にも安心してもらいたい。

それが、光也の思いであった。

「それにしても、筑紫さん遅いな・・「出たぞっ!!”能面”野郎だ!!」・・えっ?!」

声の先を見ると、確かに其処には”能面”を被った子供くらいの背丈の主が三人ほどいて皆一様に野菜や着物を手にとって走っていた。

そう思っていると、彼等がこちらに走ってくるのが見えた。

「えっ、えっ―?!」
ありえないほどの驚愕を持って、光也はその瞬間を、迎えた。

ずでっという鈍い音が響いた後には、彼女は朝兄である美里と変わらない状況になっていた。

接触第一回目。

Re:it's a thing threatening me.
DATE: 2009/08/20(木)   CATEGORY: 店主の宝物庫
雨傘記録。
「安前?あんなのの事を知りたがってるのか?」

この言葉にも大して怒りの気持ちは起きない。こういう奴だから、という諦めと理解が自分にはあった。

「何か興味が無いのか?といったのはお前だろ、リガキ」

そういうとリガキは唸り、くるっと回り別部屋にバタンッと入っていった。

自分は、といえば近くにあった急須にお湯を注ぎ、茶碗にお茶をつぎ勝手に飲んでいると、またもやバタンッという音が聞こえて、顔をあげると、大きな地図と分厚い紙束を抱え込んだリガキがやってきた。

そして、くしゅんっとくさめをすると自分が茶を飲んでいたのを見て、僕も入れてくれ、と言う。

「埃臭かった・・掃除しないと、直ぐコレだから家というのは嫌いなんだ」
「お前が掃除しないから、家が埃を出して怒ってくれるのさ」

「そうなのか?」
「さあ?」
なんだ適当か、とぶつぶつ言いながらリガキは地図を広げ、片手には赤色のペンを握る。

「それにしてもどうして毎度毎度僕が偶然関わった奴をクノは知ってるんだ?」
「興味があるものは徹底的に調べるから」
「・・・ベクトルをまげてやりたくなるなあ」
そうも言いながら、リガキは赤ペンで安前のところを丸印で囲む。

「で、どこまで知ってるんだ?」
クノのというのは先ほどついたあだ名だが、その後でリガキは自分の本名を思い出した。

「新聞、ラジオでやってる程度。とりあえずお前が関わった経緯から、教えてくれ。」

「ラーメンをおごってもらう予定だったのさ。その日」
「中華麺?お前が?」
「前日にご婦人の相談話にのってあげたんだ。そしたら、その後婦人が何かお礼を、と言われたから・・ほら駅前のところに新しく中華屋が出来ただろ?」
「・・・できたか?」
「本当に興味が無い物は無いなあ。とりあえずあるんだ、なんならこの後連れて行く」
「金はあるのか?」
「少し!」
「話の変わりに、奢るから良いよ。続けて」

「やった。で、僕は待ち続けたんだ、その御婦人を。だけど―来なかった」
「?約束の日を間違えたんじゃ?」
「いいやその日だった。そしてその後婦人は、安前の被害者になった」

Re:you can (not) unhappy.
DATE: 2009/08/18(火)   CATEGORY: 店主の宝物庫
もしかの話。
「もしかしたら、命を作ったのは僕かもしれない。

もしかしたら、電球を作ったのは僕かもしれない。

もしかしたら、カレーの作り方を思いついたのは僕かもしれない。

もしかしたら、涙を作ったのは僕かもしれない。

もしかしたら、ビールと豆腐の組み合わせを最強にしたのは僕かもしれない

もしかしたら」

「って、思ってしまうんだ!」
どごっと机を思いっきりグーで叩いてしまったが故に、彼は痛みにこらえた。

そして、熱弁を語った相手はというと、心底どうでもいいという表情を浮かべていた。

「で?」
「で?じゃなくて。そう思うんだよアイボニー!」

「アイボニーじゃない。熱弁するのは構わないけど人の名前と顔を一致させない?」
「えっ、君はアイボニーじゃないの?じゃあ誰?!」
かみ合っていない会話に投下された質問をアイボニーと間違われた人物はどうでもよさそうな表情を浮かべて、

「じゃあアイボニーでいいよ、君がそれで満足するんだったらね」
「いいよ?いいよってことはヤッパリ違うって事じゃないか。」

「間違えたくせに、根に持つんだ?」
「・・・、よし分かった。君の本名は生憎と思い出せないが、ここではクノという名前で呼ぶとしよう」

「適当だなあ・・、まあいいけど」
「つまらなさそうだなあ、何か熱中するものは無いのかい?クノ」

さっそくで、クノ、というその本名からかけ離れた名前を呼び出す目の前の主に怒りはおきない。

まあ、だがこの流れは待っていた。何しろ、そのためにここへ来たのだから。

「興味?」
「そうだとも、興味だ」
「・・・・なんでクノなんて名前にされたかっていう話と、それから安前で起きた事件の話にはとても興味があるよ」

そこで初めてにこりと笑うと、目の前の男は、眉間に皺をよせ、じいっと見、『サカザカ』か、と云った。

「いや?ここではクノと呼ぶといったのは、お前だろう。リガキ」

謎が、解けるときこそ、興味がある。それだけだ。

Re:simple man
DATE: 2009/08/16(日)   CATEGORY: 店主の宝物庫
彼女の育てた白い薔薇。
―命を育てる事は、終わりを最後まで見届ける静けさが無くては、笑えない。

とんと、笑えない。

ちょきん、と花用の鋏で要らない茎を落とす。シィーン・プラメイはそうやってくるくるとリボンで花束の持ち手をくるみ、注文分を作り終えた。
そして、汚れないようにつけていたエプロンのポケットから取り出したチケットを見た。

昨日の事、彼女が仕事をしていると顔見知りの郵便局員がやってきて、お手紙ですと渡される。何で家に届けないの?と聞けば、速達要請でして、と言われる。

手紙を受け取りぺらりとあけてまず出てきたのは劇のチケット。続いて出てきたのは一枚の便箋。便箋の内容を見た結果その手紙はラブレターのようだった。気がつくと、郵便局員は風邪の如く去っていた。一人にしないで欲しかった。

本当に、笑えない。ふと、劇のタイトルを見た。『白兎のシチュー』

一体、何劇なんだろうと思ったけど、白兎、といえば何だったか、と彼女は悩んだ。
「・・白兎、因幡の白兎?」
「あの、すみません」
声をかけられて、振り向くと目つきの悪い青年が居た、誰だったか。

「注文していた、ドライフラワー出てきてますか?」
ドライフラワー、と記憶をてり合わせ後ろ背にあった花を取ろうとしたが取れない。
「・・・大丈夫ですか?」
「再挑戦」
むぐぐと伸ばすが取れない。そういえば他の店員は自分よりも背が高かった事を思い出す。悩んでいると、手がすうっと伸びてきて目的の品を下ろした。

「これですよね」
頷くと『じゃあ、お願いします』と青年は言い、机の上においておいた劇のチケットを見る。

「これ人気の脚本家の劇ですね。店の奴等も取ろうとしたんですけど玉砕したんですよ。劇の名前からインパクトありますよね」
「・・・白兎って、因幡の?」
「因幡?それは分かりませんけど俺が知ってるのはアリス。裁判に遅刻しそうだから忙しいって云って走ってる奴。あ、やべ、戻らないと。それじゃ」

たたっと出て行く青年を見送って、シィーンは一言ぽつりと言った。
「納得」

Re:There is end from the beginning of life.
DATE: 2009/08/15(土)   CATEGORY: 店主の宝物庫
彼等のきっかけ。
広大な庭と、大きな屋敷、門をくぐった先に陣取られた噴水、全てにおいて完璧。

「って、嫌だよね。兄弟」
「嫌になる、だろう?」
”ハンプティ・ダンプティ”役たる双子のフラット・ダクティとネストラ・ダクティは自身の家のバルコニーで母が育てている植物を見ていたが、直ぐに飽きた。

「こう、自由が限られているのに怒る気になれない僕等は、」
「つまらないよね、母様の植物たちより」
ふうとため息を漏らす。彼等は一日に礼節や勉強、スポーツ果てには経済など。それを一日に家庭教師がテレビの番組用に組んだ物をこなさなければ成らない。

最終的に何が出来るのかと考えたくなる。両親は正気なのかと。これがいたって正気なのだからかえって質が悪いと近年彼等は思う。

「そういや、僕等あまり外で遊んだ事ないよね」
「ないね、許しももらえないし。」
「・・・じゃあ、いっちょここらで反抗でも起こそうよ」
「反抗か・・・」
フラットの提案にネストラは植物の中の薔薇を見る。あでやかだ。
「薔薇、黒、赤、兵士・・ってなんだっけ?」
「チェス?いや、チェスは黒と白色だっけ?」
「・・・・女王、そう、赤の、女王だ」
「赤の女王?どうしたの、ネストラ。君、熱でもある?」
ぺちりと、ネストラの額にフラットが手をやった。熱は無い気がする。

「ないよ、けど、母様の薔薇を見てたらそう思えてきたんだ。そういう話無かったっけ?」
「うーん古典とか現代文じゃない気はするけど・・・なんだっけ?」
悩んでいるとガサッという音がして音の方向を見ると顔見知りの郵便屋だった。

「ああ。良かったお坊ちゃん達いらっしゃいましたか。お手紙です、御両親宛に」
「ご苦労様、シュルツ」
「いえいえ、ああそうだ。これどうぞ、近所の菓子店の飴ですけど絶品なので」
オレンジ色とピンク色のラッピングされた飴をそれぞれの手に落とす。
ネストラがじいっとその飴を見ていると、では、とシュルツが帰りそうになって、フラットが半ば叫ぶように尋ねた。
「ねえシュルツ!赤の女王とか黒色や赤色の兵士が出てくる話って知らない!?」

一旦彼は止まり、悩むような仕草を見せて帽子を被りなおし、大声で返す。
「・・・類似というだけでいいならありますよ!」
「なあにー!!」
「”鏡の国のアリス”!!」

ぽろん、と完璧すぎる屋敷の中の一室、母様の部屋からオルガンの音が鳴った。

Re;A repercussion sound of memory.
DATE: 2009/08/12(水)   CATEGORY: 店主の宝物庫
全ての統治者へ。
―I do not have noble ideas.

Only as for person, it that a thing is merely in the neighbor which lasted.

カランとガラス製のコップの中で氷が溶けた音がした。
元々”蜂探し”の仕事だったはずだが目の前では一国の王と、店の従業員が回転銃のように口論をしていた。隣りでは、探し人のご令嬢がぽかんとしてその口論を見ていた。

「ねぎらえ!敬え!たたえろ!」
「褒め称えろって口に言う人を褒め称えるって並みの所業じゃないですよね」

「そこら辺はオールオーケイだ、イヴ。お前は出来る子だ!」
「すいません、私は出来ない子です。褒め称えるどころか罵倒する事くらいしか出来ないんです。本当にすいません」
「明後日の方向向いて言うな!」
おそらくだが、この回転銃のような口論は未だ続く気がする。というかして成らない。するとアーサーがひたりと自分とご令嬢を見た。
「ルーそっちの人は?」
「”蜂探し”の仕事です」
「シャルロッテか・・、そっちのお嬢さん」
「・・・・なんです?」
令嬢はアーサーが何者なのか分かっていないが為に、ツンとした態度をとった。

「あんた、極東の国の宝石商の娘だろう?」
「なっ・・・!?」
アーサーがけろりと言い放つと令嬢は唖然とした。

「アーサーさん何でこちらの方のこと知っていたんです?」
「城を出てくる前に宝石商の娘が政略結婚に嫌気がさして逃げたっていう話を聞いたんだ。で、”蜂探し”といえば失せモノ探しで100%見つかるっていうオリガミつき。この2つを結び付けない方が可笑しいだろう。」
「それでルーさんとこちらの方はもめていたんですね。納得です。」
「まあ、好き勝手にやれよ。止めはしないさ。イヴ、ミネストローネとオムレツ」

「・・・っ、事情を知って止めないなんて貴方は非常識です!」
令嬢が吠えた。アーサーとイヴニアラが令嬢を見てお互いに顔を見合わせ、そして

「「あははははは!!」」
「なっ・・・・!」
「いいですか?ご令嬢さん、自分で勝手に逃げてきて、勝手に生きようと思ったなら、自分でなんとかしなくてはいけませんよ。途中で誰かに手助けを求めるなんて、それこそ、非常識です。」
イヴニアラがアーサーと笑った後、凛として言う。

「世界が自分の思い通りに動く事は決してない、動いた思えても、それは世界が動きたかったから。ただそれだけの話だ。」
アーサーが止めのように言い放ち、パクリとオムレツを口へ運び一息ついて独り言のようにもらす。

「まあ、時間はある。今度は、逃げてくるのではなく確りと話をつけてもなお、こんな風にされるというなら別問題だが」
その言葉にイヴニアラだけが『悪知恵良く働きますねえ』と洩らした。

「当たり前だな、俺は暴君だから」
この人は、こうやって世界を攫っていくのか。ルーはぽかとんとそう思った。
DATE: 2009/08/10(月)   CATEGORY: 店主の宝物庫
蝉鳴き。
どろりとまとわりつくような暑さがルーにまとわりついていた。

「畜生・・なんだたって、こんな時に娘探しなんか・・」
ルーの居る”蜂探し”は失せモノ探しを生業としていた。ボスであるシャルロッテに仕事だ、といわれ渡されたのは一枚の写真。

『写真は他国の良い所ご令嬢なんだが、政略結婚に嫌気がさして3日前に脱走したんだと』
『要するに、何時もどおりの仕事でしょう』
『ははっ、気をつけろよ。気の強いお嬢さんらしいから』

居る場所の目星は既に他の奴がつけておいたらしいのだが、まさかあの店とは。壁に寄りかかりながら、ルーはその店の扉を引き中へ入る。

「いらっしゃいませ・・あれ?ルーさん、今日和」
カウンターの中に以前自分を手酷く痛めつけた女性イヴニアラが挨拶をした。痛めつけたといってもあれはこちらの方が有利だったのにも関わらずだ。

「今日和イヴニアラさん。一つお聞きしたい事があるんですが、この女性来ていませんか?」
「・・・・ああ、その方なら」
彼女は人差し指をこちらから見て、左にスライドすると、「こちらに」彼女が言うと同時に女性も反射的に逃げようとしたがこちらが腕を掴むのが早かった。

「・・尻尾を出しすぎですよ、お嬢さん、雲隠れするならもっと上手くやらないと」
暑さに参っていて声が少し枯れていると、イヴニアラが水を差し出してきた。

「どうぞ?外熱いですからね。まあお互いに何があったかは知りませんけど、落ち着いてください。」以前会った時とまったく違う。おだやかだ。
「・・・っそうよ!放して頂戴!」 ぺしりっと掴んでいた腕を叩かれた。

「逃げないと、お約束していただけるなら放しますけどね」
「逃げないわ!」
「・・・・痴情のもつれか何かですか?」
「「違います!!」」
「違いますか、この前のフランシスさんの劇みたいなのかと思ったんですけど」
イヴニアラが流し場の方にくるりと向くと、女性はこちらに向かって吠える。

「どうせ、お父様の差し金でしょう!私は絶対戻らないから、帰って頂戴!」
「そうはいかないんですよ。依頼金は貰っているし、”蜂探し”の名に傷を付ける訳にはいきません!」
「・・・なんか、話噛みあって無い気がするんですけど。」
ルーがそれに対して言葉をかけようとした瞬間扉をあける音がして振り返ると、

「あ?なんでルーが居る・・ってこんな所で痴話喧嘩か?」
「今日和、アーサーさん。お仕事缶詰終わったんですか?」
「そんなにどす黒い笑顔で仕事終わったかなんて聞くのは後にも先にもお前だけだろうな、イヴ」
「褒め言葉ですか?謹んで、返却します」

暴君と聖女の回転銃のような口論が若頭と令嬢を取り残した。

Re:Depression of the young head.
DATE: 2009/08/09(日)   CATEGORY: 店主の宝物庫
夢見。
―棚の上に積もった埃の様に、私は生きている。

「やあ、諸君!ごきげんよう!」
”帽子屋”役、ジズ・オールドマンは挨拶をして長机の一角を見た。

”ハンプティ・ダンプティ”役の双子、ネストラ・ダクティとフラット・ダクティ、”眠り鼠”役、カフィ・ドルテ、そして”アリス”役、アルチェが手品のような事をしていた。

首をかしげていると、ハロルドが説明してくれた。
「”アリス”の特技で色々試しているんだそうですよ」
「・・お嬢さんの、特技?」
ハロルドは彼の表情が見えなかった。目深帽子でただでさえ見えないのに。
「ちょっとみてくるとしよう!」
止める理由もなく、ハロルドはジズがひょこひょこと彼らのほうへ行くのを見守った。

カフィが一枚のトランプを引き、見て『ダイヤの7』とアルチェに向かって言う。
「ダイヤの7です」
カフィはぺらりとカードを双子に見せると『ダイヤの7』の絵柄が書いてあった。
「ていうか、なんで”眠り鼠”は騙す気0なのさ!」
フラットがカフィの服を引っ張りながら駄々を捏ねるように言う。

「めんどくせえだろーが・・・テメー等でやれよ」
「協調性0だよ、兄弟」
「”眠り鼠”のお兄さんの個性だよ、兄弟」
そんな会話が広げられている一方でアルチェは机のシュークリームを取りもぞもぞと食べている。

「やあ、お嬢さん。随分と茶会になれたね」
「待っている間に、なれました」
「ははっ、良い事だ。で、お嬢さんの特技というのは一体何なんだい?」
ジズがアルチェに尋ねると、アルチェは最後のシューの欠片を口に放り込んでから

「”嘘が分かる”こと」
ピシリッとジズは固まりしばらくしてから、ジズは興味深げにアルチェをみていう。
「それの検証、だった訳かな。さっきのは」
「後、活用法を探してもらっている最中だったんです」
「成る程・・・交渉で随分と役に立ちそうだが」
「それもそうですけど、私が真っ先に思いついたのは・・・・、」
「思いついたのは?」

「”犯人”探しくらいです」
そのとき帽子屋の表情が、誰からも分かるくらいに哀しく歪んだ気がした。

Re:About the way of life of that person.
DATE: 2009/08/08(土)   CATEGORY: 店主の宝物庫
矛盾ロジック。
―子守唄が誰かを守ってる、彼の握っている剣が誰かを、奪う。そんなこと。

ガリガリガリガリと彼は勢い良く万年筆を握り締めて、原稿用紙らしきものに向かっていた。
その鬼気とした迫力をみて、アルチェは彼も大変な人間なのだろうと納得した。

時計が無い為に正確な時間こそわからないものの、およそ7分ほどまえに”三月兎”役のハロルド・クーターはやってきた。彼は皮カバンを抱えていて”穴”に落ちた事を認識するやいなや長机にすわり、カバンから大量の原稿用紙を取り出し万年筆を持って、今にいたる。

「・・・・おっそろしいな」
”眠り鼠”役、カフィ・ドルテはその光景をみて、呟いた。

双子も同感だといわんばかりに、頷き”ハンプティ・ダンプティ”役の双子のネストラ・ダクティはハロルドのコップの底が見え始めると紅茶をとぽとぽとついでやっている。
「かいがいしいですね」
アルチェがネストラに向かって言うと、フラットがパンプキンパイを食べながら

「そういえば、”アリス”のお姉さん一つ聞いてもいい?」
「・・・・何でしょう?」
「なんでお姉さん”穴”に気付いてたのに、飛び込んだのさ。」

確かにアルチェは気付いていた。もし飛び込まなければこんな訳の判らない事には巻き込まれなかった。だったらアルチェが飛び込もうと思った理由はおそらく。

「夢のみれない私でも夢をみる事が出来ると思ったから」
きっぱりとそう云った。その言葉に長机に座っていた全員が顔をあげてアルチェをみた。

「・・・・初めて、」万年筆を握り締めて、原稿用紙に向かっていたハロルドが喋る。

「初めて会った時から思っていましたが、貴方は”夢をみたがっている”。何故です?」
「・・・ただのくだらない、私の特技と”あだな”のせいでしょうか」
「特技?」
カフィ・ドルテが眉間にしわを寄せ、尋ねる。

「そう、特技。”嘘がわかる”というどうしようも無い特技と、”アリス”なんて夢みがちな子のあだ名をつけられる・・そんな私の矛盾したものからです。」
「”嘘がわかる”?」
フラットが疑わしそうにアルチェをみて、しばらく熟考するように上を向いてから、

「僕とネストラは双子だけど、僕が兄さん」

アルチェはしばらくフラットをみて、「ダウト」と言うと双子は顔を見合わせて降参、と言った。

「マジかよ」
「マジです」

「・・・成る程、質問に答えてくださって有難う御座います」
「・・・どう致しまして」
「一つ忠告をさせていただいても?」
「はあ・・どうぞ」
「・・・・あまり気負わない方が良いですよ」
「ご忠告どうもありがとう、”三月兎”さん」

アルチェはその言葉にただ、笑うしかできなかった。

Re:sort hert
DATE: 2009/08/06(木)   CATEGORY: 店主の宝物庫
主役アルファ。
―冷静と情熱が在るように、彼らもまたあるのだ。

「最悪」
「だよね」
品の良さそうな少年二人が口々に喋った。

「いちゃもん・・」
黒髪に赤色のドレスの女性が的確とも言える言葉を言うと、双子の片割れが女性を睨んだ。

「・・・喧嘩はよしませんか?」
私、アルチェはお互いの行動を見ながらそうもらした。現時点で止める人間が少ない事からの行動だ。

笑いながら止めれそうな帽子屋さんや、冷静に止めそうな三月兎さんが居ないし、眠り鼠のカフィ・ドルテはため息をつきながらもその光景を観ていたし。

「何、お姉さん。止めないでよ。」
「不必要」
私の立場って何だろう、とふと思ったが新入りという役割が直ぐに浮かんだので黙る。

「いっつも一番乗りで来る女王とは違って忙しい僕ら双子は父様や母様の理想どおりにならなきゃならないのに、何でこんな茶番に付き合わなくちゃいけないのさ。」
アルチェはなんだかこの双子の見分けが出来た気がしていた。おそらくこうやって捲くし立てるほうがフラット・ダクティ、そして―

「フラット、女王にあたったって何も生まれないよ」
フラットを宥める方が、ネストラ・ダクティなのだろう。

「・・ふんっ!」
「・・・・休戦」
アルチェはカフィ・ドルテを観て『あの二人は以前からああなんですか?』と尋ねてみた。

「子供らしい、喧嘩なんて止める気すらおきねえよ」
それで黙ってみてたのか、と思い今度からは自分もそうしようと思っていると、

「”アリス”のお姉さんは、止めなきゃ駄目だよ。”眠り鼠”は止めなくてもいいけど」
ネストラ・ダクティが心を覗いたかのように、告げる。損な役をしろということか。

「だって、”新入り”のアリスだもの。郷に入っては郷に従えっていう感じかな?」

そんなことわざ知りたくなかった、とアルチェは思いながら一刻も早く帽子屋と三月兎がやってくることを願った。

Re:she is not like lie.
DATE: 2009/08/05(水)   CATEGORY: 店主の宝物庫
脇役オメガ。
―この世の中は主人公というのはありすぎていて故に脇役に救われる事を忘れる。

どてっと言う音にアルチェは周りを見渡した。すると先ほど出て行った例の穴だった。

「・・・・・一日も経ってない気がする」
「おい、そこぼんやり座ってっと次が来るぞ」

声の方向を見ると”眠り鼠”役カフィ・ドルテが頬杖をつきながらこちらを見ていた。

「次?」
「そこが大体落とし穴に落っこちた奴等が落ちるポイントなんだよ」
「・・そんなのもあるの?」
「あるから、あぶねえって言ってんだろう」
それもそうか、と思いアルチェはそこから普通の速度で退き、たくさんのお菓子やティーポッドなどが置いてある長机に適当に座った。

「・・・・双子とウサギさんと帽子屋さんは?」
「まだ落っこちてねえんだろ」
そっけなく言われたために、アルチェは周囲を見渡すと彼の隣りに何かあった。死んだようにピクリとも動いていない。何か新種の生き物でも生まれているんだろうかと、考えとりあえず聞いてみた。
「それは?」
「あ?」
「あなたの隣りにある、それ」

彼は横を一瞥すると、
「ハートの女王さ、毎回一番最初に居るんだよ。この姉さんはな」
「帽子屋さんは彼女と会話がしたいって言ってたけど」

「絶対に無理だな。」
「・・どうして?」
「お前が来た時から、この姉さんが会話らしい物してたか思い出してみろ」
そういわれると、全くしてないような気がした。
「・・・・してない?」
「というか、会話が嫌いなんだよ。こっちがボール投げたら、この姉さんはキャッチはするけどそこでストップだ。投げる事が難しいんだよ、シィーンの場合な」
そこで初めて、彼は彼女の名前を出した。

「ボール投げが難しい・・・・例え上手いですね」
「・・おちょくってんのか?」
「いえ、純粋にそう思ったんです」
そう言うと、彼は不思議な顔をして私を見た。

「?どうかしましたか・・・?」
「いや・・・・、なんでもねえ」
「眠り鼠・・、喜色満面?」
何時の間にか"ハートの女王"役シィーン・プラメイが起きていたらしく尋ねた。

「違う!」
なんだったんだろう。

Re:A delicate mouse.
DATE: 2009/08/04(火)   CATEGORY: 店主の宝物庫
―誰かになりたいと思うときはあるけど、このままでいいと思うときも少ないけどあるんだ。

「物盗り?」
美里の家に訪れると、美里は氷嚢を後頭部に乗せて器用に朝餉を食べていた。

「最近そこら中で起こってるんだとさ」
「へぇ・・、でも何で知ってるんだ?そういう野次馬する奴だったか?お前」
美里が言って尤もだ、と思いながらも首を横に振る。

「いいや。昨日筑紫先輩と大学であったらそんな事があってると話してくれたんだ」
そう話すと、美里はたくあんを箸で掴んでポリポリと食べながら考え込んでいる。

「興味あるなら、詳しく話そうか?」
「良いのか?」
「僕は野次馬は好きではないけど、美里は少し遠めに野次馬をするだろう?」

そう言って見せると、美里は頭の後ろを困ったように少し掻いて頼む、といった。


「”能面”?」
「そう、あくまで証言の内だけど」
「・・・・、そうか。うちは親知ってるかな・・物盗りがあってること」
「どうだろう、うちは元々玄関に人が居るから、まず盗られないけど」
「・・・心配だな、後で言っておこう」
「そうすると良いよ、美里」
「そういや、何で筑紫先輩はそんな事調べてるんだ?」
「ああ、犯人を捕まえようかと思ってるとか言ってたけど」

ぶほっとお茶を啜っていた美里が器官をやられた。

「犯人・・捕まえるって・・あの人は・・げほっ」
「不思議だからね、まず同時に起こっている物盗りの数も半端じゃないし・・複数犯と考えるならどうして狙いを絞ったりしないのか、それに、高級品の売上から食糧を買うといっても元が元だからお金は莫大なはずなのにどうしてあえて食料まで盗るのか・・」
「まあ、そこもあるけど・・なんでここ限定なんだ?」
「限定?」
「限定されてるじゃないか、盗られているのはこの地域だけだろ?・・普通危なくなったら他所へ逃げて他所でまた別な鴨を見つけた方が安全じゃないか」
「・・・・それもそうか」
納得してポンと手を打つと、古い、と美里に言われた。

「そういえば気になってたんだけど、何で氷嚢?」
来た時から疑問に思っていた。風邪でも引いたのかと思ったが本人は至って平気そうだし。

「・・・転んだんだよ、めずらしく早起きしたら」

・・・・・、少しの間が置いてから夏雪は友人の愚考に笑い出した。

「笑うな、馬鹿!」

『旦那、それは旦那自身に振り返ってくる言葉ですぜ』
橙色がそう云ったのは、夏雪が帰ってからすぐの事である。

Re;The place that was separated from a wish in fact.

((↑願から尤もはなれた場所。
DATE: 2009/08/03(月)   CATEGORY: 店主の宝物庫
為。
―誰かに伝えようとしていた事を、私はもう忘れてしまった。

もぐもぐとご飯とおかずを食べながら光也は兄のことを考えていた。明らかに挙動不審だったし家でスッ転ぶなんてありえない、と。

「光也どうしたの?そんなに眉間にしわを寄せて気分でも悪いの?」
そんなにしわを寄せていただろうかと少し考え込みながら母に笑って平気だと言う。

「そう?体調が悪いなら言ってね、美里の氷嚢はどうしようかしら・・?」
「あっ、それだったら私が行ってきましょうか?」
「でもいいの?学校に行く時間でしょう?」
時計を見ると本当に行かなければいけない時間でどうしようと悩んでいると今度は母が笑って。
「いいのよ、私が朝餉と一緒に持って行っておきますから」
「・・お願いします、お母さん」
「はい。気をつけて、いっていらっしゃいね」

学校へ向かっていると店の前で何人か人が固まって話し合いをしていた。
「何か遭ったのかな・・・?」 
「おうとも、遭ったぞ」
独り言が会話になっていて振り返ると兄の先輩である筑紫が居た。

「つ、筑紫さん・・!吃驚したじゃないですか!」
「そんなに驚かせるつもりは無かったんだが、驚きすぎじゃないか?」
「普通の反応です!・・・筑紫さんは何かご存知なんですか?」
「まあ少々、だがこのまま喋っていると学校に遅刻するな・・歩きながらで良いか?」
「そうしていただけると凄く嬉しいです」
「じゃあ、そうしよう」
にこりと筑紫さんは笑いながら、歩き始める。私もそれに倣った。

「実は最近物取りが頻繁に起こっていてな」
「物取り・・ですか?」
「そう。さっきの集団は野次馬も居るだろうが物取りの被害者と丁度物取りに遭った店主で、ここ3・4日間の出来事だが種類厭わずで被害はとても大きくなっている。被害内容は食べ物が一番多いんだが、一方では高級品も盗まれている」
「あれ?どうして筑紫さんはそんなに詳しいんですか?」

「事件が起こった頃から店の人たちに捕まって愚痴を聞かされてな・・で犯人を見た人たちの話によると曖昧な点も多いが共通してる事は”能面”をつけたガキかな」
「・・・”能面”をつけた子供?」
「ああ、それにしても数が多いし金目の物を盗むなら単一に絞って売上で食糧を買い集める事なんて出来るのに何故か、わざわざ食料まで盗んでいる・・不思議だ」

「筑紫さん、そんなに情報を集めてどうなさるんです?」
「ああ、犯人を捕まえようかと思ってな。どうにも分からない事は自分で動いて確かめるっていうのが私の鉄則だから」
「分からない事は・・自分で確かめる・・・」
「よいことだろう?」
「・・・・筑紫さん、私も、犯人探しをお手伝いしてはいけませんか?」
私が言った言葉に案外と筑紫さんは驚いておらず、「いいぞ」と快活に言った。

「だが、あんまり私のように無茶はしない、これが条件だ。良いか?」
「はいっ!」

Re:A come-from-behind drama.
DATE: 2009/08/01(土)   CATEGORY: 店主の宝物庫
永。
―全ては、あなたのためにある。

「あらあら、たんこぶになってる」
母が後ろ頭を見てそう呟いたのを聞いて、光也も覗き込んだ。

「本当だ、凄く腫れてる」
「美里、氷嚢でも作りましょうか?」
「・・・貰います」
頭のおそらくたんこぶが出来ている辺りを軽く抑えながら美里は言った。

「それにしても顔を洗いに行こうと思ったら兄さんがスッ転んだまま固まってるから驚いたわ」
「俺だって好きで、ああなった訳じゃない。」
美里がそういうと、光也が不思議そうな顔した。

「じゃあ、なんであんな風に?」
どういおうか、迷った。散々自分のことで、妹である光也や両親や、友人にまで心配をかけた。

なのに、また―自分の不幸のせいで誰かを心配させるのは、

「・・忘れろ、光也」
「えっ、あっ、兄さん?!・・・氷嚢はどうするんです!?」
―もうゴメンだ、そんなの。

自分の部屋に戻ると机に置いてある金魚鉢の水を悠々と泳ぐ美しい橙色の金魚が居た。

『おや、旦那。もう朝餉は御済になられたんで?』
どこからとも無く聞こえた声は、橙色という名前のその名の通りの金魚の声である。

「いや、未だだが・・橙色お前さっき変な音を聞かなかったか?何か物が軋んだような・・」
『物が軋んだ音で御座いますか?手前は聞いてはおりませんが・・』

「・・・橙色も聞いていないのか、」
『何かあったんで?』
「ああ、あった。盛大にあった・・・狐の能面をつけた小さい子供のような奴が突風が吹いて俺が後ろにひっくり返った瞬間現れた」
『ああ、では奥方様や光也様が氷嚢、氷嚢と言われていたのは旦那がたんこぶを作りになったからで・・』

「ああ、そうだ・・って違うだろうが!」
『まあまあ旦那落ち着かれてください、それで狐の能面は何か?』
「・・喰われると思ったんだが光也が丁度良く現れてな・・又来るとか言っていた気がするが」
『又来る、旦那を食うためにとも、何か赴きが合って来るとも取れますね』

「・・・前者だけは嫌だがな」
『形はあられたので?』
「いや、光也の声が聞こえた時に直ぐに消えたが」

『旦那、とりあえず朝餉と・・・氷嚢を取られてきてください。それからでも事は平気ですよ』
「・・・・分かった、」

Re;first tones are not listen anyone.

((↑始まりの音は誰も聞けなかった。
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