DATE: --/--/--(--)   CATEGORY: スポンサー広告
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
page top
DATE: 2010/01/02(土)   CATEGORY: 店主の宝物庫
海神の娘の渦の話。
―あそこには娘が居る。この世で尤も荒々しく、この世で尤も美しき海神の娘。

「では、皆さん昨夜夕餉を取ってからの行動はばらばらだったと。」
「ええ、ヒネズ殿とツバメミ殿にリガキ殿、オオナキ殿は酒盛りをしていましたが。」
ハチチリが穏やかに刑事の問いに答える。

「私は部屋に戻ってから風呂に行って帰ってからは直ぐに床につきました。」
「成る程、アイクラさん、あんたは?」
「・・、しばらく部屋で書物を読んでいたがその後はハチチリ殿と同じだ。」
「タマタツさんは?」
陰気臭い顔の刑事は半ば何かに諦めかけているようにタマタツに問う。

「私ですか?私は風呂に行った帰りに其処の庭で夜風に当たってから、部屋に戻って書物を読んで寝ました。」
陰気臭い顔がまずいものを喰った表情をした。信じられない、という具合か。

「・・ミカハラさんは?」
「僕は部屋に居て、しばらくして風呂に行きました。途中でシロツメ嬢にも会いましたが・・」
「シロツメさん、本当ですか?」
「ええ、お母様がお父様のご心配をされていたので様子を見に行く途中でお会いしました。」
「と言う事は、あの酒盛りの終盤ですね。」
リガキは顔の赤くなったオオナキを迎えに来たシロツメを思い出した。

「そうなりますね、帰りにリガキ殿たちが酒盛りをしていた場所を見ましたが誰もいませんでしたから。」
「ということは、アンタが一番最後にあの廊下を通った事になるな・・」
「・・、僕が帰っているときには何もありませんでしたよ。」
疑いの眼差しが分かったのかミカハラはそれごと切り捨てるかのように言う。

「・・ああ、そういえば明かりが一個だけついていました。」
「明かり?」
刑事がいぶかしむようにミカハラの発言に眉をひそめた。

「明かりです。ツバメミ殿の所だけ、ぽつりと明かりがついていました。」
他の所は全部消えていたのですが、とミカハラは言う。

「要するに、被害者だけが一番遅くまで起きていた、ということか?・・いや・・」
そう言いながら刑事はその言葉の先を言うのをやめた。

「”もうその時に死んでいたか”」
タマタツが刑事が言うのを止めた言葉の先を言った。

「タマタツさん・・俺は言わないようにしたんですがね。」
「推量だとしても言って損は無いですよ。ただ、当たらないだけです。」
「ですがね・・」
「刑事さん、リガキ殿にご享受頂いてはどうですか?」
にぱりと笑ってタマタツは刑事に言う、刑事はといえばじろりとリガキを見た。

「タマタツさん、一つだけ言うとですね。僕とオオナキさんが貴方たちを窓から出るように言ったじゃありませんか。そこで僕はツバメミさんの部屋も開けたんです。」
カコン、と今まで聞こえなかった獅子脅しの音が聞こえた。

「それで?」
「ツバメミさんの部屋をざっくりと見ましたが、畳には血も無いし乱闘した形跡もありませんでした。」
「・・犯人が証拠を持ち逃げしたという可能性は?」
「それだったら、尚更何処かに血が残っていますよ。」
布団に、畳に、窓の格子に、逃げたとされる場所に、と続ける。

「ツバメミさんは部屋を出て居間へ向かっている最中に、亡くなられた。」
「おぃ待て大学先生それじゃツバメミさんは至近距離から殺されたってことになる。なら犯人は”顔見知り”ってことになる・・しかも、其処まで疑いを感じさせないほどの。」
「そうですね。」
「けど、だ。この人たちは昨日集まったばかりの人たちだろう。」

刑事の言葉に又、渦が巻く。ぐる、ぐる、ぐる、と。

「シロツメさん」
リガキは刑事と自分の言葉に驚かされていたシロツメの名前を呼んだ。

「はい、何でしょう?」
「貴方は”知り”たいですか?全部を。」
「ぜん、ぶ?」
「そう、全部。”知れ”ば貴方の今の”世界”は壊れてしまうかもしれない。」
シロツメはその言葉に一度怯んだ。だが、次の瞬間顔を強張らせながら言う。

「・・リガキ先生、私は”知り”たいです。」
嗚呼、海神よ。貴方の娘が今、渦より帰ります。

Re;god of sea
スポンサーサイト

コメントの投稿

 管理者にだけ表示を許可する
Copyright © 真夜中安息. all rights reserved.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。