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DATE: 2009/12/31(木)   CATEGORY: 店主の宝物庫
大掃除の事。
(※以下gdgdが続くよ!)
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DATE: 2009/12/31(木)   CATEGORY: 店主の宝物庫
渦に落とした矛槍の話。
―海神は娘を取られ怒りに暴れ、大渦の中自分の矛槍落としたそうな。

『シロツメ嬢には気をつけることだー』
頭の中で低く小さな言葉が反響していた。毒見するかの如く。間違いではないかと思うかのように。

「また、アンタか・・大学先生よぉ」
何処かうっとおしさのこもった声に振り向けば、顔見知りの刑事が一人立っていた。体格は良かったが、顔が陰気臭いせいか恐ろしくギャップを感じる。

「はぁ、またお会いしましたね。」
「たくよぉ・・、前の安前事件で俺の部下は一人辞めたぜ」

”二人”が”一つ”に戻るのを目の当たりにした、せいなのだろうか。それとも。

「・・それは、お気の毒ですね。」
「いや、気の毒なのはあの人だろうよ。親にも、婿にも、幸せになって欲しかった為なのに両方に裏切られちまった。」

―これで良い。これで良いのです。

「部下が辞めちまったのをあの人や大学先生のせいにしてたら、それこそそこら辺を怨まなきゃ成らない。」
「尤もなご意見で・・。」
「で、現場の説明してもらいたいんだが・・第一発見者は誰だ?」
「あちらに、いらっしゃるんですが・・」

目を向ける方向にはだいぶ顔色のよくなったシロツメ嬢が囲炉裏の前に座っていた。

「ほう、美人だ。」
その言葉に僅かに苦笑してしまった。

「あの美人が第一発見者か?」
「ええ、そして僕が第二発見者です。」
「・・じゃあ、事情聴取と行こうか。おい、お前等は現場だ、現場。」
後ろに控えていた他の刑事たちに言うと、パタパタと刑事たちはオオナキ氏に案内を受け現場へと向かって行った。

すたすたと刑事はシロツメ嬢の横に行くと、シロツメ嬢はその気配に気づき顔をあげた。

「事情聴取をしたいんですがね、大丈夫ですか?」
刑事の言葉にシロツメ嬢は体を刑事のほうに向け立った。

「構いません。いずれにせよ、お話しなくてはならないことなのでしょう?」
「まぁ・・そうですがね、さっきまで喋っていた輩がもう喋らない、っていうのは妙なもんで、本当は一日二日臥して至っておかしかないんですよ。」
「その間に、不信感が増すだけです。」
シロツメ嬢が刑事の言葉をばっさりと切ると、刑事はまずいものを食った表情をした。

「・・随分と頭の切れる美人だ。」
「後半は良く言われます。」
その言葉に又うげっという表情をし、どかりと其処に座った。離れていた方が良いだろうかと思い、離れようとすると刑事に止められる。

「大学先生も其処に居ろ。あんたも”被疑者”なんだぜ?」
「・・はい。」

シロツメは畳を見ていた。じっと考え込むように。そして、顔をあげたときの彼女の表情は迷いが無かった。

「私はお母様から朝食の支度が整ったので皆様を起こしに行くようにといわれました。」
「何時くらいのことですか?」
「7時を少し過ぎたくらいでした。」
「ふむ、大学先生あんたが起きた時間は?」
「僕ですか?7時ちょっきりだったかな・・それから着替えたり布団を畳んだりしていたから、10分はかかってる。」
「・・それで?」
刑事はシロツメに話を続けるよう促した。

「はい、先ずは居間から離れていらっしゃるヒネズ様、ハチチリ様、タマタツ様、ツバメミ様、アイクラ様、ミカハラ様を起こしに行こうと思いました。」
「なんでその人たちなんだ?」
「この家は二つに分かれておりまして廊下が一つだけ繋いでいます―ですが、この廊下は2人が通れるか通れないかという細さですし、皆様身支度にも時間がかかるのではと。」
「なるほど。」
皆会社の経営者で、身なりにも気を使うという配慮故だったのだ。

「そうしていたら、ツバメミ様が背中に矢が刺さっているのを見て恐ろしくなって廊下に座り込んでしまっているとリガキ先生がいらっしゃって。」
こちらに刑事とシロツメ嬢の目線がよこされた為、頷いた。

「それで、シロツメさんを居間にお連れしてオオナキ氏に連絡を取っていただくようにしたのですが。」
「ちょっと待て」
「はい?」
「ツバメミの亡骸が廊下にあったんだろう?」
「そうですね」
「じゃあ、どうやって他の連中はコッチに来た。」
「部屋にはそれぞれ窓があるのでその窓から出ていただいたんです。現場は保持しなきゃならなかったですよね?」
刑事は自分の言葉に呆れたのか、はぁと言いシロツメの方へ顔を向ける。

「一応聞くが、あんたがやったのか?」
陰気臭かった顔の刑事の目がギロリ、と飢えた犬の様にシロツメを見た。

「一応言いますが、私はツバメミ様を殺してはいません。」
こちらも、しとりと怨むように刑事を見た。すると、刑事はすっと立ち上がった。

「まぁ・・亡骸から色々出てくるだろ、それまで此処を動かないで貰おうか。大学先生、あんたもだ。」
「心得てます。」
「嘘臭ぇなあ」
「それも、心得ています。」

Re:The man whom I come from the moon, and princess and a man and the gloom of the delusion habit smell of.
DATE: 2009/12/30(水)   CATEGORY: 店主の宝物庫
渦に魅入られた話。
―嗚呼、無謀にも鳥は渦の中へ掻き消えた。太陽に翼を焼かれたのか、渦に魅入られたのやら。

「ツバメミ殿が・・・ッ?!」
オオナキ氏は半ば叫ぶかのようにリガキが伝えた事を反復した。

この場合の第一発見者となるシロツメは未だ青ざめた表情をしていて、オオナキ氏の妻に支えられていた。

「先ずは・・嗚呼、どうするべきでしょう・・」
「とりあえずは、警察、ですかね。」
そう言うと、オタオタとしながらオオナキ氏は電話の元へと走って行った。

「で、リガキ殿」
後ろから声がしたために振り返ると、ハチチリが何時もの様子で立っていた。

「何があったのか我々にも説明して頂いても?」
「説明する、というには僕は余りにも情報を得ていません。」

「では、誰なら説明できると申すか!」
リガキが肩を竦めて言うと、アイクラが怒声を飛ばした。

「・・、第一発見者はシロツメさんですが・・今の状態では無理です。」
そう言ってシロツメを見るが両の手で顔を覆っている。精神的に来るものだ。

「じゃあ、リガキ殿あんたが分かる範囲内で説明してくれよ。」
「僕が、分かる範囲、ですか?」
「そう、分かる範囲。俺等はさ、知りたいのさ。ツバメミ殿が死んでいらっしゃる、というこの現状をね」
ヒネズがリガキにそう言うと、リガキは少しだけ不思議に思う。

渦が逆巻いているような、誰かにかき回されているような、そんな気分。

「僕が起きて、こちらに向かおうと廊下を歩いていると、シロツメ嬢を先ず見つけました。」

―リガ・・先生っ、ツバメ・・様がっ・・!

「そして、シロツメ嬢の5歩くらい歩いた所でしょうか?其処に、こううつ伏せになってツバメミ殿が倒れて、背には矢が刺さって居ました。」
「ほお・・慌てなかったのですか?」
タマタツが半ば感心するように聞いてきた。

「慌てても死者が生き返って、自分はこれこれこうして殺されてしまったと喋る訳でもありませんから。」
その言葉に、ヒネズやアイクラは豆鉄砲を食らったような顔をした。

「リガキ先生、警察の方にお電話しました。」
「おや、早かったですね。何か指示はありましたか?」
「とりあえず、現場には近づかない事とツバメミ様のご遺体にも触れないこと、そして全員が部屋に一塊になって外部と連絡する事無いようにと。」
「了解しました。」

そうやって頷いたリガキをタマタツが睨むように見ながら口を開く。

「リガキ殿、今はっきりと分かりましたよ。」
「何がですか?」

「貴方が何故あの”安前事件”を解けたか、です。」
「・・・。」

「貴方は”知り”たかったんだ。恐ろしく純粋かつ攻撃力のある源だ。」
「昔よく言われたことがあります。」
知ることが、恐ろしい事なのだと、良く言われた。昔は到底その意味を知ることが出来なかった。

「なら、リガキ殿これは老婆心みたいなものですがね―」
すうっと目を細め、声を小さく低く、タマタツは喋る。

「シロツメ嬢には気をつけることだ。」
淡、と発せられたそれの方がリガキには恐ろしかったのだ。

Re:The man of the delusion habit and the progeny of the dragon.
DATE: 2009/12/29(火)   CATEGORY: 店主の宝物庫
渦の姫様の話。
―渦の中に宝があるそうな。それは、それは、美しい、海神の娘だそうな。

がんっ!という鈍い音が月光の指すある部屋から響いた。

「落ち着きなさいな―。」
「これが落ち着いていられるかッ!何故あのような小娘の悪態を我慢せねばならんのだ!」
「それが”メイ”でありましょうに―。」
「はんっ!堪え性の無い男よ!」
「なんだとッ!?」
「どうでもいいけど静かにしろよ、アンタ等。で、どうすんだ?”あの件”については?」
「どうするもこうするもなかろう!」
「五月蝿いなぁ・・俺はコッチに聞いてんだよ。血が頭に上ったアンタになんか聞いてないさ。」
「っ!」

「そうですね、とりあえずあの方が何のために此処に居るのか、探るとしましょう。」
「探った後はどうする?」
「分かっているでしょう?」
「分かっているが、俺が分かっているというだけで、他が分かっているかは分からんぞ?」
「・・、性根の悪い。」
「それこそ知っているだろう。」

「もし、”メイ”に反対するようであれば速やかに、お立ち退き頂こう。礼を尽くした態度で。」
「了解」
「合い分かった。」
「承知―。」

それから人が去っていく音がして、すとんと襖が閉まる音がした。

「それにしても何故あの方は此処に来たのだ・・、あの方のメイなのか?」

自問する声が静かな闇に呑まれた。


とん、とん、とん、鞠を地面に突くような音が広がる。

とん、とん、とん―・・。

しゅんっ、と風を裂く音がした。そして。


ちゅんちゅん、と雀が鳴きながら朝日が指す部屋にてリガキは起きた。

起ききっていない瞼をこすり、欠伸を一つ漏らしながらリガキは襖を開ける。

「・・快晴だなあ」
真っ青な朝であった。清清しすぎるくらいじゃないのかと思いながら身支度を整えて廊下を歩む。

たすり、とリガキは歩む足をとめた。目の前にはシロツメが口を両手で塞ぎ青ざめた表情で廊下に座り込んでいた。

「シロツメ嬢、どうかなさいまし―」

彼女の視線の先、其処には。

「・・リ・・キ先生、ツ・・ミ様が・・っ!」

ツバメミが背中に矢を射られ、絶命していた。

Re;Come from a man and the moon of the delusion habit; the dead body of the swallow which there are no princess and worth in.
DATE: 2009/12/28(月)   CATEGORY: 店主の宝物庫
渦が隠れた話。
―嗚呼、見て御覧な。あの大渦何処かへ消えちまいやがった。何だってんだ。

夕餉を取り、リガキはヒネズとツバメミそしてオオナキ氏と酒盛りをやっていた。他の面々は遠慮すると言うと各自おのおのの行動へ移っていった。シロツメ嬢が赤い顔をしているオオナキ氏に声をかける。

「お父様、お母様が心配されております。そこら辺でお止め下さいまし」
「・・おおシロツメ、それはすまなんだ。やはり人が大勢居ると楽しかったのだ。」
「まあ。」
「ほほ、それでは皆様この老いぼれ失礼させて頂きます。」
ぺこりと頭を下げオオナキ氏はシロツメに手を引かれる。

「夜風にお気をつけられよ、ご老体」
ツバメミがぽんと言葉をその後ろ背に声をかけた。

そして角を曲がった為に姿を二人は消した。

「まあ、俺もあの人のことを言えなんだが。」
ツバメミが酒を煽ってからぽつりと漏らす。その言葉に不思議そうな顔をしていると、けろりとツバメミは笑う。

「俺はあの人よりも二回り違うくらいで、この中じゃ一番の年上なのさ。」
「そうなんですか?」
「ちなみに、一番若いのはミカハラ殿だろうな。その次に、ほれこのヒネズ殿だ。」

ヒネズは既に撃沈していた為に、指を指すだけで終る。

「それにしても、リガキ殿」
「はい?」
「リガキ殿はシロツメ嬢やミカハラ殿にかわれていると見える。」
その言葉に驚いて、ツバメミを見るとけろけろと彼は笑った。

「驚く事は無いでしょう?あの安前事件を解いた事、俺も高くかわせて頂いてます」
「・・何故?」
「何故に何もない。純粋にそう思うんですよ。あれは、貴方のような御人で無ければ解けなかったのでは?」

”普通”で終るはずの話が、”普通”ではなくなった、あの事件はそう言う事件。

”一つ”が”二つ”に、そして、”戻る”話。

「僕は”唯の人間”なんですがねぇ」
そう言いながら頭を掻くと、ツバメミは又けらりと笑った。

「”唯の人間”か、そりゃあいい!なら俺は、」

どすり、とした目。けらりと笑う。

「”甲斐なし燕”ってところだなあ」
「甲斐なし燕?」
「やること、為す事、全部甲斐なしだ。」
「・・何か悪い事でもあったんですか?」
「あったな。」
悪い事があったというのにけろりと笑うツバメミは至極真面目そうにリガキに話す。

「此処に居る時点で俺の悪運も何も尽きたのさ、リガキ先生。」

そう言うと、ツバメミは又けらりと笑った。そして、ヒネズの首根っこを掴み引きずっていく。

「・・”渦”か。」
ぽつりとリガキが呟いた言葉は直ぐに無音になった。

Re:The swallow which there is no worth in and the man of the delusion habit.
DATE: 2009/12/27(日)   CATEGORY: 店主の宝物庫
渦になった話。
―ぐる、ぐる、ぐる、嗚呼、果てない。

長方形のように縦に細長い部屋に旅館のように一人ずつ作られた料理が並んでいた。その光景を見て、リガキは思わず腹の虫をならさずにいられなかった。自分は大食いだと言う事を自覚している故にだ。

すると、くすくす、と隣りにいつの間にか立っていたシロツメが笑った。

「聞かれてしまいましたか・・」
「おお?リガキ殿は大食漢だったのか?」
隣りの居たのはヒネズらしかった、先程のように砕けた話し方をする。

「リガキ殿で無くとも、腹は減りますよ。」
弁護してくれたのはハチチリだった。こちらも先程と変わらず穏やかだった。

「席はどういう具合に座れば宜しいのかな?」
ツバメミがご飯の入ったひつを持ってきた侍女に尋ねた。

「ええと、あ、旦那様お席はどのように・・」
「そうだなあ・・」
ふむという具合にオオナキ氏は短い髭を擦っていた。

「適当、でいいのでは?」
「適当?」
アイクラがその発言に皺を寄せた。まずかっただろうか。

「アイクラ殿、そう皺を寄せられるな。恐ろしい顔が、鬼のようになっている。」
「む・・・」
「良いんじゃないですかね、適当。」
タマタツがアイクラを見てそう言うとアイクラはむっとした表情で唸りそれを見たヒネズはこのことに関してさじを投げたらしい。

適当、という文字の元座った面々にオオナキ氏は先ず頭を下げた。

「皆様、質素な食卓ではありますがどうぞお召し上がりくださいませ。」
それを皮切りに食事の音が広げられる。

鮎の塩焼きをもりもりと食べていながら、ふと思う。

”静か”だ。静かなのだ。何故ここまで静かなのか。ふむ、と味噌汁を啜る。

油揚げに豆腐という定番な気もするが、美味しい。オオナキ夫妻は真ん中に座ったシロツメ嬢と談笑している。

他の面々は?ぼり、とたくあんを口に放り込むと、「リガキ先生」と声を掛けられる。

声の方向を見るとミカハラが居た。

「大丈夫ですか?」
「・・・・と言いますと?」
「いえ、ぼんやりとなさっていたのと、お茶・・」
そう言われてお茶を見ると、侍女が急須を持ったまま一時停止していた。

「反応してませんでしたか・・」
「全く。」
「ああ・・すいません」
侍女に頭を下げながらお茶を入れてもらう。

「リガキ先生は考え事をしている時は恐ろしいですね。」
「・・顔がですか?」
般若のようになっていたのだろうか、と思いミカハラに尋ねると、ミカハラは初めて表情らしい苦笑を作っていいえ、と言った。

「目が怖いのです。」
「目、ですか。」
「はい、猟犬の様な目をしておらっしゃいました。」
ミカハラの発言を話せば絶対にあの友人からは、猟犬の方がもっと働くな、といわれるだろう。間違いなく。

「猟犬・・生憎僕はそんな俊敏ではありませんよ、ミカハラ殿」
「いいえ、リガキ殿。貴方はこの中にいるどの誰よりも賢い」
淡、とミカハラは紡ぐ。

「そして、その誰よりもこの”結末”を知っていらっしゃるのでは?」

「シロツメさんにもさっき言ったんですが、僕は唯の人です。」
「・・唯の、人。」
ミカハラはぽつりとそう呟くと侍女に湯飲みを渡した。

ぐる、ぐる、ぐる、ああ、静かに渦巻いているこの気配。訳の分からない。

Re;The man of the delusion habit and the person who live in the sky.
DATE: 2009/12/25(金)   CATEGORY: 店主の宝物庫
渦の子守り歌の話。
―誰が願ってあの怪物を生み出したのか。嗚呼分からぬ。

すたり、すたり、と広い木造建築の屋敷をシロツメは盆を持って練り歩いていた。

練り歩く、と言っても台所へ向かっているだけだった。

―やはり、リガキ先生はお母様の仰る通りにして良かったかもしれない。
と彼女は内心安堵していた。

先ほどリガキに彼女が言ったことは全てだった。赤ん坊の頃に路地に捨てられていた自分。そんな自分を拾ってくれたオオナキ老夫妻。あの人たちには感謝しきっても仕切れない。

けれど、会いたい。会ってみたい。会って、何をしたら良いのか未だ分からない。

会った瞬間に自分は何をするんだろう。呪いの言葉でも吐きかけてしまうだろうか。それとも―。

シロツメは別の可能性を頭に思い浮かべた。そして、直ぐにそれは消えた。というのも、目の前にはミカハラが縁側に座って庭を、先ほどのリガキのように見ていたからだった。

違うかもしれない、と思ったのはやっぱり”勘”だろうか。

「ミカハラ様。」
シロツメが声をかけると、ミカハラはゆったりとした動作でこちらを見た。

「シロツメ嬢。どうかなさいましたか?」
「いえ、お茶でも宜しければいかがかと思いまして。」
「・・お茶、ですか。」
彼はふっと現実に連れ戻されたような、そんな顔をしたとシロツメには見えた。

「ええ。其処を曲がった所に台所があるので良ければですが。」
「では頂きます。」

お茶を入れると、ミカハラは又庭を見ていた。
「ミカハラ様、お茶が入りました。」
「・・有難うございます、シロツメ嬢。」
「いえ。」
そう言ってことりと、茶の入った湯のみを置く。自分はと言えば先ほど飲んでいた為、さすがに入れなかった。

そしてミカハラの視線の先を見る―、が見えない。というより、視線の方向が分からなかった。曖昧なのだ。

ふと、シロツメは彼に言葉を投げた。

「ミカハラ様は帰る場所が在りますか?」
そう言うと、ミカハラは驚いたようにこちらを見た。

「・・シロツメ嬢はお帰りになられたいのですか?」

「帰っても良いといわれる場所がありますなら―其処が海でも土の中でも、仮え月でも、私は帰りたいです。」
それは意志。何度でも、尋ねられたら答えていく。

そう言ってシロツメは目を伏せた。そして空けた瞬間に見たミカハラの顔は明らかに

「貴方の帰る場所が見つかるよう、精一杯身を尽くさせて頂きます。」

苦悶が浮かんでいたのを、認めたくなかったのはやっぱり、勘なんだろうか。

Re;The person whom I come from the moon, and live in the sky with princess.
DATE: 2009/12/24(木)   CATEGORY: 店主の宝物庫
渦の中の人魚の話。
―渦に巻き込まれたら、あの人魚でさえ溺れると云う。そんな、場所。

その後場は一時お開きのような形となった。

最初は、屋敷の中を回ってみようかと言う探検心が出たがあまりの広さに挫折し大人しく縁側に座り庭を眺めていた。普通の庭よりも緑が輝かしいのは日の当たる設計になっているからなのか、と一人ごちてみる。

すると、かたりと小さな音とお茶の匂いがした。

「・・シロツメさん」
「ふふ、驚かれました?」
「少しばかり」
「それは失礼な事をしました、お茶を入れたので良ければ頂いてくれませんか?」
「では、遠慮なく」

お茶をするすると飲んでいると、かたりと次は大福の載った小皿が置かれた。小首をかしげていると、こちらもどうぞ、と言われ頭を下げると、シロツメも縁側に腰掛けするするとお茶を飲み始める。

「リガキ先生は、不思議に思われないのですか?」
シロツメから唐突にそんなことをいわれた。

「何を、でしょう?」
「先ほどの私の説明で御座います。」
悪戯めいた笑いをこちらに向けるシロツメにリガキは先ほど、を思いだす。

「”私の為に、黄泉の道へと渡ってはいただけませんか?”」
彼女があの時と同じように、ぽつりと言う。

「・・違和感を感じなかった、といえばそれは嘘になります。あなたは・・・あの時本当にそう言っているように僕には見えました。」
リガキがそう言うと、彼女は啜っていたお茶を飲むのを止めてにっこりと笑った。

「さすが、ですね。リガキ先生。私はあの時本当にそう思っていました。」
「・・どうして、そのような事を?」

「貴方は―今までの方と違うんですのね。」
彼女は淡、と言った。脈絡の無いような、そんな。

「違う?滅相も無い、僕も唯の人ですよ。」
「ご冗談のお上手ですこと。けれど、これは冗談では済まされませんことよ、私は願いを叶えます。」

それは”実の両親”を探す願いだろうか?

「では、相対すと言う事で一つ。」
「本当にお上手ですね。」

「ああ、先ほどのご質問にお答えしていませんでした。私勘は良いんですよ。」
「勘?」
「はい、勘。その勘が告げますの、”不埒者”が居ると。」
「・・だから、あの時ああいったのですか。」
「ええ。本当に私はお父様やお母様に感謝をしております。ですから、もし私のこの事が原因で、あの方たちに飛び火がかかるような事は、したくありませんから。」

揺んでなんかやるものか、という意志が彼女からは見えた。

Re;Come from the moon; princess and the man of the delusion habit.
DATE: 2009/12/23(水)   CATEGORY: 店主の宝物庫
渦巻きの話。
―舟人よ、渦の中何があるか知りたいか。けれども知った後はどうなるか、分からない。

「シロツメ嬢、私達の自己紹介をさせていただいても?」
並んでいた男たちの一人がそうシロツメに言うと、シロツメはリガキに構いませんか?といった。

「ええ、お願いします。」
リガキがそう答えると、先ほど言った男ではなく一番右端に居る若い男が喋り始めた。

「お初にお目にかかる。俺はヒネズと言います。オオナキ殿が今経営しているような、鉄を扱った会社を経営してます。」
パッと見、一番若そうな人だとリガキは思っていると、ヒネズがこちらを見た。

「先日の安前事件の話は新聞で読んだが、来られるまで神経質そうな男が来るんだと思っていましたよ」
なんと取るべきかと思っていると、彼の隣りに座っていた男が喋り始める。リレーか。

「ヒネズ殿、先入観に視野を奪われていては人に物を教えることなど出来ませんよ。・・始めまして、ハチチリと申します、古美術関係を扱う仕事をしています。リガキ殿ヒネズ殿の言われる事はあまりお気になされず。人を見れば小ばかにするのが性分のご様子なので。」
「はあ・・」
随分と穏やかな人のようだ、と思っていると違いない、と更に隣りの男が喋りだす。

「初めまして、リガキ殿、ツバメミと言います。料理店のオーナーをやっております。リガキ殿、先ほど出て行った男が居たでしょう。」
「嗚呼、居られましたね。」
「あの方もシロツメ嬢のご冗談も合ったのだろうが、ヒネズ殿の今の様な態度に追い討ちかけられて出て行かれたのです。」
けらけら、とツバメミと名乗った男性は笑う。すると、先ほどから寡黙だった男が口を開く。

「全く持って、ヒネズ殿の自由奔放さには呆れの文字が飛ぶな。お初にお目にかかる、アイクラと言う者です。貿易会社をやっております。」
忌々しいというようにヒネズをアイクラは見ていると、隣りに座っている男がこちらを見た。

「初めまして、リガキ殿。タマタツと言います。宝石を扱う仕事をしております。それにしても、ヒネズ殿の意見に賛成する訳ではないが実は私も来られるまでそんなのが来ると思っていたんですが、探偵小説の読みすぎでしたね。」
場の状況に流される訳でもなく、淡、と自分の意見を吐き出したタマタツを見る。落ち着いているせいか、一番年上に見えた。

「まあ、皆様リガキ先生にそのようなイメージをお持ちでしたの?」
シロツメが可笑しい、と言わんばかりに笑う。

「これ、シロツメ。」
「嗚呼、申し訳ありませんお父様。リガキ先生もどうか、御気を悪くなされないで下さい。」
「いえ、平気ですよ。・・それで、そちらの方は?」

そちら、というのはシロツメが喋り出したからかもしれないが自己紹介の最後の主だった。

「ああ、ご紹介いたしますわ。こちらはミカハラさまで御座います。」
「初めまして、リガキ先生。ミカハラと言います。」
「初めまして」
ミカハラと名乗った青年、な気がする、彼はきれいにお辞儀をした。

「ミカハラ様は、車の会社を経営なさっているそうです。」
シロツメ嬢が付け足すように言うと、ミカハラはそれに頷いた。

「・・皆さん、会社の経営者、なんですね」
揃い踏みすぎていて、ここが一種の何か祝い事の席のようにさえ見える。

「偶然ですよ。リガキ先生。というより、力無くば手がかりの無い両親を探せないでしょう?」
アイクラがそう言って切って捨てると、シロツメがすうっと一歩前に進み出た。

「―本当に皆様、宜しくお願い致します。」
ぺたり、とシロツメが頭を下げた。

Re;Six suitors and the man of the delusion habit.
DATE: 2009/12/22(火)   CATEGORY: 店主の宝物庫
渦潮の話。
―嗚呼誰だ。あの渦の中心で叫んでいるのは。人魚か。はたまた―海坊主か。

運が良かった、としか言いようが無かった。思えば大学は明日から冬休みという時期で休みももらえたのだ。

そしてオオナキ氏の車に揺られ降り立つと、一軒の木造家があった。札には氏の名前が表記されていた。

「・・立派なお宅ですね。」
嘘でも詭弁でも無かった。中に入ると、両側には庭園のような物が広がっている。そして、中央にででんと家が構えられてあるのだ。これを立派といわず何といえばよいのか。

「いえ、それも全く持って不思議なお話で御座いますが、私と妻はシロツメを保護する前までは長屋に住んでおったのですがあの子が来てから物が飛ぶように売れたのです。」
髪の少ない頭を掻いてオオナキは話す。

「失礼ですが、生業は?」
「あ、私は竹細工を売っているのです。」
「竹細工、というと・・ざるとかでしょうか?」
「ええ、最近では竹よりも鉄で出来た網なども売っております。」
そう話しながらオオナキは玄関の扉を開け、ささこちらに、と案内をしてくれる。

そして案内された襖をオオナキが開けようとした瞬間―

「ッふざけるなっ!!」
怒号だ。怒号が聞こえた。オオナキもビックリして襖に手をかけたままで居る。とりあえずオオナキ氏に襖の手を外すよう促すと同時に、襖が勢い良く開かれ、其処から顔を真っ赤にさせた男が一人出てきてどすどすと出て行った。

「・・何が起こったんでしょう」
リガキがポツリと呟くとオオナキはふっと我にかえり部屋の中を見た。

和室に黒い長髪に洋装の女性が静かに佇んでいた。よく見ると女性の真正面には5人ほどの男性が座っている。

「お父様、お帰りなさいませ。」
女性がニコリと微笑む。後ろから光が指している為後光のようにも見えた。

「シロツメや、お前出て行かれた方に何を言ったんだね。」
「私は真実を言ったまで。あの方の器が小さすぎたので御座います。」
ひどい言われようだと思っていると、女性の目が此方に移った。

「お父様こちらの方は?」
「嗚呼、お前にも言ってあっただろう?リガキ先生だ。」
オオナキが答えると、女性はまあと言い立ち上がってこちらへ来た。

「お初にお目にかかります、シロツメと申します。今日は私の勝手な願いの為に、ご足労頂きまして有難うございます。」
「いえ、こちらもどれほど役に立てるかは分かりませんがよろしくお願いします。シロツメさん」

「リガキ先生、こちらへどうぞ」
シロツメと話しているとオオナキが座っていた男性たちのところに座布団をもう一枚敷いてくれたらしい。そしてシロツメの隣りにオオナキは座るとシロツメはにこりと笑い話す。

「皆さまには先ほどお話いたしましたが、リガキ先生にも私の条件を聞いて頂きたいのですが、宜しいでしょうか?」
男性達は静かに頷くとこちらを向いてにこりと笑い。

「どうぞ私の願いの為に黄泉の道を渡っては頂けませんでしょうか―?」
黄泉の、道?

「それはどういう意味でしょう、シロツメさん」
「はい、お父様から私の願い事は既にお聞きになられているかと思います。私はお父様やお母様に拾って頂き今日まで愛情を持って育てていただけた事、とても感謝しております。けれど実の両親に私は会ってみたいのです。」

「ですがその事の為に、皆さまの求婚を逆手に取るのは全く持って非道です。ですから、私は実の両親を一緒に探していただけた方の願いに応じる事を決めました。」

「黄泉の道、とは人が最後に行く道、ですから最後まで一緒に歩んで頂けませんか?と言ったつもりなのですが・・あまり賢い言い方ではありませんでした。」

そう彼女は言うと、にこりと、また笑った。

Re;Come from the moon; a daughter and the man of the delusion habit.
DATE: 2009/12/21(月)   CATEGORY: 店主の宝物庫
渦の話。
渦の話。

呑み込まれてしまえば足掻くどころか息をするのさえ躊躇われる。そんな話。


「オオナキさん?」
「はい」
自分の前に座る老人―オオナキは緊張した面持ちで岩のように体をこおばらせていた。

「ええと僕は大学の講師でして・・、その探偵、では無いのですよ。」
確かにそれに憧れた事は合った。今でも憧れている。が、足りない。故に出来ない。

そして、自分がそう言うとオオナキは悲痛な顔になりながらも頭を下げる。

「ええ、分かっております。けれども私の娘の為にもどうか、なにとぞ、リガキ先生この老いぼれの為と思い頼まれてはいただけませんでしょうか―?」
こうも頭を下げられると言う経験をリガキはしたことが無い。

「その、どうか頭をお上げに鳴られてください。僕はそんな器の出来た人間じゃないんです。」
「いえ、リガキ先生が納得して頂けれるまでこの老いぼれ頭を上げるわけには―ッ!」

そんな会話での格闘がかれこれ1時間続き、リガキは最終的に折れた。

「有難うございますっ!リガキ先生!」
皺くちゃの手がリガキの手を握り、今にも嬉し涙が零れ落ちそうであった。

「ええと、それでそのお嬢さんと言うのは?」
ああ、サカザカにどやされそうだ、とリガキは思いながらも話を聞く。

「ああはい!わたくしの娘、シロツメというのですが―」
「シロツメさん」
「はい。この娘はもう何十年も前になりますが道端で捨てられていたのを私の妻が見つけまして、可哀相だということで今日まで育ててきたのですが―」

「娘は思い悩んでいるようで。」
「思い、悩む?」
「はい、娘はどうやら”実の両親”に会いたいと思っているようで―」
「・・、実の両親。」
「はい・・あの娘の気持ちも分からないでもないのですが・・何しろ一切手がかりが無いために娘は、自分と共に両親を探してくれる殿方をつのったので御座います。」

「・・どうして殿方なのですか?」
「はあ・・、娘はなんと言いましょうか。大層な美人で器量も良いので御座います。それゆえに求婚する殿方が多数おらっしゃったのですが、それで出したのが先ほどの」
「両親を探してくれる、人ですか・・」
何時の時代も人は何が自分にとって有効な切り札なのかを知っているようだとリガキは思った。

「そして、もし見つかった場合その時は、自分はその方の求婚にお受けする。と。」
「それで・・あの僕は一体何をすれば?」
そもそもの疑問だと思う。

「はい、私の妻が先生の先の安前の事件の記事を見まして先生に来て頂いて一緒に探して頂いてはどうか、といいまして・・」
「なるほど・・そのあまりお力になれるか分かりませんが―僕で宜しければお嬢さんの、ご両親をお探しする手伝いさせて頂きます」
「・・有難うございます!!」

渦中の意中の思い人。願いましたる物語は―。

Re:Great crying and the man of the delusion habit.
DATE: 2009/12/20(日)   CATEGORY: 店主の宝物庫
希望の淵で。
カンカンカンカン。

急く様に鳴り響く、電車が来る、と告げる遮断機の音。

そしてガガガガガッ、枕木の上を器用に走り抜ける電車。

けれど、遮断機の前には電車が過ぎるのを待つ人なんて居なかった。

居たらよかったのに。



何で期待をするんだろう、とふと思っても直ぐにそれも掻き消える。

此処はそう言う場所。

一体自分は誰に、何を、期待しているのか。

思い出せない自分が思い出せる自分も描けてないくせに。

「それで?」

嗚呼、またアンタか。

「此処は辛いと思う?」

辛い?そうじゃないだろう。

「じゃあ、何?」

・・分からない。

「分からない、ね。それも良いじゃないか。何もかも分かるなんて神様じゃ在るまいし。」

全部分かるのはいけないのか。

「いけないんじゃないよ。知れない、っていうだけさ。この世のありとあらゆる知識を知ろうと思えば」

言葉を背景に聞いていると、嗚呼また踏み切りか。どうせ誰もいないのにどうして鳴る。

「私みたいに、なってしまうよ。―君。」

カンカンカン。

笑っているのか困っているのか良く分からない顔をした誰かが踏み切りの所に居た。

誰だっただろう。

Re:
DATE: 2009/12/15(火)   CATEGORY: 店主の宝物庫
ガーネット・スター。
「いや、ごっそさんでした!」

にぱっと笑い食べたー!と満足そう言うに明るい髪の女性。

更にその後ろには表情の乏しい青年が「ご馳走様でした。」と言う。

そして、レシートを持って「ほお」と言う顔の整った青年一人。

そのレシートを覗き込んで「!?」となった青年が更に一人。

「食べ過ぎたな・・」としかめっ面をして言う男性一人。

「澪葉一つ聞くけど、お好み焼きでここまで0って増やせるものか?」
「流梨、人間成せばなる生き物ですよ。」
「いやいや、この人数でこの0の数は可笑しい」
「成した結果が反比例したんですね、分かります。」
「いやいや、この0の原因楠本お前と、梔だからな?!」
「育ち盛りなんです。」
「育ち盛りなのか?」
教授がはて、と言う具合に言った楠本に尋ねる。

「なんです。」
「そうなのか。」
「そうなんです。」
「不思議だな。」
「不思議ですね。」
にぱにぱと笑う楠本と冷静に頷く教授の会話に流梨は更に疲れを覚えた。家に無事に帰れるだろうか。

「あ」
澪葉が唐突に声をあげた。
「どうした?」
「いえ、今思い出したんですけど今朝のニュースでそういえば流星群が流れるとか言っていたなと」
「ああ、そういや・・言ってたな・・流れてるか?」
「・・未だみたいです。」
梔が答える。ぱちり、と目を見開いている。

「この中で問題外なのは流梨と楠本ですね。」
「何でですか?」
梔が尋ねると、くくっと澪葉は笑った。

「流梨は眼鏡、楠本はコンタクトですからね。」
「ああ、なるほど。」
「わー仲間ですね!」
「嫌な結束じゃないか、これ?」
「まあまあ」

「来るな」
断定、という言葉に近いくらいに教授が空を見上げながら言うとしゅるん、と光が走った。

「お」
しゅるん、しゅるん、と先を急ぐように駆け走る流星群。

「何か―」
楠本が空を見上げなら言う。

「せわしないんですね、流星群って」

その言葉に笑ったのは、誰だっただろう。

Re;after night
DATE: 2009/12/14(月)   CATEGORY: 店主の宝物庫
来訪者。
―ぽとり、ぽとり、白い光が空を横切っては何かを思い出すの。

「カストル」
「ポルクス」

芝生や雑草の生えたマチマチな広大な野原でその二つの声は響いていた。

『―もう ぐ、流星 とお こ でしょう』

途切れ途切れのニュースがラジオからは流れている。

そのラジオを聞いてむくり、と人影が置きラジオを鷲掴みしてぺしぺしと叩いた。

「電波の問題なのかな・・直して貰ったのに」
「それを直した人の腕の問題じゃないの?」

更にむくりと人影が起き上がり、ラジオを覗き込む。

「じゃなきゃ、年季ね。兄さんがあの会社に入ったときに貰った奴だから、随分経つもの。」
「・・爺さんだったって訳かこれ。」
「おばあちゃんかもね。」
「労わってやればよかったなあ」
「本当ね。」
その声の後、あ、と言う驚きに近い声があがった。

「今、光った!」
最初に起き上がった人影の声が言う。

「・・、あ、光った」
その後に起き上がった人影も続けて漏らす。

「双子座の流星群、ね」
そう言いながらトポトポと言う音がした。魔法瓶からコップにお茶を注ぐ音らしい。

「はい、流星群。」
「お、ありがと」
札がたくさん貼り付けてある右手で流星群と呼ばれた人はそれを受け取る。

「ほい、流星雲。」
「はい、有難う」
しゃらり、と髪に付いた飾りが音を立てるのを気にせず流星雲と呼ばれた人はベーグルを受け取る。

「それにしても。」
「何時見てもの間違いじゃないのか?」
「そうね、訂正する。何時見ても」

「「腹立たしい星ね」だ」

Re:About a source of unreasonable anger.
DATE: 2009/12/13(日)   CATEGORY: 店主の宝物庫
宝石遊びのお片づけ。
「うん、美味い!」
ジュウジュウと鉄板から焼ける音やガヤガヤと色んな人の話声の喧騒が混じっている中、一人の女性の声が響いた。

「美味しいですね、ここのお好み焼き」
にぱにぱと笑いながらその女性―楠本は言うと「そうだなー」と隣りに座っていた流梨がヘラでお好み焼きをひっくり返しながら言った。

「こっちももうすぐ焼けそうだぞ、これ何だ?」
「えびいか玉ですよ、多分。」
澪葉が自分の分にソースをかけながら答える。その隣りでは黙々と梔がお好み焼きを食べている。

「まあとりあえずは、お疲れって事ですよねー」
もぐもぐと熱々のお好み焼きをほおばりながら喋る楠本。

「楠本、ほおばりすぎだよ・・。」
「水ですね、水。」
そう言っていると、一人の男性が此方に来て梔の隣りに座った。

「あっ、教授。どうでしたか?」
教授と呼んだ男性―石榴教授は一瞬きょとんとした表情になった。

「とりあえずアチラ側との話は終ったが・・、その」
「何か問題があったんですか?」
澪葉が尋ねる。

「嗚呼。あの蜘蛛のサーバーだが元、ワールド・クロスで働いていた若者だったらしい。」
「はあ、それがまたどうして」
「雇用切りにあったそうだ。それに腹を立てた若者はワールド・クロスを崩す事を計画し、手始めがあのメール騒ぎだったらしいな。」
「なるほど、世間の波風にあおられた・・納得です。」
「とりあえず今は警察で事情聴取などが入っているらしいんだが、そのワールド・クロス側もこの状況に半ば絶望視していたらしい。それが―」
「救済された?」
梔が淡、として喋る。まるで人形が言葉を発したみたいだ。

「そう、だからこのワールド・クロスを直そうとしていた莫大な投資金額、それを謝礼金にするとの事らしいんだが―」
どうする?と教授は尋ねる。おそらく万は必ずついてくる話だから彼は聞くんだろう。

「えーと・・福沢さんが何人くらい何ですか?」
楠本が若干青い顔をしながら尋ねるのと正反対に教授はけろりとして言う。

「最低でも100人だな。」
「ひゃっ!?」
「圧巻、ぽさそうですね。」
「いや、圧巻とかそういう問題じゃないだろ?!」
「・・・、100を5人で分けるとかじゃないんですか?」
楠本が驚き、澪葉がポツリと感想を述べ、流梨がそれに突っ込み、梔が別の可能性を述べる。

「いや、一人に百人だ。」
「「うそおおおおおおお!!」」
楠本と流梨の叫びがシンクロした。澪葉は眉間に皺を寄せている、梔はぽかんとしていた。

「あの、教授」
「なんだ、澪葉?」
「私はその話丁重にお断りさせてもらっても良いですか?」
「僕も、お願いします。」
「・・ふむ、楠本と流梨はどうする?」
「うえっ!?福沢さんは怖いです!」
「要らない、というので良いのか?」
「はい、良いです、怖いです!」
「流梨は?」
「俺も慎ましやかにバイトを頑張るので、辞退させて頂きます・・」

そうか、とニコリとこの日初めて教授は笑い、企業には伝えて置こう、と言った。

「教授はどうするんですか?」
流梨がそんな教授を見ながら訪ねると、教授はまたきょとんとして喋る。

「・・、ここのお金だけを貰うとしよう。」

その声を聞いて澪葉がメニュー表を手を取り、楠本が明後日の方向を見て「有難う御座います!!」と叫んだ。

ジーニアス ナツノジン シュウマク。 

Re;OK, what would be made.
DATE: 2009/12/12(土)   CATEGORY: 店主の宝物庫
ガーネット・ヘッド。
―真実に槍刺せ。虚言に愛を配れ。私は虚言を選ぶ。

カチリ、と本物の時計からは秒を刻む音が聞こえる。シン、と偽者の時間装置からはただ無音が流れる。すると、画面の蜘蛛がケタケタと体を振るわせ笑い始めた。

『どうしたんだい、グローリー?このままじゃ、あっと言う間にジ・エンドだよ?それでいいの?報われないよ?終っちゃうよ?』
なら、先にその変な口調をジ・エンドにしやがれと流梨は思った。

そして、異変が起こった。時間装置のタイムが、まるで秒に差し掛かったようにグルグルとありえないスピードで時間を減らし始めた。
「なっ?!」
「どうしました、流梨?」

『グローリーが解く気が無いなら急かすまでさ。解く気は出たかな?』
「このやろう!」
流梨が画面越しに悪態をついた。

「・・教授、あと5分になりました」 
澪葉が教授に向かい言うと、教授は目を瞑った。
「後2分貰おう。」
「了解です。」
教授の問いに澪葉は頷き、パソコンの席を流梨から変わりパスワード画面ではなくチャットのためのスペースにカタカタと文章を打ち込んだ。

「・・?澪葉お前何やってんだ?」
「まあ、一泡吹かせられるっていうのも・・癪ですから。こっちも、それなりに、ね。」
カタ、とエンターキーが押され澪葉が打ち込んだ文章が画面に出た。

『どうとでもほざいてろ。』
その人ことが今の澪葉を全体的にあらわしているのだと知った流梨は更に蜘蛛の様子を見た。だが不思議な事に蜘蛛に一切変化はなかった。驚いているのか、笑っているのか。

そして、時間が3分になった。大学の決まった時間になる鐘が6時を告げた。

「「「L」」」
三つのそれぞれ違った音域が一つの言葉を告げると、澪葉は躊躇いなくそれをパスワード画面に打ち込み、『L』と書かれたパスワードが送り込まれた。

カチリ、と時間装置の時間が止まった。それが失敗したせいなのか、成功したものなのかわからなかった。

すると、ぶくりぶくりとビックリ箱が膨らんでいくのが分かり次の瞬間それは内側から爆発した。そして、無音。

「・・、これどうなんだ?」
「どっちか判別しづらい状況ですので、なんとも」
そう言いあっていると、画面の向こうの地面に手紙が落ちていた。

「なんだこれ?」
「・・、開けてみてくれ。」
流梨がいぶかしんでいると、教授が澪葉に頼んだ。澪葉は無言で了解し、それをクリックした。『約束の物』と短くかかれた下にワクチンと言う文字ととあるメールアドレスがあった。

「あっ、ワクチンですね!」
「みたいですね。・・ということは、成功ですか?」
「ああ。」
「・・・・っつかれたああ」
「お疲れ様です!」
「いやいや、お前ら二人と教授だろ、お疲れ様は。俺は配線つなぐのしか役に立ってないよ」
「そんな事無いと思います、流梨先輩。」
「んー、じゃあ功労賞は全員ですねえ」
梔の言葉に乗っかってパチパチと拍手をする楠本。

「おなか減りましたね。」
「昼食も摂ってなかったな・・そういえば。」
「食べに行きますか?」
澪葉の発言から教授の今の腹具合に流梨は提案した。

「はい、お好み焼き食べたいです!」
「がっつり行きますねえ」
「僕も食べたいです。」
「・・、教授はどうなさいます?」
「?俺もそれで構わないが」
「やった!よし荷物荷物~」

ジリリリ、と人のみを焦がす太陽の熱も終わりを向かえたみたいだった。

Re:finish this summer
DATE: 2009/12/11(金)   CATEGORY: 店主の宝物庫
ターコイズ・ボーン。
素っ気無くパソコンの画面に現れたのはパスワード認証画面だった。カタカタ、と澪葉が操作してふむ、と言う。

「どうやらこれ、制限文字数並んで言語ないみたいですね」
「・・は?」
意味が判らず素っ頓狂な声をあげてしまうと澪葉は隣りに居る教授も含めて説明する。

「制限文字数、これは普通4~10時程度の英数字と決まってるんですがそれの説明も無いし」
カタリ、とパスワードを入れるための行の中に文字を打ってみるとひらがなが出た。

「英数字だったら強制的に平仮名変換が出来ないし、こんなの出ません。」
「つまり?」
「何でもあり」
「マジかよ・・」
「それに間違えたらパソコンがお陀仏ですよ」
すると後ろから楠本がこちらに声をかけてきた。

「間違えなきゃいいんですよね?」
「一応は」
「一文字、ですね」
「うん、多分。」
梔の疑問に楠本が微妙と言う具合に答えた。自信が無いのだろう。

「いやそれで合っている。後はどれが入るか―」
その楠本の心配を打ち消すかのように教授が同意した。

「・・あの、一つ質問良いですか?」
俺は、この会話のとんとん拍子に不思議を覚えた。だって当たり前だろう。

「教授たちは、このパスワードが一文字っていうのが何で分かったんですか?」
教授はこちらを見遣り、楠本は視線を漂わせ、梔は画面を表情の乏しい顔で見ていた。

「何となく。」
「インスピ?」
「っぽいなと。」
これがジーニアスたちの答えであるらしかった。

「あ、でも流梨先輩」 楠本がニコリと笑いながらこちらに言う。
「何だよ・・」
「何で一文字って言うのが分かったっていうのを理論的に説明するって言うご期待には添えませんけど、絶対最後の一文字だけは説明しますよ!」
「・・自信ありすぎだよ、ジーニアス」
楠本が入学したての頃、こちらのゼミにちょくちょく顔を出していたときにつけられたあだ名だが、まあ特にあだ名と言うあだ名でもない。天才という意味の英語なのだから。

しかし彼女はそのあだ名を嫌っている、現に今もブスくれた表情になっているのだ。すると、白い指が伸びてきて俺の頬を思いっきりつねった。

「あいたたたたたたたっ!!」
「後輩馬鹿にするなんて先輩の鑑にも置けませんよ、流梨」
「違う、違うつううううう!!」
澪葉が思いっきり頬を抓ったらしく、それを見た楠本はへらりと笑った。

「楽しいですね。どっかの誰かが困っている時に言うのもなんですけど」
「・・・・そっか?」
「そうですよ。ね、梔?」
不意に振られた後輩はと言えば、教授と同じ方向をじいっと見ていたのだが楠本の言葉に頷いた。

「夏休みですね。」
「うん、夏休みだよ。」
実は姉弟とかそういうのじゃないのかとたまに思う。違うんだが。

へらりと笑う楠本、表情に乏しいながらも頷く梔―そんな二人を見て、へらりと俺も笑った。

Re;The summer vacation of two geniuses.
DATE: 2009/12/10(木)   CATEGORY: 店主の宝物庫
ネバーアンダー。
どうして、と問われたなら、その言葉そっくりそのまま押し返す。問いたいのはこちらだ。

そんな状況。

「あのサカザカさん?」

声が下方向を見遣れば背の高い青年が居た。日本人にしては、が付くほど背の高い。

「・・イナバ君か」
「あっ、はい!」

逆光で誰だか最初分からないでいたが、手でその光を隠すと顔が見えた為答えると、青年はニコリと笑った。

「ミネガマ君はどうしたんだい?」
彼の友人の彼とは打って変わって小柄な女性を思い浮かべる。しかし、恐ろしいまでに頭が切れる。

「あ、それなんですが、ミネガマを見ませんでしたか?ずっと探しているんですが、食堂にもこないので一体どうしたのかと思って。」
「嫌。見ていないが?」

人通りは少なかったし、もしこの通りを歩いていたなら彼女はこちらに声をかけそうな気がする。

「そうですか。医務室にでも行ったのかな・・」
イナバは思案顔をしてうーんと唸った。

「イナバ君、そこで悩むのもなんだから座ったらどうだい」
「あっ、有難うございます。」

そうして、空を見ていると視線を感じた為にその視線の方向を見遣った。

「何か?」
「いえ、サカザカさんはどうしてこちらに?」
「・・・分からない。」
「え?」

事実だ。気が付いたら、此処に居た。先ほどまで夢を見ていたような気もするが、それを見ていなかった気さえする。

どちらなのかも自分には皆目見当がつかないのだ。

「あの、ですね。前にイナバが言っていたんですけど」
「―何を?」
「人を知るには、たった5行で知れるときもあるんだそうです。それは、その人の成した偉業だったりを知るだけで。本当の意味での知るっていうのはその人が生を受けた瞬間からしに浸る一瞬までを言うんだから限りなく不可能なんだと。」
「相変わらず彼女は鋭いな―」
「はは・・、手厳しい事も言われます。」

そう言ってイナバは顔を下に向けた。口ぶりからして先日にでも言われたんだろう。

「でも、僕は思うんです。」
「・・?」
「確かに真実は必要なんだと思います。誰かが納得する為に。でも、納得したくない、と思っている人の為にきっと虚言も必要なんです。だから、サカザカさんも、自分を納得させる為ならたとえ真実でも虚言でも、受け入れて良いんだと思います。」

照れくさそうにイナバは言うと、「偉そうでしたね、すみません」と謝った。

すると、向こうから見知った女性が走ってきた。

「尋ね人が来たようだよ、イナバ君。」
「あ、話しに付き合ってくれて有難うございます!」

そう言って去っていく青年を見送った後、ぼんやりと眼が歪む気がした。

Re;I do not understand it.
DATE: 2009/12/08(火)   CATEGORY: 店主の宝物庫
ルージュ・ハーツ。
―誰にも真似できない色、それこそ此処に在るのだから、希望を持って。

楠本がドアのノブに手をかけた瞬間、それは勢いよく、いや普通のスピードだったのだろうが開こうとした為必然的に楠本は扉に額をぶつけた。

ゴンッ!と鈍い音が鳴り響き、そちらを見遣ると楠本は地面にへたれ込みながらも頭を抱え込み唸っていた。梔が駆け寄り「大丈夫ですか?」と尋ねる。

「さ、細胞が結構死滅しちゃった気が・・!」
楠本がそんな事を言っている間に出てきたのは、2・3時間前まで探していた石榴教授その人だった。

「・・?ああ、楠本だったのか、すまない。大丈夫か?」
教授は梔のように、淡として喋るとしゃがみこんでいる楠本や梔と同じくしゃがみこんで尋ねた。

「教授細胞が戻る薬とか、無いんですか・・・っ!?」
どうやら、あの音は楠本が今感じている痛みを忠実に具現化しているらしく、相当痛いようだ。

「たんこぶとかなるでしょうか?」
「えらい音がしたからな・・、氷で冷やした方が良いかも知れん」
梔は教授と楠本の発言をまるっと無視してそう会話した。

「教授は何時お戻りに?」
澪葉が楠本の額の怪我を真剣に悩んでいる教授に尋ねた。

「ここにずっと居たが?」
「やっぱり!」
楠本が痛いながらもそう言うと教授はランプでもこするように楠本の額をこすった。

「昨日が締め切りだった学生の提出物の判定や論文を見ていたんだが、それのおかげで今日の午前中の授業はたまらなく眠くて、午後からの授業は無かったから此処で眠っていたんだが・・」
「だから、午後姿が見えなくなったんですね」
楠本がこすられつつも納得したように頷いた。

「・・それで、何か用事が?」
「いや、その」
流梨がしどろもどろになっていると、教授はつかつかと二人の前にあるパソコンまで来た。

「・・これは?」
「教授はワールド・クロスという会員制のネットゲームをご存知ですか?」
しどろもどろになっている流梨の代わりに澪葉が聞いた。

「ああ、4日前にそれの修復が出来ないか聞かれたような・・」
どうやら知っていたらしく、澪葉は時間装置が25分になるのを見ながらも教授に説明する。

「今、そのバグを起こしたらしい人物との賭けをおこなっているんです。」
「賭け?」
「はい、もしあちらの提唱する問題を全て時間以内に解けたらバグを直してくれるんですが、解けなければ全部抹消するそうです。」
「・・随分と性急な話だな」
教授は時間装置を見てそう呟いた。澪葉は苦笑すると、「ポーズ・アイシュタイン凝縮しか答えが浮かばなくて。」と言った。

「確かに、これはその画像だと思うが・・」
そう言いながら教授は貰ってきておいた紙を一枚取り胸ポケットに刺さっていたペンで画像の絵を書いた。

「この、黒い部分が凝縮状態の部分、白い部分が何もない―この画像の空白部分だ。」
そう言ってホワイトボードにぺたりと張り「何か見えないか?」と尋ねた。

「・・・K.O.?」
澪葉がポツリといった。白い部分がそうなっていたのだ。確か騙し絵にはこんな類のがあった気がする。

「おそらくだが、これが答えだろう。」
そう言われて慌ててだが確実に文字を入力しエンターキーを押すと、次の瞬間流れたのは明るいファンファーレだった。

「・・よ、よかったあああああ・・」
安心して顔を覆いそう漏らすと、横でダンッと言う音がしてその音の方向を見た。澪葉が今度は壁に拳を放っていた。痛くないのか、お前。

「何処までも人を舐めやがって・・・!」
澪葉らしくない言葉が聞こえた。こいつの口調を変えるまでの相手はよっぽど性格が悪いようだ。

「これで時間が戻るのか?」
「あ、はい。確か3時間戻るんだったと思います。」
そう言っていると時間があっと言う間に増え3時間と22分を示していた。

物珍しいのか教授はぼんやりとそれを眺めていた。

すると、蜘蛛が可笑しそうに震えた。画面の向こう側で。

『いやあ、凄い凄い!グローリーがここまでやるとは思わなかった!実はさっきの問題は序の口さ☆けど、次の問題が終の口。最後の問題なんだけど、これを解くのは君だけ!つまりこのクロス・ワールドの命運は君に図らずも乗っかっちゃった訳なんだけど―よいよね?嫌何て言わせもしないけどね!』

あはっ!という具合に蜘蛛はけたりと笑った。ん?聞き間違いか?最後って言わなかったか?今?

そうこうしていると、地面に一枚の紙ッペラ。クリックする。開かれた問題。其処には。

「・・なんだ、これ」

パスワードと書かれたロックのページだけがそっけなく開かれた。

Re;There is not the easy world.
DATE: 2009/12/06(日)   CATEGORY: 店主の宝物庫
クォーツ・アイ。
―それは叡智の結晶?それともただの石の塊?まあ、どちらでも構わない。

「痛っ・・、頭の細胞かなり減った気がします。」
そう楠本は自分の頭を抱え込みながら言った。実質あの状況であんな言葉をはいたこいつの方が悪いと俺は思う。

「楠本先輩が悪い気がしますけど、アレは」
梔が淡として言うと「まあ、それもそうだけどね」とへらりと楠本は笑った。

「それで、えーとあれから難問解いたんでしたっけ?」
「電気石、教授たちの論文、それから・・6問くらい解きましたね」
澪葉が買ってきたジュースを飲みながら言う。

「ああ、どうりで。何か太陽沈みかけてますもん。」
「マジかよ・・」
若干唖然として外を見ると、本当に太陽が沈みかけており時間を見れば4時過ぎだった。パソコンの中のビックリ箱の時間は20時間と30弱。6問を解いているうちに、2回ほど時間が減ったのでおそらくは間違えたのだろう。

「で、次の問題は?」
楠本が尋ねくる、画面を見ると地面には何も無かった。

「未だ、みたいだな・・」
「遅いですね。さっきまで、絶えず、って感じで来てたのに」
俺の言葉に梔が同意するように言う。先ほどまで、コンマ何秒も許さないと言う位のスピードだった。そう考えていると、地面にすすっと問題が現れた。躊躇い無くクリックすると、今度は画像も出てきた。

「おお?」
「どうしました?」
「いや・・これって。」
これ、と俺が言ったのは画像の中身だ。それは正方形の黒を背景としたもので、中身は水の化学式たるH2Oが図としておいてあった。

「ボース=アインシュタイン凝縮、だよな?」
「・・みたいですね。いや、そうでしょう。」
「でも、これ分かるんじゃないのか?」
「分かりますね。」
分かる、というのはここまで解いた人間なら、分かっても可笑しくないのだ。これはそういう問いでは―

ちらり、と楠本や梔にこれを聞いてみようと楠本を見ると、教授室の一歩前で止まっておりじいっと中の気配を探るようにじっとしている、梔はといえば澪葉がノートに書き込んだこれまでの問題を見ている。

『・・。今までどおり一筋縄じゃない・・、そんな気がする、けどそれ以外一体何が、答えなんだ・・』
すると、ビックリ箱の時間装置が猛烈に動き始めた。放置されたストップウォッチの如く時間が―

「・・減った。」
止まった数字は5時間と30分。これは、3人が間違えたということだった。

「マズイですね・・、もし間違えて30分以内に答え切れなければ―」
「・・一か、罰かだな」
カタリ、と答えを打ち込む。そして、エンターキーを押し聞こえたのは―。

『ブッブー☆大不正解!』 
最悪だった。カチカチ、と時間が減った。残り30分。

「じゃあ、他に何が答えだっていうんだ!?」
大声をあげると、楠本がこちらに目を向けてどうしたんです?と尋ねてきた。

「どうしたもこうしたもない!残りが30分になったんだ!」
「・・あれ?減っちゃったんですか?」
「ああ、悪かったな!」
自嘲気味に言うと楠本は首を傾げて又教授室の前を見ている。澪葉が、どうしたんです?と聞いた。

「いえ、何と言うか、石榴教授居る気がするんですけど・・」
「・・本当ですか?」
「多分・・」
そう言ってノブに楠本が手をかけた瞬間―

Re:It was the eyes which it seemed to be able to foresee forever.
DATE: 2009/12/04(金)   CATEGORY: 店主の宝物庫
エメラルド・ボディ。
―この色は、休める色じゃない。落とす色だ。

「『タイムトラベル、物理学、理論化学、にて賞を取った者の題名を答えよ』って・・一体何時の、誰の事だ・・?」
流梨が、パソコンの画面に写る言葉に騒然としてそう呟いた。

夏の終わりの為か、外ではミンミンゼミが最後の力を振り絞って鳴いている声がする。

澪葉、梔が俺の言葉に沈黙する一方で楠本だけが小首を傾げた。

「澪葉先輩」
「どうしました、楠本?」
澪葉が楠本を見遣ると彼女は珍しく真面目そうな顔をしていた。

「石榴教授が6年程前に書いた論文の名前って、”時間旅行論”でしたよね?」
「・・?ええ、確か・・ちょっと待っていて下さい。」
楠本の問いに澪葉は部屋から出て行った。

「なんで、石榴教授の論文なんだ?」
流梨が尋ねると、楠本は「ちょっと保留です。」と言った。その言葉に又、流梨は首を傾げていると澪葉が戻ってきて一冊の雑誌の一枚を広げて楠本に見せた。

「嗚呼、やっぱり”時間旅行論”であってますね。」
「有難うございます、で、梔。」
次の矛先は、梔に向いたらしい。梔が「何ですか?」と相変わらず乏しい表情で尋ねる。

「梔の書いた論文の名前は?」
「・・僕の、ですか?」
「そう、梔の。」
「・・。”ミニマム・ウェイト”です・・」
「そう」
そして、くるりと俺に顔が向けられにこりと楠本は笑い―

「だ、そうですよ。流梨先輩。」
「は?」
その事に戸惑う俺に楠本はへらりと笑い説明する。

「この問題の答え、ですよ?」
「―は!?」
「タイムトラベル、理論化学、量子重力、これって全部―時間旅行に大事な要素じゃないですか。」
「―!!」
楠本の言葉に流梨は驚いた。確かにタイムトラベル、つまり時間旅行は理論化学では実現しうるモノなのだ。だが、時間旅行者が歴史に改変したが故に、時間や空間に影響を与える、タイムパラドックスが付き纏うのだ。

そして、量子重力には時間や空間、時空が含まれている。

「楠本先輩が入賞した奴って―」
「うん、理論化学。”時間旅行者のパラドックス”だったかな?」
澪葉を見てみれば、澪葉は一瞬ぽかんとしていたが次の瞬間くつくつと可笑しそうに笑い始めた。

「本当に・・どうかしてますね・・!都合の良すぎる。」
その言葉に俺も激しく同意したかった。これは、なんなんだ。

「入力してもいいですか?」
「してしまいなさい、楠本。」
くつくつとまだ笑いが残る澪葉に楠本が尋ねると、澪葉は許可した。梔を見ると腑に落ちないというような表情をしていた。

「どうした、梔?」
「・・、いえどうして楠本先輩はそう思ったのかと思って」
「私が思った理由?」
カタカタ、と入力しながら楠本は喋る。

「はい。」
「だって私、タイムトラベラーだもの。」
カタリ、とエンターキーを押す音が聞こえ、ビックリ箱の中に紙がするりと入った。
それから、くるりと楠本は俺と澪葉そして梔の方向を向き、にこりと笑い―

「信じましたか?」
そう尋ねた。
楠本の真後ろでは、軽快なファンファーレが鳴っていた。

「Oh, c'est un mensonge.」

すらり、と紡がれた言葉に俺と梔子がぽかんとしていると澪葉がぺしりと楠本の頭を軽く叩いた。

「は?」
「?」
完璧に置いてかれている、と思っていると澪葉は軽く自分の額に手を沿え重々しいため息をついて一言。

「Oh, c'est un mensonge.―フランス語で、『まぁ、嘘なんですけど』だそうです。」
丁寧に仏訳をしてくれた澪葉を見て、楠本を見るとへらり、と又笑った。

そして、ぷつんと俺の頭の中で鈍い音がし、気づいたら楠本の頭を自分の拳でグリグリと捏ね繰り回していた。

「痛い痛い痛い!!」

ジーニアスの叫びが無常に教室に広がった。もう一方のジーニアスは、ビックリ箱の時間装置の時間が増えている様をまじまじと見ていた。

Re;It is still oaks that send the word of trust.
DATE: 2009/12/01(火)   CATEGORY: 店主の宝物庫
オニキス・フィンガー。
―金色が如き爪にて、誰にちょっかいをかけてやろうか。

カチリ、カチリ、それは一室にかけてある時計と同じ様に時を進めるが一方で進めると同時に危険な因子も孕んでいる様なものだった。勿論それは画面の向こうの事だが、危険な事に変わりは無い。

「・・これって有体に言うと、時限爆弾、みたいな物なんですかね?」
明るい髪色をした女性がパソコンのマウスを握って眉間に皺を寄せる眼鏡をかけた青年に聞く。

「有体、所かお約束過ぎるだろうっ!?」
眼鏡の青年が女性に叫ぶ一方でその男性の更に右にいた青年は目の前にいた別の青年に聞く。

「澪葉先輩、どうですか?」
「・・、やっぱり人を舐め腐ってますね。」
澪葉と呼ばれた青年は言葉を吐いた。実に恨めしそうに。その言葉に眼鏡をかけた青年―流梨が澪葉を見た。

「おい・・澪葉」
「何です?」
にこりと笑った澪葉の後ろに何故か般若が見えた。がたがたと震えていると隣りの後輩たちも目が怖がっていた。

「流梨、パソコン貸して下さい。この阿呆に、一つ、正義とやらを教えてやります―」
それを聞いて流梨は素直に立ち上がり、澪葉に席を渡した。そして席に澪葉は座ると、カタリ、と文字を打ち込んだ。

画面には『電気石』と打ち込まれてあった。

「・・電気石?ってあの、電気を発生させる宝石だろ?」
「ええ、だから馬鹿にしてるんですよ。あの言語全て、色んな言葉で難しくしただけの、全部電気石の部類です!」
ぐわっと澪葉がいい上げ、思わず後ろに仰け反る。そして、カタッと何かを断ち切るように澪葉はエンターキーを押した。

すると、画面上に一枚の選挙用紙のような紙が現れビックリ箱の中に入って行った。

そして―
パンパカパーン、と明るいファンファーレの音が鳴った。

「なっ?!」
「うおっ!?」
「・・お祭り?」
「違うと思いますけど・・」
それぞれがそれにコメントしていると、ビックリ箱に付いていた制限時間が一層早く動き始め―時間が増えた。

「・・これは一体―?」
神妙な顔を月をして澪葉が画面を睨んでいると、画面に黒い球体が出現した。

そして、内部から8本ほど針のようなものが出た。更に、その針のようなものの先にスケート靴がついた。最後に、めこっと頭部が出現した。―それは黒い蜘蛛のアバターであった。

「・・・うっ!」
澪葉がそれを見てうめいた。そういえば澪葉は手足が4本以上ある生き物がダメだった。

「楠本、席についてやってくれ」
「了解です」
楠本に頼むと楽しそうに楠本は笑って席につくと画面の蜘蛛に噴出しが出た。

「『はっはっははっは!!』」
高笑いだ。その噴出しが出た瞬間にまた澪葉が画面を睨んだ。

「『いやあ、凄いね、面白いね。この地球で、これが解けたのは君で6人目だよ、栄えあるグローリー!』」
「うーん、軽くイラッと来ますね」
「妙に上目線ですね」
どうやらこの後輩たちもこの口調には耐え切れなかったらしい。

「『改めまして、ご説明しよう。君が先ず疑問に思っているであろう、あのビックリ箱についている時限装置。』」
蜘蛛のアイコンが恐ろしいくらいに滑らかに動き、ビックリ箱の頂上に上った。

「『この時間はこの”世界”が終るまでの時間を表している。ああ、世界と言っても地球じゃない。安心してくれ。”世界”というのは、このワールド・クロスが不備、ではなく完璧な形として、それこそ一編のデータも残さず消えるだけだ』」
「おいおい、過激な事言ってねえか・・?!」
「言ってるどころか、実行になそうとしてますね」

「『でもご安心、そんなときの保険がズバリ、―そう君たち”グローリー”さ!』」

「『君達”グローリー”が一問正解するごとに、この制限時間が3時間延びる仕掛けになっている。更に言うなら、誰かが正解するたびに3時間毎考える時間も増えるって訳だ!けどご注意を!このビックリ箱から出される問題に、もし1回間違えてしまうとぉ?』」
くるり、と蜘蛛が回転した。

「『この時限装置の時間は5時間早く進められちゃうのさっ!』」
にたり、と笑った。

「『これは、君、が失敗しなくても一緒だ。要するに共通のそう、ルールだ。以上を守って楽しく、快適に不備を直せるもんなら、』」

「『直して見やがれ!』」

そう言うと、ぷしゅっと空気の抜けた風船のように蜘蛛のアイコンが消えた。それと同時に、どんっと澪葉が実験台の机を拳で叩いた。すると、地面に一枚の紙が置いてありクリックするとそれは、先ほど蜘蛛が言っていた、不備を直すための次の問題であった。

→「『タイムトラベル、物理学、理論化学、にて賞を取った者の題名を答えよ』」

Re;The nail which disturbs all. (←全てを掻き乱す爪。)
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