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DATE: 2010/03/31(水)   CATEGORY: ゴッドイーター
為る冬。
彼女の人生に”転機”はどうやらたくさん転がっていたらしい。

「ふわー・・・・大きい。」
彼女は流梨と別れてから雨宿りのつもりで近くにあった図書館に入った。だが、雨宿りの目的を忘れるくらいにその図書館は広かった為に、冒頭の台詞に移る。

そして、彼女はどうせなら何冊か借りていこうという結論に達し、ひょこひょこと迷路のような、けれどまだその時の彼女はそんな事を知らないために、彼女は迷ってしまった。

「どうしようっかなー・・・」
雨宿りがしたかっただけなのにな、と心の中でぼやきながらも彼女は迷路のような図書館を歩き回る。しとり、とじっとりとした湿気がそこら中にあって蒸し暑かった。多分クーラーはあるんだろう、けどもこの広さだ。クーラーの風が広がっていない。

「ぬおおお・・・!出口は何処ですか・・・・!?」
きょろきょろ、と人を探し、出口を探しながら周りを見渡す。

そして、人らしき姿を見つけた。やっとか!と思い彼女は其処へ走る。
「すいま、せ、んっ!」
「はい?」
小走りに蒸し暑い中を走った結果は息切れだった。声の主を見ようと顔をあげるとエプロンを着た男性が一人片手に本を直しながらこちらに顔を向けていた。

「あの出口って何処ですか?」
「・・・・出口?・・ああ!迷われたんですか。」
「はい、がっつりと。」
「それじゃ、少々お待ちください。」
そう言って青年は本を何冊か手際よく入れる。

「こっちです、」
「こっちなんですか・・」
「ええ、それでここを左に曲がって真っ直ぐ行くとカウンターがあるんですけど・・この図書館に始めてこられましたか?」
「はい、雨宿りのつもりで。」
「ああ、外は大雨でしたからね。大学生の方ですか?」
「はい。」
「ここ大学生の教授の方や生徒の方々が良くお立ち寄りなさるんです。」
「へー」
相槌を打ちながら彼女は青年を見遣る。エプロンの上の部分にはネームプレートがつけられていた。

「キナツホン?」
「・・・・?キナツホン?」
「その、ネームプレートの」
「・・・ああ、これはエノモト、と読むんです。で、僕が榎本。」
「司書さん?」
「ええ、大学卒業して直ぐにこっちに入れたんです。」
「・・・・じゃあ、榎本君だ。」
「?」
「私、楠本って言います。宜しく。司書の榎本君。」
にぱりと彼女は笑う。対して青年は困惑顔ながらも彼女の笑い顔に困った風に笑い。

「宜しく、大学生の楠本さん。」


「って事が昔・・ええ、1年位前にありましたね。」
「楠本ちゃんらしいわー」
「唐突過ぎると思いませんか、?」
「ふふ、唐突でも出会いは出会いよ。」
「・・・それもそうですね、」

彼女の友人、彼女の一年はこのように締めくくられる。

Re;A life reduced drawing such as the maze.
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DATE: 2010/03/30(火)   CATEGORY: 店主の宝物庫
繰る秋。
彼女は何処までも自由に生きているように見えて、何処までも人を気にして生きている。それの現れが、ジーニアスというあだ名を嫌う事なのだと何人が知っているんだろう。

「じゃあ、こっちのプラグ繋いじゃえばいいんじゃないんですか?」
「駄目だっつの。それ繋いだらお前感電するぞ。」
明るい髪色をした女性が両手に持つ配線の一つを見ながら眼鏡をかけてはしごに登っている男性に聞くと、男性は子供に叱るかのように言った。

「流梨先輩はこういう配線とか得意なんですか?」
「俺は機械専門だから。」
「へえー、私この前時計の電池切れたから直そうと思ってネジ開けて電池入れ替えて又ネジ締めたら何故かネジが一本あったんですけど、あれ何処のなんですかね。」
「なんかそれ、良く聞く話だよな。」
配線を繋ぎながら、女性の話しを聞く男性は淡々と答えた。

「不思議ですよね、たった一本だけ残るって言うのも。」
女性が呟きながら、ライトと言う男性に、円筒の形をした電灯を渡す。

「何故かな。2本とかじゃないっていうのがシュールだ。」
「いっそのこと、笑いどころを探してみるべきなんですかね。」
「かもな・・、見っけ、左の。」
更に左の配線プラグを渡すと、あっという間に電気がついた。そして、男性ははしごから降りて肩をボキボキと鳴らし、「疲れた・・」と漏らす。

「点いた!」
「つうか、本当なんでこの時期に停電とか・・」
「電車遅れてるかなー・・」
「だろうなあ、1時間遅れだったら俺ヤバイな・・今日バイトなんだけど。」
「バイトですか・・そういえば今日澪葉先輩お休みって風邪ですか?」
「あー・・・違う違う。あいつ、今日は舞台なんだ。」
「・・・・・、舞台?」
思わずと言う具合に女性は首をかしげながらも尋ねる。

「そう、民衆劇って言ったら良いのか?元々は地方で芸をしながら回ってたらしいんだけど、3年位前に場所買って其処で今は芸をやってるのな。で、今日はあいつが出るって決めてる日だから。」
「あ、だからなんですね。」
「何が?」
「澪葉先輩、発音すごい良いので。声がハキハキしてるって言ったら良いんですかね?」
「ああ、それな。それは俺も思う。」
「そういえば流梨先輩は耳が悪いんですか?」
その質問に眼鏡の男性は、はたりとして女性を見る。

「何でそう思うんだ?」
「偶にですけど、私喋ってたりすると首を傾げてるので、聞こえなかったか、もしくは聞こえないのかなって。」
「あー・・、後者だ。俺昔から曲とか、大きい音で聴いてたら難聴になった。」
「そうなんですか、」
「そうなんだよ、」
「じゃあ、この前以上くらいの大きさに気をつけて喋ったら大丈夫ですか?」
「ん、ああ、多分平気。」
「聞こえなかったら遠慮なく言ってください。」
ぐっと拳を握ってガッツポーズを作る女性に思わず男性は笑った。

「頼むよ、後輩様。」
けらりと笑った男性に、けらりと笑い返す女性はドン、と遠くで鳴る雷に二人揃って悲鳴を上げた。

Re;In that way it is rolled up in your days.
DATE: 2010/03/29(月)   CATEGORY: 店主の宝物庫
驕る夏。
「それで、ここの・・を加え・・このように、」
相変わらず自分の耳では会話が虫食いのようにしか聞こえない。困り者だ。だが、その困り者にしたのも自分の責任なのだから、極めて救いようの無い。
呆れてホワイトボードに記入された文字を取りながら隣りに居る人物のノートの模写速度を見る。今ホワイトボードに記入されている分だけ、全部書き終わっていた。

「澪葉」
隣りの人物の名を呼ぶと、そいつは目線だけをくれて、肩を竦めるジェスチャー。

「ホワイトボードのAの薬品を入れると、Bに変化が起こってそれがあのDになるんです。けど、ここで気をつけておかなければいけないのは、Dになる過程で発生するある臭気だそうです。それが、Cですね。」
「面倒かけて、悪い」
そう言うと、澪葉はまたしても肩を竦めるジェスチャーをした。

大学内の食堂も完備してあるテラスはそこらの大学より広く自然の手入れがマメにしてある。
「そういえば、先輩方が新入生で騒いでましたね。」
「あれだろ?”ジーニアス”って。」
「そうそう。なんともまあ、野次馬根性丸出しで。」
そう言って笑う澪葉はなんとも分からない、という表情をしている。

「ネタが欲しいんだよ、先輩達も。あわよくば自分のゼミへ駆け込ませようって言う教授たちの魂胆も見えるし」
持ってきた弁当と水筒からお茶を注いで飲みながらそう言うと、澪葉は自分の昼食らしいパンをもそもそと食べながらじいっとこちらを見ていた。

「・・・?どうした?」
そう尋ねながら依然として揺るがない彼の視線の先を反転してみると人が居て、ビビった。

「ひっ!!」
「見えるって事は幽霊の類じゃないですね。」
「おまっ、呑気な!」
「あの、澪葉先輩と流梨先輩ですか?」
ひょこひょことその人、髪の色が明るい女性は首をかしげながら尋ねる。

「ええ、何か御用ですか?」
澪葉がにこりと微笑みかけると、女性は快活に笑ってはい、という。

「先程石榴教授のゼミに誘われて入る事になりました、理学1年楠本です。」
にぱにぱと笑いながら言う楠本と名乗った女性。

「・・・・誘われた?」
疑問符がひたすら頭の中を侵略していると、澪葉が空いている椅子を勧めて有難うございます、と楠本は返す。

「あー・・楠本?」
「はい、えーっと・・」
「俺が流梨、でこっちが澪葉な」
「はい、じゃあ流梨先輩。」
「うん、お前一体何者?」
この大学に居て、石榴教授の名を知らない人物なんてよっぽどサギだ。石榴教授はこの大学の出身者であり、同時に早出世の教授でもある。要するに、”天才”だった。そんな教授が、自ら誘うこの一年生とは、一体。

「何者・・・・うーん、大学1年生としか答えようが無いんですけども。」
「いや、俺もそれは分かるわ。」
「ですよねえ。」
うーんと今しがた知り合ったばかりだというのに楠本と一緒になって悩んでいると、くつくつと笑いを堪えた声が聞こえた。それは少しばかり俺たちの会話を見ていた澪葉によるものだった。

「どうしたんだよ、澪葉。」
「いや、謎が解けてしまって。」
「謎?謎なんて合ったんですか?」
「違いますよ。楠本と言う名前をどこかで聞いた事がありませんか?流梨。」
「は・・・・?」
澪葉の言葉に知識をグルグルと煩悶させる。俺が機械ならオーバーヒートだ。

「この前石榴教授のところである論文を見たでしょう?」
「・・あ、ああ、確か・・・・・はぁっ!?」
そう叫んで楠本を見るとサンドイッチをも咀嚼している。

「楠本お前論文とか、」
「書いて出しましたよ。ずいぶん前に。さっき石榴教授にも同じ事聞かました。」
「ホラ」
「何でお前が得意げな顔なの、ねえ」
「詰まる所、彼女が噂の”ジーニアス”でも間違いないんでしょうねえ。」
「ぶっ!」
「それも聞かれましたけど、自分でも良く分かってないのでノーコメントです。」
「いえいえ、多分決定事項ですから気にしなくていいですよ。」
ははっと好青年の笑顔を浮かべて澪葉は言うと、俺にティッシュを差し出してきた。とりあえず机を拭いた。

「まぁ、とりあえずこれからどうぞ宜しく、楠本」
にこりと笑って手を差し出す澪葉に快活に笑いながら握る楠本。そして澪葉がティッシュで机を拭いていた俺の右手とは逆の左手を鷲掴みして楠本に差し出した。

「楽しくなりそうじゃありませんか、大学生活。」
澪葉の呟きにどう返事する物か悩んで、楠本に宜しく、と言った。

良くも悪くも、彼女の大学生活は始まったのである。

Re;Things do not advance in the aerial world.
DATE: 2010/03/28(日)   CATEGORY: ゴッドイーター
眠る春。
これから、彼女と初めて会ったときのことを話そう。

うららかな春は例年と同じく新入生を迎えていた。そして彼女もそんな一人であった。

彼女は入学して直ぐに噂の人になった。というのも大学の試験で満点近い点数を叩き出した新入生が居ると言う職員たちの噂を聞きつけた主が広めたからだ。

斯くしてその名の知れない天才は”ジーニアス”と呼ばれた。自分がその”ジーニアス”の名前を知ったのはそんな噂が立って翌日の事である。

吹き抜けのホールを通り過ぎると二階へと移るガラス張りの一本廊下がある。其処を更に過ぎると研究室がある。其処は自分ともう二人ほど居る年配の教授たちの研究室である。それと同時に教室でもあるが。

其処をガチャリと何時ものように開ければ見知らない女性が一人机に座って何かを読んでいた。そして音に気づいたのか顔を見上げて自分を確認すると、今日和、と挨拶をした。

「今日和、・・・君は居残りか何かか?」
二人の教授たちのゼミはここではない別な所であるし、今日はその二人は出張中であった。とすれば、考えられたのはここで何かのレポートを提出し忘れたのを完成させて出していけ、という上の教授たちの居残り宣言くらいだ。

「いいえ?違います。」
にぱりと快活に笑って答える女性は、すっと一冊のレポート用紙をこちらへと差し出した。それには、自分も見覚えがある。なぜなら、

「これ、時間旅行(タイム・トラベル)の考えなんですね、石榴教授。」
そう、このレポートは自分が書いて置いておいたものだった。

「・・・君は何故これが時間旅行の物だと?」
聞いた理由はただ一つ。自分は題名も、時間旅行という記述も一切していなかったからだ。

「石榴教授の名前があったからですよ?」
「私の?」
「はい、石榴教授の論文良く読んでたんです。」
にぱにぱと笑いながら女性は言う。そしてペコリと頭を下げた。

「初めまして、今年から此処の大学に通わせていただきます理学部1年の楠本です。」
快活そうに笑って彼女はそう言う。

「・・楠本、?」
「はい、楠本です。」
脳の何かに彼女の名前が引っ掛かるような感じがして鸚鵡返しをした。

「君は以前論文で賞を貰ってないか?」
眉間に皺を寄せながらそう尋ねると、彼女はぱあと笑ってはい、と元気良く答えた。脳に引っ掛かった理由はそれだ。そして、ここである別問題に対する一つの答えが浮かんだ。

「・・・君が、”ジーニアス”か」
自分に納得させるように呟くと彼女はぱちぱちと目を瞬かせて首をかしげた。

「ジーニアス?ってあの試験で満点近い点数取った人のことですよね?」
「君じゃないのか?」
「さぁ?出来はそれなりに良かったんじゃないかなって思うんですけど、合格したので良いかなと思って新聞であった答えあわせとかもしてないので。」
むむっという具合に悩みだす彼女は真剣そのものだった。

「そうか・・、まぁ合格出来たのは良い事だ。おめでとう。」
そう言うと、彼女は悩んでいた顔をあげてにこりと笑った。

「有難うございます。」
普通に感謝の言葉を述べる彼女は至って何処にでも居る普通の大学生である。

「ところで石榴教授は何で時間旅行を調べていらっしゃるんですか?」
ぽたり、と彼女は質問を投掛けた。その顔は先ほどと同じように真剣だった。

「戻りたい過去がある。」
「・・・、戻って教授は何を為さるんですか?」
それは”真意”を知ってか、否か彼女は尋ねた。

「・・・耳を塞ぎに。」
「それは又具体的ですね。」
「そんなものだ。ところで楠本。」
「はい?」
「君は何処のゼミに入るか、決めているか?」

うららかな春、どこにでもある春。彼女がジーニアスであろうとなかろうと、おそらく自分はそう言っていたに違いない。何しろ彼女は、楠本という大学1年生であったのだから。

Re;sleeping in april
DATE: 2010/03/27(土)   CATEGORY: 店主の宝物庫
部活動日誌。
―遠き場所も近き場所も彼らにとって其処は場所。

とある晴れた日常。学校名すら挙げるほどでもない高校の一室に置いて、学生たちはその青春と活力を使って部活動をおこなうのである。かくいう彼らもそんな一人。

「城研とは城について語る部活であって決して武将を語る部活ではないことを断言しておく!」
バンッ、と擬音が背後に付きそうなほどに雄弁を振るう男子一人。

「よっ、格好いい巳都部長!」
それを見てはやし立てる部員が約一名。

「そもそも武将を語るなら城は必要不可欠、むしろ抜くのは武将だ!」
カッ、と巳都、と呼ばれた男子は右手をスライドさせ選挙でもやっているのかと錯覚させるほどの熱弁である。

「今日部長テンション三割増ですねー」
「何でも土産で城の模型を貰ったらしい」
「なるー」
ポリポリと菓子を食う部員に、行儀悪いぞと言いながらも説明する部員。

「諸君、城を一言で述べよ!」
何処かの企業の試験のように巳都は言うと部員たちは敬礼をしながらも言う。

「和であります」
説明していた部員は言う。
「心意気?」
お菓子をポリポリ食べたいた部員は言う。
「友でーす」
巳都をはやし立てた部員は言う。

彼らの返答に満足したのか、巳都はウンウンと頷いてカッと目を見開く。
「宜しい!因みに僕は家族と表現します、それでは散!」

ガラガラ、と椅子や机をその言葉を聞いたと同時に片付け出す部員たちと部長を扉を開けて見た大虎は言う。
「・・・・何部だよ」

Re;CIRCLe (←循環。)


だんっ!と踏み込む足音が聞こえたかと思った次の瞬間ぱしっ!と重い音が室内に響いた。やや間があって、どてっと派手な音がし、それを確認してからのように一本!という声が響いた。

「たーっ・・大虎さん、一振り何か最近ますます重いですよ」
どてっと転んで剣道の面を取りながら相手に話し掛ける男子は眉をしかめながら言う。

「そうかあ?」
大虎と呼ばれた男子はその男子生徒に顔を向けながら微妙そうに尋ねる。

「ありますよね、本人自覚無しってやつ。」
患者に貴方は難病です、と告げる医師の様に彼の面持ちは真剣そのものだったが呆れても居た。

「何っか・・最近この竹刀軽いんだよなぁ」
竹刀の重さを確かめるように上げ下げしてみる大虎を審判をしていた生徒が声をかける。

「大虎、お前最近本気でヤバイよ、お前の振り受け止めただけで骨軋むし」
「ほら」
「ってもなぁ・・、あ、近の土産食う?茶葉ケーキ」
唐突に思い出したと、大虎は休憩を部員たちに言い渡しておのおの休憩を取らせる。

「近ね・・あいつも大概謎だな」
ごくごくとペットボトルのお茶を飲みながら審判をしていた生徒は言う。
「僕は巳都さんの方が謎ですけど」
暑い、といいながら片手を団扇代わりに扇ぎながら後輩部員は言う。

そして、決定打のように土産をむしゃりと食べていた大虎はあさっての方向を見ながら漏らす。
「俺は両方謎だよ」
「「ダメだこれ」」

そう言った二人の顔を見て大虎は少し溜め息を漏らした。
「俺部長だよな?」
「部長ですね、団体の部で主将なのに最初が良いって言って最初やって一人で全部勝ったじゃないですか。」
「おかげで俺は兎も角、あの場の空気に慣らさなきゃならないコイツや他の部員たちを見事に慣らせられなかったわけだよな。」
「・・・・・・、俺責められてる?」
「「まさかぁ」」
「愛だろ?剣道部の」

ハモった二人の声に後押しするように巳都の声が響いた後、絶叫が一つ上がる事となる。

Re;escape shop ((←逃亡店。
DATE: 2010/03/25(木)   CATEGORY: 店主の宝物庫
シュガーサイダー。
これまでずっと夏の気配を保ち続けていた木々や空はあっと言う間に秋色に染まった。
「不思議。」
「何が?」
「何がって、八宮が学校来出してからよ?こんな秋っぽくなったの。」
寒いといいつつも彼女は苺牛乳を飲んでいる。

「偶々だよ。」
にこりと笑って見せれば、鈴浅は不思議そうに首をかしげながら尋ねる。

「八宮何か変わった・・?」
「変わってないよ、安ちゃん。」
ガラリッと教室の扉が開いて入ってくる人物は宝色だった。そして、鈴浅は宝色の手の包帯に気づいた。

「あれ、宝色手の怪我?どうしたの?」
「ああ、これ?ちょっと料理で失敗したんだ。」
「良かったね、指とかじゃなくて。」
「うん、そう思う。」
そして、宝色ははい、と八宮にペットボトルを渡した。八宮は意外そうにそれを見た。
「え?」
「お見舞い品だよ、何かずっと休みだったから。」
「あっ、有難う・・」
感嘆しながらも八宮は宝色に礼を言うと、どういたしまして、と宝色も返しながら椅子に座る。

「あの、宝色君、」
「何?」
「・・その、いろいろと迷惑かけちゃったみたいで・・後、あの玖場さんにも・・ごめんなさいって、伝えてもらっても良いかな、」
八宮の言葉に宝色はいいよ、と返す。

「八宮さん。」
「・・・はい?」
「ありがとう」
「はい、え?」
「俺も八宮さんのおかげで、少しだけど・・又向き合おうって思えたからさ。」
包帯を巻いている手で頬杖をつきながらそう言う宝色に八宮は何を言って良いか少し迷って、そして。

「どういたしまして、」
ちょっとだけ前を向いて、歩いてみようと思った。


「腹がすいた。」
「起きて一言目がそれってどうなんだろうな?」
朝の新聞を読みながら、とうに朝と呼べる時間を過ぎて起きてきた主に通り堂は尋ねる。ふわあ、と欠伸を噛み締めて玖場は椅子にのそりとすわりコップに入っていたお茶を飲む。

「・・・正直驚いたな。」
「宝色か?」
「ああ。正直言ってあそこまで”夢”を緩和出来るなんて思ってもなかった。」
「そりゃあ、そりゃあ。おかげであいつは右手全治2週間のハメだけどな。」
そう言いながら昨日を思い出す。夢から起きると宝色は右手には小さいけれども深い穴が出来ていて病院に走ったのを覚えている。

「それでも笑ってたろう。」
「馬鹿言え、あれは痛さからだ。人間痛すぎると泣くよりも笑いが出るんだ。」
「そういうものか?」
「そういうもんだ。」
「まぁ・・一件落着だ。俺もゆっくり安眠できる。」
「安眠しすぎじゃないか?・・・豚安いな、買い。」
紅い丸をつけてチラシの品を囲んで、立ち上がり冷蔵庫を開けてペットボトルの一本を玖場に渡す。

「・・何だ?」
「宝色から、礼だってよ。クラスメイトを助けてくれてどうも有難うって」
「・・炭酸水か。本当に好きだな。」
「姉ちゃんの影響だって笑って言ってたけど、まあ良い思い出だよ。」
「・・・思い出、か。」

パキッと軽い音を立ててキャップを外しくびりと、玖場は炭酸水を飲んだ。繊細な、どこか、優しい味だった。

Re;your first step in.
DATE: 2010/03/23(火)   CATEGORY: 店主の宝物庫
名前を呼んだら振り向けるそんな距離。
私の目の前には何故か宝色君が現れて、そうしたら次には真っ白い犬が出てきて、私に噛み付こうとしてきた。

「キッ!」
何とか犬の牙からは逃れたものの犬は唸っている。宝色君はそんな犬を呆然と梟と見ている。

「ガウッ!」
犬が雄たけびを上げた瞬間私の視点は犬に噛み付こうと走った。ガブリッと自分の身にも相手の身からも同じ音が聞こえる。このまま引きちぎろうと牙が動こうとした瞬間、

「やめて、姉さんっ!」
悲痛な声が響いたと思ったと思うと、その声の主は宝色君だった。犬はその声に反応して牙を離した。私の視点も犬の真っ白な毛から宝色君の悲痛そうな顔にスライドされた。

すると、宝色君は犬に抱きついて顔を白い毛にうずめた。梟も地面に降り立ち、その様子を見守る。

少しして、白い毛から顔を離した彼は立ち上がってこちらに一歩近づいてくる。

一歩私の視点は後退する。

「・・・、八宮・・・さんなんだよね?」
ああ、いつもの声がする。木魂して止まない、この声が。

「ごめんね、怪我させて。」
私の視点が又後退する。

「八宮さん、起きようよ。ここから。」
私の視点はいつの間にか彼の手へとうつり、彼の手に白い牙が刺さっているのが見えました。

「っ!?・・・ずっとこのままじゃ居られないって、逃げられないって八宮さんもきっと分かってるんだろ。」
ぎりり、と後ろから歯軋りの音が聞こえる。宝色君は片手で白い犬を制止していた。

「悪い事じゃないんだよ、そう思うことも。何も、かも、痛ぅ・・・!」
彼の言葉は続く、痛みに耐えながらも。

「・・、八宮さんだけがそう思ってるんじゃない。俺だって、逃げてるんだよ・・」
え、?牙が少しだけ緩んだ気がした。

「俺は、姉さんが居たんだ。もう10年前になくなったけど、姉さんを殺したのは俺も同然なんだよ・・・」
ぽたり、ぽたり、どんどんと緩んでいく牙。

「姉さんが死んだのは成人式の日だった、俺がサッカーボールで遊んでて其処をトラックが走ってきて、俺が気づかないで遊んでる所を姉さんは・・助けて死んだんだ。」
苦痛と自嘲に見舞われた彼の表情はただ、ただ、俯いていて彼の隣りに犬が座った。

「この犬は俺の”夢”。姉さんは成人式の日に、白色の着物と赤色の帯止めしてたから・・・だから、こんなんなんだ。こいつ。」
私の視点が赤色の瞳と白色の毛の犬を捕らえる。

「・・・・だから、八宮さんに逃げるななんていわない。ただ一つだけ分かって欲しいんだ。」

「現実に向き合うのは怖くて向き合いたくなんて無いけど、」
静かに、彼は微笑んだ。

「誰か、待ってるって。」
彼の頭に梟が翼を広げ乗った。牙は完全に彼の手を離れていた。

「痛い、痛いですよ、通り堂さん。」
鉤爪が彼の皮膚に当たるのか宝色君はそう言う。

不思議だった。いつも視界を閉じていて、いつも鼓膜を閉じていて、いつも声帯を閉じていた、私が、彼だけは認識した。

それは同族としてなのか。それとも、

緩やかに私の視点は眩暈を起こす。

きっとこの倦怠感は現実に帰る合図なのでしょう。

Re;cry life
DATE: 2010/03/22(月)   CATEGORY: 店主の宝物庫
続きは無くした。
白い着物、紅い帯止め、何時ものように炭酸水を飲んで家を出る姉と、サッカーボールで遊ぶ自分。

その続きは、見たくない。



「居た、あれですかね玖場さんの言ってた猿。」
そう言って宝色は肩に乗っていた梟の姿を模している通り堂に話すと通り堂もそれを見ている。

其処には、猿が三匹横に並んで見猿、言わ猿、聞か猿、の体型を取っている。

これからどうするか、それがかぎになる。そう言えば、何故ここに八宮本人は居ないのだろう。

これは”彼女”の夢であるのにどうして、

「キ、タラ、」
口を塞いでいる猿以外がぽつり、ぽつりと口から何か言葉を漏らしている。

「警告でしょうか?」
通り堂に尋ねると通り堂は首を横に動かせた。ジェスチャー的には分からない、だろうか。

「タラ、カ、」
ほとんど言葉になっていない言葉、いや、二匹が同時に何か同じ言葉を言っているからこうなっているのかも知れない。一体何を言っているのだろう。

「タカラ、ジ、キ」
ぽたり、と出たのは自分の名前だった。

「え?」
自分でも可笑しな程に短い言葉を発した。

「タカラジキ、タカラジキ、タカラジキ、タカラジキ、タカラジキ、」
可笑しくなりそうなくらいに猿たちは自分の名前を連呼する。何故。何故。

すると、通り堂が首をこちらに動かして見ていた。
「俺も訳が分からないですよ、それより、八宮さんは何処に居るんでしょう。」

それもそうだ、という具合に通り堂はふわりと空に舞い上がり旋回するが戻ってくると首を横に振る。
「八宮さんが見つからないと意味が無いのに・・、一体何処に、」

そう言っていると、キキッという獣の声が聞こえ後ろを振り向くと猿たちがこちらに気づいたらしくじっと見ていた。そして、次の瞬間こちらにむかって走りだしてくる。

「うわっ!」
そう言って自分も走り出す。おそらくだが、あの猿たちは自分に攻撃してくるだろう。そうなるとまずい。通り堂も空を切りながら飛んでいる。ああ、飛べるって便利だなとか地味に思っていると派手にスッ転んだ。

「つっ!」
したたかに鼻っ柱を打ちつけ起き上がろうとすると背中に重みを感じた。それも1匹とかじゃなく。それは猿たちが背中に追いついてへばりついていたからだった。

「・・・・っ!?」
どうしようかと悩んでいると通り堂さんが猿目掛けて鉤爪で猿たちを捕まえようとする。猿たちもそれから逃げようと背中から離れたために危機は免れたがどうしたものか。

「有難うございます、通り堂さん」
距離をとりながら礼を言う。梟はいまだ臨戦態勢を解いていないままだ。

「キキッ」
猿たちが短く威嚇をした次の瞬間、赤い色の帯が見えた気がした。

「あ、れ?」
眩暈のような何かに思わず片手を顔に当てていると、白の毛が見えた。

そして、ガウッ!と吠えたそれは間違いなく”夢”の犬で、姉さんだった。

Re;sad past time
DATE: 2010/03/22(月)   CATEGORY: 店主の宝物庫
彼方と勇者の魂。
父から砂時計を貰った。

輝石という鉱物を砂と含ませた父曰く素晴らしい物を作った。父はその砂時計を自分で作っておいて自分で大事にしていた。ある意味それは砂時計の職人としていいのか良く判らないが、父の言うとおりその砂時計は素晴らしい物だった。

キラキラと砂が落ちて下になっている部分に溜まっていく姿は何故か、名残惜しかった。父は多分この砂時計に”時間の大切さ”を見出そうとしたのだと思う。砂時計の事を聞いたりしないし、聞かれもしないからなんとも言えないが。

そんな砂時計を父は、難関だった駅員の試験に合格するとホラ、と渡してきた。

ぽかんとしていると、合格祝いだ、といわれた。そして、ただ場に流されるように自分は有難う、としかいえなかった。父はそれを見て、おう、と答えるとさっさと家に入って、又砂時計を作り始めていた。

夢だろうか、と思いながら自分の掌を見ると小さな砂時計が納まっていて夢でないことを告げる。

じんわりとこみ上げてきたのは、嬉しさと涙だった。

「エインの親爺さんは地元じゃちっとは知れた砂時計の職人なんだ。」
アジア系の女性に英語で話すドイツ人の若者は自分で買ったカフェオレを飲みながら言う。

「で、その親爺さんが自分の為にかはよく判らないけど、砂時計を作った。で、それをここの職に合格した祝いにやった。だけど、それをエインはちょうど5日前くらいに無くして騒いでたんだ。」
ごくり、とミルクティーを飲んで一息つく。

「それから結構あちこち探してたけど無かったから、きっと自分じゃない必要としてくれる誰かの所に渡ったんだろうなあ・・って最後は自分に言い聞かせてたから、カナタがそれを渡してくれたら喜んで元気になる。」
カナタ、と呼ばれたアジア系の女性は自分の手元に納まっている砂時計を見る。

「あ、ノヴェだ。おーい、ノヴェ」
そう言って声をかける先には、駅員服を着こんだ青年が居て荷物を引きながらこちらへ来た。

「何をサボってるんだよ、メトン」
「休憩時間だ、それよりほら、エインの砂時計カナタが預かってきてくれたんだ。」
「エインの?」
そう言ってノヴェはカナタの手元を見ると砂時計がサラサラと砂を落としていた。

「本当だ・・、じゃあこの前カナタが言ってた探し主はエインになるのか。」
「そうみたい、」
カナタはノヴェの声にそう答えると、エインは何処に居るのかしら?と尋ねた。

「エインなら、もう直ぐこっちに来るよ。休憩時間になるから。」
「じゃあ、俺はそろそろ戻ろうかな。」
メトンの言葉にノヴェは肩を竦ませて歩みだした。

彼方は茶色のトランクを見た。そして、いつも残像のように其処に残る人も。
『彼方はどうして現実から逃げたい?』
『どうして、って・・』
『なんでだろう?だろ?』
『分かっているんなら、聞かないで下さい。』
『半信半疑って所だったんだけどなぁ。』
『そっちはどうなんですか、』
『俺?俺は―、消えたら気づいてもらえるか、知りたいからさ。』

「―カナタ」
名前を呼ばれ慌てて現実に戻ると、エインが居た。私は手の中の砂時計を彼に渡した。

「・・・これ、カナタ、これ一体何処で・・・!」
「昨日話していた人から預かったんだけど、けど、あなたが持ち主だって知ったのはさっき。」
そう言うと、エインは掌の中におさまったそれを見て感極まったように目を細めた。

「俺さ、父さんが作る砂時計が一つ欲しかったんだ。」
「・・もらえなかったの?」
「くれなかったよ、誕生日だって、父さんの作った砂時計が欲しいって言ったけどくれなかった。」
そう言って、エインは手元の砂時計を見る。

「昔は理由が分からなかった。でも、今なら分かるような気がするんだ。」
「どうして、?」
「昔は、時間は忘れそうなくらいに無限にある、って思ってた。けど、無限って無いんだよ。」
「・・・」
「人に与えられた時間は無限と思えるほどにあるけど、その時間はここに産まれたときから一秒一秒、消えていっているんだ。だから、父さんは小さいときの俺に砂時計をくれなかった。だって子供は毎日、毎日生きてる。でも、大人になるとさ、目の前の事が怖くて、逃げたくなる。」

「そうした時に、初めて時間の大切さを知るんだ。無くなった時間も、まだある時間も、平等に、」
「大切だ、ってさ」
エインはそう言って、説教臭かったと笑う。

「カナタ、これを預かってきてくれて有難う。あっ、もし拾ってくれた人に会うことがあったら感謝してたって伝えてくれないか?」
「・・・分かった。」
頷くと、私はトランクを片手に歩き出す。

「カナタ?」
「・・Danke Ein.」
私は振り向いてそう言うと、エインはしばしぽかんとしていたが直ぐに微笑んで、

「Danke Kanata.Sehen wir wieder.」

私は彼の言葉を聞いて人ごみに紛れ込んだ。そして、トランクを開けた。

私が現実逃避するのはきっと私を終らせたいからだった。今を。けれど、今の私が又現実逃避をしているのは『どうして』だろう?

Re;Sie und Sie.
DATE: 2010/03/19(金)   CATEGORY: 店主の宝物庫
彼女の底。
―私を見捨てる事が出来たなら、私はどんなに楽だったのでしょうか。

何時、から私は居たのだろう。

何時、から私はまどろみ始めていたのだろう。

何時、から私は涙を流して始めていたのだろう。

誰かに伝えようとするのは難しくて私は逃げてばかりで前に進もうと云う意思を捨てていました。

だから私は惹かれたのかも知れません。

僅かにも、仮令他人から見てみれば進んでいないような一歩だとしても、それでも自分と対峙しようとする彼に、宝色君に、私は、

ぽたり、ぽたり、雨のように自分の目からは涙が溢れて止まらなかった。

「泣いちゃ駄目、泣いちゃ。私は、自分と、何も向き合ってなんか、無いのに・・なんで泣くの。」

自分への居た堪れなさ?それとも、そんな自分を自分は哀れんで居るのだろうか。

助けて、助けて、一人ぼっちは、

「怖いよ、」

私の弱さは私が尤も遠ざけた物でした。

Re;My weak point.
DATE: 2010/03/18(木)   CATEGORY: 店主の宝物庫
世界に宛てた手紙。
―世界は美しい。世界は汚い。世界は一人。世界は大勢。世界は青。世界は赤。世界は、

彼方が茶色のトランクと少女から預かった砂時計を持ってホテルから出ると、昨日居た駅を中心として探す事を決めて駅に向かう。そっちで朝食も買って採ってしまおう。

実際の所、彼方はまずい状況下にあった。彼女は当初アメリカ行きを予定してあったのであって、彼女はアメリカ行きへの飛行機と、電車のチケットしか買っていなかった。おまけに、今ドイツに居る時点で、不法入国なんじゃないかとじんわりと思う。それで彼女は警察に頼る事を完璧にたたれてしまったのである。

幸いだったのは、この町自体はそれほど大きな町ではない事だった。そして、預かった砂時計の底にはどうやら前の持ち主らしい名前と何か口上がかかれてあり当たり前の話だがそれはドイツ語で読めなかった。

どうしようかと悩みながら、駅に辿り着くと軽い朝食として売られている駅弁を購入して設置されている長椅子に座ってそれを取る。

すると視線を真後ろから感じて、振り向くと昨日レストランで会った青年が居た。確か、メトンと言う名前だった。人付きそうな笑みを浮かべてこちらを見ている。

「Is they any orders or do?(何か御用かしら?)」
そう尋ねると、メトンという青年は首を横に振りながら言う。

「I do not think to eat well as soon as it is good. (いいや、上手そうに喰うなと思って。)」
あまり顔の変化は無かったと思うのだけど、と彼方は思いながらソーセージが挟んであるホットドッグを食べた。

「Is work good?(お仕事はいいの?)」
「Because it is taking a rest. (休憩中だからさ。)」
ははっとメトンは笑い、彼方がトランクの上に乗せていた砂時計を見つけた。

「Is it you?(君のか?)」
「No, things of those who look for by saying yesterday. (いいえ、昨日言ってた探し人の物。)」
「Do even if you see?(見ても?)」
「If it steals and it is sworn.(盗ったりしないと誓ってくれるなら。)」
彼方がそう言うとメトンは深く頷いて、砂時計を手にとる。そして、底に彫ってある例の文字を見つけた。

「"Dear my son."」
「・・・What?(何?)」
「It is a sentence written here.(ここに書いてある文だよ。)」

”dear"とは英語の手紙などでよく文頭に置かれる言葉で、親愛なる、という意味がある。そして、my sonということは、

「Is the owner of this hourglass a man?(この砂時計の持ち主は男の人?)」
「Hey,kanata.Where was this picked up?(なぁ、カナタ。これは何処で拾ったんだ?)」
「・・Oh.The last sleeper train that was certain and left at this station. The person who had gotten off seems to have dropped. (確か、この駅で出発した一番最後の寝台列車よ。降りてきた人が落として行ったらしいわ。)

そう言うとメトンは、なら、と言う。

「It is a station employee that dropped this. (これを落としたのは駅員だ。)」
「Why can you think so?(どうしてそう思えるの?)」
彼方が尋ねるとメトンは砂時計を返しながら話す。

「All passengers who got off that train got off the two hours ago. The station employee who took that train gets off getting on at the end. (あの列車から降りる乗客はその2時間前に全員降りてた。乗ってたのは、あの列車に乗ってた駅員が最後に降りるんだよ。)」
「・・・Then, ‥ Do you understand who the station employee who got on it two days ago is?(じゃあ・・、2日前のそれに乗ってた駅員は誰だか分かる?)」
そう尋ねると、メトンは子供がするように胸を張って言う。

「It understands. Because that was said because it is considerably tighter than externals though sleeps immediately after the person in question also comes back. (分かるとも!あれは見た目よりか結構きついから、本人も帰って来た後直ぐに寝たって言ってたから。)」
「・・Is who?(それは、誰?)」
彼方は思いがけないほど早い展開に心躍っていた。すると、メトンはこつこつと指先で砂時計の底の文字を指差した。彼方はその行動に首を傾げた。

「The name of vaharu is carved for here. (ここにはヴァハルという名前が彫ってある。)」
「What is?(それが何?)」

メトンは肩を竦めて、決定的な一言を、彼方に見舞った。

「In this vaharu, the person who says is father of ein. (このヴァハルっていう人は、エインの親爺さんだよ。)」

北欧神話にトールという神が居る。この神は雷の神であり、北欧神話最強の戦の神である。斯くして彼方はこのとき、彼の持つ槌であるミルニョルから発せられる稲妻を一身に受けた。

Re;Donner
DATE: 2010/03/16(火)   CATEGORY: 店主の宝物庫
八回目の正直。
―正直に生きる事は、嘘をつかないこと、本当にそれだけでしょうか。

”夢”とは故意に見れるものじゃないと思う。正月の夢のように、時折見る悪夢のように、夢は孤立している。

目をあけると、視界は真っ白だった。雪に覆われているとか、虚無の世界だとかそういうんじゃなく。ただ、真っ白。ただ何もかも白に覆われた濃霧のような世界だ。

「どっちだろ・・・」
思わず呟いてしまったがそれは自分が心から思っている心の声だと、宝色は思った。

『とりあえずは猿を探せ、そして猿の”夢”を見ている彼女にこれが夢だと認識させてくれ。』
『それだけで良いんですか?』
『それだけ、が大事なんだよ。』
『通り堂の言うとおりだ、寧ろ向き合う事は夢が自分の何を意味しているのかさえ判れば問題はない。指し示せば良いだけだから。くれぐれも無茶はするな。』
『・・、了解です。』

ぽ、つり、

何処からか漏れる言葉、この言葉がきっと玖場さんを不眠症にまで追いやった念仏なのだろう。だが、それが同級生でましてやクラスメイトとなるとこれは盗み聞きとか、あまりよろしくないかもしれないと宝色は思う。

「うーん・・」
どちらへ進むかさえも迷っているとバサ、と何かの音が頭上から聞こえ、次には髪の毛を鋭いなにかでひっつかまれた。

「痛い、痛い!」
髪の毛の上がる先を見ると一羽の梟が、ばさばさと翼で空をなぎ髪の毛の引っ掛かる鉤爪を持ち上げたり下げたりしている。そして、彼がそうなのか、という結論に至ってしまった。

「・・まさか、通り堂さん?」
そう言うと、当たり前だ、といわんばかしに髪の毛を横に引っ張る。

「痛い、痛い!抜ける!まだ禿げたくないですってば・・・!」
懇願するように言うと梟は宝色の肩に落ち着いた。顔をそちらへ向けるとむくむくとした羽毛が当たる。

「それにしても本当に梟なんですね。」
答えるかのように、瞬きを一回。

「どっちに八宮さん居ると思います?どっちもないですけど。」
そういうと、通り堂はすうっと空に舞いふわふわと何処かへ行きだした。

「そっちですか、」
バサリ、と翼が音を立てた。

八宮というクラスメイトを聞かれても宝色は当り障りのないことしかいえない。普通の子だ、位。何も知らないのだ。そして、彼女もまた宝色の底を知らない。それが普通。誰も彼もが誰かの奥底を知らないけれど、それで何も起こる訳じゃない。だから、誰も知らない。

でも、彼女と宝色に共通点がひとつだけある。それは、炭酸水が好きなこと。それだけ。

Re;A dinner of beasts.
DATE: 2010/03/14(日)   CATEGORY: 店主の宝物庫
彼方とエインの砂時計。
―世界は夢を見る。世界は今を見る。世界は過去を見る。世界は果てを見る。世界は、

朝の穏やかな光が窓から差し込む中彼方は一人ため息をついた。

そのため息の理由はおよそ2日前、アメリカに彼女がトランクで渡った事から始まる。彼女がトランクを経て着いた場所はとある電車内だった。そして、電車の行き先を見ると予定していた場所の電車だと分かり座る場所を探していると俯いて座っている少女の前の席が空いていることに気づいた。

彼方は其処へ座りトランクを置くと、目の前の少女は俯いているのではなく手に握っている何かを見ているのだと分かった。それは小さな砂時計だった。

日本でも砂時計の中身の砂に星型の砂が入っているものなどが土産として売られているくらいなのだから彼女のそれも土産なのだろうと彼方は納得していた。そして、窓の景色を見ようとしていると何かに気づいた。

それは”見られている”という外したらとてもいたい感覚に。その方向を追うと目の前の少女とバチッと視線がかち合って話すに放せなくなっていてしまっていた。

「・・・何か?」
そう声をかけると少女は少し首を傾げた次の瞬間青い顔をしてごめんなさい!と英語で謝った。

「私最近までドイツに住んでいて・・直ぐ反応できなくて済みませんでした。」
「構わないわ。」

そう言うと少女は少し落ち着いたように見えた。そして、少女は私が何処からきたのかを訪ねた。日本から観光で、といえば少女は日本、と言って微笑んだ。

「私今からお母さんの所に行くんです。」
「・・?今までは何処に?」
「ドイツのおじいちゃんとおばあちゃんのところに。」
「夏休みか何かでお泊り?」
確かこの季節はそうだった気がする、と彼方は少し思って尋ねると少女はコクリと頷いた。

「楽しい夏休みになると良いね」
にこりと笑って彼方は言うと、少女は少し俯いた。

「・・何かあったの?」
「私、ドイツに帰りたいんです。」
「どうして?」
「・・これ。」
おずおずと少女が差し出したのは間違いなく土産だろうと思っていた砂時計だった。サラサラと渡されるときにも砂が上から下へとこぼれ落ちた。その砂は何故かキラキラと輝いていた。

「これ実は私の物じゃないんです。ドイツの駅で拾ってそのままこっちに持ってきてしまったんです。」
それで、俯いていたのかと彼方は今度こそ本当に納得した。

「・・つまり、それの持ち主にそれを返したい?」
そう言うと、少女は神妙な面持ちでコクリと頷いた。

少女は本当に後悔したという表情をしていて見ているほうが居た堪れなかった。そして、かくいう彼方と言う女性は其処まで人格は破綻していなかった。

最近彼女と知り合いになった学生が見ていたら、驚きのあまりぽかんとすることこの上ないだろう。

それほどに大きな、アクション。

「・・・もし貴女が良いのなら、私がその砂時計を届けましょうか?」
その言葉に少女はがばっと顔をあげて、感嘆と驚喜の眼で彼方を見た。

「良いんですか?」
こくりと頷くと少女は彼方の手を取り何度も何度も感謝の言葉を述べた。

そして、彼女はそれを拾ったドイツの駅の名前を告げた。しかし、落とした人の姿は確認していないという。

なんとも難航しそうな事だったが引き受けた手前彼女はそれに構わないといった。こうなったら、やるしかないと、自分に言い聞かせて。

「あ、でも、絶対にドイツのあの駅の地方にすんでいる人だと思います。」
「どうして?」
「私の乗った電車は、あの駅で最後に出発する寝台列車で、其処からこの砂時計を落とした人は降りていったから。」
なら、地元を探し回ればいいのかなと彼方は思う。そして砂時計を見る。特徴的な砂時計だと思うし、これなら近くの物産展とかで聞けば良いんじゃないんだろうか?と思い、少女を見た。

少女の不安げな顔を和らげる為に彼方は微笑んで見せた。そして、一言。

「安心して、任せて。」
そう言うと、少女は微笑んだ。

そして、彼方はアメリカの摩天楼を見る計画から少女から預かった砂時計の持ち主を見つけるため、ドイツへやって来たのである。
Re;no plan
DATE: 2010/03/13(土)   CATEGORY: 店主の宝物庫
サイダーカラー。
ゲホッ、と咳き込みながら玖場さんは目を覚まして通り堂さんを睨みつけていた。

そして通り堂さんが投げつけたタオルを受け取り風呂場から出る。全員が居間に座ると通り堂さんが、で?と促して玖場さんは眉をしかめた。

「夢の主に向き合わせようとしたらこのざまだ。この前の猿どもに掴みかかられて身動きが取れなくなっていた。」
「おいおい・・」
通り堂さんは玖場さんの話しを聞いて眉をしかめ出す、実際あのままだったらまずかったのだろう。

「それにしても、予想していたよりも酷いとは。これじゃあ、本体がどうなってるのか・・」
「本体?本体って何ですか?」
思わずだったが尋ねると玖場さんはするりと両手の人差し指をピンと立てる。

「宝色、お前から見て右側が人の体、さっき俺が本体と言った側だ。そして、この左側これが”夢”だ。夢は何時もは体についてくるおまけのようなものだ。しかし、」
「しかし?」
「おまけが主体となりうる事だってある。それが大きければ大きいほど、酷ければ酷いほど、な。」
「じゃあ、本体っていうのは・・人の体ですか?」
「そう。夢は、牙を向く―」
すうっと玖場さんの瞼が持ち上げられ瞳が、現れる。

「人に己を示す為に、」

ことり、と置かれた物から湯気が立ちだす。中身を見るとコーヒーが入っていた。持ってきた主は通り堂さんだ。
「まぁ、飲もうぜ。」
「砂糖。」
「玖場、取ってくれ、とかをつけろ。頼むから。」
「すいません、牛乳下さい。」
「お前は冷蔵庫近いだろうが宝色!」
「そう言いつつも、とってくれる通り堂さんに個人的にグッジョブ賞差し上げますよ。見えませんし、形はないですけど。」
「プライスレスってか、おい?あ、そういえば結局的にその夢の主どうするんだよ。」
「・・考えてる。」
「お前でさえ今さっきの状態だったら早くしないとまずいんじゃないのか?人手を増やすとか、突入方法を考えるとか、」
「でも玖場さんが無理だったなら前者は無理なんじゃないんですか?”夢”を喰えるのは”獏”だけでしょう?」
「いや、・・・”夢”を喰いやすくする手伝いなら出来ない事も無い。」
玖場さんがそう言うのを聞いて、なら、と通り堂さんが言う。

「決まりだな、其処へ俺が行こう。獣隊獣なら分があるだろ」
ズボンのポケットからレシートを出し裏にボールペンでガリガリと何かを描いている。ふくろうと猿らしい。

「通り堂・・確かにお前が”夢”でふくろうになれたならの話だが、なれなかったらどうする。前見た夢と同じ姿に慣れるとは限らないんだぞ。」
「いけるさ、多分な。」
「何処からくるんだ・・その自信は。」
「だったら、僕もやりますよ。」
通り堂さんは少し呆気に取られたように見ていたが、玖場さんはじいっと見極めるように見た。

「やれるのか?」
「早く喰わないとその夢の主危ないんでしょう?」
「ああ、だが、”お前”も危ないんだぞ?」
「・・?」
「通り堂は前に”夢”を喰った。だが、お前はまだ喰えてない。分かるか?食えていない物同士、向き合うと言う事を放棄すればお前もこの夢の主のようになるんだ。」
「・・・玖場さんは俺がその意思を捨てると?」
「そうじゃない、」
玖場さんは俯いた、すると肩を誰かが叩いた、通り堂さんが困ったように笑いながら言う。

「玖場はお前の事を巻き込んじまうんじゃないかって心配がってるのさ。お前が”夢”と向き合う事をやめてるだなんて言ってるんじゃない。第一お前毎朝ソーダ持って学校にいって、わざわざ墓の方向の道通って帰ってるじゃないか。」
本当はバス停の道通ったほうが近いのにな、と言って通り堂さんは言う。というか、ばれてたのか。

「お前のその”意思”を馬鹿にする奴なんて居ない。だからお前はその”意思”をしっかり持ってりゃいい。で、玖場その夢の主の情報をくれ。」
「・・ああ。」
玖場さんは目を細めて通り堂さんを見て、頷く。

「そもそもな話をするが、俺はこの夢の主と昨日会ったばかりだ。」
「・・・確か言ってたな、そんなこと。」
「ああ、言った。というか宝色お前は気づくんじゃないかと思っていたんだが、」
「へ?」
「俺はお前を通してこの主と会った、」
「・・・え?」

「夢の主の名前は八宮。お前の級友だ。」

―助けて、

Re;past time
DATE: 2010/03/11(木)   CATEGORY: 店主の宝物庫
どんな夢を見るんだろうか。
―本当の願いは泥の中に沈んだ。

どうして、
どうして、
どうして、ここから、でられないの。


厚い雲が横に棚引いて相変わらず秋の終盤なのに夏空のような空を生んでいる。

その景色を横目で見ながら宝色は古典に励んでいた。ふと、隣りを見れば何時も泣きそうになりながら勉強をしている少女の席があいていた。風邪かな?と思い一時思考を中断させ又黒板へと意識を戻した。

学校が終って下駄箱からスニーカーを出して履いているとポンポンと背中を叩かれそちらを向く。
「鈴浅さん」
「ねぇ、八宮なんで休みか知ってる?」
はて、と思い逆に知らないの?と聞く。

「知ってたら聞かないわよ、風邪引いた様子なんて無かったし・・どうかしたのかな。」
じゅるると手に握られた苺牛乳が終わりを音で示している。

「どうかって?」
「・・・・重い病気になったとか、誰かにいじめられてるとか。」
「そうなの?」
「・・・無いわね、すこぶる健康体だし、いじめられる要素が皆無だし」
「明日担任に聞いてみれば?」
事実、彼女の家か担任に聞くかそれ以外に連絡の取りようも無い訳だし。

「そうする、引き止めて御免。」
「いいよ、俺も気になってたから。」

宝色の鞄の中には炭酸水が1本入っている。それは彼が飲む為ではない。ただそれがあれば、それを持ってきてよ、と笑いながら怒る姉の、声が聞こえてきそうなそんな気がしていたのだ。

「、」
姉にさよならを言えたら今度は、

「おい、宝色!」
がしりと不意に掴まれ驚いて後ろを見ると通り堂が立っていた。

「なんだ・・・、通り堂さんですか」
「なんだもこうだもねぇよ、さっきから呼んでるのに、ここ昨日不審者出たばっかなんだから気をつけろよ」
「ああ、そうでし・・・・、昨日?」
「昨日だよ、昨日。」
「学校では何も言ってませんでしたけど、玖場さん何で知ってるんですか?」
担任の情報は2・3日前に言ったきりだった。

「そりゃ、昨日出くわしたんだよ。」
「はぁっ!?」
思わず宝色は素っ頓狂な声を上げてしまう、通り堂は危なかったんだよあの子。と言う。

「あの子?あの子って?」
「お前と同じ高校の女の子、やばかったんだよ、不審者の野郎が刃物持ってたし。」
「通り堂さんが、不審者に勝ったんですか。」
「勝ってなかったら俺居ないっつの!」
「まぁ、それもそうですよね・・その子通報とかしなかったんでしょうか?」
「お前等に連絡は行ってないって事はしてないんじゃねぇの?」
「・・、そういえば玖場さん夢喰えたんでしょうか。」
「そっちもそうだな、どうだろう。」
顎に革紐の着いた左手を添えて悩む通り堂に宝色はこつり、と石ころを蹴った。

下宿所と通り堂は言って曲げないが宝色は立派な一軒屋だと思う。居間へ向かっていると、バタン、という音が聞こえ通り堂と宝色はお互いに顔を合わせ次に居間の扉を急いで開けた。

中を覗き込んでいるとグッタリとした玖場が倒れていた。玖場はぐったりしていて一言も発しない。ただ何かに耐えているように眉には皺が寄せられていた。
「どうしたんでしょう、」
「もしかして、夢の相手が強すぎるのか・・?」
そういえば先日夢が酷くなっていると聞いた気がすると宝色は思った。

「とりあえず、起こした方が良いな」
「どうやってですか?」
そう尋ねているにも関わらず通り堂は何処かへ消える。取り残された宝色はただ成り行きを見ていた。

「おい、宝色そいつ風呂場にもってこい。」
「風呂場って、」
驚きながらも玖場を引きずって風呂場の前に持っていくと何故か通り堂はバケツを持っていた。

「ここ、置け。床がぬれるから。」
「通り堂さん、まさか・・」
頭の中にとある映像が出来上がりそう呟きながら玖場を風呂場のタイルの上に置く。

「強制的にでも起こすしかないだろ」
そう言った次の瞬間通り堂はバケツいっぱいに入った御湯を玖場の頭に遠慮なくかぶせた。

「あちゃー・・・・」
「・・」
ずぶ濡れっぷりに呟く宝色と成り行きを見る通り堂と、

「・・っ、・・・・げほっ!何で水が・・・、お前のせいか、通り堂。」
水を咳き込みながら玖場は目を覚ました。

Re;Awakening.(←覚醒。)
DATE: 2010/03/10(水)   CATEGORY: 店主の宝物庫
彼方の国へ。
―世界は幸せで満ちてる。世界は悲しみで満ちてる。世界は痛みで満ちてる。世界は、

「ご馳走さまでした!」
元気良く言ったのはメトンだった、メトンの横ではノヴェが水を飲んでいる。俺はと言えばカナタに泊まる所はちゃんとあるのかと聞いていた。カナタはこくりと頷いてホテルの場所を尋ねると駅近くの安宿屋だった。

「ふーん、ならエインとノヴェがホテル前まで送ってやれよ。」
「そうだね、危ないし。」
メトンの提案にノヴェが頷き、その会話をカナタに話すとダンケ、と又そこだけドイツ語で返した。

自分の食べた品物等を割り勘で払いあっていると、メトンがふと思い立った。

「そういえばカナタはドイツに何をしに来たんだ?」
「聞いていなかったな、・・In what purpose of travel does to Germany?」
「The person to the search. 」
「人?」
「The person's name?」
「I don't know.Because the person hears that he or she works in this conduct oneself. 」
「此処で働いているって・・」
「案外此処も広いよなぁ」
ノヴェの驚嘆した声に、メトンが更に驚嘆する。

「Did you come here to look for the person being asked?」
「Yes.」
俺が尋ねるとカナタは頷いた。

「お、俺こっちだから後は任せたぞ、寮組。」
「お前も寮に来れば良いのに」
「寮は俺には不便なんだよ。」
「じゃあなー」
メトンと俺の会話にカナタは少し首を傾げていながらも、メトンが手を振って別の道へ行っているのをみて理解したらしく彼女も手を振った。そしてトランクを一度握りなおした。

「ちょっと気になってたんだけど、カナタのそのトランクって貴重品入れかなにか?」
「俺も思ってたけど、財布はポケットから出してたぞ?」
「・・Kanata,what to enter the trunk in?」
ノヴェがそう尋ねると、カナタはしばし考え込むようにしてから言う。

「Magic enters for this trunk. 」
「・・ま、ほう?」
「乙女チックだなー」
ノヴェが微笑み、sounds great !と言うとダンケ、とカナタは返す。そんなカナタに俺はまたもや偽善を与える。

「Let's do help that I also look for the person. 」
「Will you have work?Because it is enough only in feelings. 」
「そうか・・・・、」
「メトンがこの場に居たら絶対噴いてたよ、エイン」
「かもな。でも、親爺が良く言ってたんだよ。偽善でも善でも、人の為になることをやれって。」
「エインの親父さんと言うと、」
「ああ、あの汽車好きの砂時計の前持ち主だけど無くしちまったからな・・」
「本当何処にやったんだよ」
「サッパリだ。」
「親爺さんに怒られるね。」
「帰ったらな。」
「だから帰らないのか。」
「それもあるけど、帰ったら帰ったでとことん汽車の話させられそうだから。」

植え込みにはヤドリギの木々と寒さに強い花が植えられている宿屋の前で止まる。其処がカナタの宿泊先だったためだ。

「See you. Have a good dream.」
「Danke.」
そう言ってパタン、と宿屋の扉が閉まる。

親父から就職が決まった際に貰った砂時計。砂と呼ぶには、高価すぎるような輝石を含んだ砂がその時計には使用されていてゆったりと落ちていく時がまるで、輝かしいのだと言ってるような、そんな時計だった。

だが、何日か前にそれをなくしてしまったのだ。何処へやったんだろう。

日本時刻;午後2時と少しを回った頃。とある高校にて。

「はー、今頃彼方さんアメリカかー・・いいなー」
「本当彼方さんって何者なんだろうな、巳都」
「それが分かったら結構すごいんじゃない、大虎。」
「それもそうだけどさ、この前北海道で静岡だろ?で、今アメリカ・・金持ち?」
「そうでも無い気がするよ、なんか。」
「お前の勘怖いくらいに当たるから嫌だよなあ・・アメリカって何が名物?」
「アメリカ?アメリカは人種の坩堝なんていわれてるからね、色々入ってきてるけど、ホットドッグにクラムチャウダー、それとベーグルとかかな。建築物とかで言えば、自由の女神像にニューヨークの超高層ビルが立て並ぶ摩天楼とかも有名だよね。」
巳都の何処に詰まってるのか分からない情報源がペラペラと出てきて、大虎はそれをぽかんと見ている。そして、その一方で最初に言葉を発した学生服の下にパーカーを着こんだ学生、近君はぽつりと呟いた。

「彼方さん言葉通じる所じゃないといやだって言ってたのに何でアメリカに行ったんだろ・・」

Re;Hourglass of augite.
DATE: 2010/03/09(火)   CATEGORY: 店主の宝物庫
サイダークイーン。
― 一人は嫌、けど、見るのも聞くのも喋るのも嫌だ。

玖場という形は其処には無かった。小説の語り手のように、実体は無くとも意思だけが宙ぶらりんな形として、時に視野や見解などが出てくる、そんな物としてあった。

『相変わらず不透明だ。』
玖場はそう思いながら左右を見渡す、この表現も実際には可笑しいのだが彼はそんな行動をした。

何処からか声がする、が、その姿が一切見えない。これが、この所玖場の頭に広がる”夢”だった。

いつもの玖場なら夢を見ている主を酷くならないうちに発見できるし、”夢”が何の意味を持つかを話して向き合わせる事も出来る。が、これはそういう問題ではなかった。

ただ、ただ、声が聞こえる。五月蝿いくらいにぶつぶつと。そして、その主はいっこうに姿が見えないし、ここには何も無かった。場所も、人も、全てが取っ払われていた。ふと、影が差した事に気づいた。玖場の足元、といえるところあたりに。

黄色、というよりは少し茶色が掛かっている、むくむくとした、けれど小さい。

もう少し目を凝らしてみようとした瞬間、三匹の猿が其処には居た。1匹目は自分の目をスッポリと覆い、二匹目は手でバッテンを作り自分の口を覆い、三匹目は両耳を器用に塞いでいた。

そして、口を塞いでいる一匹を除いた二匹が念仏のように何かを紡いでいる。何を言って居るんだ、と近くで聞こうと思いそちらに向かおうとすると、獣特有の雄たけびが玖場に降りかかった。

「っ!!」
がばっと起きてしばし呼吸を整えると、玖場は状況を整理する。

”猿”の夢。しかも、何を言っているかを聞こうとすると追っ払われた。理由は一つ、それを聞かれたくないのだ。けれど、誰かにも聞いて欲しい、寧ろ、伝わって欲しいという気持ちが背反しているのか、あの夢は。

朝の光が射すのが分かって起きて、居間の方へ向かえばこの下宿所でまともに下宿している高校生宝色が朝食をもりもりと食べていた。
「あ、おはよう御座います玖場さん。」
「・・おはよう」
「今日は結構まともそうですね。」
「少し尻尾が掴めたんだ。」
そう言って食卓に並べられた朝食を見る、出汁巻き卵に青菜の白和え、おまけに味噌汁。

「手間が相変わらず掛かってる・・」
「美味しいですよ、出汁巻き卵。」
「作った主は?」
「回覧板が来てたので隣りに、お隣りさん明日から旅行なので早めにと言う事でだそうです。」
「成る程。」
ずずっと味噌汁を飲んで、青菜を食べる。

「そういえば、結局的に玖場さんを悩ませてる夢の人は気づいていないんですか?夢を見ていることに。」
「今日、見た夢を見るとそれが確定したな。あれは、自分の心に踊らされてる。やっかいな夢だ・・」
そう呟いていると、ガチャリと居間のドアが開いて現れたのは通り堂だった。

「おはようさん、今日は結構元気そうだな?」
「尻尾がつかめたそうです。」
「夢の?」
「ああ、”猿”の夢だった。」
「・・・・・・尻尾だけに?」
「猿って尻尾ありましたっけ?」
「まともに聞く気はあるのか?」
そう尋ねると、通り堂はふらふらと革紐の着いた左手を揺らして冷蔵庫に大量の蜜柑を仕舞い込む。

「で、その”猿”はそんなにひどいのか?」
「酷い、といえば酷い。気持ちが背反しているんだ。」
「背反?」
「夢の中で猿は3匹居た、一匹が目を一匹が口を一匹が耳を塞いでいた。」
「・・・何かどっかにそんなの無かったか?」
「日光東照宮の言わざる見ざる聞かざるですよ」
「ああ、それか。で?」
「口を塞いでいる以外の奴が唸ってたのさ。で、その言葉が何を言ってるのか聞こうと近寄った瞬間」
「瞬間?」

「キシャアアアアアッ!!」
びくっと玖場から発せられたその声にぽかんとする二人。

「と唸られた。」
「お前マジで今の要らなかっただろ・・!?」
「ビックリしたー」
「忠実に再現したい気分だったんだ」
「・・・・主は見つけれそうなのか?」
「ああ、昨日偶然だが会っていた。」
「へぇ、良かったな。」
「今日中に何とかなるだろう。」
「晒し者が近づく訳か・・・、と、宝色お前そろそろ行かないとまずいぞ。」
「あっ、本当だ。じゃ、行ってきます。」

静かに、夢は進む。誰かを、残して。

Re;Postponement time of the criminal exposed to public view.
DATE: 2010/03/08(月)   CATEGORY: 未分類
彼方の旅行記。
―世界は広い。世界は果てしない。世界は優しい。世界は残酷。世界は、

ガコッ、という音がとある駅で小さく響いた。見れば、女性が引いていた移動式のトランクの車輪部分が排水口のフィルターに嵌ったらしかった。だがこの女性は不思議な事に、移動式のトランクとは別に茶色のトランクを手に持っている。あっちが貴重品様といった所だろうか。

駅はこの街では一番大きなものでガラス張りの内部は未来的だった。今日はその開通記念日で、自分は晴れてこの駅の駅員になれた。それはもう血反吐を吐きたくなるくらいの試験をパスして。

その為、今は気分が良かった、そう偽善と言われそうな人助けをしたくなるくらいに。

「Werden Sie jetzt mit Wetter helfen?(今日和、手伝いましょうか?)」
声をかけると、女性はどうやらアジア系だったらしく言葉が通じただろうかと思った。その予感は見事に的中したらしく女性は首を傾げている。

どうしようか、と思っていると女性は茶色のトランクを置いて、移動式様のトランクの車輪を器用にフィルターから出した。そして、茶色のトランクを持ってすたすたと歩き始める。

偽善を見事に捨てられた瞬間だった。

「ぶわははっはははは!!」
そんな馬鹿笑いが響いたのは夜になって同僚と夕食を食べに行って暫らくの事だった。

「じゃあなんだ、お前は見事に捨てられたのか!悲しいな、笑って良いか?」
「少しはコイツの寂しさを分かってやれよ、メトン。コイツだって俺たちに話したら・・馬鹿笑い・・されることくらい・・くくっ」
ビールとソーセージというこの国ならではの食事が並ぶ中、同僚である二人は笑う。いいさ、こいつ等に話せばこうなる事くらい分かってた!

「それにしても、お前はこっちじゃ放って置かない女性は居ないのに、アジア系からすればお前は駄目だったのか?」
「知るか」
「メトン、あまり怒らせるなよ。」
「でもノヴェ、俺はそのアジアの女性にあってみたいよ、でもってその捨てられた瞬間を再現してもらいたいね。」
「最悪だな、メトン」
「ダンケ!最高の褒め言葉じゃないか!」
そう言ってぐいぐいとビールを飲むメトンと、ジャガイモとブロッコリーの温野菜を食べるノヴェ。それに負けじと、俺もソーセージにかぶりつこうとした。

カラン、と店のドアが開き入ってきたのは昼のアジア系の女性だった。
ぽとり、と俺はフォークからソーセージを落とした。そんな反応を見て取ってか、メトンとノヴェも俺の視線を追い話し掛けてきた。
「おいおい、もしかしてあの人がそうなのか?」
「・・・間違いない、」
「よしっ、声をかけてこよう!」
俺はあまりの衝撃に追いつけておらず、メトンが何を言っているのかも理解していなかった。

「メトンが行ってしまったけど良いのか?」
確認するようなノヴェの声で俺は現実へと戻った。はっとして、扉を見るとアジア系の女性と馴染みの店主、そしてメトンが話し込んでいた。慌ててそちらへ向かうと、どうやら話し込んでいるのは店主とメトンの二人のようだった。女性は首を傾げている。

「おい、メトン」
「なんだ?」
「その人はドイツ語は話せない。」
「なら、英語か・・あー、Where did you come?」
すると、女性ははたりとしてfrom japanと答えた。

「なるほど、日本!富士山、腹きりの国か!」
「じゃあ、メトン、お前さん方の席に一緒でいいんだろ?」
馴染みの店主はとんでもないことを行っている。

「ああ、俺とノヴェは英語少し位なら話せるし。」
「ちょ、待て、メトン」
「・・・・?」
女性は首を傾げている、ただならぬ雰囲気を感じ取ったんだろう。

「彼女は一人で食事する為に来てるんだぞ。」
「だが、ドイツ語はサッパリだし、俺たちが居れば説明も出来るじゃないか。」
「そう言う問題じゃ、」
「ちょっと待て・・If it is good, will you accompany it?Can , German be spoken the encounter?」
「・・If it is English, it is possible to speak though German cannot be spoken. Please let me invite it by all means if you can explain the menu in English for you. ]
「よし、決まりだ!」
メトンは女性に手を差し伸べる。女性は一瞬きょとりとしたが握手と分かったために手を差し伸べ、握手をした。こういうところはこいつのすごい所である。国境は関係ないんだといわんばかりのところが。

そういって彼女の手元を見る。茶色のトランクが握られている。やっぱり貴重品入れなのだろうか。

ノヴェがビックリしたように女性とメトンそして俺を見た。
「どうなってるんだ?」
「・・メトンに聞いてくれ。」
「一緒に飯を食うことになった、拒否は認めないぜ。」
「別にこっちはかまわないが、こいつは居た堪れないぞ?」
「それも兼ねて話せばいいじゃないか。あ、英語は話せるらしいから英語で。」
「了解」
ノヴェはじゃがいもと空豆のキッシュをもぐりと飲み込みそう言った。

女性は何処に座ればいいんだろうと言う表情をしていたので、隣りの椅子を引いて椅子を軽めに叩くと、女性はそこへ座る。どうやらジェスチャーでも意外にいけるらしい。トランクは左、俺の右に置かれた。

「で、名前とか聞いたのか?」
「あ、聞いてない。」
「メトン、・・・My name is called nove.You?」
「Nice to meet you nove.My name is kanata.」
「カナタ?」
思わず復唱すると女性はこくりと頷いた。するとメトンが女性に向かって話し出す。

「My name Meton and here・・Ein」
「Nice to meet you Meton and Ein」
俺とノヴェに向かって手が差し伸べられ握手をした、メトンは先程握手したための考慮だろう。

そして彼女の目がノヴェが食べていたキッシュに向けられている事に気づいた。一切れ切って更に持って渡すとカナタはきょとりとしてこちらを見た。

「May I eat though it is the one for which you were asking?」
「If it is possible to pay only for the fellow to have eaten, it is good in it later. 」
そう言うと、彼女はしばし考え込んでか、ダンケ、と返した。何故そこだけドイツ語なんだ。

Re;It appears in other side and Germany.
DATE: 2010/03/07(日)   CATEGORY: ゴッドイーター
クリアーレモネード。
―いつも通りの日々、いつも通りの友達、いつも通りの、隣りの席の、人。それだけで、充分だと思えた。

たっ、たっ、たっ、私は一心不乱にそこから出来るだけ離れたくて走った。

この気だるい暑さにも負けず、ただ走った。気がつけばバス停に着いていて携帯で時間を確認すると何時もより2本も早いバスに乗れそうだった。
そして私―八宮はやっと呼吸を整えると言う動作に移れた。学校を出るときを思い出す。

『・・あー、八宮御免。今日、弟迎えに行かなきゃいけないんだった。』
『そうなの?良いよ、お迎え行ってきてあげて。』
『それが、最近あの道不審者が多いらしいから不安なんだけど・・』
『平気だよ』
『・・・・誰か、居ないかなあ』
私の平気はどうやらスルーされたらしく安ちゃんはキョロリと周囲を見渡し、スニーカーを下駄箱から取り出して履いている、彼―宝色君を発見した。

『宝色、帰りどっち方向?』
『俺?俺は、校門を出て左だけど?』
それを聞いて安ちゃんはパチンと指を鳴らして、宝色君を見た。

『頼みがあるんだけど、』
『重労働じゃなければ良いよ』
『要件には沿ってるわ。最近その道不審者が多いって話知ってる?』
『3年の先輩が見た、ってやつ?』
『それ、で私も普通はそっちの道で八宮と一緒に帰ってるんだけど今日私弟迎えに行かなくちゃならないの、だから、途中まで一緒に帰ってあげてくれない?』
『それくらいなら別に良いよ?』
宝色君は快く了承し、安ちゃんは有難う!と言い、当人の私だけが置いてけぼりだった。

そうして道を進んでいたら、宝色君の下宿先のクバ・・さん、が表われた。

クバ、という人はやつれている様で、同時に鋭い目をしていた。多分本気でにらまれたら相当怖いんだろうな、と私は思っていると、宝色君が話から置いてけぼりを食らっている私に謝った。

少し距離はあるものの大丈夫だろうと思い、私はそこから撤退させてもらった。何しろ、クバさんの目は本当に鋭くて見透かされているような、そんな気がしたから。
というか、何であんなにも”恐怖”を覚えたんだろう。良く判らない、と首をかしげていると背後から影が差した、すすっと。

ぎこちなく振り返ると、にたり、とした笑い顔があって、思わず視線が離せなくなっている。左右を確認すると、誰もいない。ああ、不審者、と心が目の前にいるこの人を認めた。

逃げなきゃ、と思っていると足が竦んでいた、肝心な時に駄目なのだ。懐から”何か”が出される。

「ひっ!」
私に出来る残された行動、それは悲鳴をあげることくらい。
―見たくない。
―目を閉じて、しまおうか。

「ぐえっ!」
目の前でゆらりと倒れる不審者に長身の男の人が見事にローキックを決めていた。その衝撃でか、ナイフは遠くに弾かれた。男の人は審者を睨みつけると不審者は素早くで逃げて行った。

「大丈夫か?」
「あ、・・・有難う、御座います、」
「どういたしまして、あー・・警察に連絡しとくべきなのか、こういうのって」
ブツクサと男の人は呟くように言って携帯を出して話し始める。私がへたりと座り込んでいると男の人は話しながらも手を差し出して、立ち上がらせてくれた。

「はい、それじゃ」
「・・あの本当に有難う御座いました。」
目の前の人はひらひらと手を振り、どういたしまして、と言った。革紐がプラプラ揺れてる。

「まぁ今度から・・っていうか今度も嫌だな。ちゃんと背後にも気をつけて。」
私はこの人に何か御礼をしなければならないんじゃないだろうかと思う。というか、この出来事を両親に話したとして真っ先にお礼をとなるだろうし。

「あの、差し支えなかったらお名前教えてもらえませんか」
「名前?俺は通り堂。」
「とおり、どう?」
「変わった苗字だろ?」
けらり、と男の人は笑う。そして進行方向へ歩き始める。

「バス着たけど気をつけて」
そう言って、また手をヒラヒラと振るトオリドウさんの手にぶら下がってる革紐が何故か、これまた印象深かった。

いつも通りじゃない日常に、私は目を、口を、耳を、閉ざしたくなるのです。

Re;shut out
DATE: 2010/03/06(土)   CATEGORY: ゴッドイーター
ラムネキット。
夏の暑さに負けて通り堂の店に行けば、通り堂からは夢の主が”夢”を自覚していないんじゃないかと言われて玖場は半ばその意見がどうやって表われたのかを聞くのもやめた。

今まで自分が”獏”として喰ってきた夢の中に、そこまで無自覚な夢はあっただろうか。否、無かった。

少なくとも、人は”現実”とは違う”別の何か”にそれがありえないものを詰め込んだ”夢”だと気づくのだ。

全く持って、分からないと玖場は道を歩む。そして、角を曲がろうとした瞬間バッタリ、と人と出くわし、お互いに止まる。

「あれ、玖場さん」
「宝色か、もう学校は終ったのか?」
「今日は先生達の出張日だそうで、結構早めに終ったんですよ。」
そう話していると、その後ろに更に1人人が居る事に気づいた。

「ん、ああ、こっちは同じクラスの八宮さんです。この人は同じ下宿先に住んでる玖場さん。」
「初めまして。」
こちらが挨拶すると、八宮と呼ばれた少女は慌てた様子で頭を下げた。

「初めまして、八宮十姫です!あの、えと・・」
何故かしどろもどろになっている八宮と言う少女に宝色が首を傾げて玖場を見た。

「玖場さん、このまま帰ります?というか、探してたんですよね?」
「ああ、朝から探してたんだがサッパリだ。やっぱり通り堂が言うように、自覚が無いからか?」
考え込むようにその場で言うと、宝色もどうなんでしょうね、と考え込む。その為、八宮という少女は置いてけぼりの状態になってしまってあたふたとしている。

「あ、御免、八宮さん。」
「ううん、良いよ・・、それじゃ宝色君」
その会話を聞きながらも玖場は考え込んでいた。

「せめて、あの念仏の姿でも見えれば・・もう少しはっきりと追えるのに・・」
「まだ、姿見れてないんですか?」
八宮と別れてから宝色は尋ねた。

「声があまりにもボソボソと喋るからどこで喋っているかもわからないし、視界も胡乱なんだ。」
「成る程・・、さっき玖場さん通り堂さんが自覚してる、とかってのは一体何なんです?」
「さっき通り堂の店に寄って話したが、”夢”を自覚していないから見つからないんじゃないかと、言ってたんだ。」
「・・・在るんですか?そんな事。」
宝色は驚きだ、と言う具合に眼を見開いた。

「今までの経験から言えば、在り得ない、と言いたいがこの状況から言って、無いと胸を張っていえなくなってきた。」
「通り堂さんに一票、って感じですね。」
「珍しいことにな。」

そういえば、と玖場は切り出した。

「墓参りには行ったか?」
「・・、行ってます、ただ」
「ただ?」
「何時も目の前には行けてないんです・・・、これも向き合えてないですよね。」
「・・・、徐々にだが進もうとはしているんだろう?」
「なるべくは。通り堂さんに言われたみたいに話したいこととか、姉さんの好きだった炭酸水とか何時も買って、行ってるんですけど・・・不思議な話で足が竦んじゃうんですよ。」
はは、と空笑いをする宝色の話を玖場はただ聞いていた。

「宝色」
「はい、」
名前を呼ばれて玖場のほうを見ると夕焼けがとっぷりと沈みかけていた。

「進もうとするばかりが向き合う事じゃない、自分なりに向き合えればいいんだ、それを忘れるな。」
そう言って、すたすたと先に歩む玖場の背を宝色は少し早足に追いかけた。

しゅわり、しゅわり、

Re;How to make is simple and dissolves your heart.
DATE: 2010/03/04(木)   CATEGORY: 店主の宝物庫
アイスウィスプ。
暑い、ありえなく暑い。本当に今は秋の終盤なのか。

「それにしても、暑いせいかアイスよく売れますよねー」
「アイス類飲まないとやっていけねぇよ。」
「あ、通り堂さん氷がもう底をつきそうなんですけど買ってきた方が良いですよね?」
従業員たちが賄いを食べながらも会話をし、聞いてきた。

「そうだな・・この調子だと午後もアイスが売れそうだし」
「じゃあ、これ食べ終わったら買ってきますね。」
「任せた。」
そう言うと、従業員たちは氷の入って冷たい野菜ジュースを一気に飲み干し、行ってきます!と若さを押し出して出かけていった。

ガチャッ、と扉を開く音がして忘れ物でもしたんだろうかと振り向くと顔なじみが立っていた。ひどいやつれ顔で。

「玖場、珍しいな。店に来るなんて。」
「探してたんだ・・・」
「念仏の夢の主か?」
「ああ、けど、この暑さじゃ遠くまで行く気力も無くなる・・」
そう言って、玖場は椅子に倒れるように座った。

「何か飲むか?」
「金は無い。」
「それくらい分かってる。」
厨房に入ってアイスボックスの中身を見ると本当に氷がほとんど無かった。

「水でいい。」
「野菜ジュースもあるぞ?」
「売り物だろう」
「賄い用だ。」
「働いてないからいいんだ、水で。」
「・・・恐ろしいほどに頑固だな」
水と氷の入ったグラスを渡すと、玖場は一気にそれを飲み干し一度グラスを置いた。

「昼は食べたのか?」
「食べてないが、要らない。」
「倒れるぞ。」
唯でさえやつれてる、それも睡眠不足という人間には必要な睡眠を取れていないと言う事で。

「昼を食べなくとも、倒れそうなんだ。おまけに、あの”夢”酷くなってる。」
「酷く・・?夢は広がる、ってお前は言ってたじゃないか。」
「確かに、言った。けど、それは俺の頭の中で、広がる、という言葉どおりの意味だけだ。」
首を傾げていると、やつれていながらも、鋭い目に睨まれた。

「本当に国語力が低いな・・」
「五月蝿い。」
「はあ・・、”夢”が広がるっていうのは、ただ無尽蔵にその夢を広くしてるだけだ、事実上中身は変わってない。」
グラスに水を継ぎ足してやると、玖場は微妙な表情をした。

「ありがたいことに、日本は水は無料なんだよ。」
ぎろり、と睨まれたが気にしない。

「じゃあ、”夢”が酷くなるっていうのは、悪夢か?」
「悪夢かそうでないかを仮定付けるのは結局的にそいつにとって良いか悪いかだろう。」
「でも、悪夢ってのは揃って気味の悪い物の事だろう。」
「・・例えば、だ。お前の好物が、夢でたくさん出て来るとする、そうしたらどうする?」
「そりゃあ、食うだろ。迷わず。」
「で、これが1週間続いたら?」
「1週間・・単品だけか?」
「単品だけで、1週間、更には2週間と続く。」
「最悪だな・・・」
「それだ。」
「それ?」
「お前は最初好物だから、喜んでいた。ここまでは悪夢じゃない。けど、それが何週間も続けばお前にとってはそれは悪夢になる。怖いばかりが悪夢じゃない。」
「成る程な・・、じゃあ、酷くなるってのは?」
「”夢”がどんどん強くなる、このままじゃ喰えないまでに酷くなるのも時間の問題だ」
「それって、まずいのか?」
「通り堂お前も知っての通り、夢は”己が己自身と向き合う為にある”」
うぐっと思わず通り堂は唸る。

「その夢と、この夢の主は全く向き合っていないから酷くなってるんだ。」
玖場のそんな言葉を聞いて、はたり、と自分の頭にある予測が浮かぶ。

「あのさ、これ、俺の勘だけど。」
「何だ。」
「その夢の主、もしかして”夢”自体に気づいてねえんじゃね?」

Re:The generation of an unconscious dream.
DATE: 2010/03/01(月)   CATEGORY: 店主の宝物庫
横と縦の世界。
「あづい・・」
「大丈夫・・?」
私はそう言って安ちゃんに尋ねた。安ちゃんは大好きな苺牛乳を片手に唸っていた。

「ありえないと思わない?なんで暑いの、秋だよ!秋の終盤!!」
安ちゃんはそう言うと、下敷きを片手に風を仰いだ。

「異常気象なのかな・・?」
「そういうレベルじゃない!絶対に!」
預言者のようにきっぱりと言って安ちゃんは机を叩いた。

私はそんな光景を見ながら、ごくりと炭酸水を飲んだ。

「・・・好きだよね、それ。」
「へ?!うえっ!?」
「動揺しすぎだよ・・、ソーダソーダ」
「あ、ソーダ・・・うん、美味しいよね?」
「私炭酸飲めないから、分からないや。それと、苺牛乳が最強なの。」
「美味しいのになぁ」
そう言いながら私は隣りを見る。『タカラジキ』君はじっと何かの本を読んでた。そして、彼の机の片隅には青色のペットボトルがあった。

「あ、『タカラジキ』もソーダだ。」
安ちゃんが私の視線に気づいてか、知らずか彼に声をかけた。すると、自分の名前に反応して『タカラジキ』君はこちらを見た。

「鈴浅さんはやたら甘そうなの飲んでるんだね。」
「喉が痛くなりそうな飲み物よりマシだと思う。」
「安ちゃん・・・」
私は安ちゃんのそんな言葉に思わず苦笑した。

「八宮もソーダだし、炭酸水好き多い?」
「あれ、八宮さんもソーダ?」
「え、あ、うん、美味しいよね。」
にこりと『タカラジキ』君は笑い頷いた。安ちゃんはまずそうなものを食べた顔をしていた。

「ていうかさ、『タカラジキ』何でここ最近料理本見てるの?」
確かにそれは私も思っていた、親御さんが夜働いてるのかな。

「下宿先の人がコックでさ、いつもは晩ご飯とか買出しからしてくれてるんだけど、最近忙しいから買出しプラス今日の晩ご飯のメニュー決めは任されてるんだ。」
「・・・下宿?」
思わず鸚鵡返しに言ってしまった言葉に『タカラジキ』君はうん、と頷く。

「ここの入学と同時に俺下宿してるんだ。」
「へー・・・・下宿とか未だにあるんだ。」
「安ちゃんそっち・・・?」
「え、間違ってる?」
「ツッコミどころかありすぎるよ、安ちゃん!」
安ちゃんの平然とした顔を見ながら私は思わずツッコんでしまう。

「で、今日の晩ご飯は?」
安ちゃんはそんな私をほったらかしにして、尋ねる。

「下宿先に俺と、下宿先の、今言ったコックの人が管理人なんだけど、その人ともう一人すんでる人が居るんだけどさ、最近やつれてて。」
「病気か、何かで?」
私が訪ねると、病気かー、と安ちゃんは苺牛乳をジュルルと吸った。

「いや、なんて言うか、睡眠不足で?」
『タカラジキ』君は自分で首をかしげながらもそう言った。

「睡眠不足って結構危ないんじゃないかな?」
「うん、だから、こう美味しいものを食べて、探索を頑張ってもらおうかなってさ。」
「・・探索?」
安ちゃんが思わずその言葉を煩悶した。『タカラジキ』君は何処吹く風で、何にしようかな、とか言ってる。

「探索って、何。」
安ちゃんの呟きを知ってるのは、私と多分夏空のような秋空だけでした。

―更に命題を出そう。 ―何故、夢は明確な形として表われるのだろう。

Re;
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