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DATE: 2010/01/31(日)   CATEGORY: 未分類
カメレオンバブル。
世界は驚くほどに無機質で。

世界は嬉しい位に無言で。

世界は冷たい位に無関心で。

結局、世界ってなんだよ、って話になるだろう。

うん?

今回の現代文の平均点が上がり過ぎだって?

いや、それは知らないよ。皆勉強してたんじゃないの?

え、何?

現代文なんて勉強しようが無いって?諦めるなよ。勉強のしようがあるから平均点が上がったんじゃないのかい?

何・・?俺が頑張ってたか?いや・・うん、なんだ、その、やってなかったような、やってたような・・。

大人だったらしっかりしろ?さっきのペラペラ喋る奴は何処へ行ったって?

嫌だな、大人だからってっていう区別は駄目だよ。君だっていずれ大人になるのに、言われたかないだろう。

だったら現代文の平均点は何故上がったか答えろ?

・・、何でだろう・・。

Re;it's you didn't study then.
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DATE: 2010/01/31(日)   CATEGORY: 店主の宝物庫
化雲。
どろり。

雨の日私は何時ものようにカフェで働いていました。其処の店長さんは大層優しく、声の出せない私を雇ってくれました。本当に感謝のしようがありません。そんな毎日の一日。

扉にかけてある鈴がちりんと鳴るのを聞いて、お客様を迎えようと扉を向くとにんまり笑顔の男性が立ってこちらを見て、更にその笑みを深めひらひらと手を振りました。

私はその人を見て首を傾げ同時に納得しました。そういえば今日は雨の日だったと改めて思ったのです。

「やあ、兄貴は元気にしてるかい?」
その言葉に頷くと、私の目の前の主―柳童さんはそうか、と言って席に座りました。

「随分と長い事雨が降ってなかったから家から出ることも出来なかったんだ。アイスコーヒーと、ランチを頼むよ。」
それにも頷き、店長さんに頼まれた品を見せると私はホールに戻りました。

今日は雨のせいもあってか、お客様は少なかったのです。今来た柳童さんを含めて3人でした。そんなことを思っていると、柳童さんがチョイチョイと手招きをなさいました。

「待ち人が来るまで喋るのを聴いててもらえないかい?」
私はしばし悩みましたが、お客様を見てもしばらくは大丈夫そうだと思い頷きました。

「良かった、いや待ち人と言うのも君の兄貴なんだけどね。」
雨の日しか外に出ることが叶わなくなった柳童さんは兄の昔ながらの友人だと聞いていました。そして、私や私の兄と同じく盗られて行った人だと。

「それにしても、酷な話だと思わないかい?」
ぽたり、ぽたり、雨粒が窓に当たるのを見ながら私は柳童さんの言葉に首を傾げる。

「”盗って行った奴”は”盗られた奴”に何もやらないんだよ。おまけに、”盗って行った奴”はさ、”化物”にもなってないんだ。」
私は其処から頷いたりするだけでは不可能だと思いました。文章が要るのです。どうしようかと悩んでいると、柳童さんが携帯を貸してくれました。

『”化物”って何ですか?』
携帯のメモ機能でそんな風に入力すると、柳童さんは考え込むように外を見た。

「俺の考えでは、人に見えざる奴。」
『人に見えざる奴?』
「うん、なんていうのかな、この国は昔っから妖怪とか結構好きだろう?」
『好き・・なんでしょうか?』
「国民性なんだと思う。どこかで否定しててもどこかで居るんじゃないかなって思ってる。で、化物ってのは化けた物、だろ?」
『そうですね。』

「何が化けるのかな?」
『・・物、じゃないんですか?漢字的に。』
「普通はそう思う。けどさ、狸だって狐だってばけるの得意なんだよ。」
『・・?』
今なら頭でお湯を沸かせるような気がします、という文章を加えると柳童さんは笑った。

「難しいだろ?だから、俺はあえて”人に見えざる奴”ってことで落ち着かせたんだ。」
確かにそれはいい気がしました。多分、そうでもしないと同じ点でずっと論議しあう事が頭にも思い浮かべれたのです。

「けど、だ。俺の考えを更に上回る考えを君の兄貴が言った訳だよ。」
にんまりと笑い顔をこちらに向ける柳童さん。

「『人が化物になったんでも無く、化物が人になったんでも無く、”何か”が憧れて化物になるんだ。』ってね。俺は、その”何か”が何なのか聞いたんだけど、僕にも分からない、だ。さすがすぎてあの時は笑うしかなかったな。」

けらけらと笑って見せる柳童さんに私も苦笑するしかありませんでした。そうしていると、店長さんに名前を呼ばれたので柳童さんの携帯を返して、奥に戻りました。

あの時の事は今でも覚えています。

私が声を盗られたのだと兄に伝えた時の、兄の言葉を。

自分も顔を盗られたんだ、とずっと誰にも明かさなかったことを話したときの兄の悲しそうな、”顔”を。

『―お前も、盗られてしまったのか。』

私は、あの時頷くしか出来なかった事、今でも後悔しています。

どろ、り。

Re;The day of the memory that I do not want to remember.
DATE: 2010/01/28(木)   CATEGORY: 店主の宝物庫
プラネットテラピー。
今晩和!桂月です!

見事に疲れて死にそうなのですが、明日で学校が終わりなので明日まで頑張りたいと思います!

最近地歴の時間が暇でウッカリ寝てるんですけど、船漕ぎ出したら夢の中にあっという間でした。

来週の水曜日が見事に死亡フラグが立ったことをお互いに報告しあいつつ、友だちがガゼルとバーンが出ないことを悔やんでおりました。確かに。あの二人と仲間たちをもっと出して下さい・・!

欲を言うと、シャドウをもっと日の当たるところにそっと置いたげて・・!

最近やたらと長野まゆみ先生の作品を呼んでいたんですが、学校ともだちと、ユーモレスクを新しく読んでこれで、学校にある長野先生の作品は読み終えました・・!

個人的に学校ともだち好きかも知れない・・、オヅ先生が居てくれたらと思える。あの独特の癒しが半端ないですよ。

ちょっと図書館で紺極まる探してこようかな、と思います。続きが気になるんだ!

恩田先生の新作のもあれば、借りてみたいなー。

一回図書館に行くと、絶対大荷物になる私です。帰りとか、帰りとか。

昨日なぜかフローズンアイスが無性に食べたくなったんですが、外が台風のような状況だったので今日買いに行ってみたら無いんですね・・フローズン・・しょぼーん(・ω・:)

代わりと言っては何ですが、雪見大福買ってきました。美味しいよね。

風呂入ってから食べようっと!!

では、明日頑張ってきます!
DATE: 2010/01/27(水)   CATEGORY: 店主の宝物庫
ハイクライ。
―さようならいつか、と不毛な約束を取り付けるのはどうも彼女の性分ではない。

丸く焼かれた香草パンにスープ、そして主品たるじゃがいもとほうれん草の炒め物が乗っかっている皿を見る。変哲は無い。欲を言えば、毒も入っていなさそうだった。其処まで確かめた後、ルーは目の前の彼女に目を向けた。

暴君の治める国のとある小料理店、しかも店主は常におらず従業員1名が代わりにいるというなんともまあ奇妙な見せだ。ただし飯は美味い。暴君がこの場にいると注文したものが出る確率は低いが。

「ところで、ルーさん今日はどんな趣だったんでしょうか?」
「シャルロッテの親爺にここに昼飯を食べに行って来いと言われたのでそれでですよ。」
そう答えると、彼女は嘘ですね、と言った。

「本当の話ですよ。」
「いえ、ルーさんがではなく。シャルロッテさんの魂胆がですよ。・・ああ、確かに食えない爺様ですね。」
そう言って彼女は紅茶要りませんか?と尋ねる。

「いえ、未だ。シャルロッテの親爺が嘘をついていると。」
「このタイミングですから。」
カロン、と間抜けたカロベルが鳴り暴君でも来たのかと思うと其処には黒髪の女性が立っていた。

「いらっしゃいませ、エリオット」
「今日和、イヴニアラ。ランチは出来てる?」
「出来てます、少し座って待っていてください。」
そう言うと、彼女は奥に入って消えた。
エリオット、確か情報が間違っていなければ劇団の花形女優だ。男のような名前だな、と思う。そんなことを考えていると、女性はこちらを見て首を傾げた。

「”蜂探し”のルーと言います。」
「あ、エリオットです。」
自己紹介をすると、エリオットもそれに倣った。

「エリオット、こちらがランチです。中に飲み物も入ってますので気をつけて。」
「有難う、イヴニアラ。食事の邪魔して御免なさい、ルーさん。それじゃあ。」

「・・?知り合いだったんですか。」
「今さっき自己紹介したんです。」
そう言ってふとルーは思う。

「イヴニアラ・・?」
「はい。」
彼女が答える。そして、また小首をかしげる。

「・・イヴが名前じゃないんですか?」
「それは何処かの馬鹿王が言いづらいとイチャモンをつけて出来たあだ名です。」
清清しすぎて怖い笑みを浮かべた彼女はそう言う。そして、同時に馬鹿王と言われた主が彼女にぬけぬけと言うシーンが頭の中で容易に完成するから不思議だ。

そして、同時にどっちで呼べばいいのかと思う。

「どちらでも好きなほうを呼べば良いのさ。」
何時もの聞きなれた声がして後ろを振り返れば暴君が居た。そして、彼女に注文する。彼女は顔をしかめ準備する。

「それから、あれはイチャモンじゃない。事実だ。発音しづらいんだ、イヴニアラって名前は。」
「何処から聞いてたのか、とても楽しく語り合いたいですね。」
「なら、その怖い笑顔止めろ、イヴ。」
かちゃりと置かれた品は注文どおりだった。

「御免こうむります。それと、ルーさん」
「・・なんです?」
「シャルロッテさんに、どうぞ宜しく―。」
にこりと笑った彼女の笑みに隣りに居た暴君がボソリと、シャルロッテに何か言われたな、と呟いた。

Re;
DATE: 2010/01/26(火)   CATEGORY: 店主の宝物庫
化雷。
「君等兄妹は損をしていると断言できるね俺は。」

この雨の日にしか出会わない友人もどきは開口一番にそうのたまった。カフェにて会う約束をつけたのはこの友人もどきであり、そのカフェも妹が働いている。そして、カフェに来たら注目を浴びる事この上ない事を知っていてこの友人もどきはカフェで会う約束をつける。何故断らないか、断ったら断ったで次にあしらうのが面倒になるから、彼はこの友人もどきの誘いを断らない。

「仲間内で、という単語が抜けているぞ、ヤドウ。」
ヤドウ、という彼の苗字は柳に童と書く。

「では改めて。仲間内の中でも群を抜いて損をしている。そう思わないのか?君の顔に、妹の声。生活になくてはならない必需品が持ってかれ過ぎだ。」
そういって、柳童はにんまりと笑った。

今現在、彼は”縁日でよく売られているカエルのお面”を被っていた。理由は唯一つ。彼の顔が無いからである。世間体でいうなら、彼はのっぺらぼうである。

「用心云々を僕たちに言える立場でもないだろう・・お前だって持って行かれてるくせに。」
目の前のコーヒーを口元、といえる部分に運び彼はコーヒーを飲んだ。

柳童の”童”とは、河童の”童”である。この友人もどきが雨の日以外は家でこもっているのはそういう理由だ。そして、こいつは”温度調節”を見事に持っていかれている。

「まあな。けども、俺は雨さえ降れば憂鬱にはならずに、部屋から出れるから未だマシだ。ああそういえば、」
と友人もどきはにんまり笑いを止めて、興味深そうに話し出す。

「何でも戯けにお前の面を見せたんだって?」
「誰から聞いたんだ・・」
「妹君から。」
「何時から読唇が出来るようになったんだ・・。」
「出来ないさ、筆談で頑張ってもらったんだ。何しろお前は一度呼び出すとくるのが遅いからな。」
「雨の日に呼び出すやからが悪いと僕は思うんだが。」
「まあまあ」
彼の代わりにというように、柳童は適当に彼をあしらう。

「仕方ないじゃないか、あのままだと僕はあの戯けの義兄と呼ばれそうだったんだ。」
「なるほど、呼ばれるのが嫌だから、見せたのか。」
そういって又にんまりと笑う。本当に面白いと思う時のこの友人もどきの特徴だ。

「―仮令、面に何も張り付いていなくても僕の顔はあるのさ。」
「哲学的だな、だが俺は学が無いから分からん。嗚呼、それとこれをやる。」

桐箱を出してきた為、菓子か何かかと思ったが、パコと開けると其処にはお面が入っていた。

「・・なんだ、これ。」
「面だ、面。TPOで面を使い分ける友人への些細な贈り物だ。貰ってくれ。」

桐箱の中には、これまた縁日で売られている面が一つ慎ましやかに入っていた。実を言えば、彼のもっている面の大半がこの友人が持ってきたものである。なぜか、面白い具合にたくさん。

「何で、雷様なんだ・・」
「是非ともこれをつけて俺の健康のために祈祷してくれ。雨がもっと降れってね。」
ぺしんと、面を投げつけたが見事に柳童は避けた。

ゴロ、と雨雲から不信な音が鳴る。

Re;The single blow of the whole body!
DATE: 2010/01/25(月)   CATEGORY: 店主の宝物庫
化雨。
―幽霊色の雨が落ちる。無垢なまでに透明で、恐ろしいまでに戦慄する雨。

―実に困った事になったな、と彼は思った。

その先には清楚という言葉を表したような少女が一人、そしてその少女の手を握って離さない戯けが一人居た。

少女の方は彼の妹である。戯けの方は知らない。妹はと言えばぽかんとして戯けを見ている。

「実に素晴らしい出会いだ。」
戯けがそう呟くからますます彼は困った、と思った。

そういう彼の外見はといえば、衣服などは若者である。だが、可笑しな点が一つ。
”縁日で売られているキャラクターのお面”を彼は被っていた。今がお祭りの真っ最中だと言う訳ではない、寧ろお祭りは当の昔に終っているのにも関わらず、彼はお面を被っていた。それが当たり前のように。

「おい、そこの戯け。」
彼は困った挙句自分よりも困っている妹の為、一肌脱ぐ事にした。

「戯け?戯けとは俺のことか?」
「そうだ、お前だ。妹が困っている、手を離せ。」
「・・妹?君はあのお面の妹なのか?」

いぶかしむ様に男は目の前の少女を見ると、少女ははっとして、縦に頷いた。

「だが、しかし、彼女は嫌がってはいない。」
「それは鈍いだけだ。後、声が出せない。」
「声が・・?」
風の如く男は少女を見た。少女は頷いた。すると、男は手を離しよろめき、地面に伏した。

その間に彼は妹を手招きし、妹もそれに気づき男がさらし者のようになっている。

「俺の声をやれるならやりたいんだが、やり方が判らない!駄目か、俺は駄目なのか?!」
「いや、其処まで悩まずとも・・」
彼は目の前の戯けの処理に困った。そして、思いついた方法が一つ。彼は自分のお面の紐をするりと解いた。

そして、男の方をポンと叩き。

「ばあ」

男の目の前に写る光景は唯一つ。

目も、鼻も、口も、顔にある全てが無い男のつら。

「・・きゅうっ」
そう言って戯けは倒れた。

「効果が絶大すぎるな・・」
彼は持っていたお面を又付け直し妹を見るとパクパクと口を動かす。

「反省しているさ、やりすぎた。」
パクパク。

「どういたしまして。まあ、このことはお互いに水に流してしまおう。こういう事に合うのも稀だから。」
パクパク。

「そうだな・・、3年に一回とかじゃないか・・?それにしても、いるんだな。」
パクパク。

「こういう世の中に、こういう自分に馬鹿正直な奴がだ。とても羨ましいよ、俺はね。」
お面をつけてけろり、という彼に妹はかすかに首を縦に振った。

しとり。

Re:ghost blue rain.
DATE: 2010/01/24(日)   CATEGORY: 店主の宝物庫
語られた聖女の話。
―私は最後の時に貴方にきちんと、さようなら、と言えるのかそれだけが不安で仕方が無いのです。

私の目から見て、アーサーさんは”健康”になっている気がした。それは喜ぶべき事でもあり、同時に例の挨拶を言うべき時が目の前に迫っている事を静かに私に伝えていたのでもあった。

『兄さん、これから又何処へ行くの?』
『そうだね。とりあえずこのまま砂地を抜けて、白海近くへ行って見ようかと思うけど・・良いのかい?』
『何がです?』
兄の言っている意味が判らず首をかしげる。

『アーサーが作る国を見なくて。』
『風に流されて噂だけでも伝わりますから。』
『・・イヴ』
困った風に笑う兄を見て、私は少し心に迷いが産まれていることを認識していた。

『見届けるといいよ、イヴ。』
『見届けるって・・・アーサーさんを?』
『そう。きっと、僕等は期待しているんだ。』
『・・、アーサーさんが私たちも住めるような、”国”を作ってくれることをですか?』
『きっと僕等はとても身勝手な願いをアーサーに押し付けているんだろうね。けど、それを捨てる気もしていない。』
目を細めながら地平線を見る、あの先にはまだたくさん”国”があるんだろう。たくさん、たくさん。

『―兄さん、幸せな世界はあるの?』
『あるよ。この”世界”のどこかに。』
兄は緩く笑って見せた。

『なら、私はアーサーさんの作る”国”を見届けます。』
私の決意を兄は聞くと、片手を差し出した。

『イヴニアラ、お前に一つだけ言い忘れていた事があるんだ。』
『何ですか?』
『また会いましょう、っていうお別れの挨拶もあるんだよ。』
『兄さん、また、会える日を。』
『イヴ、また会える日を。』

私はアーサーさんが水汲みから戻ってくるのが見えて、待っていた。

『アーサーさん。』
『・・どうしたんだそんな怖い顔して。』
『お願いがあるんです。』
『お願い・・?俺に出来うる範囲ならいいけど、何だ?』

『貴方の”国”を見届けさせて欲しいんです。』

『?どういう、意味だ?』
『貴方が最初掲げた理念、それが貴方が”国”を作って”王”となっても尚続くのか、それを見届けさせて欲しいんです。』
『・・もし、俺が理念を変えたら?』
『貴方を軽蔑するだけです。』
私はきっぱりと言い切った。願い損、最終的に周りと変わらなかった、と心で思うだけ。

『きっぱりと言ってくれる・・、要するに俺は俺であればいい訳だろう?』
『そう言う事になります。』
『うん、分かりやすくて良いな。じゃあ、イヴお前は”国”が出来たら国民第一号になるな。』
『そうなりますね、不本意ですが。』
『あれか?俺は喧嘩を売られてたりするわけか?』
『私は今まで一度たりとも喧嘩を売った事も、買った事もありませんよ、アーサーさん。序でに言うなら、売り方も知りません。』
『じゃあ、あれか?無意識の中での言葉の暴力か。』
『自己完結しちゃうところが寂しい所ですよね。』

語られる、日々。語られない、日々。今でも続く、日々。

『君に素晴らしくも温かな幸せが訪れん事を。』
彼女の兄は、その回転銃のような会話を聞きながらそう祈った。ただ静かに笑みを浮かべて。

Re:アンコール!!
DATE: 2010/01/23(土)   CATEGORY: 店主の宝物庫
化人。
澄み切っている空気がふわふわと広がっている。左右対称に並べられたやせ細った緑の木々。

そして、狛犬が二匹お互いに正面を睨んでいる。

から、から、からと小さな下駄の音が鳴るのを確認するとその音の持ち主であるらしい少年が竹とんぼを追いかけていた。ふらふら、と危なっかしげに揺れ回る竹とんぼに翻弄される少年。

「待って、待って。」
それでも楽しそうに竹とんぼを追いかける少年。だが追い風が無くなった為にからりと地面に転げ落ちる竹とんぼ。

そして、その竹とんぼを拾ったのは―縁日などで発売されているひょっとこのお面をかぶった誰かだった。

ぽかん、と竹とんぼの持ち主の少年はそのひょっとこお面を見た。すると、ひょっとこお面は少年に竹とんぼを渡した。

「?これは君のじゃないのかい?それにしても、よく飛ぶ竹とんぼだねえ・・君が作ったの?」
ひょっとこお面が語りかけると、少年ははっと現実に戻された。

「お父さんが作ってくれた、でもね、お母さんがいっぱい飛ぶようにってお願いしてくれた。」

「ほほう!稀に見る良いお父さんとお母さんを持っているんだね、少年。いつか、この竹とんぼに負けず劣らずの良い思い出を返してあげるんだよ。」
ひょっとこお面に唐突に言われた言葉を少年はいまいち理解できていないながらも頷いた。

「ほら、お囃子の音がする。早くお帰り、これからは危ないからね。」
「バイバイ、ひょっとこさん。」

ててて、と駆け走る少年の姿を見送りひょっとこのお面はくつりと笑っているとじゃり、と地面にしかれた砂利を踏んだ音がして振り返る。清楚、という言葉にピッタリの女の子がひょっとこお面を見遣る。

「おや、居たのか。」
そうかけられた呟きに少女はパクパクと金魚のように口を動かす。

「いやいや、暇つぶしと・・お囃子を聞くとどうも無性に楽しくて、そういう気分にならないか?」
パクパクと口を動かす少女。

「ならないか・・、僕だけなのか?ああ、風車でも買ってやろうか?」
パクパク。

「そんな格好って、これでも状況にはあわせてるつもりなんだけど・・駄目?」
パクパク。

「厳しいなァ、じゃあリンゴ飴は?」
パ。

「分かった、分かった、家に戻ろう。全く持って、面が無いと言うのも、声をなくしたって言うのも、両方不便極まるなあ・・世の中物を無くしたら警察が拾っていてくれるもんだろうに。落ちてないかなあ、僕の顔と、お前の声。」
パクパク。

「はいはい、仕様の無い―のっぺらぼうの兄貴ですよ、っと10円みっけ。」

ぴいひゃらり、貴方のお顔何処にあるかしら。

Re;A break mode.
DATE: 2010/01/22(金)   CATEGORY: 店主の宝物庫
クラスペディア。
―私は恐れている。いつかあの空に広がる夜闇が自分を食い殺すのではないかと。

私は瓶にたっぷりと水をいれ、兄から貰った物を子瓶に入っているかを確認していた。

夜明けのことである。私は朝が好きだった。透明とも、象牙色とも、灰色とも似つかない光が、地面に落ちては暖かさをくれる。そんな、光が好きだった。

ぼおっと空から降ってくる光に魅入っていた時。

『イヴ、そんなボーっとしてどうしたんだ?』
後ろからかかった声に振り向くと、アーサーさんが居た。くすんだ金色の髪がぴかぴかと光る。

『別に。』
簡素に答えると、アーサーさんは少し微妙な表情をして水の入った瓶を見た。

『さっき水は汲んできてなかった?』
『これは、別のに使うんです。それじゃ、急いでいるので。』
そう言ってその場を早々に立ち去ろうとすると、ぱしっと服の袖をつかまれた。

『何処へ行くんだ?』
興味、という色が湧いていたが、彼には出来るだけ言いたくない。彼にとって、あの場所は。

『付いて行ってもいい?』
『駄目です。』
『どうして?』
理由を話すまで袖を離す気が無いらしく、むずりとつかまれたままだった。おそらくこのままこうしていれば、膠着状態が続くだけで不毛だと私は理解した。

『・・、怒りませんか?』
『怒られるような場所に行くのか?』
『そうではありませんけど・・』
そう言って私は悩んだ。首を縦に振って良いのか、否か。

『分かった、じゃあこうしよう。俺はイヴが喋っていいって言うまで何も喋らない。その場所について、疑問を持ったとしてもだ。それじゃあ、駄目?』
『・・分かりました。』
永久に喋っていいと言わなければ良い、と私は思った。さようならを言うまで、言わなければいい。

見慣れた砂地と、砂地が風に煽られて廃墟に衣のように覆い被さっていた。

―アーサーさんの、”故郷”で”亡国”。
隣りを見ると、主は目を細めながらそれを見ていた。

私はなるべく早くここから立ち去ろうと思い、廃墟に近づく、そして、砂地を手で掘った。

ある程度の深さになると、子瓶から貰った物―種を取り出して入れた。

『・・?』
気づくと影が出来ていたので、後ろを見るとアーサーさんが何をしているんだと言わんばかしの顔付きで私の動作を見ていた。

『兄さんから種を貰ったので花を植えようと思って、そうでもしないと、忘れてしまいますから。』
そう言うと、また作業に戻っていると今度は手が伸びてきた。顔を見ても、意図がわからなかった。早くもギブアップしなければいけなくなった。

『・・・喋っていいですよ。』
『俺も植えるから、やり方を教えて。』
『手で穴を掘って下さい。広さはそんなに無くても良いんですけど、なるべく深めに。出来たら、種は2・3個入れてください。』
『分かった、あっちに植えていい?』
『どうぞ。』
そう言うと、アーサーさんはさくさくと思い思いの場所へ行った。

―・・・なんで、私は花を植えようと思ったんだろう。
―哀れだったから?
―同情したから?
― 一体誰に?
其処まで煩悶し、私はまずい気分になった。そして、瓶を手に取り、植えた場所に水をかける。

『毎日水をやった方がいいの?』
植え終わったらしいアーサーさんが尋ねてきた。

『いえ、これっきりです。この花は太陽の光だけで生きていくんです。ですから、水は最初の一回、これだけです。』
『・・枯れない?』
『枯れません。太陽から降ってくる光が彼等にとっては水なんです。そして、彼等はこの最初に得る水とこれから受けるであろう太陽の光の吸収具合によって色が違うそうです。』
『・・へえ。』
『だから、ここには多分色々な花が咲くと思います。そうしたら、』

『―この場所を覚えていられるでしょう。』
そう言って私はアーサーさんに水の入った瓶を渡し、静かにその場で黙祷を捧げた。

すると、隣りで金属の音が鳴った。驚いて隣りを見ると、柄から細身の剣を取ったアーサーさんが居た、そして彼は迷うことなくそれを地面に突き刺し黙祷をした。それが終ると、静かに頭をあげこちらを見た。

『―イヴ、有難う。』

私はその言葉に大分遅れて『どう致しまして。』と返事をした。

希望は目に見えない。だから、希望と言う。

Re;Happiness of the eternity.
DATE: 2010/01/21(木)   CATEGORY: 店主の宝物庫
ビバーナム。
私は岩場に戻ってきて直ぐに兄に先程の事を話してみた。そして、兄にどうしてアーサーさんに兄自身が”テロメア”だということを話したのか尋ねてみた。

『不平等だからさ。』
『不平等?一体何が?』

『僕がアーサーが亡国の王子たることを知っている事。』
『・・気づいていたの?』
『まぁ最初は自信は無かったし、彼自体がどうして生き残っているのかそれにも興味が無かった。』

そう言いながら、鍋の中の夕食を兄はくるりとかき混ぜる。

『でもね、確証を僕は得てしまった。』
『・・確証って?』
『御覧。』
兄の指差した方向にはモスグリーンの布で包まれた何かがあった。

『布?』
『いいや、その中身。あの中にはね、硝子の一振りと樹齢何百年と言う古木で出来た弓矢があるんだ。』
私は兄の言いたい事が分からなかった為に黙っていた。

『これはね、あの”国”の宝なんだよ。』
『え?』
『しかも、その宝達はあの”国”の王が直々に一番目と二番目の王子たちに受継がれたという。形状云々はともかく、材質などを見る限りそれに近かったし、おそらくだけど”王の血筋”に近い”縁者”だろうと僕は思った。』

兄らしい観察眼だと私は感服する。そして、記憶力の良さにも。

『・・王子だと分かったのはどうして?』
『”あの国の三番目の王子はうつけ者”という噂を前に耳にしたんだけどね、僕はそれがどうも違っているような気がしていたのさ。もしうつけであるのなら、何故王は三番目の王子として居座らせているのか。亡くなられた奥方に対する情?それとも彼がそばに居れば、奥方を思い出せるからか?色々悩んだ末に出た答えは一つ。』

すうっと兄の目が細められた。

『―王は彼を”王子”として認めているんだとね。』
『可愛すぎたとかそういうのじゃないの?』
『少なくともあの国の王は我が子可愛さのあまりって事はないよ。家族には、一層厳しく自分にはその更に倍に厳しかったようだから。話が逸れたかな・・?実際彼の二人の兄は王子として申し分ない人達だったようだね。』

『アーサーは宮廷では随分なものの言われようで、随分と肩身の狭い思いをしたらしい。けれど、二人の兄上達は決してアーサーをそんな風には言わなかった。それが誰も救い手の無いアーサーの心の救い。だけど、王子というのはいずれ王座を巡る時期というのがある。そしてアーサーは思ったらしい。兄上たちと争いたくなんか無いと。だから、彼は一つ芝居をうつ事に決めたらしいんだ。』

パチリ、パチリ、薪用の木の水分が爆ぜる音がする。

『―全てに置いて兄上たちよりも下回ろうと。事実、彼の芝居に宮廷の者達は気づかなかったらしいんだけど三人の人物はこれに気づいてたらしいね。』
『・・三人って?』
『一人は、王。理由はさっき話したね?もう二人はアーサーの兄上達。言われたのは、あの戦の時だったとか言ってたな。』

地平線には紫と薄紫の夜が待ち構えている。

『まあ本当の話、僕が”縁者”だろうと聞いたらアーサーが自分は”あの国の三番目の王子”だと話してくれたからなんだ。だから僕は自分のことを話した。でもねイヴ、僕はもしアーサーが其処で何も話さなかったら自分の素性は明かさなかったよ。』

『公平じゃないから?』
『いいや、自分の諦めがついたからさ。最初にアーサーを見た時に思った、”期待”は的外れだったってね』

そう言って兄は笑うと、イヴニアラ、と私の名前を呼んだ。

『アーサーを良く見ておくといい。彼はもしかするとこの”世界”に何か大事な衝撃を与える奴かも知れないから。』

いつの間にか頭上に烏の翼のような黒い夜が広がっていた。

Re;Great expectation.
DATE: 2010/01/20(水)   CATEGORY: 店主の宝物庫
キク。
―雨が降ってくれるのを心待ちにするのは、どうしていけないんだろう。

『嘘。』
私はいつの間にかその言葉を吐いていた。目の前の主は目を大きく開かせていた。

『そんな、全ての人に同等に、慈悲深くある王が居る訳無いじゃないですかッ!』
自分でも可笑しいくらいに私は心の闇をさらけ出し始めていた。

『甘言で騙して、民を、私たちを戦の道具にして、自分達は何もしないくせにッ!』

―何で私は”最初の遺伝子”なんかに産まれたんだろう。

私は下を俯いていた。幾等何でも言い過ぎている。目の前の主は神妙な面持ちで何も言わずじっと聞いている。

『・・・なんで、何も言わないんです・・貴方は王様でもないのに・・』
これは八つ当たりだった。
”必要”とされるから、力は必要なのだ。じゃあされなければ、”幸せ”に暮らせるんじゃないかと私は思った。だが、世界はままならなかった。一度だって自分の願いのように動いてくれなかった。

『ダムネスは俺が何なのか知ってる。俺はダムネスが何なのかを教えてもらった。』
『っ!?』
それは、つまり―兄は自分が”テロメア”であることを彼に教えたと言う事。

『ダムネスはイヴの事を話してないよ。ただ、頑固だとは言ってたけど。』
『・・貴方は何なんです。』
『俺は・・・、この国の王の三番目の息子だった。』
『王、の息子・・。』

『一番目の兄と二番目の兄の誰とも俺は血が繋がっていないんだ、いや、王子は全員血が繋がってない。』
『全員腹違いなんですか?』
『そう言う事になる、けど俺は民になる息子だった。』
『?』
『俺の母は、料理屋の愛娘でこの国の王と以前幼馴染だったんだ。でも、兄たちの母は然るべき家柄の持ち主たちで、俺の母は俺が生まれたとき普通の息子として育てようと思っていた矢先母は死んでしまった。』

『父はそんな母を悲しんで俺を王子として育てた。兄上たちの母君達とは折り合いは悪かったけど、兄上たちは優しかった。』

『一番目の兄は剣の扱いが上手くて、勇気もあった。二番目の兄は弓矢が得意で、楽器も得意だった。』

『剣の稽古してて肉刺ができた時は、片付けをしてる間にいつも塗り薬とリンゴが置いてあった。侍女たちに噂されて悲しい時は、何処かから子守唄が鳴ってた。』

『俺は、兄上たちとあまり話したことは無いけど、いつも見守られてた。最後までずっと。』
そう言って国の残骸を見た。

『・・もしかして、お兄さんたちのご遺体はこの中に未だ?』
『在ると思う。けど、戻るのはこれが最後。』
『どうして?』
『・・兄上たちに言われたんだ。”生きろ、サイハテまで”って。だから、俺は―生きる。兄上たちや、民たちの分まで。』
何処に居るかもわからない、神に誓っているようだった。

『アーサーさん、貴方は”王”になるんですか。』
『うん。』
『貴方は・・どんな”国”を作るんですか?』
その言葉にアーサーは少し驚いたようにしながらも、話す。

『誰でも住める国。』
『・・誰でも?』
『誰でも。農民でも、貴族でも、病人でも、悪党でも、獣でも、竜でも、誰でも暮らせる。そんな、国。』
―”桃源郷”

『・・作れるんですか?』
『頑張るさ。兄上たちが延ばしてくれた命だから。』

―この人は私たちが持とうと思わなかった”希望”を持っているのか。そう納得した。

Re;A vague memory
DATE: 2010/01/19(火)   CATEGORY: 店主の宝物庫
ハラン。
―選ばれた?冗談を言わないで。これは、この”力”は押し付けられたのよ。

『アーサーさん。』
『どうした?』
目の前のくすんだ金色の髪の主は川から頭を出しながらそう言ってきた。豪快にも程があるんじゃないかと私は更に眉の皺を深くした。頭からはポタポタ水が滴り落ちている。

『兄さんが呼んでました。』
『ダムネスが?』
少しばかり首をかしげて、嗚呼、と納得した様子で分かった、と告げるとアーサーさんは岩の所へ向かう。

この珍妙な主の介護を始めておそらく5日目が始まった。怪我としてはかすり傷が主だったため、治ってはいるらしいが疲労による熱が高かった為彼は2・3日の間は寝ていたのだ。そして、4日目私が水を汲みに行っている間に兄と彼は大事な話をとんとんと終らせてたのだろう。だから、兄は―

『さようなら。』
川に瓶を入れて水を汲みながらも私はそう呟いた。今まで何度も自分の心に囁いてきたその言葉が、今はずしりと鉛球のようにある。どうしてだろう。

水が瓶にたまったのを見て、私は歩き出した。岩の辺りを見ると、アーサーさんは馬の手綱を確認していた。

『・・国へお戻りになるんですか?』
熱も下がってきているし、問題はないと兄は言っていた。しかし、彼は私の言葉に微妙な表情を見せた。

『戻るのは戻るけど、住む事は出来ないよ・・良ければイヴ、君も一緒にきてくれないか?』
『どうして?』
『不安だから。』
その理由が分からず又首をかしげていると、兄がひょこりと出てきた。

『大丈夫だよ、イヴ。彼は見に行くだけで、帰るんじゃないから。こっちにも戻ってくる。』
兄はそう言って、手招きをする。

『出来れば、人が付いていた方がいい。彼の熱は今薬で下げているだけだから。』
『じゃあ、無茶をしないように止めさせたほうが・・』
『それも出来ない。』
『どうしてです?』
『・・彼の気迫に負けたのさ。』
兄は肩を竦めながら、馬の手綱を握り馬にのったアーサーを見遣る。私もその姿を見て、行く事を告げる。

さらさらとした砂地を馬と馬にのった青年、そして頑固として歩く事を譲らなかった少女が行く。
『帰りはイヴが乗りなよ』
『馬に乗ったことがありませんので。』
『こいつは気がやさしいから振り落とす事はないよ。』
『健康なので歩きます。』

そんな会話をしばらく続けていると、其処には、彼を砂地で見つける何日か前に見つけたあの、”国”があった。
『・・ここ』

アーサーさんはいつの間にか馬から下りて国の一歩手前に立った。ざっと砂が突風に煽られた。
『―      』

何かが砂に掻き消えた後アーサーさんはくるりとターンをしてこちらに顔を向けた。

『ここは、豊かな国だった。食べ物も、文化も、人も、土地も。全てが豊かだった。人が人を慈しみ生きてた、そんな国だったんだ。』私は黙ってその言葉を聞くほかなかった。

『―けれどそれが仇となってた。』
『仇?』
『隣国に疎まれたんだ。』
『人の負の感情ですか・・。』
黒く、黒く、唯ひたすら、黒くあの、粘ついた感情。

『アーサーさんはこの国の生き残りなんですか?』
『僕は・・、俺はただの臆病者だ。兄上たちの様に最後まで、民も守る事も出来なかった・・臆病者だ。』

『・・アーサーさん、貴方は力が欲しいですか。』
『力?』
『力、貴方の大事な人を全て守れる、絶対的な、最強の、化物の力。』
私が無意識に出している言葉の数々は、自分の”テロメア”のこと。

『・・、要らない。』
『本当に?』
『要らない、イヴ、国で一番強いのは誰だと思う?』
『国?王様、じゃないんですか?』
『―・・俺は思うんだ、”国”で一番強いのはきっと”民”だ。国は民で、民は国・・国は王が無くてもある、民さえあれば、国はある。俺は、そう思ったよ。』

ひゅるり、ひゅる、あの高い空に舞うそれはなんだろう。

Re;平癒。
DATE: 2010/01/18(月)   CATEGORY: 店主の宝物庫
スカビオサ。
―さようならを繰り返し言うようになったのは、多分悲しい思いを切り捨てたかったから。

私は今までいろんな国でであった人を覚えていない。インパクトに欠けるとか言うんじゃなくって、ただ、覚えなかった。その国がどんな国だったのか、どんな空をしていたのか、どんな人がすんでいたのか、覚えてない。

そんな私は彼と、アーサーと言う人と出会った時を覚えている。インパクト云々でもなく。ただ、覚えている。

『・・イヴニアラ?発音しづらいね。』
目の前のくすんだ金色の髪の持ち主はまともに喋れるようになったかと思うとそうぬかした。

『っ!?』
『ははっ!』
『兄さんまで!』
『悪い悪い、確かにイヴニアラの名前はこっちの地方にはあんまり無い発音だなあ』
『・・ねぇ、名前を短縮してもいい?』
『どうぞご自由に。』

私はやけくそ気味に言うと彼は駄目だよ、と言う。あんまりにも普通に言うので私はぽかんとしていた。

『・・ふはは!!』
兄はその様子を見ていて笑った。これにも又驚いた。腹を抱えて笑う兄は見た事が無かった。

『君の名前なんだから、駄目だよ。』
『じゃあ、どう短縮するんです。』
やけだ。

『・・イヴ、イヴってのは駄目?』
『イヴ?』
『ああ、確かにそれだったら言いやすいね。イヴ、うん、良い。』
『・・兄さん』
ため息を漏らしながら、横で頷く兄を見るとぽんと頭に手を置かれた。

『お前が嫌なら、嫌でアーサーはイヴニアラで呼ぶと思うよ?』
『本当に嫌なら頑張るよ。ちょっと発音が下手かもしれないけど。』
にこりと兄は微笑んで促す一方で、アーサーは真剣そのものに言う。それが更に私を追い詰めた。

『イヴで良いです!』
私がそう言うと、兄はくすくすと笑いアーサーは僕の名前は言いづらくないかと尋ねた。

『大丈夫です。』
『良かった。助けてくれて有難う、イヴ。』
『・・?倒れていたのを見つけただけでしょう?』
『それでも君とダムネスが僕の恩人なことに変わりは無いよ。』

『・・、助け終わったらそれも要らないのに?』
ぽつりとあまりにも自然と出てきた言葉はどうやら彼に届いていなかったらしく首をかしげていたが兄には聞こえていたらしい。その為、微妙な顔をして又頭にぽんと手をおいた。

『イヴニアラ』
兄は私を宥めるように名前を呼んだ。

『・・分かってる。』
『イヴ?』
短縮されてしまった私の名前を呼ぶ人。具合でも悪いのか、と聞いてくる思い出にすっぽりと入ってしまった人。

『悪くありません、平気です。』
そう答えると、本当に?と用心深く聞いてくる。

『そういう貴方は大丈夫なんですか?』
『アーサー。』
『?』
『僕は貴方じゃない、アーサーだ』
兄に助け舟を求めるように視線を投掛ければにこりと笑った。

『アーサーは僕の3つ下だけど、イヴより2つ上だよ。』
助け舟どころか、マメ知識のような言葉だった。

『・・アーサーさん。』
『アーサーで良いよ?』
『アーサーさん。』
『イヴは結構頑固だよ、アーサー』
『じゃあ、それで良い。』

私はきっと、さよならを言う事に疲れたんだろう。

Re;Departure from nothing.
DATE: 2010/01/17(日)   CATEGORY: 店主の宝物庫
ラナンキュラス。
―王。国に立つ人。勇気ある将。全てを許す慈悲を持つ人。民を愁うる人。

サラサラと手にとれば落ちる砂を地面とした土地をイヴニアラと彼女の兄は歩いていた。しばらくそうしていると、目の前に馬とその馬の手綱が地面に落ちていたがそれをしっかりと握って離さない手を見つけた。

『兄さん、あれ何?』
そう尋ねると、兄はそれに一瞥をくれた。

『人・・だろうね?とりあえず行ってみよう。』
その言葉を機に馬の元へと行くと、くすんだ金色の髪をした人があちらこちらに擦り傷をこしらえて倒れていた。兄はそれを見て、まずいな、と呟いた。

『随分と衰弱している・・、イヴニアラ、あちらの川で水を汲んできてくれないか。僕はあそこの岩の所に居るから。』
『分かりました。』
私が返事をすると、兄はその手綱をやんわりと外させ自分の背にその人物を乗せ、手綱を引いて岩の元へと歩みだした。その背を見ながら澄んだ川を見て、歩みだした。

岩の所に着くと兄は背に負ぶっていた人物を布の上に寝かせ、傷口を調べていた。

『兄さん、水を汲んできました。』
声をかけると、有難うと言い、腰にぶら下げていた子瓶を取る。子瓶の中には毒にも見える色合いをした液体が入っているが、兄が言うにはこれは消毒薬らしい。絶対見えない。

『助かる?』
『傷自体は酷くなさそうだけど、問題はこの子が何時からあそこに居たかだ。』
消毒薬を傷と言える所に全部塗り終って兄はそう答えた。

そして、水の入った瓶を渡すと兄は寝ていた人物を少し起こし飲ませた。最初は水が少し零れ落ちていたが、しばらくすると人物は目をうっすらと開け、水を飲み始めた。

『意識が戻ったようだね。』
『・・・、こ、こは?』
水を飲んだというのにかすれた声が響いた。

『砂場を少し左に行った岩場さ、安心しなさい。瀕死の人間をどうこうするつもりも無いから。』
兄がそう言うと、主は又目を閉じた。

『死んでしまったの?』
『いいや、眠ったのさ。どうも傷以前の問題に疲労が強いらしい・・、飯はどうしよう。』
『おかゆとかは?』
『うん、それかスープだろうね。具が入ってない。』
イヴニアラは不思議だった。兄は人の怪我を治すことまではしてもここまで献身的に行動をしたことが無かった。

『どうかしたかい、イヴニアラ?』
『兄さん、どうして其処までこの人の面倒を見るの?』
『面倒っていっても、怪我の治療と水を与えたくらいだよ?』
『でも、今まで其処まではしても最後まで面倒を見るなんてしたことなかった。』
『・・、それもそうだ。・・なぜかな?』
兄は自分でもわからないという具合に首を捻り、私にパンを食べるよう進めた。

朝の光がゆっくりと照らすのに気づいて起きると兄は既に起きていた。

『おはよう、イヴニアラ。』
『おはようございます、兄さん。』
ひょこ、と兄が傷の具合を見ている人の近くまで行く。

『・・』
『傷だったら治ってる。後は疲労が取れるか、どうかだよ。』
『水汲んできたほうがいい?』
『そうだね、頼もうか。』

そう言って又瓶を受け取り川に行こうとして、馬を見た。こちらも疲れてそうな表情をしていたので、兄に連れて行っていいかを聞くと馬に乗せられてあった荷物を全て降ろして手綱だけは放してはいけないよと念を押されいっしょに川に連れて行った。

馬は存外大人しい性格で、水を飲む以外は私に一緒についてきてくれた。そして又岩場に戻ると、人物が今度はしっかりと起きていた。

『お帰り、イブニアラ。』
兄がこちらへそう言うと、起き上がっていた人物におそらくスープの入った器を渡す。私は兄に瓶を渡して、手綱を棒に括りつけて兄の近くに座る。

視線を感じてみると起き上がった人物が見ていた。

『ああ、こっちは妹のイヴニアラ。そしてイヴニアラ彼は―』

『アーサーだ。』

―誰だって、結局は変わりはしないのにね。
Re;Fame.
DATE: 2010/01/15(金)   CATEGORY: 店主の宝物庫
フリチラリア。
―嘘吐き。何時だって、誰だって、何処に居たって求められるのは”自分を守ってくれる都合の良い他人”じゃない。

イヴニアラが物心が付いた時、自分の手を握って歩いていたのは母でも、父でもなく、兄だった。

兄は、一つの国に留まる事をしなかった。してはいけなかったというべきなのかもしれない。してしまったら、恐ろしい目に合うのは自分たちだったから。

兄は幼い自分を連れて、逃げるように、彷徨う様に、国という国を渡り歩いた。

そして、自然と気づくそれ。
恐ろしいまでに速く動け、病気と言う病気にかかった事がない、そんな自分。

”テロメア”
昔話、おとぎ話の類として語られるたった二人しか現れない”最初の遺伝子”
イヴと、イヴの兄はそれだった。
イヴは最強なる”力”を、イヴの兄は遠い昔に廃絶した”魔法”を。

穏健に暮らせるのならば、其処に住みたい。だが、自分たちの素性を明かせば各国の王はころり、と態度を変え周囲の国から”己”を守る為だけの”武器”として”テロメア”を使う。

先に生れ落ちた兄に両親の事を尋ねれば、随分と前から会ってないと言う。

そして、兄は”テロメア”たる自分達を”武器”とも”化物”とも扱わない、”人”として隣人たちと楽しく笑いあえるそんな”桃源郷”を捜し歩いているのだと私が気づいたのは直ぐのことだった。

同時に、そんな”桃源郷”がこの世界の何処にも無い事も直ぐにわかった。

この”世界”は数多ある”国”で出来上がっている。新しい国が出来上がったかと思えば直ぐに滅んだり、隣国と他愛も無い事で戦ったりを繰り返していた。更に、それは必然的に”力”をどの国も求めているといういい証拠だった。

―”テロメア”になったことは辛い?イヴニアラ。
―兄さんは?

―辛いかもしれない。でも、幸せを味わった事があまり無いからね、何処を辛いと示していいのかも僕には生憎判らないよ。

―兄さんは、幸せな国があったら住む?
―その幸せが何なのかによるよ。お前はどうするイヴニアラ?
―・・私は、その国の人たちが私や兄さんを”人”として見てくれるなら住むと思う。

パチパチ、と爆ぜる枝が鳴る中私はそう兄さんに答えた。兄さんは星を見ながらお休み、と言った。

『しあわせなくにをつくるひとは、これまでしあわせなじんせいだったひとなのかな』

どこか欠落していて、どこか的を得ているそんな考えが私の心をよぎった。

『兄さん、ここは何があったの?』

つい2、3日前まで戦争があったような城や家々と鎧かぶとを纏った人やこの国の民らしき人の残骸と骸がそこらにあった。

『この前居た国を覚えているかい?』
『脂っこい王のところ?』
『ふふ、確かにあの人は脂濃かった。あの王が言っていたんだ。近々”隣国で戦争”があるといっていたけども、それがこれなのかな。イヴニアラ、この国の王はこの戦争が無ければもっと長くあっただろうね。』
『どうしてそう思うの?』
『此処の国の王は、家族名まである王さ。』
『家族名まで?』
『そう、なかなかに珍しい事だけど・・この様子じゃ誰も助かってないだろうな』
『・・この国が続けば、兄さんは住みたかった?』
『どうだろう。』

国だった所を後にして兄さんと私は歩いた。砂漠のようにさらさらとした砂の地面の場所。周りを見渡しても何一つ無かった。

そんな場所で、私はとある”暴君”と出会うことになる。

Re;Love on the sky.
DATE: 2010/01/14(木)   CATEGORY: 店主の宝物庫
渦の末の話。
―嗚呼、巻き込まれもせず、巻き込まれる事も出来ず、出来なかった貴方の為語りましょうか。

ひゅるり、と凍てつく風が彼を容赦無くなぶる。

それにまぎれて、燕が気道高く飛んでいた。嗚呼、巣作りもするのだろうか。

そんなことを考えていると、目的地にあっと言う間にたどり着いた。かかっている表札の名前は今住んでいる主とは全く違う。何しろ、譲り受けたものだったから。それを知っている彼は遠慮なく進み、戸を叩いた。

すると、間も無く「はいはい」という声が響いたので叩くのをやめる。

「どちら様?」
「サカザカだ。」
「いらっしゃい。うん、時間びったりだ。」
そう言って、戸から顔を出した目の前の男は笑った。相変わらずだ。

「そういえば此処に来る途中に、こそ泥をお前の顔見知りの刑事が捕まえてて会ったんだが」
話していると、男はうげっとした表情をした。

「リガキ、いっそのことお前は探偵か何かになったらどうか、とあの陰気臭い顔が更に陰気臭くなりながら言ってた。」
「・・なんともまあ、ありがたい説法だ。」
そう言って男、リガキは湯飲みに茶を注いでいる。

今日自分が来た理由といえば、

「”安前”の次は”白摘”か。」
そう言うと、リガキは一瞬きょとりとした顔をしたがああ、そうか。と言った。

「何か可笑しなことを言ったか?」
「いいや、その事件の中心だったお嬢さんの名前もシロツメというのさ。」
嗚呼、だからか。と思い心の中で拳を作った手で平たくした手を叩く。

「綺麗な名前だ。」
短く感想を言うと、リガキもそれに頷いた。

「あの通りの名前が”白摘”で、道の名にしても綺麗な名前だからとつけたとオオナキさんも言っていた。」
「オオナキ?ああ、最近新聞で名が上がっているな。」
確か、最初は竹細工など細々したものを売っていたらしいが途中から鉄などの製品を加工したりする生業に手を出すと、瞬く間に彼の工場は大きくなっていたらしい。

「そう。君を呼んだのはそのためさ。サカザカ。」

不思議な話。自分は”あらゆるもの”に興味がもてない。何故かはしらない。前はもてた気がする。けれど、今は持てない。そして、今の自分が唯一興味が持てるもの、それが”リガキの関わった事件”だった。何故これにだけ興味がもてるのか。リガキが詳しく知っているからか、と尋ねられればそれは多分違う。

もっと、別な、根が、あるはずなのだが。

「ああ、それからサカザカ頼みがあるんだけど。」

リガキがふと、という感じで考え事をしていた自分に話す。

「あの刑事さんに会ったら、こう言って置いて。」

”約束”。

「探偵になる夢は捨ててないから、探偵になった時はどうぞ、菓子折りを持っていらしてくださいってね。」

その言葉に、くつり、と笑うとリガキもけらりと笑っていた。

Re;What call it; it is other people's affairs.
DATE: 2010/01/13(水)   CATEGORY: 店主の宝物庫
ホワイトノイズ。
今晩和!

いやー・・見事に外が吹雪いてますね!朝から、雪はぶち当たるし、道路に当たった雪が風と一緒に地面をすすっと這う感じに当たってくるので、泣きそうでした。未だにびゅうびゅう言ってるんだけどな!

そういえば、ふらっと3巻2日遅れてゲットできて嬉しがってたら・・何か・・薄いぞ・・?

これってどうしたら・・?気になるんだけど・・。

インクがやたらに薄いんですが、どうしよう・・。あっ、海藤君(新きゃら)がすごい勢いで私の株をゲットされていきました・・!何あのこ(^∀^*) !!明日友達に同意を求めてみる。今回は最強すぎて、によによ(゜∀゜)しっぱなしだった!

まさかの泣き方に緊急ボタンがパリーンです。

私の心瓦解!本当一巻あの時買ってよかったと思う。(去年の話。)

友達にフラットを布教しようと思ってるんですけど、だ・ヴぃんちの今月号特集組まれてた・・1ページだけだったけど!ふおお!!これ欲しいんだけど!古いのじゃないともらえないんだモンな・・最新号だしなあ・・。

後、小説版の屍鬼を今図書館から借りてきて地味に読んでます!

3巻まで読み終わったけど、何か原作の徹ちゃんが漫画の雰囲気でひょこひょこ脳内を動いてくれます。若御院も漫画版。ていうか、漫画版で皆ひょこひょこ動いてる。

唯一、かおりちゃんと恵ちゃんはちょっと小説版なイメージが組みあがりつつありますね・・。

恵ちゃん結構原作は押さえ気味ですよね。夏野に対してとか。漫画版を最初に見たので、原作結構しっとりだなあと思ってたんですが(´Д`;)

今日で2冊読んだんですが・・もう一冊借りてくればよかったかもしれない・・。

5巻が最終巻なんだよね?明日残り全部借りてきます^^

結構さらさら読める作品ですので、よろしければお手にとって見てください。

後、司書の先生から紹介してもらったんですけど、恩田陸さんの新作で、私の家に幽霊が出るはずがない・・だったかな?ちょとタイトル間違ってるかもしれませんが、それが結構面白そうでした。

こちらも、ダ・ヴィンチにて特集が組まれてあって説明文みたいなのを見て、あっいいんじゃんと司書の先生の言葉よりも実に単純に嵌った私なんですけども。やっぱり先人の言葉は聞くものです。

幽霊探しに来た男の人が某nhkのまったり貴族のお子様アニメに出てくるオバケ屋敷の人を思い浮かべてしまった・・あれ?刷り込み現象??この前、ちらっと見てたらまさかででてきて内心ビックリしてました。

本当本は楽しい。

ただいま、雨月物語の本を頼んでいるんですが(図書館で)校長先生たち、上の方々のはんこが回ってこなくて読めるかどうか、微妙っぽい・・読みたいのになー・・。大丈夫かな?

とりあえず、今週頑張って生き延びます!

あっ、そういや友達からなるとの新刊借りたんですが。あれだ。

シー 最高 (*´▽`*)!!

最初に出てきたときの、うわっと、とか、やるなあ、とか可愛いんだけどorz゛。本当、雲の国の白い兄さん見てあげて!動作可愛いよ!友達曰く、シーそんなにでてないよ?だったけど、個人的には出てるよ、このこww

いや、本当シー誰かいいよねって賛同してくれる方探してます。友達はダルイ派だった。まさかすぎた。

では、お粗末。
DATE: 2010/01/12(火)   CATEGORY: 店主の宝物庫
渦の泡の話。
―全部消えてなくなればいい、そうすれば辛い事なんてなかったことになるでしょう。

―でも、それは傲慢な事なんでしょうね。

―だって、それが本当は大事な記憶だったかもしれないのだから。

―私は、私を、やっと認められたんでしょうか。

―あの”渦”の中で、少しだけ戻れないような気もしていたのです。

―全員に愛されるなんて稀な事、全員に愛されるなんて、まるで泡のような、ことでしたから。


表札には何故か訪ね人の名前ではないものが下げられていたが、教えてもらった住所は此処だったので悩みながらも戸を叩く。

「どちら様でしょう」
パタパタ、とした足音が聞こえると次には尋ね人の声が聞こえた。

「シロツメと言います、リガキ先生はご在宅でしょうか。」

そう私がいうと、ガチャガチャと鍵を外す音が聞こえ扉からリガキ先生の顔が覗いた。

「こんにちは、シロ・・」
リガキ先生が言葉を濁した理由は直ぐにわかった。バッサリと肩辺りで髪を切ったからだ。

「未練を切ったのです。」
「・・そうですか、どうぞ、散らかっていますが宜しければ。」
「お邪魔致します。」
パチリ、と日傘をたたんで玄関に上がる。草庵の様な家だとシロツメは思った。

出してもらった座布団の周りには、書物がずらずらと並んでいて、更に書棚にもびっしりと本が置いてあった。そんな私の様子を見ていたのか、リガキ先生は少し笑った。

「先の言葉どおり散らかっているでしょう?」
「いいえ・・、とても書物が多いんですね。全てリガキ先生の?」
「というより、ここ自体が譲り物なのです。」
「譲り物。」
「魂もおいてありますよ。」

そんな風に言うリガキ先生の顔を見たが、かの人の顔は少し悲しそうだった。

「冗談です。申し訳ありません。それでどうです、お家の方は?」

「・・、父と母はとても喜んでくれました。けれど・・」
「お婆様、ですか。」
「はい・・、あの後警察の方がいらっしゃいましてお連れになられていかれたのですが・・」
「お話になられましたか?」
「お婆様に断られました。」
「・・骨が折れそうですね。」
「リガキ先生・・私はミカハラ様、兄さんに会社を経営していただこうと思うのです。」

リガキ先生がお茶を湯飲みに注ぎながら、どうぞと促す。

「私はおそらく会社を任せれたとしても、きっと上手くする事は出来ないと思うのです。けれど、ヒネズさんやタマタツさんハチチリさんにアイクラさんのお話しをお聞きしますと、兄さんは立派な経営者としての才能があるのです。」

「なら、私は兄さんに会社をお願いしたいのです。”妹”として、兄さんを信頼してお任せしたいと思っているのですが・・その、」
「ご両親が、納得してくれるか心配なのですね。」
「・・はい。」

「シロツメさん、誰かに認めてもらうというのはとても難しいとは思いませんか?」
「・・ええ。」
「おそらくですが、ミカハラさんも同じなのではないのでしょうか?」
「?」
「ミカハラさんは、未だ負い目をもっていらっしゃるんだと思いますよ。」
「負い、目ですか?」
「そう、貴女がオオナキさん夫妻と平穏無事に暮らせる”世界”を壊してしまった事を。」

「あの時、兄さんが謝ったのは・・その事なのですか?」
―すまない、シロツメ。

「仮定ですが。両方に同じ量の幸せを与えるというのはなんとも難しいし、気のめいる話です。けれど、ミカハラさんは自分を慈しみ、愛してくれた”シロツメさんの御両親”も、貴女があちらで”平穏に暮らす”事も、同じくらいに守りたいものだったのだと思います。そして、同じくらいにどちらを選んでよいか迷われたはずです。」

「ですが、両方よりも大切なものが一つあったのですよ。」
「大切な、もの?」
「貴女です、シロツメさん。」
「・・わたし?」

「貴女は、”渦”にして”かぐや姫”なのです。全てのものを自分の中へ引き込み、全ての”点”と繋がる人です。」

あの心の中でまいていたものはそれだったのか。

「僕も経営云々は分かりませんが、あなたのご決断が貴女のご両親やオオナキさん、そしてミカハラさんをより、”家族”へと強く結びつけるものだと言う事はとても分かりますよ。」

「後は、貴女の歩み次第です。シロツメさん。」

差し出された湯のみと、何時の間にやら置いてあった和菓子を見つめ薄く微笑んだ。

「今度は兄さんとお婆様のお話も出来る事を祈っております・・又訪れても構いませんか?」
「僕は人間関係というのが薄い男なので、話し相手や聞いてくれる相手が増える事は喜ばしいです。」

シロツメはにこにこと笑う目の前の男を見て、やはり、と思った。

この方は、唯のお人じゃないのだと。

『命在りし皆々様、此処は一興。さあ、手をなりませう。渦から帰った祝いに。』

Re;I borrow a hand.
DATE: 2010/01/11(月)   CATEGORY: 店主の宝物庫
とある渦の最後の話。
私の世界。それは何だろう。お父様やお母様かな。それとも自分の家なのに、帰れない家なのかな。

どっちにしろ、私の世界は壊れるんだろうな。知っちゃったから。これで、お終い。

パンッ―勢い欲開かれた襖向こうには男集が横一列に並んでいた。明らかに喧嘩なれしてそうな、やから。

「・・おお、居た居た。タマタツ様ぁ、親方様カンカンに怒ってますよぉ」
一人の男がタマタツに声をかけると、タマタツはふんと鼻で笑った。

「我等に当たるとは、本末転倒もいい所だな。」
「まぁ、それもそうですがねぇ、あっちは融通聞かないお人って事は分かってるはずでしょぅ。」
「融通か・・、あれは我侭っていうんだ。」
「どっちでも言い話でさぁ、で、シロツメ嬢ちゃんは何処で?」
「どういうことだ?」
「どういうことも何も、作戦変えですよぉ。シロツメ嬢ちゃんに”家”に絶対戻らないという約束をさせて来い、だそうでぇ。」

そう言ってから男は面倒くさい、と言いミカハラに目を向けた。

「それとですねぇ、ミカハラ坊ちゃん親方様はアンタにも今回ばかりはかんかんです。お家に戻ったら危ないかもですよぉ」
ミカハラは男を睨みながら、シロツメを自分の後ろ背へと避難させる。

「お集まりの皆様方―」
険悪な雰囲気に押し流されず、静かな声が一つ落とされた。シロツメがその声の主を見ると、リガキだった。
この人は何でこんなにも落ち着いているんだろう。シロツメは思う。

「んぁ?あんた、誰だ?」
「お初にお目にかかります、大学で教鞭をとらせてもらっております、リガキと言います。」
にこり、とその男は相手の男に微笑む。人が虎か竜にやあと挨拶しているようにさえ錯覚する。

「そんな人が何だってこんな所に?」
「呼ばれたのです、渦に。」
「渦・・?先生様、馬鹿にしてらっしゃるんで?」

ぎろりと今まで睨まれた中でも一品のにらみがリガキへと飛んだが、リガキはにこりと微笑んだ。

「いいえ。本当の話です。現に今も、シロツメさんを中心としてぐるぐる回っている。」
急に降られたシロツメは驚いてリガキを見たが、彼は微笑むだけだった。

「貴殿方なんでしょう?ツバメミさんを殺害したのは?」
「っ!!」
居間に居た全員がその言葉に驚き、陰気臭い顔の刑事は襖向こうの男を見る。

「ここで、素直にそうでさぁ、という馬鹿は居ないと思うがね。」
「勿論そうでしょうとも。あの現場で、外から射るのは不可能ですが貴方はツバメミさんと顔見知りのご様子だ。」
「それが?」
「だから、気づかれずに真後ろから撃つのも造作も無い。加えて言うなら貴方を先日お見かけしました。」
「なっ!?」
リガキの突然の言葉に驚いたのは、オオナキ氏や刑事達だった。

「確か風呂炊きさんでしょう?」
「・・、タマタツ様ァこの先生何者で?」
目の前に大人しく座っているリガキを男はいまいましそうに見ながらタマタツに尋ねる。

「大学先生だよ、安前事件を解いたな。」
「あの事件の・・。へぇ、こいつぁ、星の巡りも悪くなったモンで。けど」
ずかずかと男は踏み込み、シロツメを後ろ背にかくまうミカハラの前に来た。

「事件ってのは、後の祭りでしょうや。」
すっ、と男の服から小さなボウガンが現れた。

「一応言っとくけど、動くなよぉ?特にそっちの刑事さんら。」
刑事達がぐっと短く唸るのを他所に、シロツメが前に出て来ると男のボウガンを握る手を掴んだ。

「賢いねぇ」
「シロツメっ!」
ミカハラがシロツメを見ると、シロツメはにこりと全員に微笑むように笑った。

「帰りたいのに”心”を失って、お父様やお母様の愛も忘れて、ミカハラ・・いいえ、兄さんが打ち明けてくれた話を忘れてまで、私は家族の一人に望まれてない家に帰りたくありません。」

「だったら、最初から”主人公”はいなかったんです。この話には。」
男はするりと引き金に手を伸ばした、女は兄を見た、嗚呼もう少し両親の話を聞けたら良かったなと思いながら。

すとりっ、と他愛の無い音が響いた。

陰気臭い顔の刑事は恐る恐る目を開いた。ボウガンの矢は畳に刺さっていた。しかし、ミカハラの肩から血が留めなく流れていた。そして、それを隣りで呆然と見るシロツメが居た。男はといえば、ボウガンと一緒に畳に崩れていた。その後ろにはリガキが立っていた。

「大学先生、あんた一体何した。」
「・・何って、足払いですよ?ああ、刑事さん確保確保。」
リガキがそう言うと、刑事達ははっとし襖向こうに居た男たちに飛び掛る、男たちもリガキの行動に呆然としていた為かあっさりと捕まった。

「・・にい、さ・・っ!」
シロツメが我に帰りミカハラの肩の傷を見る。リガキが男を足払いしたため、急所は外れていたが出血が止まらない。

「非道いことをお前は言う。」
「・・?」
「お前は望まれていなくなんか無いんだ。望まれているんだよ。お前のお父上やお母上、そして僕もお前が家に帰って来てくれる事をずっと望んでいるのに、・・望まれていないだなんて、」
―ごぼ、ごぼ、嗚呼未だ溺れてる。

「お前が帰ってきてくれたなら、どれだけあの方たちや僕が救われる事だろう。」
―ごぼ、ごぼ、嗚呼どうして溺れさせてくれない。

「だから望まれていないだなんて、帰りたくないなんて、言わないでおくれ。」
―ざばっ、誰かに手をつかまれた。

「シロツメ」
―手を掴んだ相手を見ようとすると、太陽の輝きがあってまともに顔を見れなかった。

「シロツメさん」
いつの間にか隣りにはリガキ先生が立っていらっしゃった。

「貴女は”帰るお家”が二つ出来たんです。」
「二つ・・?」
「そう、一つはご実家、もう一つは貴女のもうひとりのお母さんとお父さんのお家です」」

オオナキ氏と奥さんがミカハラとシロツメの二人を抱きしめながら、わんわん泣いた。

「・・お父様、お母様・・私は・・ここに戻ってきても良いですか?」
「戻っておいで、ここはお前の家だよ。」
「そうですよ、シロツメ。貴女は私たちの可愛い娘。戻っておいで。いつでも。」
「・・私は、逃げて戻ってくるやも知れません・・」
ぐすりとシロツメも泣き始めている。ミカハラはそんな妹を見た。

「それで良いよ、逃げたって良い、それでもお前は」
―太陽の光を手でさえぎると、懐かしい顔だった。

「あの路地で見つけた時から、私たちの大事な娘―シロツメなのだから。」
―誰かの名前を呼び、しばし船の上で笑い声が響く。

「・・・・・うわあああああああん」
―嗚呼、渦が掻き消えた。

Re;I return to The Moon Princess, the moon.
DATE: 2010/01/10(日)   CATEGORY: 店主の宝物庫
渦の兄の話。
―妹よ、何処へ行ったのか。あの渦に攫われたのか。それとも、人に攫われたのか。

シロツメは自分の目から涙をあふれさせることを止めることが出来なかった。これが、真実なのだと。

自分がずっと焦がれていた両親は自分を捨てた訳ではない、それは実にうれしい事だった。だが、祖母は自分が家に戻る事を望んではいないのだと。

「我々が親方様に下された命は一つ。」

徹底して冷静だったこの人は、誰かに罪状を暮れてやるように言う。

「シロツメ嬢貴女をお家に戻さないようにする事です。」
「っ!」

「具体的に言うなら、貴女が我等を選んだ際にはご両親のことは霧の中、死んだ事にして置くようにと。」
「お婆様はそこまで言っていらしたのですか。」

隣りで自分を支えてくれていた、義兄はタマタツ様に尋ねた。

「ミカハラ殿、貴方も親方様を分かっていない。あの人は徹底して冷酷な人ですよ。それこそ、先程のリガキ先生が仰っていたような天人の様にね。」

壊れる、そんな心地がした。リガキ先生が言っていたのは、これなのかなと思いながらも。

「ですが、貴方方の計画・・というよりそちらの計画は破綻していますが?」
リガキ先生がタマタツ様を見据えながら言い放った。

「破綻なら、ツバメミ殿が死んだ時点で破綻しています。」
「・・?お前等がやったんじゃないのか?」
少しばかり生気の無い顔立ちの刑事さんがタマタツ様に尋ねられる。

「あれでもあの人は人望は高いんだぜ。」
「そんなお方を殺す理由など我々には―」
ヒネズ様が仰った後に、ハチチリ様が続けて言う。それを聞いた刑事さんは私と多分ミカハラさんを見た。

「僕は彼を殺していません。」
「ちょっと待て!?ミカハラの坊ちゃんにシロツメ嬢アンタ達があの人を殺したんじゃ―」
ヒネズ様が本当に驚いたという表情をした。

「こっ・・」
「僕は今彼女に真実を話したんだ。彼を殺す理由なんてー」

ぐるり、と何かが渦を巻いている。これは、一体―。

すう、嗚呼。磯の馨。
何処ぞで鳴いて居るのは―。

「皆さん場が荒々しくなるみたいです」
「リガキ殿、君は分かっているのか―!?」
「一応は。皆さんかぐや姫という物語を知っていますか?」
「知ってるも何も―」
「まさか、迎えか?一体誰が」
タマタツ様がリガキ先生に問われる。

がぼり、溺れる音。

「迎えに来るのはかぐや姫の故郷の人々。当てはめるなら、」

パンッ―襖を勢い欲開ける音が響いた。

「ご実家の方々でしょうね。」

Re:
DATE: 2010/01/08(金)   CATEGORY: 店主の宝物庫
渦の兄妹の話。
―誰かの兄様、妹探してどんぶらこ、どんぶらこ。誰かの妹、兄様探してごぼりごぼり、ごぼごぼり。


かぐや姫はどうして竹の中に居たのか、という疑問があるが、彼女は”月”にて罪を犯したが故に下界、今人が住む土地に落とされたのだという。なら、そんな”月”がある天に住んでいた彼等、天人とは一体何なのだろう―?

「さて、アイクラさん、お尋ねしましょうか?」

ミカハラの言葉が未だ余韻として残っているためか、彼の反応は鈍かった。

「なっ、なんだ・・?!」
「先程のミカハラさんのお話、それから貴殿が”われ等”と言った辺りから、貴殿方はシロツメさんの家の”重鎮”という辺りでお間違いないでしょうか?」
にこりと笑顔を向けるリガキにアイクラは怯んだ。その代わりと言わん具合にタマタツが口を開いた。

「もし、そうなら?」
「いえ、一体何のために此方まで趣になられたのだろう、と思いまして。」
ミカハラがシロツメを自分の後ろ背にかくまうようにする。

「タマタツ殿―」
ハチチリがタマタツを見ながら名を呼ぶ。その隣りでは、ヒネズがタマタツを無言で見ている。そして。

「嗚呼参りました、参りましたよ。リガキ先生。」
けらりとタマタツは言った。

「いいのかよ、タマタツ殿」
「良いも悪いも、親方様とて文句のつけようがあるまいよ。」
「それはそうだがっ!」
「第一親方様の作戦は杜撰すぎたのだ。」
「・・作戦?」
陰気臭い顔の刑事が顔をこおばらせながらタマタツに尋ねる。

「作戦ですよ。シロツメ嬢、親方様は貴女にお家にお戻りになられたくないのです。」
その言葉にシロツメの顔が悲しそうに歪んだ。

「けれど・・私は女。戻った所で一体お祖母様に何の得があるというのです。」
「・・・。」
シロツメの言葉にタマタツが黙っているのを見て、リガキは答える。

「かぐや姫を知っていらっしゃいますか?」
「少しくらいなら。」
「最後にかぐや姫を戻しに来る人たちがいるでしょう?」
「・・ええ、確か。」
「彼等は彼女の同郷の人々。けれど、彼等にはかぐや姫にあって彼等には無いものがあるんです。」
「それは?」

「”心”」
「こ、ころ?」
「そう、彼等天人には心が無いそうです。だから心の生まれたかぐや姫に天の羽衣を着せ、心を無くさせた。」
「・・でも、それと私に一体何の関係が・・」
「”何も知らない”貴女と”全てを知りつつある”貴女、お祖母様にとって厄介なのはどちらなのでしょうか、シロツメさん?」

ひっそりとシロツメが息を呑む。

「そう、”全てを知り”ながらも”実の両親”に会いたいと願う貴女だ。もし、貴女が本家へお戻りになったなら、貴女のご両親はお喜びになられるでしょう。そして貴女は実質的にご両親の”第一子”となる。」

「貴女は確かに女性だけれども、結婚した後あなたの夫となる人が”会社”を継ぐという決断を貴女のお父様はなさるかもしれない―それが貴女のお祖母様が貴女をご実家に戻したがらない、理由なのです。」

違いますか?とリガキはタマタツに言葉を投掛ける。

タマタツはじとりとリガキを見て口角を上げた。

「親方様もそう言って仰ったよ。」

―どぼり、遂に溺れる音がした。妹が?兄が?それは今となっては分からない。

Re:All was about to be drowned.
DATE: 2010/01/06(水)   CATEGORY: 店主の宝物庫
バイバイカウンター。
今晩和。明日がもう学校と言う事で心の中は絶賛orzの嵐な桂月です。

属に言う時間使いのヘタな人とは私のことです。難しいよね、時間の使い方。

今日なんかずっと古本屋に行くか行かないかで悩んでいましたよ・・。行かなかったんですけども。

あ、新型インフルの予防接種受けてきました!何故か、空中ブランコを思い出してしまった・・。ハマりすぎたなと確信。終っちゃったんですよね、空中ブランコ。最終話のまゆみちゃんはかっこよすぎると思いました。

で、此処二日で見た映画たちの感想がずらずら以下続いたりしますよ^p^

DATE: 2010/01/05(火)   CATEGORY: 店主の宝物庫
渦の秘めたる話。
―渦になった私の事を誰も気づかないのと同じように、明後日の事を悩んでも分からない。

「・・、ミカハラ様・・?」
ぽかんとした表情でシロツメが目の前でひたすら頭を下げたままで居るミカハラを見る。他の面々もそれに驚いて言葉を出せずに居た、一人の男を除いては。

「ミカハラさん、語って頂けませんか―?」
リガキの言葉にビクリと頭を下げていたミカハラが動いた。するり、と頭を上げたミカハラにシロツメは驚いた。どうしてこんなにも、悲しそうなんだろうか。と。

そして、ミカハラが口を開き言葉を喋りそうになると―「待てっ!!」それはアイクラの声だった。本人は忌々しくミカハラとシロツメを見ている。

「アイクラさん、語り人の邪魔をしないで頂けませんかー?」
リガキが仁王立ちして今にも殴りかかりそうなアイクラに声をかける。

「邪魔っ?!邪魔だと申すか!それなら貴殿のこの行為の方が我々にとって何倍も邪魔だッ!」
「ほう・・我々、ですか?」
リガキがアイクラを見てそう尋ね返すと、アイクラはしまったという表情になった。

「そっ・・それはっ!」
「未だ聞きませんよ、ですから座って大人しくミカハラさんのお話しを聞いてください。」
アイクラはふらり、と魂が抜けたように座った。

「リガキ殿はもうお分かりかもしれませんが・・、シロツメ嬢貴方を僕はずっと探していた。」
その言葉にシロツメとオオナキ夫妻が驚いた。

「・・私を、ですか?」
「そう、貴方を。」
「理由をお伺い・・しても構いませんか?」
シロツメは自分の手でミカハラの手を懇願するかのように握った。

「―シロツメ嬢、貴方のご両親は生きておられます。」
「っ!」
「そして、シロツメ嬢貴方をあの路地に捨てられたのはご両親ではないのです。」
その言葉にシロツメは自分の両手で口を塞いだ、その代わりにオオナキ氏がミカハラに問う。

「それでは、シロツメは・・この子はどうしてあんな路地に居たのです!」
「シロツメ嬢のお母様は元々病気がちな中第一子をご出産なされましたが難産でその子は亡くなりました。そして、次に生まれた女の子が居ました。」

「ですがその女の子は大奥方様・・、シロツメ嬢の祖母にあたられる方に攫われ行方不明に。」
「私は、祖母に捨てられたのですか―・・・?」
「はい。」
その言葉を聞いてシロツメの目からは涙がポロポロと溢れ出た。

「どうしてそんな、仮にも祖母だろう?」
刑事がミカハラの話を聞いてそうミカハラに尋ねる。

「・・祖母は、男児が欲しかったのです。会社の社長とさせるために。」
「そっ・・、そんな理由でか・・」
「そしてシロツメ嬢のお母様は生まれた女の子が行方不明になった事を知り、ますます病んでしまわれました。奥方様の塞ぎこんでいるご様子を見られ旦那様も口数が少なくなられました。」

「僕が、引き取られたのはそんな時でした。」
「引き、取られた・・・?」
刑事が鸚鵡返しにしていると、ぽたりと目から涙がこぼれる中シロツメはミカハラを見た。

「僕はシロツメ嬢の家の養子です。」
形式的には義兄となるんでしょうか、と僅かに呟くミカハラ。

「僕は大奥方様に引き取られてあの家にやってきました、赤ん坊がもう直ぐ生まれるというのに奥方様は僕のことも可愛がって下さり、旦那様も僕がその子の”兄”になるのだと、言ってくれました。」

「僕は、これ以上に無いくらい誇らしかった。今までずっと”孤児院”から外の景色を見て”実の両親”が迎えに来てくれることを待っていました。けどそんなのは来なかった。両親は僕を見切ったんだと思いました。」

「だから、日に日に元気を失われ笑顔をこぼす事もなくなった奥方様や旦那様を見るのは辛かった。」

「そんな時でした。大奥方様と、貴殿方の話しを聞いたのは。」
それと同時にその目線はアイクラやヒネズたちに移される。

「奥方様の赤ん坊の女の子を融解したのは大奥方様である事、その女の子は生きていてとある家で愛娘として育てて頂いている事、そしてその女の子が”本当の両親”を探していると言う事。」

「それで貴方は―」
リガキがミカハラを見ると、ミカハラは今まで以上に表情を無くしていた。

「彼女を、”両親”に会わせようと思ったのです。」
ふたつのみたま。ふたつのかくご。ぐる、ぐる、ぐる。

ReThe man of the delusion habit and the person who live in the sky.
DATE: 2010/01/03(日)   CATEGORY: 店主の宝物庫
渦の姿の話。
―しくり、しくりと声のする。しくり、しくりと嘆く声。嗚呼、あの渦からか。

「大学先生、あんた・・」
分かってんのか、と陰気臭い顔の刑事が半ば睨むようにこちらを見ながら言う。リガキはそれを見たが、まるっと無視してオオナキ氏に声をかける。

「オオナキさん、悪いんですが一番最初皆さんに自己紹介をして頂いた時の席にして頂いてもらっても良いですか?」
「それは構いませんが・・」
オオナキ氏は心配そうにリガキをみながらも、妻に声をかけ座布団を敷いてくれた。

「皆さんにお話するのはとある”渦”の話です。」
淡、と始めたその言葉にタマタツとアイクラが眉根を寄せた。

「・・渦、だと?」
「渦、ですよ。アイクラさん自分では気づかないものです、その渦に溺れかけているかどうかも。」
そう言うと、アイクラはぐわっと怒気を顔に表した。

「面白いな、続けてくれよリガキ殿。」
ヒネズが何時もの調子で言うと、リガキは頷いた。刑事はリガキの右側で立っている。

「―ヒネズさん」
「何だ?」
「貴方は酒盛りが終ってからツバメミさんに部屋まで引っ張られて行きましたよね?」
「・・ああ、そうだ」
「ちょっと、待て!大学先生、それじゃあんたのアリバイは無いじゃないかっ!?」
刑事がヒネズとの話に口をはさんでくると、リガキはそちらを見て一言。

「お静かに刑事。ヒネズさん、貴方はどこでツバメミさんと別れましたか?」
「・・どういう意味だ?」
「どういう意味もこういう意味もそう言う意味です。何処で、お別れになったのか、それだけですよ。」
「・・、普通に布団に入っていたからな、そのまま布団に入れられたんだろうて。」
「ヒネズさん、それは本当ですか?」
「本当だ。」

「ヒネズさん―溺れましたね。」
けろり、とリガキは言った。その言葉にヒネズは始めて眉に多いに皺を寄せた。

「・・何だと?」
「さっきもタマタツさんに僕は話しましたが、皆さんを起こしに行った時貴方は起きたばかりでしたよね?」
「そうだ。」
「なら、どうしてシャツに皺が寄っていなかったんでしょう?」
「ッ!!」
「僕は思いました、貴方は起きていて風呂に入って着替えたんじゃあないかと。けれど、それならどうして隠すのか?隠さねばならない理由があるのか?―どちらなんでしょう?」
ヒネズは下を俯き親の敵でも見つけたような表情をしているーそしてそんなヒネズのところへ刑事がどすどすと行き手首を掴む。

「つまり、こいつが犯人なんだな!?」
「違います。」
「なあっ?!」
間抜けな表情をしている刑事を放って置きミカハラを見る。

「シロツメさん」
此処に来て、神妙な顔になりつつあるシロツメを呼んだ。

「此処に居る方々に貴方の”願い”をもう一度お聞かせ願いますか。」
「私の・・・願い。」
「そう、貴方の、”願い”。」

シロツメはぎゅっと胸の前で拳を作り前を見据えた。

「私は・・私はお父様やお母様にとても感謝しています。血の縁も無い、私を此処まで育ててくれた事に、本当の我が子のように慈しんでくださった事に、そして私が実の親を会いたいと言った時も受け入れてくれた事本当に感謝しています。だから、私は。」

「そんな私を応援してくれたお父様やお母様の為にも、本当の親に会ってみたい・・。ツバメミ様には本当に申し訳ないと思っております、私のそのような願いのために来て下された事が原因で死んでしまったのだとしたら―」

ぽたり、と涙が畳の上に落ちた。シロツメの泣き顔を見た刑事たちが驚いた。綺麗だったから。

「私は、命を持ってツバメミ様に報います。」
その言葉に刑事やオナキ夫妻、ヒネズ、ハチチリ、アイクラも、タマタツが驚いている中すっとミカハラがシロツメ嬢の前に立った。そしてぺたり、と額を畳に付けた。自分以外の人間が全て驚いていた。

「―すまない、シロツメ」
そう吐いた言葉に、何かがないた。

『願いましたる物語は―かぐや姫で御座います。』

Re:The irreplaceable person whom I come from the moon, and live in the sky with princess.
DATE: 2010/01/02(土)   CATEGORY: 店主の宝物庫
海神の娘の渦の話。
―あそこには娘が居る。この世で尤も荒々しく、この世で尤も美しき海神の娘。

「では、皆さん昨夜夕餉を取ってからの行動はばらばらだったと。」
「ええ、ヒネズ殿とツバメミ殿にリガキ殿、オオナキ殿は酒盛りをしていましたが。」
ハチチリが穏やかに刑事の問いに答える。

「私は部屋に戻ってから風呂に行って帰ってからは直ぐに床につきました。」
「成る程、アイクラさん、あんたは?」
「・・、しばらく部屋で書物を読んでいたがその後はハチチリ殿と同じだ。」
「タマタツさんは?」
陰気臭い顔の刑事は半ば何かに諦めかけているようにタマタツに問う。

「私ですか?私は風呂に行った帰りに其処の庭で夜風に当たってから、部屋に戻って書物を読んで寝ました。」
陰気臭い顔がまずいものを喰った表情をした。信じられない、という具合か。

「・・ミカハラさんは?」
「僕は部屋に居て、しばらくして風呂に行きました。途中でシロツメ嬢にも会いましたが・・」
「シロツメさん、本当ですか?」
「ええ、お母様がお父様のご心配をされていたので様子を見に行く途中でお会いしました。」
「と言う事は、あの酒盛りの終盤ですね。」
リガキは顔の赤くなったオオナキを迎えに来たシロツメを思い出した。

「そうなりますね、帰りにリガキ殿たちが酒盛りをしていた場所を見ましたが誰もいませんでしたから。」
「ということは、アンタが一番最後にあの廊下を通った事になるな・・」
「・・、僕が帰っているときには何もありませんでしたよ。」
疑いの眼差しが分かったのかミカハラはそれごと切り捨てるかのように言う。

「・・ああ、そういえば明かりが一個だけついていました。」
「明かり?」
刑事がいぶかしむようにミカハラの発言に眉をひそめた。

「明かりです。ツバメミ殿の所だけ、ぽつりと明かりがついていました。」
他の所は全部消えていたのですが、とミカハラは言う。

「要するに、被害者だけが一番遅くまで起きていた、ということか?・・いや・・」
そう言いながら刑事はその言葉の先を言うのをやめた。

「”もうその時に死んでいたか”」
タマタツが刑事が言うのを止めた言葉の先を言った。

「タマタツさん・・俺は言わないようにしたんですがね。」
「推量だとしても言って損は無いですよ。ただ、当たらないだけです。」
「ですがね・・」
「刑事さん、リガキ殿にご享受頂いてはどうですか?」
にぱりと笑ってタマタツは刑事に言う、刑事はといえばじろりとリガキを見た。

「タマタツさん、一つだけ言うとですね。僕とオオナキさんが貴方たちを窓から出るように言ったじゃありませんか。そこで僕はツバメミさんの部屋も開けたんです。」
カコン、と今まで聞こえなかった獅子脅しの音が聞こえた。

「それで?」
「ツバメミさんの部屋をざっくりと見ましたが、畳には血も無いし乱闘した形跡もありませんでした。」
「・・犯人が証拠を持ち逃げしたという可能性は?」
「それだったら、尚更何処かに血が残っていますよ。」
布団に、畳に、窓の格子に、逃げたとされる場所に、と続ける。

「ツバメミさんは部屋を出て居間へ向かっている最中に、亡くなられた。」
「おぃ待て大学先生それじゃツバメミさんは至近距離から殺されたってことになる。なら犯人は”顔見知り”ってことになる・・しかも、其処まで疑いを感じさせないほどの。」
「そうですね。」
「けど、だ。この人たちは昨日集まったばかりの人たちだろう。」

刑事の言葉に又、渦が巻く。ぐる、ぐる、ぐる、と。

「シロツメさん」
リガキは刑事と自分の言葉に驚かされていたシロツメの名前を呼んだ。

「はい、何でしょう?」
「貴方は”知り”たいですか?全部を。」
「ぜん、ぶ?」
「そう、全部。”知れ”ば貴方の今の”世界”は壊れてしまうかもしれない。」
シロツメはその言葉に一度怯んだ。だが、次の瞬間顔を強張らせながら言う。

「・・リガキ先生、私は”知り”たいです。」
嗚呼、海神よ。貴方の娘が今、渦より帰ります。

Re;god of sea
DATE: 2010/01/01(金)   CATEGORY: 店主の宝物庫
逆巻き渦の話。
―知っていなくてもいい、知っていてもいい。どちらにせよ貴方が其処で溺れる。

「刑事!」
そう言ってパタパタと現場から戻ってきたらしい別の刑事が喋る。

「おぅ、どうだった?」
「それがですね・・」
ぼそり、ぼそり、と喋る刑事に体格はよく顔は陰気臭いあべこべな刑事が聞く。

「被害者の背中に受けていた矢は、弓矢とかの矢じゃなくて、ボウガンっていうんですかね?あれの矢でした。」
「ボウガン?そりゃまた凶悪なもんだな・・」
「はい、それから現場ですが被害者が倒れていた後ろに誰の痕跡も無いんです。」
はぁ、と陰気臭い顔の刑事はため息をついて分かった、と別の刑事に言うとこちらに向き直った。

「シロツメさんよぉ、言っちゃあなんだが、あんた怪しいぜ」
そう言ってシロツメを刑事は見た。シロツメはといえば、不服だという表情をしている。

「どういう意味でしょう?」
「要するに、だ。被害者がこう廊下を歩いてくるだろう?」
刑事は畳の上を指でテコテコと歩かせる。

「すると、だ。もし後ろから射られたって言うんだったら、さすがに最初に居た位置から引きずったような跡が残るだろう?」
「それが?」
「だがあそこには引きずった跡は無かったし、おまけにあの現場の廊下だが、庭になってる。」

そういえばそうだった、人の背丈150は優にある小さな木や花の植えてある庭だった。

「部下に家の外から、廊下を全体的に見させたが、あの庭が邪魔で射るモンも射られねぇそうだ。もしヘタに強行突破しようものなら、あっちに気づかれて終わりだ。」
「・・回りくどい言い方はやめてくださいませんか、刑事さん。」

きしきしと、空気が面白いくらいに軋んでいる。

「じゃぁはっきり言います。あんた、誰か協力者がいたんじゃねえか?」
「協力者?私は皆様と昨日お会いしたばかりです。第一、私の願いは”実の両親”を一緒に探していただく事、殺人を犯す意味が在りません。」
「だが、あんた物騒なこと言ったそうじゃないですか?」
「物騒な事?」

「”私の願いの為に一緒に黄泉の道を渡ってはくれませんか”?」
「それのご説明もそれを言った後申しました。」
「・・あの、刑事。」
ここで始めてリガキは口を開いた。

「なんだ、大学先生」
陰気臭い顔からギロリと睨まれる。

「もし協力者がいるとするなら、どんな具合なんですか?」
「・・、一人は陽動役、もう一人はボウガン役だ。」
要するに、居間側に陽動役、彼等の部屋側にボウガン役というわけか。

「ですが、それは難しいですよ。」
「何故だ?」
「一つに、時間ですけど・・シロツメさんに協力者の方が居るとします。すると、この二人は何時ツバメミさんが起きてくる時間を予め知っていないといけません。何故ならそうしないと背後にボウガン役はいけないし、陽動役も出来ませんから。それと、もう一つですが其処までしなくてはいけなかった”理由”です。」
「理由・・?んなの」
「ありませんよ。」
「はぁ?」
「一人だけ殺しても意味は無いですよ。シロツメさんは一人だけなんですから。それにツバメミさんを殺したってその人にツバメミさんのお金が舞い込んでくる訳でもないでしょう?」
「それはそうだが、じゃあ被害者以外全員が”協力者”だったら?」
「それも無理じゃないかと。」
「何でだよ?」
「それこそ、協力者内で争いが起こるしさっきも言いましたがシロツメさんは一人です。何より、何故ツバメミさんを排除させたかの理由がありません。」
「・・だが、今一番に可能性が在るのはシロツメ嬢だ。」

「刑事さんにそういわれるのも仕方が無い事ですね。自分でも可笑しいくらいに怪しいですから。」
シロツメは自嘲気味に言った後、凛とした。

「けれど、私はツバメミ様を殺しては居ません。そして、協力者の方もいらっしゃいません。」
それだけは言って置きます、と彼女は言った。その言葉を聞いて刑事は頭を掻き、他の取調べだな・・と呟いた。

とすとす、と他の婿候補たちが居る方へと向かう刑事を見ているとシロツメに声を掛けられた。
「どうしました?」
「先程は、助けていただいて有難うございます。」
「ああ」
刑事に説明をしたことを言っているのだと気づく。

「リガキ先生も、私が怪しいと思われますか。」
「・・、今のところは何とも申し上げられませんね。ですが」
「・・ですが?」
「最初にシロツメさんが仰っていた、”不埒者”が居るという勘は当たっていたのだと思っています。」
そう言うと、シロツメは薄く笑い頷いた。そうしていると、刑事から声がかかりシロツメとそちらに向かった。

Re:endless
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