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DATE: 2010/05/31(月)   CATEGORY: 店主の宝物庫
賭けるのは私の斧。
彼女の昔はおぼろげだった。

彼女が小学生の頃、彼女はその頭のよさ、というよりは要領のよさによって嫌われた。

そしてその要領のよさを嫌った者に更なる自分の感情を曝すのを彼女は―嫌った。


「そのミスってさ案外隙とも同意義だったりする?」
その声に青年は驚いた表情をし、後ろに居たであろう男たちは、

「さっきのお返し。」
「痛かったしね。」
二つの声によってカウンターパンチを貰った。

「・・しぶといな、ワニイ」
「どーも。」
そう言ってワニイはすたすたと青年に近づいていく。青年はと言えば、未だ何処か諦めていない表情をしている。

「・・取引だ!」
「取引?」
「そう、俺の持ってる詐欺の金をお前たちに全部やる。だから、な、見逃してくれ、頼む。」
正しく彼にとっては最後の頼みの綱であるワニイは拙そうな表情を浮かべ、次に何かを言おうとした瞬間。

べきっ!という音がした。音の正体は―

「ごめん、答え聞くまでもないと思って蹴っちゃった。」
―イナバが悪そうに言う一方でワニイは吹っ切れた表情を浮かべて「いいや、」という。そしてイナバは倒れた青年が完璧に意識を失っている事を確認して大丈夫みたい、という。

「ミネガマサン」
口の中が切れているためか喋りづらそうにワニイが話す。

「あんたそのテープレコーダ何時から点けてたの?」
「点けてないけど?」
「え?」
「は?」
「でもミネガマさっき」
「私は撮ってるなんて一言も言ってないわ。ただ見せただけ。」
「「・・・・」」
彼女の方が何枚よりもこの青年より上手なのだと二人は痛感し笑い始めた。

「あんたやっぱりお人好しだったんだな。」
「いいえ。」
「じゃあ何で助けてくれたんだ?」
「疲れたから。」
「つかれたから・・って何に?」
「”感情”を仕舞って何時崩れるのかを心配する自分に。」
「・・・・、アンタ何でそこまでして感情を仕舞おうなんざしてたんだ?」
彼女はしばし悩んでいた。いや、考えていた。あれは何時だっただろうと、

「物事を的確に言う子供は嫌われたから・・・かな」
ワニイもイナバも黙っていた。彼女の言葉は彼女自身に問い尋ねているようだったから。

「・・さて、俺は警察に自主しに行って来る。」
「え?」
「最初からそのつもりだったのね。」
「まあな・・。詐欺で集めた金を俺自身が使ってないって言っても誰かを騙して泣かせたっていうのは事実で変えようがないことだし、あいつは・・クヌサラは多分俺も一緒に行かねえとミネガマさんの嘘が効いてたって口を割らないだろうからさ。」
そして一息ついてワニイは頭を掻きながら言う。

「その、イナバ」
「何?」
「騙して、悪かった」
ごっと言う音がして見ればイナバがワニイの左頬を殴っていた。

「は?」
彼女は思わずそんな声をあげてしまっていた。

「痛い・・」
「さっきチャラだって言っただろ」
「だからって何でグー・・」
「いや平手打ちは痛かったからさ。まあ、今のは僕が悪かったらそっちもグーで良いよ。」
「何でそうなるの・・?」
彼女は半ばあきれて二人を見ていた。

「・・・、馬鹿が。」
「そっちもね。」
イナバの右頬を殴り終わると彼等は地面に座り込みおたがいに笑いあっていた。

それに残された彼女は夕空を眺めていた。そして、お腹が空いたなと平凡な事を考えていた。

Re:It is so that you bet, and your twin children tend!
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DATE: 2010/05/29(土)   CATEGORY: 店主の宝物庫
泥臭い話の末端。
青年が笑う姿にイナバやワニイにのされた以外の男たちは戸惑っているように見えた。珍しいんだろうな、と彼女はその様子を見ながら青年を見る。

「つうか、マジであんたすげえな!切れ者で行くならワニイより上じゃねえの!!」
けたけたと青年は笑う。そして、一旦笑いをやめ真っ直ぐに背筋を伸ばして彼女を見てにやりと笑う。

「―で?」
「どうやって貴方を捕まるか?」
「そう。話が早くて助かるね。」
「警察さえ呼べば完璧でしょう。」
彼女がそう言うと青年はくらりと眩暈を起こしたように頭に手をやり残念そうに彼女を見る。

「はーあ、あのさ、俺が警察に真面目に慎ましやかに、今あんたに言った事を言うと思う?」


「起きた?」
ボソリ、と地面の土が口に入って少し拙かった。というか、苦いしジャリジャリしてる。

「起きた。何時の間にミネガマサンが・・」
隣りの男も気付いたらしく言うが喋りづらそうだった。

「・・ミネガマは優しいからじゃないかな。俺と違って。」
「・・・お前よりミネガマサンがお人好しだってか?それこそ間違いじゃないのか。」
「違うと思うよ、勘だけど。」
「・・じゃあお前は何なんだよ。」
「・・僕?僕は―」


「いいえ?というか、そんな人間がいたなら警察はもっと穏やかでしょうね。」
彼女は決定的なこの状況でもあわててはいなかった。

「じゃあ、どうすんのさ?」
「・・貴方が認めた証拠さえあればいいのでしょう?」
「まあ、そうなるね。認めないけどさ!」
「最近の機械の技術は素晴らしいとは思わない?」
「―・・は?」
「特に音声面。電話も考えようによっては”恐ろしい発明品”だけど。」
「あんた・・・何が言いたい?」
青年は彼女の話す事が何に繋がっているのか飲み込めなかった。

「形の無いもの、魂を例外としておいて網膜からの映像や声帯からの声を”形”として残せるそんな技術は貴方たちが最も恐れていいものだと思うわ。―例えばこれかしら、」

すうっ、と奇術のようにいつの間にか彼女の手に握られていたコンパクトな黒い形態の、

「・・・テープレコーダー?・・あんた一体何時からそれを!」
青年は”形となった事実”に青ざめていた。同時の目の前の彼女が何処まで”計算”していたのかを恐れた。

「決まっているでしょう。最初からよ―、」
カチッ、


「怖い、怖いとは思ってたけどここまでかよ。」
「何が?」
「馬鹿が此処にも居るな・・・。ミネガマサン相当な切れ者だぞ。」
「・・そうなの?」
「お前気付いて無かったのかよ。会った時からずっと感情がちっとも見えなかっただろうが。感情を意思で出さないなんて相当の切れ者だ。」
ジャリ、ジャリと砂を食ってるような気分さえしてくる。

「へえ。」
「取り合えず俺たちは走る用意だな。」
「ミネガマも一緒にね。」
「置いて逃げるなんて外道の極みだからな・・・。」
「はは、」
「何だよ。」
「やっぱりワニイはそっちの方がらしいなあと思って。」
「・・・」
「あいてっ」
「木っ端ずかしい奴。」

―和邇さん、和邇さん、私と勝負しませんか?

Re;Foul play affection.
DATE: 2010/05/28(金)   CATEGORY: 店主の宝物庫
悪しき人たちの食卓。
―ほら御覧、ひんがしの火の鳥とにしの風の龍が今にも互いを食おうとしてる。

「何だと、」
青年は小柄な女性を目の前にそう言った。

「私は少なくとも貴方の名前を知らない、他人の定義に当て嵌まるとは思わない?」
「・・・その他人が何でわざわざ関わりたがる。」
「私は貴方は知らないけれど、そこの二人は知ってるもの。」
地面に倒れて動かない二人を女性を見て言う。

「ワニイの知り合いか・・。お前ワニイの彼女か何かか?そりゃあ災難だ。だけどな俺を怨むなよ、他を怨め。」
彼女は青年をつまらなさそうに見た。

「貴方馬鹿なの?」
「・・・どういう意味だ?」
「私がワニイの彼女なら私は彼を見捨てるわ。」
「はあ?」
「私は私の後始末をつけに来ているだけ。彼の為ではないもの。」
「なんだそりゃ、じゃあ聞くけどあんたの始末ってなんだよ?」
青年は小馬鹿にした調子で彼女に尋ねる。だが、彼女はそれでも彼女のままだった。

「お人好しがどうとかこうとか、そんなつまらないことに揺られて自分の感情を曝してしまったことよ。・・それに、決まってるのに。私が感情をどんなに仕舞ったって、どんなに無いことにしようとしたって、私は”私”を亡くせない。私のままなのに。」
彼女は苦笑を浮かべながら誰でもない自分にそう言った。

『もう、良いよ。』

彼女が吹っ切れた瞬間だった。だが、青年には何の話なのかサッパリ判らず眉を顰めて彼女を見た。彼女は青年を見据えた。迷いはもうない。

「貴方は彼等を身代わりにすることは出来ないわ。」
「あんたがそこの奴等を倒していけるほど腕力があるようには見えないけど?」
「確かに。私は貴方を私の”推理”で負かせるだけ。」
「・・はは!あんたも切れ者かよ!負けさせられるものならやってみろよ!」
「やってみせましょう」

ガラ、ガラ、空箱の音がしてる。

「貴方は詐欺事件が起こった会合全部に名前を変えて行っていたでしょう?」
「証拠は?」
青年は何処か余裕そうな笑みを見せた。まあ、当たり前だろうなと彼女は青年を見る。

「貴方の顔を少し覚えている人がいる。」
「俺は一回も行った事が無いのに?不思議だ。」
しらばっくれている青年を彼女は別に気にしては居なかった。

「そう。ところであの詐欺にはたくさんのサクラを使ったのね?」
「なかなかのアイデアだろ?まあ、そっちも引きあがらないだろうけどさ。何せ、詐欺のアイデアを考えたのはそこのワニイだからな。そいつも馬鹿だよ、このままいつも通りに続けときゃんな目にも合わなかったし、そいつの友達だろ?そっちも巻き添え食らわずに済んだってのに。」
けらけらと青年は笑う。

「まあ、仮にだ、あんたの言うように俺がこの詐欺に関わっていたとしよう。俺は絶対に素性をばらすような真似だけはしないね。」
「・・要するにミスは犯してないって言うの?」
「そう言うこと。」
その言葉を聞いて彼女は体を曲げて笑い始めた。

「何が可笑しい・・?」
「ミスを犯さない人間なんて居る訳無いじゃないの。何かしら小さなミスを犯しているのよ、貴方もね。」
青年は眉根を寄せて女性を睨んだ。

「貴方は確かに名前を変えてサクラやホテルの手配もしてた。ここまでは完璧よ。けど、詐欺で使った出展品は貴方でもサクラでもない。貴方の知り合いがあそこへ運んだんでしょう?」
「・・・証拠は。」
獣が威嚇するような低い声で青年は女性を睨む。

「貴方の知り合いに私が貴方の知り合いで今度使う出展品を頼みに来た序でにって言って、貴方のこれまで頼んだ物の明細票や運び場所、それから日にちを書き込まれたファイルを詳しく教えてもらったのよ。」

ガラ、ガラ、空箱の音はひどくなるばかりだ。

「は、はは、はっははっは!」
ゼンマイが切れた様に笑い出す青年。そして呼吸を整えた青年は彼女を見据えた。

「大当たり。」

ガラ、と一際大きな音が鳴った。

Re;A liar and a good-natured person.
DATE: 2010/05/25(火)   CATEGORY: 店主の宝物庫
夕凪箱。
人数の利とはやはり在るもので、更に一人は手負いであるためにそれは刻々と浮かび上がる。

「やばい気がする。」
「同感だな。こいつら何処で雇ってきやがったんだが・・格闘系なら何でもござれの奴等だ。」
「このままだと警察に突き出されて終わりだけど・・。やばいなあ、レポート未だ提出してないんだ。」
背の高い男は弱ったなという表情を押し出して後ろの手負いの男にそう言う。

「呑気すぎる」
「いや結構重要だと思う。」
「一生の方が重要だろ。」
そう言って手負いの男は左から来た蹴りをしゃがみ込んで避けたがそれと同じタイミングで来たパンチをかわせず土の上をすべり倒れた。

「ワニイ!」
背の高い男がそちらに気を取られていると、次の瞬間男の頭に鈍い痛みが落ちた。

「ははは!まあ昔のよしみで止めは刺さないさ。」
青年は土管から立ち上がりこれからを考える。

頭の中では完璧とも言える脚本が出来上がっていた。そして土管から降りようとしたその時だ。

今地に臥せっている二人の男と比べると少し背の低い女が周囲を至極、至極つまらなさそうに見ていた。

「あ?おい、今なら見逃してやるからさっさと消えろ。」
青年の脚本に通行人など通り雨程度のものだった。彼の脚本はその時のことさえ、そう彼女のさえいなければ何もがとんとん拍子で進んだんだろう。

背の低い女は青年を見、そして彼を同じくつまらないものを見るように見て言う。

「生憎、知らない誰かの戯言を聞く気はないわ。」

Re;An evening calm box.
DATE: 2010/05/24(月)   CATEGORY: 店主の宝物庫
善き人たちの天蓋。
―誰かがなくした落し物。さて、それは一体なんだったのでしょうか。

「その詐欺のあった時に契約を為さった方は全て別の人でした。」
「そうですか・・。」
少し背の低い女性はホテルマンの言葉に釈然としないながらも頷く。

「・・、あのここで詐欺があった時の受付も?」
「え、ええ。ここでひとまずご案内をするのでお名前をお伺いしますが・・」
「でしたら、その時少しでも構いません。」
ホテルマンはその女性がある事を言わなければきっと女探偵か女性警察とかだと思っていただろう。何しろ、そう思う程目の前の女性は―

「”以前会った事があると感じた方は何人いらっしゃいましたか?”」
―恐ろしいほどに頭が切れた。



青年は予め手を打っておいた。何しろ目の前の男は良く頭が切れたのだ。それを本人も判っているからこそ流雲のように生きてる。青年はそんな男に油断を許さなかった。そしてそれが青年を救うのだ。

どうせ誰かは切ろうと思っていた。数の多い手足など動くのに邪魔になるのが目に見えている。だが、それがまさか頭になろうとは思っても見なかった。それでも問題は―無かった。

だから青年は極めて沈着に幾ばくかの金の代わりにそれを引き受けた男たちを見ていた。

「上々だな。・・ひい、ふう、みい・・?六人?・・・っ、おい待て一人多いッ!」
青年がそう叫んだ瞬間ずしゃっと砂地を男が一人滑った。いや、正しくは蹴られたために地面に滑ってしまったのだが。そして蹴った相手は顔をあげる。

「・・・、イナバ?」
男―ワニイは顔をあげた背の高い男を見てそう呟いた。ワニイは構えたままで居るとイナバと呼ばれた男は平手を作り容赦無くワニイに叩き付けた。

「いっ!!」
「こっちも痛いよ。」
ひらひらと痛みを手から出すように振りイナバは言う一方で口の中を切っていたワニイは地面にしゃがみ込んでうめきながら言う。

「何で、お前がここに居るんだよ・・!」
「情報収集のお陰。それと馬鹿の友人を助けにね。」
「馬鹿に言われたかねえよ」
「でもちょっとビックリしたかな。僕も詐欺に引っ掛からせられるなんてね。」
その言葉にワニイは俯いた。事実だ。友人を金にしようとしたのは。

「謝らなくて良いよ。今さっきの平手でそれは許すし、それに引っ掛からなかったしね。」
「引っ掛からなかったて・・お前どうやって。」
「僕お金ないからね、丁重にお断りしたんだよ。それにさ、ワニイ知らないかもしれないけど―」

「―お人好しって意外と悪に近いんだから。」
ワニイはただ友人を見た。彼が知っている中で、友人はあるカテゴリの一番良い例だったからだ。

「・・・俺はだましきれなかったと言う事か。」
「そう言うこと。まあ、倒れるまで頑張ろうよ。」

「あんたがイナバ?」
青年は男からその友人の話しを何度か聞いた事がある。だからこそ、これは出来上がったとも言うべきだ。

「そうだけど、君は?」
「俺?俺は―」


「ええと、そのときはクヌカラ様と仰られていたんですけども」
「クヌカラ?」
「ええ、丁度私と頭ひとつ分くらい上の身長のお人でしたが・・その方は何回かお見受けしたような・・。」
「・・お仕事中どうも有難うとございました。」
「いえ、お役に立てたなら嬉しいです。」
受付嬢はそう言って微笑み、目の前の女性を見送った。

女性はホテルから出て妙な集団を見つける。屈強な男たちがふらふらと細い路地へ入っていくのだ。

「・・・・・・・、」

彼女は本日何度目か分からない”表情”を浮かべ、その後をそろりと追った。

Re:A chased lion and a rabbit to chase.
DATE: 2010/05/22(土)   CATEGORY: 店主の宝物庫
感情シミュレート。
「詐欺には確かにあったけど、貴方どうやってそれを・・・?」
目の前の主婦は玄関前でいぶかしみながら目の前の主―少し背の低い女性を見ながら尋ねる。

「先日の新聞の写真で。此処のお家の門は少し変わっていますから。」
女性は淡々としてそう言うと、目線をこちらへと向ける。

「実は私の家族も詐欺の被害にあって、何とか犯人を割り出して警察に突き出したいんですけど・・何分情報が少なくって、それでもしよければお話しをお伺いできないかと思ったんです。」
「まあ・・それは、貴方のご家族もご苦労なさったわね・・。私なんかの話でよければお話ししましょう。」
主婦は同情の色を持った。自分の家族だけじゃなかった、という同族の観念にも心を動かされながら。

「そうね、詐欺に合ったのは私の夫なの。私が丁度義母と買い物に行っている最中に電話があったらしくて、その出展品にも夫は前々から興味があったものだったから、直ぐに了解して場所に行ったらしいの。確か・・掛けて来た相手は男だったらしいんだけど。」
「名前は言っていなかったんですか?」
「それがねえ・・覚えてないらしくて御免なさいね。」
「いいえ、それで何処の場所へ?」
「ええと、ヤソ橋を抜けた所にホテルがあるでしょう?」
「ええ。」
「そこの3Fを貸しきってだったらしいわ。」

主婦が言うと女性は何か考え込むように玄関の石畳を見て、「そうですか」と言い、主婦を見た。

「お時間を取らせてすいませんでした。」
「いいえ、早く犯人が捕まるためでしょう?なら時間を惜しんでなんか居られないわ。貴方も貴方のご家族をどうか責めないであげてね、悪いのは犯人なんだから。」

主婦が頬に手を当てながらそう言うと女性は無表情に「有難うございます、それでは。」といい去って行った。

主婦はただその時の女性の”表情”を自分の知っている”感情の表情”に割り当てる事が出来なかった。


背の低い女性は公園の椅子に腰掛けて小さな手帳に鉛筆で先ほどの家の名前を書き込んだ。だがそこには先ほどの家以外の名前もつらつらとか書かれてあった。

「・・お人よしのオンパレードね。犯人が詐欺をしたくなるのも何となく分かるわ。」

彼女がそう呟くのも全く無理な話ではなかった。何しろ、誰も疑わないのだ。自分が本当に詐欺の被害にあった家族だという事に。

本当に在っているなら今頃泣き暮れているだろうと彼女は思う。多分彼等の疑わないと言う病は一生治らないんだろうなと思う。そもそも、彼らは本当に”お人好し”なんだろうか。

そう思いながら彼女は一時その考えを止めた。

彼女が被害にあった人、に話を聞いて2時間と少し情報は明確に出てきていた。

1つに、いずれも場所はヤソ橋近くで起こっていること。
2つに、電話をかけてきたのは男であった事。
3つに、そこに居た人物たちはおよそ10人程度。
4つに、関係者並びに司会進行役が6人程度。

更に3つ目に関しては4件目に行った青年が有力な発言をしていた。
『それが・・・、落ち着いて考えてみたらあの時出店品を競り合ってたのは俺とそれから婆さんに中年のサラリーマンくらいだったんだよなあ。』
『他の人は出展品に見向きしてなかったと言う事?』
『ええと、そうじゃなくってさ・・・他の人たちも出展品に食いついてたんだよ。だけど、それの上に俺ら3人が更に高い値段を出したらそいつらは何も競ってこなくなったんだ。不思議だよなあ』

彼女は思わずその青年の頬を平手打ちで叩いてやりたくなったが、しなかった。自分も”被害者”という状況だったから。
青年の話が真実であるなら、彼ら3人以外は全てサクラである。だが肝心なのはサクラではなく、大元だ。そんな手間の掛かった詐欺をする、大元は誰だ。

「・・・・・・、ホテル、それから」

『ワニイとイナバがヤソ橋に―』

『あんたもさ、お人好し―』

『―”全てを”、』

パタン、と手帳を閉じて彼女はヤソ橋へ向かった。ホテルから情報を、そして大元を炙り出してやる為に。

Re;Even an apple falls and should fall down.
DATE: 2010/05/20(木)   CATEGORY: 店主の宝物庫
海賊船長を飲み込むのさ。
ヤソ橋近くにて。

「考え直せよ―ワニイ」
横倒しになった土管の上に悠々と座る青年はそう言って笑う。

「親友だろう?な、だから前と変わらず―お人好し達の金をお前が立てた計画で取って、俺が根回しをして後は下っ端の奴等に任せて金はきっちり半分分ける。それにお前は一体何が不服なんだ?」
土管の上で彼は立って演説するように地べたにへたり込んでいる男に問う。

「・・真面目に不器用に生きてる奴等見てたら自分のしてる事がミジンコ以下に見えてきたんだよ」
地べたに臥せっている男―ワニイはあちらこちらに傷をこしらえていた。

「ミジンコ!」
くはーとビールでも飲んだのかと言う具合に楽しそうに笑う青年。

「良いな。単細胞ってのはバカにされがちだが要は生きることしか考えてない、だろ?なら俺はそれでも構わないね。まあ・・どっちにしろ、誰かは切るつもりでいたんだ。それがまさかお前とはね、いやはや残念極まりないよ。」

「だろうな」
「・・分かってて真正面から来るなんてバカの極みだぞ。」

「単細胞は貪欲なんだろう?なら、俺は馬鹿の極みでも良いさね。」
「頭が良すぎたな、ワニイ」

「どーも、」
何処が、と男は内心思っていた、そう自分なんか唯の馬鹿だ。ミジンコ以下。切れ者って言うのは多分彼女のような事を言う。

そして次の瞬間居間まで寝転がっていた男は反動をつけて立ち上がり勢いのまま両脇に居た男二人が呆気に取られている内に蹴り倒した。

「まあ、俺の性分は逃げだからな。」
「予想済みだよ。」
退屈そうに青年は頬杖を着く。

蹴り倒した男たち以外の男たちがわらわらと出てくる。およそ、六人。

「うげっ、最悪!」
「どーも、身代わりさん。」

Re;clock pinch
DATE: 2010/05/18(火)   CATEGORY: 店主の宝物庫
岩鳥。
彼女が感情を表すのを止めたのは彼女が小学生の頃だった。

「え、イナバ君とワニイ君?」
彼女は彼らが取っていた講義の人たちから先ず情報を得ることにした。そっちの方が手っ取り早いのだ。人の目は何処にでもあるし、人の口に障子なんて立てられないんだから。

「んー・・、ワニイ君は兎も角イナバ君は真面目に講義も受けてたし、彼ら仲が良かったろ?」
「ええ」
「だから比較的一緒に見ることが多かったんだけど・・おーい」
そう言って話を聞いていた青年は外に行こうとしていた男女に声をかけた。

「ん、何々?」
「イナバ君とワニイ君最近見た奴居ない?」
「えーイナバ君今日も休みなの?」
「あ、はいはい。ワニイならこの前別の学科・・かな、うんそう、別の学科の奴と話してるの見たけど。」
「それは何日前?」

清く正しい人の目には彼女の背後にブリザードが見えたらしい。

「え・・と、確か五日前かな。」
「五日・・何処で見たか覚えてる?」
「ええと・・何処だったかな、五日前、五日前」
「ヤソ橋じゃない?」
ごくごくとお茶を飲んでいた女性があれという具合に言う。

「そうそう!ヤソ橋!」
「もー、レストラン行った帰りだったじゃない。」
「やーころっとね。あ、ヤソ橋分かる?」
「繁華街近くの?」
「そーそー、でもまたなんであんな所に居たんだろうなあ。見た目どっかに飯食いに来てるっていう雰囲気でもなかったし。」
「・・、教えてくれて有難う。」
「えっ、ちょっ、ミネガマさん講義は!?」
「欠席で。」

引き止めようとした青年の下に何日か前に彼女が彼にくれてやった言葉を彼女は忘れてもう一度彼にくれた。

青年はそのままがくりとうなだれた。そしてそんな光景を見て場所を教えた男女はただ合掌した。

Re:
DATE: 2010/05/16(日)   CATEGORY: 店主の宝物庫
君の心の話。
意味が分からないと彼女は感情を仕舞う事を忘れて破顔した。

「身代わりの話ってどういうことなんですか、リガキ教授!」
彼女はこのとき始めて目の前の主の名前を呼んだ。

「そのままの意味なんだけどね・・、君は因幡の素兎の話は知ってるかい?」
「・・・・、」
「知っているならそれで良いんだよ。説明の省略もできるしね。この場合知っていると僕は受け取るけどいいかな?」
「・・・はい。」
「うん、この話は知っての通り古事記、日本で最古の歴史書の話の一つだ。だが、一つ注意点がある。」
「注意点・・ですか?」
「そう、一般的には白兎という話で色んな人は知っているんだろうけど、日本に白いアルビノと呼ばれる種類の兎は居ない、居るのは茶色の兎だからね。本来は”素”兎、これでシロウサギと読む。それでここからが本題だけど、このシロウサギが淤岐島から因幡国へ渡ろうとする時に和邇、サメを欺いて渡り、最後に騙していた事を調子に乗って言い報いを受けた、そしてその挙句八十神の教えに従って塩水で体を洗った為シロウサギは身を裂かれた。」

かちかち山の狸に負けない位に酷い話だと彼女は思う。

「さて、僕が何故星が綺麗かを尋ねたのはこのためなんだけどね。」

彼女はひたすら感情の重箱が崩れないようにしていた。

「星を兎に置き換えるとしよう、すると君とイナバ君はただ事実を言うだろう。だが、ワニイ君は兎の価値によって反応を変える、そう言ったんだよ。」

リガキ教授の話は、まるで

「君はこの話を聞いて何を思ったかな?」
「・・私に何をしろと仰るんですか。」
「それは君の判断とするところだよ、ミネガマ君。」
「・・、」
「それとこれはいらない忠告かもしれないけれど。」
「何でしょうか。」

「―ミネガマ君、君は何時まで”感情”を仕舞い続けるつもりなんだい?」
「・・っ!!」
「君がどうしてそんな風に仕舞い続けているのかは聞きはしない。けれどね、いつかその感情は溢れ出す。」
「・・・・・それくらい分かっています」
「そうか・・やっぱり、いらない忠告だったね。忘れてくれて構わないよ。」
「・・・・リガキ教授。」
「何かな?」
「貴方は何を”知っているんですか”」

彼女がそう尋ねるとリガキ教授はきょとんとした後困ったように、或いは悲しい笑いを見せた。

「”全て”を、ね。さて、講義に戻る時間だ。それじゃあ失礼するよ。」

去っていく人の背中を見ながら彼女は重箱の一番そこを蹴った。

「つかれた。」

それが彼女が”感情”を出した彼女の第一声である。

Re:smog world
DATE: 2010/05/15(土)   CATEGORY: 店主の宝物庫
奇術師は奇術の種を見せた。
小さな瞬きがいつか地上に辿り着く頃には彼の星は死んでいるのです。

「おいイナバ君、イナバ君はいないのか?」
しんとした空気に教師は「珍しいな、風邪か?」と呟き授業を始めた。

授業が終わり彼女が昼食を悩んでいると最近教鞭を取る事になった人が長椅子に腰掛けて新聞を読んでいるのに気付いた。変わった人だという印象が彼女には強い。

「・・・あれ、確か君は?」
見つかってしまった、と思いながら挨拶をする。

「二回生のミネガマです。」
彼女がそう言うと相手はばつが悪そうにしながら謝った。

「すまないね、なかなか名前を覚えるのが大変で」
「いえ、構いません。」
新聞紙を見ていると読むかい?と新聞を差し出された。

「最近やたらと詐欺事件が多いからね、君も気をつけるに越した事は無いよ。」
「引っ掛かる気もありませんから。」
「はは、そういえば君と同じ回生の・・うんと背の高い」
「・・イナバのことですか?」
先日話したときから姿が見えない。3日もだ。

「そうそう、彼は学校に来ていないようだけどどうしたのかな?」
「さあ、分かりません。風邪じゃないでしょうか。」
「彼の性格上一つ連絡でもありそうなものだけども」
「・・何が仰りたいんですか。」

―ぐらり、ぐらり、積み上げられた塔のような、

「君は星を見て綺麗だと思うかい?」
話が変わってると彼女はやりきれなくなった。

「星の燃え粕の光なんか興味は在りません。」
何億光年と言う距離を測るのさえ馬鹿馬鹿しいところにある石に浪漫も何もあったものじゃないと彼女は淡と答える。

「・・やっぱりかな?」
「何がでしょうか?」
「イナバ君もね、君と似たようなことを言っていたから。」
「?」
「『世界が明るかったら何も意味が無いですね』、君の答えと核は似ているよ。けど、彼は少し違ったな。」
「・・彼?」
「イナバ君の友人の・・確かワニ、ワニ・・」
「ワニイですか」
「そう、彼、彼は『星の値段に依ります。』そう言っていた。それが彼の話であるんだろうけど。」
「話?・・一体何のことですか。」

「そう、因果応報、自業自得、身代わりの”話”」

―感情はついに溢れ出すのです。

Re:I show an empty hat, and both "the kind and the device have nothing"
DATE: 2010/05/13(木)   CATEGORY: 店主の宝物庫
放浪犬の家。
―捨てられた事を泣いてるんじゃない、きっと新しい何かを探してるんだ。

「よお、ミネガマさん。」
「・・どうも、」
最近名前を知った浅い髪の青年―ワニイがふらりとやって来て彼女の目の前に教科書が置かれてあるのを見た。

「あんたも真面目に来るタイプか、エライな」
彼の言葉のニュアンスはどうも人を馬鹿にしたような言い方だと彼女は思う。

「・・それで何の用?」
「あー、あんたさ良く冷めてるって言われねえ?」
「さあ、陰では言われてるかもしれないけど」
「冷えてんなー・・、他人の意見なんて気にしない。いや、そもそも意見なんて求めて無い、か」
「私の考察なんてしたって面白くないと思うけれど?」
彼女のそんな言葉にワニイはへらりと笑った。

「そうでもないさ。あんたは気付いてるのかしらねえけどな、あんたイナバと同じ―お人好しの匂いがするんだよ。」
「・・生憎私はそのカテゴリにはいないわ。」
「はっ!人は追いつめられなきゃ本当のことなんて言わない。けどな、溜め込んでたって何時かは吐いちまうものなのさ。だろ?」
彼が何故彼女にその問いをしたか、彼女はその答えとなる感情をまた仕舞った。そして。

「そう言う貴方はどうなの?」
「俺?俺は曝す前に消えてる。何せそう言う性分だから。・・それじゃあな。」
「彼が一体何の為に彼女のもとへやって来たのか、それは分からなかった。


「あ、ミネガマ。今日和。」
「・・今日和、」
「あのさ、ワニイ見なかった?」
「・・いえ?一昨日は見たけれど、何かあったの?」
そう聞くとイナバは何とも言い難い表情を作った。相変わらず表情豊かだと彼女は思う。

「・・そっか、えーと、大丈夫だとは思うし良いや。」
「そう?」
「うん、あ、もしワニイを見たら探してた事伝えてもらっても良いかな?」
「それは別に構わないけど・・本当に大丈夫?」
「うん、心配してくれて有難う。それじゃあ!」

取り残された彼女は一昨日の言葉を思い出す。

『あんた、あいつと同じの意がするんだよ。お人好しの匂いが、さ』

「―お人好しなんて」
感情という感情を仕舞ってきた自分にこれほどまで似つかわしくない言葉も無い、と彼女は自分を皮肉った。

Re;But will to want to live increases.
DATE: 2010/05/10(月)   CATEGORY: 店主の宝物庫
流離猫。
―少女が持っていたたくさんの車。あれは、彼女の心の破片でした。

木漏れ日がやんわりとその草庵のような家には入ってくる。猫でもまどろんでいてもおかしくない天気だと彼は思う。彼は新聞紙を見ながらどこかにいるであろう人物に話す。

「最近やけに詐欺の見出しが多くないか?」
「事実として多いさ。」
人物はちゃんと返事を返してくると同時にお茶の入った湯飲みを置いた。

「そういう周期なのか?」
「そんな食べ物の旬とかじゃあるまいし、違うだろう」
「じゃあ?」
「・・うーん、流行かなあ。」
「そんなかわいい物か?」
「いや、だからさ。お人好しに悪を見せ付ける流行なのかな、てね。」
「どっちにしたって悪趣味だ。」
「まあね、けども僕らには絶対来ないといえるね。」
「どうして?」
「簡単だ。僕らはお人好しじゃない。寧ろそっち側だしね。」
「ちょっと待て、俺をそのくくりから外せ」
「えー・・、自分だけ逃れようとするなよ。サカザカ」
「そういうお前もだろう、というか大学での教鞭はどうなんだ?」
「うん?まあまあかな、まあ、あれだね教える側から学生たちを見ていると道路でまったりとほころんでる猫みたいに思える。」
「・・・・、それは褒めてるのか?」
「微妙な所かな。あ、でも二人ほど見込みがある生徒がいる。」
「見込み?一体何の?」
まさか、妄想癖か。

「決まってる、近々この詐欺事件を解決しそうなそんな見込みさ。」
「・・・・リガキ、お前って奴は。」
「はは、世界は丸い、故にいつか悪事も挫かれる、怨むならこの世界の循環を恨むことだよ。」
「・・・はあ、」

Re;
DATE: 2010/05/08(土)   CATEGORY: 店主の宝物庫
討議会場の回転盤。
―前提をあげておけば、その中身が本当に正しいと言えるのだろうか。答え?そんなの、

それはそれは綺麗な踵落としだったと彼女は道端にて思った。

「・・ぐあっ、」
うめき声をあげてそんな踵落としを喰らった男、もとい帰宅途中の彼女にしつこくお金を寄越せと脅してきた男は道路に重力と一緒に落ちた。

「あの大丈夫ですか・・?」
背の高い青年はそうやっておず、と尋ねた。冷静に踵落としを食らわせた人物とは中々に思えない。

「・・ええ、大丈夫。有難う。」
「良かった、それじゃあ。」
青年はそれだけ言って去っていった。

彼女はぽかんと地面にいまだ伏したままの男を見て、家に戻る為歩みだす。

このとき彼女は無関心という感情を仕舞えませんでした。

そう、だから、あんなことになる。

「あれ、君大学生だったの?」
彼は感情を余す所なく表現する、驚きと言う感情をいっぱい。

「・・、そういう貴方こそ大学生だったんですね。」
「うん、2回生だよ。君は?」
なんのことなく笑みを浮かべて受け答える彼に彼女は感情の重箱が揺らめくのに気付いた。

「・・2回生だけど、」
「そうなんだ、僕はイナバ。君は?」
「・・、ミネガマ」
「ミネガマ、昨日の人知り合い?」
「・・・・見ず知らずの人間に金銭を要求する友人関係は無いわ。」
そう言うと、彼ははたり、とした顔をしてそうだよね、と頷いてノートをしかめっ面で見ていた。そうすると廊下向こうからやって来た髪を浅く切った青年がフラフラとしながらやって来て、こちらを見てにやりと笑い手をあげて声をかけた。

「おい、イナバ」
「・・あ、ワニイ」
ワニイ、と呼ばれた青年はフラフラとしながらイナバのノートを見て、軽く肩を竦めた。

「本当にお前は真面目と言うか、無邪気と言うかさ。」
「大学って勉強する所だろ?」
「大まかに言えばな、けど、俺はあの教授の授業を真面目に聞く奴がいるのか聞きたいよ。内容のつまらない横話の挙句あの寒い冗句、軽い拷問だと俺は思うね。」
「・・・・ワニイ、」
今度はイナバが咎めるように名前を呼ぶと彼は肩を竦めた。

「へいへい、行くぜ、お勉強タイムはしばし休みだ。」
「分かった。それじゃあ、またミネガマ。」
「・・?また?」
「?だって同じ大学なんだから会う確率は高いよ。」
彼女は返答の仕様を見かねていると、ワニイがイナバを小突いた。

「何で小突いたの。」
「お前の素直さは聞いててたまに恥ずかしくなる」
「・・?」
「つき合わせて悪かったな・・えーと、」
「ミネガマさん。」
「ミネガマサン。」
そういってフラリ、と消える二人を見て彼女の”無関心”という感情はついに仕舞いきれなくなった。

―自分で考えて頂戴よ。

Re;
DATE: 2010/05/07(金)   CATEGORY: 店主の宝物庫
世界樹と彼女。
―これは彼の興味を惹かなかった話。けど彼女を変えたという意味では大きな話。

大学に入学して少し月日は彼女を変えれなかった。

「あのミネガマさん・・・」
「何か?」
「こ、今度の水曜日に会合をやるんだけどそのどうかな?」
勇気ある彼女と同じ講義を取っている男はそう言った。

「絶対に参加しなくてはいけないの?」
彼女は万年筆を指に挟んで僅かに考えて尋ねた。

「い、いや?其処は自由だよ・・」
「・・悪いけど、欠席で。」
「そ、そう・・・」
声は尻窄みになっていく男の感情と微塵も本音を晒さない彼女はこのときだけ対比関係をしていた。

男が去ってから彼女は一人溜息をついた。誰でもない自分への溜息を。

感情という感情を綺麗に仕舞いこむ彼女は一番自分が面倒だと知っていた。

そして、同時に変わる事は無いんだろうと思っていた。

季節の巡り代わりが夏、冬、秋、春のような順番に成らないような、そんな理念だと。

Re;The tree which grows from an idea.
DATE: 2010/05/05(水)   CATEGORY: 店主の宝物庫
エスケイプストーリー。
この世にはどんな物語が未だ隠れているんだろう。まあ、どれであろうともきっと語られる話であることには違いないだろうけど。



パタン、と分厚い辞書のような教科書を閉じて肩を動かすと骨がバキッと音を立てた。そして座っていたベンチから立って彼女は歩みだした。こつり、と。

ミネガマという大学生の評価を上げるとするなら普通だ。面倒な事は面倒だし、嫌な事は嫌な事と思う。

だが彼女はそれらを心に圧縮して綺麗に仕舞いこむ。何故か、それも面倒だったからだ。感情を露呈するのは未だ許せる、が露呈した事によっていわれの無い憤りを買うことが彼女にとっては面倒だった。

それゆえに彼女は耐える、という動作を面白いくらいに学んでいた。

そう、笑える位に。

彼女の色んな感情は今まで綺麗に仕舞いこまれていた。たった一つのことを除いては。

先月くらいだっただろうか、彼女は詐欺事件という奴を目の当たりにした。しかも彼女は不本意中の不本意にそれに関わってしまっていた。彼女の為に言うが、当事者ではない。被害者、としてだ。

しかも本来彼女はそれに全く係わり合いは無かった。なら、なぜ不本意に関わってしまったのか。

理由は一つ。

恩があったからだ。

「ミネガマ!」
自分の苗字が呼ばれたことによって彼女は声の方向を振り向くと長身の男が息も切れ切れに走ってきた。男は顔をあげると右頬には綺麗にガーゼが貼り付けられている。

「どうしたの?」
「これ、リガキさんがミネガマに渡してくれって。」
彼女はリガキという名前に眉を顰めるという感情を示し、次に袋を受け取った。

「有難う、イナバ」
「どう致しまして、」
イナバという男は唯働きにも関わらずににこりと笑った。

「ミネガマ、今日の夕飯は決まってる?」
「・・いいえ?」
「なら、中華麺食べに行こう。さっきリガキさんから券を貰ったから半額になるんだ。」
嬉しそうに言うイナバに彼女は少し考え頷いた。

「というか、何で使いっぱしりなんて引き受けたの?」
「?暇だったし、それに論文を書いていて忙しそうだったから・・」
あははと人のいい笑みを浮かべて答える男を彼女は、先日まで理解できなかった。

これから語るのは、ありふれた昔話のお話し。

Re;popular story
DATE: 2010/05/04(火)   CATEGORY: 店主の宝物庫
囚われ鼠の昼食。
―君は誰の明日を思って、もしくは、自分の明日を思って、生きてるのかな。

↑re:half feel

今日和。桂月っす。

練り練りを書き書きに変換してみました私であります。

既に頭が燃え尽きそうであります。これ書き終われるかな・・、gdgdしないように頑張ってますが。

最近やたらボカロの合唱に嵌りすぎてます・・!美味しい!!元気もらえます。

・19/25 男子/7人で歌ってみた
・B/★シューター 大合/唱 逃げんじゃねぇ!
・二/息歩/行 合唱 

あともう一曲あったんですが思い出せない・・・・!!

あにまさんとゴムさん最強だと思いました・・エアさんも最強です・・・。

ブラックロックシューターは合唱強いですね・・!ゴムさんの逃げんじゃねぇ!にほれますよ。

そんなこんなで書きながら聞いてます。

で、荒川おpがマリアさんにジャックされたww

もうあの人形はマリアさんのデレなの?つうか、マリアさん何往復してきてるのww

つうか、ステラ千和さんだったwwまさかかwwというか、もう納得ww

P子ちゃんは、もしかしてその、決闘だ!の双子じゃ・・、バナナのスライディング素晴らしかったです。

話は変わりますが、東京のためにちょっと本を売ってきました。軍資金です。

まあ足りないのでコツコツ溜めますが・・・・orz

頑張れ自分!そしてGWが終わっちゃう!と泣き喚くしか・・。

お粗末!
DATE: 2010/05/02(日)   CATEGORY: 店主の宝物庫
緑藻。
「どうぞ。」
そう言って渡されたのは、黄な粉と黒蜜がたくさん掛かったわらび餅だった。

「わお、美味しそう。でも何で?」
「この前朝顔の奴作ってくれたでしょう?それのお礼です。」
「あれ位なら簡単に出来るし、良かったのに。あ、有難う。」
そう言って蕨もちと一緒に渡された爪楊枝で一個突き刺して食べるとひんやりしてて美味しかった。

「美味しいねえ、これ。」
「本当に?」
「本当、本当。ひんやりしてて、つるつるしてて美味しいよ。」
そう言うと彼も同じ小鉢に入っているものを食べて笑った。

「良かったです。」
「何が?」
「これおばあちゃんと一緒に僕が作ったんです。」
「そうなの?」
爪楊枝を口に摘んだまま驚いていた。

「はい、喜んでもらえてよかったです。」
もりもり、と蕨もちを食べていて思うんだけど、いいのだろうか。仮にも駄菓子屋で普通に売られてないものを食べてて。

すると影がさしたので上を見たら営業中かと見えるサラリーマンの人が居た。
「あ、愚痴のお兄さん。」
隣りで呼兼君がそんな風に言った。

「誰が愚痴のお兄さんだっつの・・、何今日営業してないの?」
「いえ、してますよ。」
「・・なんでお前普通に蕨もち食ってのほほんしてんだよ」
「おやつの時間ですし、ここ駄菓子屋の前に家ですよ?」
ああなるほど、と思っているとドカリ、とサラリーマンの人が隣りに座った。暑そう。

「ねえ、呼兼君こっちの愚痴のお兄さんにも蕨もちもらえるかな?」
そう言うと、両者はきょとりとして驚いていた。

「多分まだあるから良いですけど、いります?」
「・・・・貰う。」
お兄さんが答えると呼兼君は家に繋がっている道に消えてしばしして蕨もちを渡す。

「何手作り?」
「僕が作ったんです。」
「・・・お前ステータス高くね?」
「ステータスって?」
「うーんと、基本状態とかそういうのじゃなかったけ?」
「高いですか、僕。」
「高い、高い。」
「言われてみれば、そうかもね。お爺ちゃんとお祖母ちゃん孝行してるし、お礼きちんとしてるし。すごいね、呼兼君。」
「最近帽子被った狐目のお兄さんにも言われましたそれ。」
「・・・・・・、え?」
「え?」

―夏が過ぎ去る頃には朝顔はしぼんでしまうんでしょう。
DATE: 2010/05/01(土)   CATEGORY: 店主の宝物庫
一幕。
―ひい、ふう、みい。

「本当に頂いてもいいんですか?」
男は座布団の上に座り、目の前に出された長方形のお菓子もといカステラを見て確認した。

「ふふ、どうぞどうぞ。この前ヒネズさんが長崎の方へお仕事で行かれた際に買って来てくれたのですがどうも量が多くて食べきれなくて・・。」
男の目の前に座る女性は最後に困ったように笑い言った。

「ヒネズさんはどうも大人買いをしてしまうらしいのですよ。」
そう言って女性の隣りに座る女性より少し上の男性は苦笑した。

「じゃあ、有難く。」
男は軽く頭を下げてそのお菓子を戸棚に仕舞いこんだ。

「それにしてもシロツメから話は聞いていたのですが、本当に書物が大量にあるんですね。」
「はは・・お恥ずかしい限りです。」
そう言いながら男は頭を少し掻いた。

すると庭先でザクザクッと言う音がして其処に居た人々はそちらを見ると礼服を着こんだ男が立っていた。

「タマタツ様。」
女性が驚いたように言うと、タマタツと呼ばれた男は肩を竦めた。

「様はつけなくて宜しいですよ、シロツメお嬢様。」
そう言って縁側に座って靴を脱いで畳に上がって来た彼に家主である男は座布団を進めた。

「随分とお変わり無いようでリガキ先生。」
「まあ、ボチボチといったところでしょうか。」
「はは、ボチボチさえやれれば良いじゃないですかね。」
「ところでタマタツ殿どうして貴方が此処に?」
「ああ。ミカハラの坊ちゃんとシロツメお嬢様を迎えにですよ。」
「・・・迎え?」
「はい。お二方のご両親とオオナキ夫妻の方々が花見をしたいと申されましてね、お互いに社長だの、何だの重っ苦しい関係はドブ川に薙ぎ捨ててシロツメお嬢様の両親として無礼講で行きましょうと。」
「それは・・まあ」
シロツメと呼ばれた女性は嬉しそうに微笑む。

「で、迎えに来た訳なんですけどね・・どうしますか。」
「参ります!兄さんはどうなさいますか?」
「行こう、オオナキ殿に会うのも久し振りだし。」
「では、参りましょうかね。」
タマタツは自分の膝を押して立っていると、シロツメがそんな彼をきょとりとして見ていた。

「どうなさいました、シロツメお嬢様。」
「タマタツ様たちももしよければお花見しませんか?」
「・・・、たちという辺りからヒネズやハチチリたちも入っているのでしょうね。」
困ったと言う具合に方を竦めて彼は少し笑った。

「勿論。」
「秘書に話を通させて見ますが、まあ、彼ら次第ですからそんなに期待してやらないで下さい。」
「はい、あ、リガキ先生もどうでしょうか?」
「今回はご遠慮させていただきます。カステラまで頂いた挙句ご家族水入らずの花見の席で僕が行くとどうも・・ギクシャクしそうなので。」
「・・そうですか、」
少ししょぼくれた様子のシロツメにミカハラは彼女の背中を軽く叩いてタマタツにシロツメを預けた。

「ただ土産を渡そうと思っただけなのに、お暇を取らせましてすみません。」
「いえ、楽しかったですよ。」
「・・、リガキ先生本当に有難うございます。」
「え?」
「あの時から常々言わなくてはと思っていた事なのです。あの時僕がああやってシロツメの大切な世界を壊そうと踏み切れたのも、こうやって今”兄”として隣りに立てていること、新しい家族と楽しく生きていること、全てに礼を言わねばと。」
「僕はそんなに大層な人間ではありませんよ、ミカハラさん。」
「貴方はそう思われていても、僕はそう思ったのです。ですから、礼を言わせてください。有難うございます。」
そう言うと彼は丁寧に頭を下げた。

「もし何かお困りのことがあったらご相談ください。貴方は僕にとっても、シロツメにとっても、恩人ですから。」
「・・・・、出来るだけ迷惑事でない相談をお持ちできるよう善処いたします。」
苦笑しながら言った言葉にミカハラは薄い笑みを浮かべタマタツとシロツメの元に行った。

残ったリガキは手元近くにあった古ぼけた本を見た。

「・・・・・・”恩人”か、」

目元に眩む何重もの世界と世界、万華鏡の如く二度と出会わない風景、そんな美しい世界は昔にあった。

Re;his "past".
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