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DATE: 2010/07/31(土)   CATEGORY: 店主の宝物庫
心配しがりの言い訳。
―寂しがり、貴方を止めれることも何もしなかった私をどうか怨んでいて。

「オツシロっ―!?」
真っ先にカマカブトはへたりと座り込んだ娘の下へと駆け寄り怪我が無いかを調べる。

「お父様、オツシロは平気です。それよりもお父様や叔父様や叔母様たちにお怪我はありませんか?」
「俺は平気だ、トビシマ、ウロコアンそっちは怪我は?」
「息子共々無いみたいだ。」
「私やカズアツもありません。リガキ先生、イナバさん、ミネガマさん、お怪我は?」
「僕は大丈夫です。ミネガマは?」
「平気よ。」
そして、チラリとミネガマはリガキを見た為にリガキも頷いてオツシロの側へ行く。

「それにしても驚きました。オツシロさんは空手か何かを習っていたんですね。」
そうオツシロに声をかけると、彼女はぎくり、と体を強張らせた。それにリガキは小首をかしげてカマカブトを見遣るとじいっとカマカブトはオツシロを見た。

「その事だ、オツシロあんなの一体何処で覚えてきた。」
「あら、お兄様護身術で通わせていたのではないの?」
「通わせた覚えも教えた覚えもない!」
くわっとカマカブトはウロコアンに叫ぶと、ウロコアンはあらまあ、という顔をしてトビシマはやれやれと首をふってみせる。

「・・その、お父様、今まで黙っていた事はお詫び申しあげます・・けれど、私は」
オツシロは俯いたままたどたどしく言葉を紡ぐ。

「私は、何だ!!」
怒声のようなカマカブトの声にびくりとオツシロは体を縮こまらせる。カマカブト本人も気付いていないだろう。

「あの、カマカブトさん」
「何です、リガキ先生!」
「オツシロさんのお話しを聞いてあげてください。」
リガキの言葉にカマカブトは一瞬きょとんとして眼鏡の蔓を指で持ち上げて言う。

「俺は聞いています!」
「いいえ、聞いてはいらっしゃいますが、『心』を荒らさせて聞いてはオツシロさんの話はただの”言葉の羅列”に等しくなります。だから、心を落ち着かせて、聞いて差し上げてください。この通りです―、」
リガキはそう言って頭を下げた。それにオツシロは慌てて頭をお上げください、と言う。カマカブトもそれを見て唖然としていた。

重く瞼を閉じて、カマカブトは前を見た。

「・・・・、すみません。感情的になりすぎました。リガキ先生頭をあげて下さい。」
そう言われてリガキは頭を上げた。

「―オツシロ、」
「っ、はい―!?」
「話して御覧なさい。」
「・・・はい。」

「私は、長女として存外呑気に生きている、と随分前にお店に来られましたお客様が言っているのを聞いて、それで、私でも締めれる時は締めれる様になろうと、思いました。」
オツシロの告白にカマカブトはただ目を凝らして我が娘を見る。

「それをお母様にご相談しましたら、だったら格闘技か何かを学んで精神統一を図ってみては、どうかと言っていただけて、5年程前くらいから空手の、あの川の近いお家の先生にご指導して頂いてもらって、います。」
「五年前・・・・何故、そう言われた事を言わなかったんだ・・・」
カマカブトは肩から力が抜けたのかそう洩らす。

「お父様は―お父様は私にとって眩しいのです。」
「・・・・・まぶ、しい?」
「はい。私はお父様のように真っ直ぐに生きてみたいのです。何事にも正しく、真っ直ぐに、他の方から見れば多少のずれも笑いの種となりましょう、けれどもそうやって頑張って真っ直ぐにあろうとする気持ちが、私には眩しくて、同時にそうありたいと思えるのです。だから、お父様に褒めていただけるのは私にとって嬉しい事としてもお父様を悲しませるような事は―」

「・・・私の”願い”ではないのです。」
「オツシロ・・・・」
「私はわがままです。誰か知っている人は守りたいと思うくせに、その誰かとはまた違った知っている誰かがくれば速やかに中立に立つ。どちらも選べないで、ぐずぐずしていていつの間にか掌から大事なモノが無くなっていて、それを哀しいとも思わず、ただ仕方が無いで納めている、守りたがりなのです。」
オツシロはそう言うと、薙刀の主が割った電灯の破片が落ちる畳の上を気にせず、両手をぺたりと置き両手の上に頭を更に置いた。

鈴虫の音が小さくなっている。

「お父様にご心配やずっと隠していた事この場を借りてお詫び申しあげます。―至らない娘で申し訳御座いません、お父様。」
カマカブトはそれを暫らく見て、やがて破片散らばる中に手を置いていたオツシロの手をとった。

「顔をお上げ、オツシロ。」
カマカブトの言葉にオツシロは恐る恐る顔をあげた。オツシロは父の表情に驚きを隠せなかった。

「お前が至らない娘なら、俺は至らない父親だ。何時も何時も融通の聞かぬ事ばかりを言って・・お前やお前の母さんにも迷惑をかけている。格闘技を習っているのは・・・俺も驚いた。だが、今ではお前の利点となるならそれも良いのだろうな。・・・、さっきは話を聞く耳をもたずにすまない。」
そう言ってカマカブトは頭を下げた。オツシロはそれにまた驚いて顔をあげて下さい、という。

―ぶ、ぶぶん、と異様な音が鳴った。

それは割れた以外の電灯の明かりがついた音だった。

「明かりが、」
「失礼します、明かりは―」
現れたのはキミシカで部屋の惨状におろどいている。それにウロコアンが言う。

「キミシカ、私は箒とちりとりを持って来るから、オツシロとカマカブト兄様の手当てをお願い。」
「あ、はい。承知しました。」
キミシカは来たばかりの道を戻り、ウロコアンは破片を踏まないように廊下へと出て行った。

―”力の儀”成功致しまして御座います。

Re;
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DATE: 2010/07/30(金)   CATEGORY: 店主の宝物庫
心配しがりの札。
―分かっているの、本当は。私がそんな心配を寂しがり貴方が出て行った後でやったってそれは何の意味ももたないんだって。

「停電?」
「配線持たなかったようですね・・。」
カマカブトが電灯を見てそう呟いた声にリガキは周囲を見ながらそう答える。

「こんな中で儀なんか出来るのか?」
トビシマの声があがり、すくっと誰かが立つ気配がした。

「女中に電灯と蝋燭を持ってくるよう言って来る。」
「大丈夫ですの、カマカブト兄様」
「平気だ。」
カマカブトはウロコアンの言葉をぴしゃりと跳ね除けると、障子に手をかけた。

その時だった、ゆらり、と月光に照らされて何かの影が商事の薄い紙の向こう側に浮かび上がる。それは―人影と先の尖った何か。

「危ないッ!!」
リガキが叫ぶとそれに反応してカマカブトは手をかけようとしていた障子から一歩引こうとする。

―ドンッ!!
障子があっさりと破られ現れたのは、黒い鎧と兜や具足、そして薙刀を持った”誰か”だった。

「なっ!?」
カマカブトはそれを視界に認めてそう短く叫んだ。すると、人はゆらり、と薙刀の持ち方を変えひゅんっ!とカマカブトの喉元に切っ先を当てた。

「お父様!!」
オツシロが哀しく叫ぶ中、じりじりとした雰囲気が空間を縛った。月光の明かりが部屋に漏れて、部屋に居たみんなの顔がやっと認識できた中カズアツがその光景を唖然と見ながらポツリ、と言う。

「・・・・まさか、これが”力の儀”?」
「カズアツの言うとおりなら冗談が過ぎるぞ、親爺殿・・・っ!!」
トビシマがカマカブトが今だ喉元に切っ先を当てられている中そう言った。しかしカマカブトの喉元に薙刀の切っ先を当てていた主は一歩引いてカマカブトから大人の一歩くらいの距離を取った。

それはまるで、

くるり、と薙刀が回りカマカブトは思わず目を瞑り周りの者がどうして良いか分からない中リガキを除いてもう一人の主が踊るように薙刀の主の懐に入り込んだ。

薙刀の主も懐に入り込んだのは予想外だったらしく僅かに躊躇した瞬間、その主は踊るように懐へ入った速度と体を捻じ曲げた際に生み出した速度を持って薙刀の主の鎧の薄そうな部分に遠慮の無い拳を叩き込んだ。

薙刀の主は薙刀の柄の部分を畳に当てて反動を抑えた。そして改めて、薙刀を構える。そんな主に遠慮の無い拳を叩き込んだ主―オツシロは静かに相手を見ていた。いや、睨んでいたのかもしれない。

リガキは”獣”が居ると思った。

張り詰めた空気を先に破ったのは薙刀の主だった。構えを解いて、オツシロから少し離れた距離から助走をつけて斜めに薙刀を振るう。オツシロはそれを目で追って、ぎりぎりまで自分にひきつけてしゃがみ込んだ。

薙刀の利点は広範囲に獲物が中る事だろうが、逆に言えば間合いがつめにくい。それを彼女は、オツシロは判っていたのだろうか。彼女はしゃがみ込むと同時に畳に両手をついて低い回し蹴りを相手の腿へと打った。薙刀の主はひっくり返りそうになるのをもう片方の足で後ろへと引きもった。

カマカブトを見ると、眼鏡の奥の目は目の前で行なわれている現状が信じきれないという表情を浮かべていた。

「一つ、一つ、尋ねさせてください。」
オツシロは構えを取ったままおっとりした声で言う。薙刀の主は切っ先をオツシロに向けたままの状態を取る。

「貴方にももし”札”の効能が使えるなら私は札を使います。」
「・・・」
「私の願いは”此処にいる誰にも危害を加えない事”です。御守り頂けるのでしたら頷いていただけませんか?」
オツシロの言葉に薙刀の主は僅かに頭を揺らし、頷いた。

「有難うございます―」
彼女は柔和な笑みを浮かべて礼を述べると、動いた。

薙刀の主はそれに反応してひゅんっ!と薙刀を振るう。彼女はそれを避けずにそのまま突き進んだ。

「オツシロッ!?」
カマカブトは娘の行動に叫んだ。無理も無かった。そのまま行けば彼女の首はちぎることになりそうだ。だがオツシロはただ迷わず薙刀の主の振るう薙刀追い、薙刀の柄を掴んだ。ぱしり、と。そしてお互いに力任せに薙刀を引っ張り合う。

「・・・っ!?」
薙刀の主はぐぐっと力を入れて引っ張るがオツシロも目を瞑りながらそれを引っ張った。

ずぼっと薙刀を引き抜けたのは―

「・・、これで、貴方は戦えません。私の勝ち、ということで宜しいでしょうか?」
オツシロは呼吸を整えながら薙刀の主を見てそう言った。

「・・・・・」
すっ、と薙刀の主は片手を出した。オツシロはそれに薙刀を渡す。

薙刀の主は己の獲物を受け取ると、ひゅんっとそれを振るった。

それは誰でもなく、空気でもなく、電灯に向かってだった。

「えっ?」

―パリン、と電灯が切っ先にあたり割れる音がして思わず部屋に居た皆が目を瞑った。

恐る恐る目をあけるとそこには破れた障子と割れた電灯、そして畳の上に座り込んできょとんと周りを見遣るオツシロと月光の光だけがあった。

―”誰か”を守る為にしか使えない。

Re;Love before being easy.
DATE: 2010/07/28(水)   CATEGORY: 店主の宝物庫
心配しがりの過保護。
―嗚呼、寂しがり貴方は今ちゃんと生きていますか?野犬に襲われていませんか?食べ物に困っていませんか?雨露に濡れて風邪を引いていませんか?

昨日の夜のように膳の上に料理が並んでいる。リガキはそれを見て、ふと飯をついでくれている女中に尋ねる。

「あのすみません。」
「え、あ、はいなんでしょうか。」
「キミシカさんが見えませんが、何か?」
女中は茶碗を此方に渡しながら「ああ、」と言って微笑む。

「キミシカ様でしたら、先ほど配線業者の所へ。」
「配線業者・・?休暇中ではないところが合ったんですか?」
「良くは判りませんが・・、私はそのように聞いております。」
「・・・・そうですか。すいません、突然。」
「いいえ。あ、カマカブト様―」
女中は出ようとして、ふと何かを思い出したのか、カマカブトの下へ行く。

「・・?どうした?」
「これを旦那様からお預かりしております。」
渡されたのは一枚の書道の時に使うような紙だ。

「・・親爺殿から?」
「はい。皆様で御覧になられるようにと。」
「分かった。下がって良いぞ。」
「はい。」
パタン、と小気味いい音がして閉じられた襖の音を聞いてカマカブトは預かったものを見て、ウロコアンの方を見た。

「ウロコアン、」
「何でしょう?」
「食べ終わったら来い。多分”三練”の次の儀の事だろう。」
「あらまあ。お父様も夕餉時がお好きだ事。」
「・・・・良いのか?」
「そんなに怖い顔なさらないで下さいな。畏まりまして。」
ウロコアンのそれを聞いて、カマカブトは食事を再開する。

―じじじっ、 やはり配線が不味いのか、明かりがそんな音を立てる。

「でもまあ弱ったな。」
隣りを見ればトビシマがちろり、と視線をくれる。
「弱った、とは?」
「そのままですよ、先生。次の儀を親爺殿は”力の儀”と言っていた。」
「ええ。」
「弱りました。」
「えぇ?」
リガキは自分でも情けない声を出していると思う。それを聞いたトビシマはくつくつと笑い説明し始める。

「”力”と露骨な言葉も入っていますし、これは”力”を要求されていると俺は見ているんですが。そんな”力勝負”をする猛者はここにはいませんよ。」
リガキはそう言われて、はたと止まった。そういえばそうだ。何しろ、オツシロは女性であるし、カズアツはお世辞にも力勝負が出来るようには見えない。

「父さん。」
ウタゲが話しを聞いていたのか、少し咎めるようにトビシマを見た。トビシマは息子の言葉に肩を大業に竦めて見せてリガキに尋ねる。

「先生腕っ節はどうです?」
「・・・はあ、あるとはいえないような、」
「ふむ。かくいう俺もありません。本気で危なくなったら助けに入る、という選択でも設けておこうかと思ったんですが・・。」
「ああ、なるほど。けれどそれは儀を邪魔したという事になりませんか?」
「なりますけども、命にはかえようがありません。」
「いざと、なったらですね。」
「はい。」

食事を終えてウロコアンがカマカブトの下に行くとカマカブトは紙を開いて読み出す。

―じじっ、 明かりが特有の電気音を奏でる。

「―本日午後二〇:○○丁度に”力の儀”を開始するものとす。儀に挑戦するものは、”一度でも攻撃を放ったもの”。ここでの札の上限は”逃げる”以外なら全て良し。以上、ミツヨシ―。・・・・八時?おい、今何時だ?」

―じじじじじ、白熱灯が連続的な音を立て始める。

ミネガマが長袖の腕時計を見て呟く。

「丁度八時になったところみたいです。」

―じ、 

光が消えた。

Re;Entirely in the case of a festival of the regret.
DATE: 2010/07/25(日)   CATEGORY: 店主の宝物庫
心配しがりの泣き言。
―あちらにもこちらにも不安が撒いてあって私は何処を歩めばよいのでしょう。

「”力の儀”って一体何をするのかしら?」
「さあね。分からないけど、オツシロ姉さんか俺のどっちかでやらなきゃ成らない、それは決まってる事だよ。」
「・・そうね。」
オツシロは眉間に皺を寄せながらお茶を啜って言うカズアツに頷いた。カズアツは話が終わったのを確認すると立ち上がってふらりと何処かへ行く。相変わらず人を寄せ付けたがらない子だとオツシロは思う。

”考の儀”をウタゲがやってくれた事でオツシロはカズアツへの負担の重さやらは軽くなった。人の気持ちを鋭く分かる彼だからこそ、真っ先に名乗り上げてくれたのだろうと思う。自分は真正面から考えすぎて余計物事をこんがらがらせてしまうし、カズアツは少し神経質だった。

「―”力の、儀”」
オツシロは呟いて障子向こうで落ちる楓の葉を侘しいと思い目を伏せた。


「どうですか?」
「・・、鼠に荒らされているようですが配線は生きているみたいなので大丈夫でしょう。」
梯子から降りながらリガキはキミシカに伝えると、キミシカはタオルを渡してきた。リガキはそれを受け取って顔を拭く。埃っぽかったのだ。

「道理で昨日ガタガタと五月蝿かったのか。」
ずり下がっていた眼鏡を押し上げて戻したカマカブトは電灯のスイッチを消しながら言う。
「そんな音してたか?」
寝癖のような頭に手をやり、不満げな兄を見遣るトビシマにカマカブトは呆れた表情をした。

「お前は下戸の癖に焼酎を飲んでぐうすか寝てたから気付かなかったんだ。」
「俺は水だと聞いて女中から貰ったんだ。というか、鼠が住み着くとはこの家も古くなった証と言う訳か。」
「馬鹿言え。猫でも飼えば鼠取にでも良いんだが・・、鯉を食っちまいそうだな。」
「親爺殿に大目玉を食らうぜ、兄貴。」
「はあ・・・・、配線の方は修理業者にでも頼んだ方が良いな。」
「直ぐに来られるでしょうか?」
キミシカは困った顔をしながら言う。

「世間じゃ祝日だし、修理業者も休みじゃないか?」
「多分そうだと思います。」
「直るのには結構日がまたぎそうだな・・・・。一応このままでも持つんですよね?」
「大元は未だやられてませんから、一時的な停電は起こるかもしれませんが。」
「鼠捕りでも仕掛けておくか・・。何処にあったっか・・」
「あ、トビシマ様ご案内します。」
パタパタ、と遠ざかっていくトビシマとキミシカを見送りながら居間へカマカブトと戻る。

「それにしても客人だというのに、あんな真似をさせてしまって申し訳ない。」
「いえ、構いませんよ。退屈していた所でしたし。」
屋敷の中を放浪していると、梯子に登って屋根裏を見るトビシマとそれを見守るカマカブトとキミシカにあったのだ。

「暇を潰せるような物が何もありませんからね、この家は。」
「そうなんですか?」
カマカブトは苦虫を食べたような表情をしながら続ける。

「ええ。昔から”家族と楽しめる”ような物は何もありませんでした。そこだけは変わっていない。ウタゲが暇を潰すのが得意ではない、と言っているのを聞いたことがありますがあれはウタゲが悪いんじゃない。ここには本当に”何も無い”だけです。」
「・・・皆さん小さい頃は一緒に遊ばれたりとかは?」
「無いですね。今思えば、昔から意見が被るなんて事がほとんど無い兄妹でしたし。」
居間の障子は僅かに開いていて、オツシロがこくりこくりと船をこいでいた。

そんな様子を見てカマカブトは少し溜息を吐いて言う。
「我が娘ながら羨ましい性格をしています。」
「?それはどういう?」
「・・、俺はミツヤの長男ですからね。トビシマやウロコアンに馬鹿な真似だけはさせないように自分が手本となって真っ直ぐ生きてやろうと思いました。」
「手本。」
「母がウロコアンが小さい時に亡くなってしまって、あいつらに色んな事を教える人間がいなかったんです。だから、何事にも正しい様に生きてきましたが。」
親の心子知らず、というように、兄の心を弟や妹は知らずといったところだろうか。

「トビシマが家出をした時にも大層肝を冷やしたものです。生きて帰ってきただけ未だ良いですが。」
そばにあった座布団を二つに折ってカマカブトはオツシロの頭をそこに寝せた。

「では、カマカブトさんはトビシマさんがお嫌いですか?」
リガキがそういうと、カマカブトはふっと苦笑した。

「それがままならないのが兄妹なのです、リガキ先生。嫌いになろうと思っても、あいつ等のいいところが分かっていて、嫌いに慣れないし、俺のように真っ直ぐがむしゃらに正しいように生きようとする奴からすればあいつらの生き方ほど羨む物もありません。」
「失礼な事を聞いてすみません。」
「いえ。お相子ですよ。」

―ああ、恐ろしい顔をした鬼婆が追っ掛けてくる。

Re;I fall into the dark of the monologue.
DATE: 2010/07/22(木)   CATEGORY: 店主の宝物庫
貴方はこれを他力本願と笑うだろうか。
―最初の札はきっと誰かを守る為に使いたかったんだ。

「―僕の答えは『この部屋にいたのが1人だけなら部屋から普通に出て行った』そして、『2人居たならどちらかが出て行ってもう一人は残ったまま』です。」
大人たちと、残った成人者そして、イナバは驚いた表情を見せた。

「ほほう、だがウタゲ答えがなぜ2つもあるのかの?」
ミツヨシ老は笑みを崩さず、弟子を見守る師匠のように優しく尋ねた。それにウタゲは微笑を返して答える。

「―それはお爺様が良くご存知ではないかと。」
「・・というと?」
「この”問い”はお爺様が作られたのですよね?」
「いかにも。」
「なら僕は”答え”を果たしました。なぜなら、手紙にもこう書いてあったからです。」

「”答えれば”次の儀へ進めれるものとする―と、」
沈黙が流れたのに、両者はただ顔に笑みを貼り付けたままだった。故に恐ろしかった。

「良かろう。」
その言葉にウタゲはミツヨシ老を見た。それをミツヨシ老は確認してから続ける。

「”考の儀”ウタゲ、成功とす。キミシカ、ウタゲの札を。」
「はい、旦那様。」
折り目正しく頷き続いてウタゲの側へ行き最初に札が納められていた箱の中へと札が収まった。

ウタゲはそれを見て、ふう、と一息を着いた。

「それにしても、ようやった。ウタゲ。」
「有難うございます、お爺様。」
オツシロやカズアツもどこかほっとした表情を浮かべる中トビシマがすっと立ち上がってウタゲの隣りへと行った。

「一つお聞かせ願おう、親爺殿。」
「なんだ、トビシマ?」
「この”問い”には一体何の意味があられたのか。」
「では逆に聞こう、トビシマ。お前はコレに何の”意味”が在ると思う。」

「・・・・・、”裏切り”」
トビシマはぽつり、とそう呟いた。それにミツヨシ老は満足そうに笑い頷く。

「それも又一つ。お前の息子の答えは実に優しく出来ておる。」
「褒めて頂いていると取って置きましょう。」
「そうすると良い。さて、・・・・次は”力の儀”だったか。まあ、未だ2日目。また夜にでも説明するとしよう。」

ミツヨシ老がそう言うと背後から光が漏れた。キミシカが襖を開けていたからだ。リガキはその光景を見て、箱に収まった札の願いに馳せた。


「そっか。そういえば、答えを答えるんじゃくて、答えればって書いてありましたね。」
イナバはふむふむと納得したという表情を浮かべていた。それにリガキは苦笑した。

「そう。だから、ウタゲ君は答えた。だけども、何とも捻くれた問題だよ。」
「あのリガキ教授、トビシマさんが言っていた”裏切り”って何ですか?」

「・・・そのままの意味だと思うよ。」
「その、まま?」
「うん。あの考の儀というのは・・・・裏切りの際の対処じゃないのかな。」
「え?」
心根の優しい青年は顔をゆがめた。

「鍵は掛かっていたか、いなかったか。これも一つの論点だろうけど。もし内側から、もしくは掛かっていない、とすれば何人だろうが自由に出入り可能だね?」
「はい。」
「けど、もし掛かっていて尚且つ多人数の場合。どうして彼らはそんな事になったんだろう?」
「それは・・、諍いがあったからですか・・?」
「かもしれない。だが、もし諍いがあったとして、鍵をかけた外側に人は絶対に居る。なら、その人物に出してもらう為には鍵の内側、鍵を閉められ閉じ込められた中の人は―」

「仲間を裏切るしかない。」
今まで議論していた以外の声が聞こえたと思いそちらを向けば、ミネガマがお茶を啜っていた。

「それにしてもむごいですね。それよりももっと悪い展開の”答え”もあれにはあった。」
「悪い展開?」
「全員出られず仕舞い。そんな中でウタゲ君の答えは本当に優しい物だった。さしずめこの”考の儀”は”人物の人となり”を知るのに良いもの、って気がしましたけど。」
ちろり、とミネガマはリガキを見てだれに向けて言うわけでもなく言葉を落とした。

「・・御当主はそれの為にやったんですか?」
「どうだろう、僕等にも”札”があればよいのにね。」
にこり、と笑うリガキにミネガマは溜息を漏らした。イナバはそんな二人の真ん中に挟まれ、ただ苦笑した。

Re;Please input the sentence that I want to translate into here.
DATE: 2010/07/21(水)   CATEGORY: 店主の宝物庫
守りたがりの札。
―どうしようもない自信の無さに終止符をうった。

「”考の儀”の答えを、ですか?」
「うん。これ以上の考えは思いつかないしお爺様に聞いていただこうと思うんだけど、良いかな?」
「では、直ぐに旦那様にお伝えして参りますので朝食を取られていてください。」
「分かった。頼むね、キミシカ。」
「はい。」
キミシカはウタゲにご飯をよそうと静かに席を立った。ウタゲはよそわれたご飯から出る湯気を見ながらパクリ、とご飯を食べた。

「リガキ教授」
リガキは呼ばれたほうを向くと鮭の塩焼きを黙々と食べながらミネガマが呼んだらしかった。

「何だい?」
「あの”問い”は一体何を意味しているんでしょう。」
「意味?」
やはり彼女は切れ者かな、とリガキは青菜の浸しを食べながら思う。対する彼女は、こちらがすっとぼけてるというのを分かってか、何か不味い物を見たような表情をして味噌汁を啜る。

「1つの問いに決めれない複数の答え、あの問いに”明確な答え”なんてありはしない。同時に言えば―返答する側の答えが気に入らなければ不正解にする事も可能。あれはそういう”問い”でしょう?」
「まあね、だけど、こういうこともいえるよ。」
「?」
「”答えなんて在りはしない”」
「・・それじゃあ、何で御当主は”問い”なんて用意したんです。」
「僕も歳を食っていないからそこまでは分からないけど、得てして歳を食った人と知恵比べというのはいささか分が悪い気がするなあ。」
溜息を吐きながら味噌汁を啜るとアサリの出汁がよくきいて美味しかった。

「一つ言えるなら、部外者は口を閉ざす、これに限るという事だよ。」
ミネガマは一度リガキを見て、静かに瞼を下ろした。

かた、と障子が動くと現れたのはキミシカだ。

「皆様、お食事が終わり次第奥間へお集まりくださいませ。」
「何だ?」
「ウタゲ様が考の儀の答えあわせを為さいます。」
「良いのか?ウタゲ兄さん。未だ半日しか経ってないぜ」
「構わないよ、カズアツ。」
ウタゲがそう言うと、カズアツは微妙な表情を浮かべ食事を再開する。そんな中すっとトビシマが席を立った。

「おい、トビシマ何処へ行く。」
「縁側で煙草を吸ってくる。皆食べ終わったら声をかけてくれ。」
ひらひら、と手を振るととすん、とトビシマは障子を閉める。

「自由な奴め、」
「あら、カマカブト兄様はそこが羨ましいんでしょう?」
「ついでに言うならお前の豪胆さもな。」
楽しげに笑って言ってみせるウロコアンにカマカブトは悪態を吐くように言うとウロコアンはそんなの微塵も気にせず更に笑った。

食事をとり終わり、奥間へ行く道すがらリガキは障子へと目をやる。おんぼろ、とまではいかないが少しぼろっちい家に人が7人ほど。だが、玄関先で一人が何処かへ移動している。

リガキは奥間へと入った。前と同じようにミツヨシ老は細面に柔和な笑みを浮かべて座って居た。これがあの捻くれた問いを出した人物とは思えないだろう。

「おはよう。さて、”考の儀”はウタゲが受けたのか。」
「はい。」
「宜しい。で答えは?」
祖父の答えに孫たるウタゲは彼に負けないくらいの笑みを浮かべて、懐から札を出した。

「今札を使う事は許されているでしょうか?」
「あの紙に掛かれてあった事が上限じゃて。」
「なら、僕は札を使おうと思います。」
「ほほ、で、何を願いと?」
老人は楽しそうに笑いウタゲに尋ねる。ウタゲはすうと目を細めて、無表情になった。それにカマカブトやウロコアン、オツシロやカズアツは驚いた。

老人の問いを流したままウタゲはすっと立ち上がり、トビシマの方を向いた。

「父さん、一つだけ尋ねたいことがあります。」
「・・・何だ?」
「僕の考えている事は中っているのでしょうか。」
「俺を見上げてくれるな、ウタゲ。お前の父はそれほどに出来は良くないし、お前の気持ちを読めていないさ。」
「いいえ。出来など問題ではない。そうでしょう?例えいくつ答えがあっても、その答えが真かも分からなければ出来なんか意味をなしません。それに―」
そこで、ウタゲはやっと先ほどまで浮かべていた笑いを浮かばせた。

「僕と父さんは似ている、それは皆さん口を揃えて仰ること。違いますか?」
その息子の言葉にトビシマは寝癖のような頭をガリガリと掻いて一息ついて言う。

「そうなさい。」
父のそれを聞いたウタゲは静かに頭を下げた。

「はい、父さん。」
ぐるり、とウタゲは座布団へとすわり祖父を見据えた。

「僕の答えは―」

―自信が無いからこそ、あの時何も言えやしなかった。

Re;The label which was completed with a feeling of the regret.
DATE: 2010/07/18(日)   CATEGORY: 店主の宝物庫
守りたがりは空を見ながら呟いた。
―寂しがり、君はどうして家から飛び出したの。

ミツヤウタゲはこれまで彼の父の知り合いに出会えば必ずといっていいほど皆口を揃えてこう言った。

『父親に似てしまったのね。』

それはウタゲには残念極まりないと言われているようで、その言葉だけが唯一彼の機嫌が悪くなるものだとは彼らは知らないのだろう。

ウタゲは端から見れば穏やかに見えるのだという。ウタゲ自身にはそんなつもりはなかった。だけども、そう言われてからというもののそうしていた。面倒事はどうにも苦手だったのだ。

小さな子が泣いているのを慰めるのも、同級生たちがつまらない事で小競り合いになっているのを止めるのも、苦手だった。そんな時にウタゲはふと、父の気質を受継いでいると思うのである。

だが、それを億劫になんか思った事は無かった。ただ人は外面ばかり見すぎているのだと思う。

父が本当は誰よりもこまめで、飄々としているのはカマカブト叔父上にも肩を張らずにそんな風にしていたらいいのだと言う父なりの暗示で、軽口を叩いては自分が悪役のように振舞うのは直ぐに相手を混ぜ返すような事を言ってしまうウロコアン叔母様を庇っているからであって。

父は不器用なのだと、母はそう言って良く笑って言い直す。
『ウタゲ、お父さんやお父さんのお兄さん、それにウロコアンさんたちはとても不器用だからお互いにお互いの事素直に聞けないの。』
そう言ってパンッ、と洗濯物を干す母の後ろ姿を思い出した。

ウタゲはキミシカから貰った二枚の手紙を見た。

父は相続についてウタゲに全てを任せた。祖父のような仕事をやりたいと思えば、相続を狙いにいけば良いし嫌だと思えば切り捨てるも良し。ウタゲは正直言って興味が湧かなかった。

だがもしウタゲが仮に”相続”が出来たならば、父への見方は何か変わるのだろうか。そこまで思ってウタゲは池の水面を小波を立てて蠢く鯉たちに麩を撒いた。

「あれ、ウタゲ君?早いんだね。」
声がかかり顔をあげると、背の高い青年イナバが居た。

祖父がこの儀にわざわざ呼んだリガキ先生という、大学の先生であり幾つかの事件に関わった人の生徒だと紹介されたイナバを、ウタゲは少し同族に近い感じがしていた。

「おはようございます。朝食を取ったら直ぐにお爺様に考の儀の事についてお話しようと思って、考えていたら手持ち無沙汰になってしまったので。」
「答え分かったの?」
「『僕なり』の答えは。」
にこり、と曖昧に笑うウタゲに不思議そうにイナバは首を傾げた。

「唐突な質問で申し訳ないのですが、イナバさんは僕と父は似ていると思われますか?」
「え?うーん・・・、未だトビシマさんと話して居ないから良く分からないけど、雰囲気は似ていると思うよ?」
「そうですか。」

一匹だけ墨色をした鯉が麩をぱくりと飲み込んだ。お前だけ何故色が違うのだろうね。

「あ、でも両親や血縁の人と何処かしら似ているって良いよねえ。前に、ええとワニイっていう友達が居るんだけど『ああ、自分はこの人から命を貰ったんだなあって思う。』って僕言ったんだけど、小突かれたんだ。」
ウタゲは少し目を見開いて直ぐに小さく笑った。

心が穏やかになるのも才能だろう。きっとワニイ、という人もこの穏やかさを隠したくて小突いたんだろうなとウタゲは思いながら池の淵から立ち上がった。

「・・そろそろ朝食の用意が出来ていると思います。戻りましょうか。」
「あ、そうだね。」

Re;
DATE: 2010/07/16(金)   CATEGORY: 店主の宝物庫
険しい岩山を人見知りは歩む。
―畜生、離せよお!
―五月蝿いわ、小坊主めが。

イナバは?マークを大量に頭上に残しながら隣りにいるミネガマに尋ねる。
「ミネガマ、これって本当に問いなの?」
「問いよ。ただし答えが曖昧な。」
彼女はあっけらかんと答えた。他の三人の成人者たちはじっと紙を見ている。しばらくしてウタゲがひっそりと言う。
「この儀、僕がやってもいいかな?」
「分かったの、ウタゲ?」
オツシロの感心するようなそれに彼は首を横に振った。

「まだだけど、失敗したとしても二人には迷惑はかからないし、気長にやるよ。」
ウタゲのその言葉を聞いてカマカブトとウロコアンが静かに溜息をまじえて俯いた。
キミシカはウタゲをみて頷き、
「では、ウタゲ様が考の儀と言う事で、以降は変更はできませんが宜しいでしょうか?」
ウタゲは最初に見たときと同じ穏やかな笑みを浮かべて、

「―はい、」
静かに頷いた。

ウタゲはキミシカから手紙の一枚目も一緒に貰うと机の前に座り静かに考え込んでいた。

「それにしても親爺殿も性格の悪い、」
トビシマはお猪口に入れた水を煽りながらそう言う。
「トビシマ、」
それを聞いたカマカブトが叱るようにトビシマの名前を呼んだ。

「事実だ。」
「トビシマ兄様の意見にしては納得できますわね。」
「はあ・・、というかリガキ先生俺には良く分からないのですがあの問いには”答え”があるんですか?」
カマカブトは眼鏡の蔓を押し上げて尋ねた。彼が言うのも尤もだ。不明瞭かつ不安定。それがあの問いを成している生成物だ。

「はい。おそらく、答えが複数。」
「答えが、複数?」
カマカブトは呆気に取られてこちらを見ていると、お猪口の水をウロコアンにもやりながらトビシマはカマカブトに言う。

「兄貴は真正面すぎるから、真正面以外が見えない。」
「あら、トビシマ兄様今日は素晴らしく冴えますね。」
そんな弟と妹を疎ましい目でカマカブトは見る。

「そういうウロコアンお前は肝が据わりきりすぎて息子を怖がらせているだろう。」
リガキはトビシマのその言葉に少し驚いた。だが、ウロコアンは何処吹く風だ。

「あの子は難しい性格ですもの。まるで小さい頃のカマカブト兄様をみてるよう。」
「ああ、確かに。」
「お前等は・・・」
「けれど、まあカズアツの悩みの種な事は否定しません。」
「お前にしては殊勝だな。」
「カマカブト兄様何時までたっても猪突猛進なウロコアンでは無いのです。話を戻しますが、リガキ先生答えが複数と言う事は、”それら全て”を答えきって了ということでしょうか?」
「・・・、未だ分かりかねます。」
「そうですか・・。というより、トビシマお前ウタゲに何か言ってやらなくて良いのか。」
カマカブトにそういわれトビシマはまどろっこしそうに彼を見た。

「一体何を?」
「ゆっくりと考えろ、とか父親として、だ。」
「そんなのはあいつには必要ない。」
「お前と言う奴は・・弟ながら分からん。」
がっくりと肩を下ろすカマカブトにけらりとトビシマは笑って見せた。

「俺も分からないのに兄貴が分かっていたらそれは驚きだ。」
「はあ・・」
「でもトビシマさん、本当に良いんですか?」
「リガキ先生まで、随分とウタゲは見くびっていられるとみた。」
「いえ、そうではないのです。ウタゲ君自身は”何か”に気付いていると思います。」
それを聞いてカマカブトとウロコアンは驚いた表情を見せた。

「前言撤回です、何故そう思われました?」
「これは僕の推測ですが、ウタゲ君はオツシロさんとカズアツ君の手本となろうとしているのかと思ったのです。」
「手本、とは?」
カマカブトが言う。

「これは少し曲がった知恵が必要だと思います。だからこそウタゲ君はオツシロさんやカズアツ君を更に悩ませるのだと思ったのでは?」
「ふふっ、あはは!」
けらけらと笑うトビシマにカマカブトはぽかんとそんな弟を見ている。そして又お猪口を煽ってウロコアンが遅れて『あら、これ焼酎だわ。』と言った。

そして一通り笑い尽くしたトビシマはぐでん、と床に突っ伏した。

「相変わらずお酒の弱い人。」
「・・・・・はあ、」
ウロコアンはそう言って又焼酎の入った酒瓶からお猪口に注いで、カマカブトは溜息を漏らしトビシマの首根っこを掴んで部屋へ連れて行った。

リガキは寄りかかっていた襖の絵を見て、困ったように笑った。

Re;secret child.
DATE: 2010/07/16(金)   CATEGORY: 店主の宝物庫
人見知りの三つ目の願い事。
―栗は拾えても、きっと運までは拾えない。

夕食に出された品々を見ながらリガキは流石だ、と思う。質素ながらも一品を揃えている。

「ミツヨシさんは、あちらでお食べに?」
ふと席にミツヨシ老が居ない事に気付いてリガキはキミシカに尋ねた。

「はい。旦那様は奥の間でお食事を。」
器に櫃に入った炊き立ての米をよそいながらキミシカは答えた。

周囲を見渡せば、イナバが秋刀魚の身をほぐしていたりミネガマは渋い顔をしながらこんにゃくと青菜の白合えを食べていた。リガキはキミシカによそってもらった米を食べながら自分の感じている”違和感”は一体何なのかを考える。
彼ら家族が相続権を巡っているならあまり仲の良くない兄妹が集まった理由を頷ける。だが、残りの違和感をどうにも解消する事が出来なかったのだ。

リガキは損云々の話をした時に真っ先に兄妹たちから批判を受ける事を覚悟していた。しかしリガキの予想に反してそんなのは微塵も起きなかった。どうしてだ。彼らはあくまで”相続権”を争いに来ているんじゃないのか。それとも自分達の子供が儀式を成功しないわけがないという”自信”があるからなのか。

かと、小さく障子が動いてそちらをみると女中がいた。
「あの、キミシカ様。」
「はい?」
名前を呼ばれたキミシカはそちらを振り返り何かをキミシカに渡す。

「これは?」
「旦那様からです。お食事が終わり次第キミシカ様に開けて頂いて皆様にお話しするように、と。」
キミシカは宛名も何も無い白い封筒を不思議そうに見た後『分かりました、』と頷いた。女中は大役を終えたようにほっと一息を着いて下がった。

その光景を見ながらリガキはある人を思い出す。
『人は利益を生むために見返りを要求する。それは自分への利益が無いからという事もあるけど本当は―』

その人の側では良く鈴の様な音がした。鈴はつけていないとのことなのに、だ。

食べていた煮物の器が空になったのをみてご馳走様、というと他の面子も食べ終わったらしくお茶を啜っている。

「それでキミシカ、お父様は一体何を貴方に?」
ウロコアンが尋ねるとキミシカは首を傾げて言う。

「封筒自体には何も書いていらっしゃられないので、中身を見ても宜しいでしょうか?」
「急かしてしまったわね、御免なさい。どうぞ、開けて頂戴。」
「はい。」
キミシカが綺麗に封筒の先を破ると二枚の便箋が出てきた。そしてその一枚を開いてキミシカは音読し始めた。

「夕食を取ってすぐだが、三練を始める。三練最初の儀は考の儀。二枚目に書いてある問いに答えれば次の儀へと進めれる。なお、この儀を行なう者はこの問いを見てから決めても良しとする。そして先ほど三人に渡した”札”の使い道は『問いの答えのヒントを得る』までが上限とする。時刻は三練の儀式の機関一杯ならいつでも構わない。以上―ミツヨシ。」
読み終えたキミシカは二枚目を一瞥して近くに居たオツシロに渡す。オツシロは渡された便箋を見たのだろう、驚きと困った表情を浮かべて他の二人に見せた。

「・・・え?」
「何だこれ、」
二人は呟く様に言うと、ウタゲはキミシカの方を向いて尋ねる。

「父さんたちにこの問いを言ってもいいのかな?」
「ヒントを得る、ということは他の皆様にも言わないと無理ですし、そうではないかと。」
「オツシロ姉さん、読んでもらってもいい?」
「ええ、分かったわ。」

「部屋に人が居た。鍵はかかっていた。ある日部屋の扉が開いていた。さて、部屋の中の人はどうなっていたでしょう?」

『―本当は試しているのかもしれないね。その人が信用に足りるか、どうかを。』

Re;The wish that I prayed for last why the shyness left the happy house be granted.
DATE: 2010/07/11(日)   CATEGORY: 店主の宝物庫
私は驚くほどに滑稽に出来ている。
今晩和!

ゴッドイーターのhp覗いたら思わず叫んだって言うさ・・。

ゴッドイーターバースト秋に発売だそうで、おめでとう御座います!!キャー!

PVも見たんですが・・新キャラは女の子・・男の子・・・どっちだろ?

バーストに向けて色々良くなる所とかもあるみたいですね・・。

とりあえず私はうちのこがバーストでもへっぴり腰ながらに皆と戦う姿を想像しています!

no6で通しますとも!あはは!

ていうか・・PVみた人なら判るんじゃないかと思うんだけど・・え、リ・・リンドさん生きてるるる?

え、ええええ?

いや、ちょっとは思ってた。

どうなんだろう・・とりあえずバースト楽しみです!GE製作部の皆様ファイトです!

あと、昨日図書館ですごい遅れてるんですけど、柳広司さんのジョーカーシリーズを借りてきました。

やっばいね!!

時代は真珠湾戦争とかの辺りで、スパイ物です。

結城中佐と呼ばれる、元凄腕スパイな人なんですがこの方が設立したスパイ養成学校通称D機関、このDにも色々意味があるのです。のスパイの青年達のお話しです。

なんていうかもう・・やばい、いい意味でヤバイ。

とりあえずジョーカー・ゲームの三好さんは反則だったと思います。ええ。

全部が短編なんですが、そっちの方が逆にこの場合は味が出てて良いと思いました。

結城中佐が一応全てに何らかの形で出てはいるんですが、存在感はバッチリです。

そして、短編の主人公たち、ほぼD機関の生徒たちですが・・この人たちは肥大化した自分の自尊心だけでスパイをやってます。なんかもう、そこまで行ったら逆にすごいよねっていう。

出来なければいけない、ではないんです。出来なければ成らないと、彼らは思ってます。

だから難問にもスイスイ答えて行きます。本当はまるし、本の賞で2位だったんですよね?それも頷けました。

久々にいい本を見ました。

それでは、明日バイトなのでひいひい行ってきます!合言葉は新レジ怖い!
DATE: 2010/07/08(木)   CATEGORY: 店主の宝物庫
人見知りの二つ目の願い事。
儀式は今日の夕刻から始めるとしようかな、というミツヨシ老の言葉によって場は一旦開けた。

「要するにウタゲ君達の成人式って事じゃないの?」
イナバはミネガマと縁側で涼みながらそう尋ねるとミネガマは有り得ない、という表情で此方を見た。

「成人式ならもう少し感慨深い物があってもいい気がするけど?」
「じゃあ?」
ひらり、と落ちて行く紅葉を彼女は親の仇でも見るように睨んだ。

「実質的な相続権争いよ。」
「・・・相続権って。」
「ミツヤ家の人脈を喉から手が出るほど欲しい人なんて腐るほど居るのよ。だからこそ、相続と言う形でそれを防ぐ、ある意味真っ当だわ。」
「けど家族間で争うっていうのは・・」
「無い話ではないでしょう。それに私やイナバが口を挟む理由は無いわ。」
「だろうけど・・、」
すると人影が地面に揺らいで振り向くとウタゲが申し訳無さそうに微笑んでいた。

「すみません、お話中。」
「何か御用ですか?」
「はい。良かったら庭に行かれませんか?」
「庭、ってさっきウタゲ君が鯉に餌をやっていたって言ってた?」
「はい。夕食までの暇つぶしにでもなれば良いなと思って。」
「でも、」

彼は儀式の、いや、相続の候補の一人なのだから何か色々考える事があるんじゃなかろうかとイナバは思った。

「儀式の事でしたらご心配なく。あまり儀式については考えていないんです。だから正直言うとリガキ先生の発案には助かりました。オツシロ姉さんやカズアツにも迷惑をかけずに済みますから。」
「・・でも、」
躊躇したイナバの腕をミネガマが引きウタゲに尋ねる。

「こっちの方が貴方にとっては良いのよね?」
「いつも通りが僕にとっては一番緊張しないので。」
あはは、と苦笑してみせるウタゲ。
「・・分かった、じゃあ案内してもらっても良いかな。」

「勿論です。あ、カズアツ、お前もいかないか?」
「行かない、」
そう答えて座っていた座布団を二つ折りにすると彼はそれを枕にしてそのまま寝る体勢に入った。

「分かった。父さんたちが探していたら庭に行っていると伝えておいてくれ。」
「・・・、」

パタン、と小さな音をたてて閉められた襖の向こう側は―分からない。

小さな池の中には四匹の鯉がすいすいとよどみなく泳いでいた。

「綺麗な鯉だね。」
「そうね。」
「鯉の世話はウタゲ君が?」
「いいえ、普通はキミシカがやっていてくれたみたいです。僕は暇を潰す事が苦手なのでその朝と夕方の餌やりの仕事をキミシカから貰っているんです。」
「何で一匹だけ色が違うのかしら?」
ミネガマの言うとおりで、一匹だけが鮮やかな墨色をしている。他の鯉は朱色と白の模様だ。

「それが良く・・、鯉を放したのは祖父だと聞いてるのですが、どういう思惑があったかは。」
すみません、とウタゲは申し訳無さそうに誤った。

「いえ、こっちこそ突然ごめんなさい。」
「あれって、納屋かな?」
イナバが指した方向には古いかやぶきやねの廃屋があった。突風でも吹けば一網打尽そうな。

「凄く古そうだけど?」
「ウタゲ君、あの納屋って居間も使ってるの?」
「え?あ、はい。中に入ってみたことはありませんが、キミシカが時たま入っていくのを見かけましたから多分物置か何かに使われているんだと思います。」
中は意外と新しいらしいんです、とウタゲは言う。

「そうなんだ・・・、」
そこでイナバはまたミネガマがどこかを見ているのに気付いた。

「ミネガマ?」
「何?」
「何かあったの?さっきからどこか見てるみたいだけど。」
「気にしなくて良いわ。そろそろ、戻った方が良いかしら。夕食時だわ。」
「では、こちらへ。」

その時びゅう、と吹いた風がやけにイナバには恐ろしく感じられた。
それは、誰へだろう。

Re;Can make friends with somebody.
DATE: 2010/07/08(木)   CATEGORY: 店主の宝物庫
人見知りの一つ目の願い事。
「父上、入ります」
どうやら奥間に着いていたらしくカマカブトが襖に手をやる。襖には小高い山と一つの家、それらを囲むように険しそうな岩山が描かれてある、そして一番遠い所に華やかな町―だろうか、があった。

「リガキさん?」
イナバに呼ばれてリガキははっとした。

「大丈夫だよ。」
中に入ると大人数にも関わらずそれすら気にさせない広さだった。

「ようこそ、リガキ殿。我が雲隠れの居城へ。」
細面の老人が座布団の上に座りにこやかに微笑んだ。

「皆も久しく、」
「お父様もお変わりなきご様子で。」
ウロコアンが薄い笑みを貼り付けてそう言った。

「隠居とはそう言うものだよ、ウロコアン。さて、リガキ殿お呼び立てした理由をお話しせねばなりませぬな。」
「はい、」
「キミシカ、あれを」
ミツヨシ老はキミシカにそう言うとキミシカは頷いて席を立った。

「リガキ殿は”三枚の札”の話をご存知だろうか?」
「はい。山姥の住む山に栗を拾いに行くといった小坊主に和尚が渡した、あの札ですね。」
ほほほ、とミツヨシ老は笑って頷いた。

「そう。そしてそれは我が家に在る。」
「、え?」
「まあ、真偽の程はこの老いぼれにはわかりませぬ。しかしミツヤの”成人の儀”に必要なのは確かでございますから。」
「・・・成人の儀?」
リガキは首を傾げた。

「はい。リガキ殿にご相談したいと言うことも実はこれなのです。ミツヤの成人する者は”三練”という儀をしなければなりません。ですが・・弱った事に今年の成人は三人なのです、リガキ殿。」
「え?」
それは、確立として言えば低いんじゃないだろうか。

「いえね、成人を迎えるのはとても目出度い事です。しかし、この儀は一回で三枚を使うのです。」
「・・・日付をずらして行なうというのは、どうでしょうか?」
「日にちや段取りも決まり事で決まっておりまして。」

「枚数から察して三つの儀式があると考えて宜しいでしょうか?」
「その通りでございます。」
からからと笑うミツヨシ老、リガキは後ろに居るミツヨシ老の子供であるカマカブトやトビシマ、ウロコアンが何故家に戻らなければいけなくなったか、そして何故子供たちも一緒なのか理由がはっきりとした。

「ならお一人に一枚、そして一つの儀式にお一人が担当されるというのは?」
「もし一人が失敗したら?」

ミシリ、と空気が沈んだような気がした。その場の空気なのか、それとも彼の言葉の重みなのか。

「弊害があるんでしょうか?」
「弊害、と言えるのか分かりませんが一応成人の儀を受けた者にはミツヤを継ぐ事を許す事になっております。」
「ならその方を除いたという方法くらいでは無いでしょうか。それなら他の方に遠慮はいりませんし。」
我ながら冷たいことを言う、とリガキは思った。

「では―、そう致すと致します。」
とすん、と音がしたのに振り返るとキミシカが黒塗りの箱を持ってやって来た。

カマカブトとウロコアンは箱を敵のように睨んでいた。

「旦那様、」
「おお、リガキ殿。これが三枚の札でございます。」
かぱ、とミツヨシ老の手で開けられた箱の中には古びた札が三枚紅い布の上に綺麗に鎮座していた。

Re;To be able to tell who it is.
((↑誰かと話せますように。
DATE: 2010/07/04(日)   CATEGORY: 店主の宝物庫
寂しがりの願いの元。
―それは全てに置いて優しくされた事も無い”家族”の事でした。

すると障子が開けられた。
「あら、どうしたの?」
居たのは女中だった。

「はい。旦那様が奥間に来られましたので、皆様をお連れするように、と。」
「そう。分かったわ、ありがとう。」
「失礼致します。」
すとん、と障子が閉められた。

「では奥間にご案内いたします―」
ウロコアンがすっと立ち上がると、他の人たちもそれに合わせて立つ。一番後ろになったリガキは同じく後ろに居てマイペースに歩くトビシマに話し掛けた。

「そういえば皆さんは此処には住んでいらっしゃられないのですか?」
トビシマは自分の頭を扱いながら答える。

「此処に住んでいるのは親爺殿とキミシカ、それに女中たちくらいだな。」
「と言う事は、皆さんは家業を引き継がれていないのですね。」
そう言うと彼は楽しそうに笑った。

「恐れ入ったな・・、そう。俺たちは親爺殿の家業を受継いではいない。まあ、兄貴やウロコアンは継げ、と言われたなら継ぐだろうが俺は願い下げだね。」
「どうしてです?」
「俺は面倒事は嫌いなんだよ、先生。それで随分前から兄貴には嫌われているし、ウロコアンには呆れられている。」
リガキはトビシマの言葉に何故カマカブトが彼を軽蔑したような目で見たのか分かった。

「決定的な理由をお聞きしても?」
「何の?」
「貴方が幾等面倒ごとを嫌いだと言われても、ご兄妹でしたら『性格だから』と許せるのではないのでしょうか。なら、それを持ってしても許せなかった何かがあるのではないのかと。」
トビシマはきょとりとして薄く笑う。

「俺は昔一度家出したのさ。」
「家出、ですか?」
「ああ。一年ほどフラフラと幽鬼の様に放浪していた。そして、家に戻った。」
「何故?」
「放浪していた時に大雨が降ったときがあって、立ち往生していたらその家が仕立屋でね。そこの親爺さんに何でこんなとこで雨宿りなんかしてんだ、若造と聞かれて事情を大方説明したんだ。なら、気が済むまで止まってけ!って言われた。まあ・・条件付だったけど。」
「条件?」
「家出に満足したらちゃんと家に戻る事、それが交換条件でね。ゆったり過しながら親爺さんの手伝いをしていて俺はふと思った。仕立屋という仕事は楽しい。それで俺はこれを自分の生業にしようと思って報告をしに家に戻った。」
十字の道を左へと行く。

「帰ってきて真っ先に怒りくるった兄貴に会って『この一年連絡と言う連絡をしてこなかった奴がどの面を下げて帰ってきたんだ!』と一発ぶん殴られたな。」
肩を竦めて笑うトビシマは何でもないように語る。

「庭の水撒きをしていたウロコアンも『ハクがつきましたわね、トビシマお兄様』だ。本当にアレで妹なんだから世の中笑わせるし、心配して来たのは女中だけだ。」
「・・・、」
「その後に親爺殿から許可は貰って今じゃ仕立屋だ。」
「それは、」
願いが叶ってよかったというべきなんだろうか。
「だから早々に家から逃げた俺は継ぐ、継がないなんていうこと以前なんだよ、リガキ先生。その点潔癖な兄貴や男より肝が据わりきっているウロコアンの方が何倍も適役と言う事だよ。」
「はあ、」
「先生は俺たち兄妹をどう思う?」
「・・・、今のお話しを聞く限り、兄弟仲の宜しいとは。」
「だろうな。兄妹仲はそこそこだ。何が悪いのか、罵倒しあってばっかりだ。俺がこの家で最後に覚えているのはそんな事だ。」
「カマカブトさんやウロコアンさんとはお会いには?」
「兄貴は料理屋を、ウロコアンは旅館に嫁いで女将をやっているのだと手紙を送ってきて、後は子供が生まれたと連絡するだけだったな。なかなか会うまでには行かない。」
「そう、だったんですか・・。」
リガキは首をかしげた。

なら、この素っ気ない兄妹たちがわざわざここに来なければいけなかった理由とは―なんだろうか。

Re;Feeling lonely does not know a family.
DATE: 2010/07/01(木)   CATEGORY: 店主の宝物庫
寂しがりの知らなかった事。
―寂しがりは自分が寂しがりであることを誰より分かっていませんでした。

「失礼致します、」
するり、と開かれた襖から現れたのは盆を持ったキミシカだった。

「悪いなキミシカ。」
片膝を支えにして向かい側に居た寝癖のような頭の男の人は立ち上がりキミシカから盆を受け取り机の上に置いた。

「とんでもございません、トビシマ様。お役目ですから。」
そう言ってにこやかに笑んだキミシカに曖昧に笑って返すトビシマ。キミシカは机に置かれた盆から急須を持って湯飲みにお茶を注いで渡す。

「有難うございます、キミシカさん。」
「いえ。こちらは茶菓子の芋金時です。どうぞ召し上がって下さい。それから、旦那様から言付けで皆様に自己紹介をしていて欲しいとの事ですが・・」
「では兄様達にオツシロ、カズアツね。」
お茶を啜りながら芋金時を食べるウロコアンの言葉に眼鏡をかけた男性は眼鏡のブリッジを押し上げた。

「俺からで良いか。」
「どうぞ」
軽く肩を竦めて頷いた寝癖のような頭の男性の行動に眼鏡をかけた男性は侮蔑の目線を込めて睨んだ。

「先ずは遠路遥遥お越し頂いたことをお礼申し上げる。俺は長子のカマカブトと言います。こちらにいるのは娘のオツシロ。オツシロ、挨拶を」
視線を向けられた女性はゆっくりと此方を向いてぺこりと丁寧なお辞儀をした。浮かべるのは人が落ち着く笑みだ。

「初めまして、オツシロと言います。リガキ、先生とお呼びした方が宜しいのでしょうかお父様?」
はた、りと彼女は父のほうを向いて尋ねたがカマカブトは顔をしかめた。

「オツシロ、それは俺ではなくご本人に尋ねなさい。」
「・・失礼を致しました。あの、リガキ様。」
カマカブトに言われて落ち込んだ様子で此方を見るオツシロにリガキは微笑んだ。

「どちらでも僕は構いませんよ。どうぞオツシロさんが呼びやすいほうで呼んでください。」
リガキがそう言って見せるとオツシロはほっとしたような顔を浮かべて微笑んだ。

するとお茶をずるり、と飲んでいた寝癖のような頭の男性が軽く会釈をした。

「初めまして、次男のトビシマです。そちらに居るウタゲが俺の息子です。」
そう言われてにこやかに笑うウタゲ。

「カズアツ、」
ウロコアンに名前を呼ばれてふてくされたように頷いた青年は此方を見た。

「カズアツです。どうぞ、よろしく。・・で、キミシカ終わったら何をすれば良いんだよ。」
「そうですね。・・旦那様からは自己紹介の件だけしか言付かっていないのですが、リガキ様にこちらにお越し頂いた理由を未だお話していなかったと思うのですが―」
「話していなかったのか!?」
カマカブトが驚愕の表情を浮かべキミシカを見た。

「はい、旦那様からのご要望で。こちらに来て頂いてから事情をお話ししたほうが宜しいだろうということでして。」
「親爺殿は相変わらずのようだな。」
「兄様方も。」
ウロコアンが嫌味のようにそう言うとトビシマは諸手を上げた。

「話して置いたら良いんじゃないのか?」
「勿論、そちらのほうがリガキ様方にも便利だとは思うけれど、」
トビシマとウロコアンが双方に言い合う中、するり、と襖に手がかけられた。

Re;It was because I felt lonely and thought feelings to say that own was lacking to be another thing.
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